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2012年12月21日金曜日

チェスの名人たちを、目隠ししたまま相手にする(チャーリー・マンガー)

現代の古典ともいえるチャーリー・マンガーの講演は少しばかり古いものが多いのですが、比較的近年のものが公開されていたのでご紹介します。以下のサイトから、Scribdへアップロードされたファイルにリンクされています。

Charlie Munger Lecture at the Harvard-Westlake School (Santangel's Review)

題名にでている「ハーヴァード・ウェストレイク高校」とは以前にとりあげたプレップ・スクールのことで(過去記事)、チャーリーが理事会に関わっている高校です。また、この講演にはオークツリーのハワード・マークスも同席していたようです。

今回から始まるこのシリーズでは、上記のテキストを全訳していきます。PDFファイルで10ページほどの文章ですが、毎度のことながら、のんびりペースで進めていくことをご容赦ください。

ハーバード・ウェストレイク高校におけるチャーリー・マンガーの講話
(2010年1月19日)
Charlie Munger at Harvard-Westlake School January 19, 2010

ジム・ギブソン:
チャーリー、なぜそんなにたくさんの頭脳明晰な人が過ちを犯したのでしょうか。[金融危機のこと]

チャーリー・マンガー:
ああ、それはすばらしい質問ですな。私自身もまったく同じ謎を明かしたいと、これまでかなりの時間を割いてきたものです。非常に優秀でしっかりした人たちが、よってたかってまるでおかしな判断を下し、災厄を招くことがあります。はっきりいって、これはいたるところで見かけられますね。その原因のいくつかは若いころに合点していましたが、この件にはすごく興味があったので、その頃に自分なりに悟りを開きました。6人ものチェスの名人を相手に、しかも目隠ししながら勝負を挑んで勝ちを得るなんて、できっこないと。神は、そのような力をチャーリー・マンガーには与えて下さらなかったのですね。「しょうがないな、わたしがずっと堅実にやっていくのだったら、そういう人たちのように愚かではいけないんですね」。そうしてきたのが、今の私です。

バークシャー・ハサウェイが注目されているのは、我々が何かコツをつかんだように見えることも、その理由のひとつかと思われます。しかしそれは、目覚ましいといったものではなく、単にバカなことを避けているだけのことです。結局は同じことでしょうと思うかもしれませんが、まあ、そうなのかもしれません。しかし我々のようにやってみれば、より深く理解してもらえると思います。つまり、賢い人たちを誘う愚かさの主だったものを見つけ出し、考えたり組み立てるパターンを体系化するのです。そうすれば、その手の愚かしさにはまり込むことはないと思います。さて、現在の状況は、きわめて聡明な人がそろっている場所にも関わらず、ものすごい認知上の誤りがあちこちで起きています。これは本当に興味深いことですね。

それでは、一連の事例をざっとながめていきましょう。まずは学術界による過ちです。最高水準の大学にいる教授連が、完璧にばかげたアイデアにとりつかれています。筆頭にくるのが効率的市場理論ですね。その昔、マッキンゼーに多大なる影響を及ぼした人が、ワシントン・ポストの株が1/5の値段で売られているときに同社に来て、こう発言しました。「株を買ってはなりません。効率的市場理論によれば、会社全体を買う金額の1/5で売られるということはありえないのですから」。当然ながら、こういった愚かな概念を信奉するような心の持ち主は、それを否定するような事実が出てきても、科学における伝統や心の中にある良識に、まるで従わないのです。彼らは何十年間にもわたって、このたわごとを我々の子供に教え込んできましたし、なんともまあ、今でも同じことをやっている人がたくさんいます。この概念は経済学の代表的な教科書にも載っており、ポール・サミュエルソンのような頭のいい人が信じているものです。彼は本当に頭脳明晰な人ですよ。では、賢い人がそのようなばかげた考えをずっと抱いてきたのはなぜでしょうか。もう少し事例をたどった後で、またこの主題に戻ることにします。

Jim Gibson:
Charlie, why did so many smart people get it wrong?

Charlie Munger:
Well, that is a marvelous question and it is such a marvelous question that I have devoted a big chunk of my life to studying that exact question. It was obvious to me for some reason, at an early age, that a great many very brilliant and disciplined people made perfectly screwy decisions that were disastrous -- and that it happened, frankly, wherever I looked. I found this extremely curious, and somehow early in life I got the idea that I would never be able to play chess blindfolded against six Grandmasters and win. God just did not give Charlie Munger any such skill. But I said, ‘Oh my gosh, I cannot be as asinine as all these other people if I just kind of work at it steadily for a long time,' and that is what I did.

I think part of the popularity of Berkshire Hathaway is that we look like people who have found a trick. It's not brilliance. It's just avoiding stupidity. You say it is the same thing just stated differently -- well, maybe it is the same thing just stated differently. But you understand it better if you go at it the way we do, which is to identify the main stupidities that do bright people in and then organize your patterns for thinking and developments, so you don't stumble into those stupidities. Of course, this present situation involves massive cognitive failure at a great number of places dominated by very, very bright people, and that is quite interesting.

Let's just go through the list, briefly. Academia failed. The professors at our greatest universities [have] perfectly asinine ideas -- first, about efficient market theory. One of those people influenced McKinsey [& Company] so much that McKinsey came to the Washington Post at the time it was selling at one-fifth of what it was plainly worth as a share of the total enterprise, and said, ‘You can't buy [the stock] in because, under efficient market theory, it can't be worth a fifth of what people would pay for the whole company.' Of course, the kind of mind that would keep a stupid idea like this when they have a fact that would clearly refute it -- it clearly violates traditions of science and mental decency. They taught this drivel to our children for decades and, by God, a lot of people are still doing it. It was in the major textbooks in economics and people as smart as Paul Samuelson [believed it] -- and that is a significantly smart man. How do smart people get such dumb ideas and hold them so long? I'll try to come back to that theme after I've enumerated more examples.

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