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2012年8月5日日曜日

諸戸家遺訓(日本有数の大地主 諸戸清六)

以前とりあげた『商家の家訓』から再び引用します(過去記事)。今回は明治維新前後に活躍した諸戸清六氏による家訓です。同氏は父親の残した莫大な借金2000両をかかえての出発でした。「時は金なり」を信条として「人が10時間働けば自分は15時間、人が3杯飯を食べれば自分は1杯で辛抱する、人が不用だと捨てたものは自分が利用する」という生きかたで財を成しました。明治21年(当時42歳)のころには、東京の恵比寿から渋谷、駒場に至る住宅地30万坪を買い捲り、一時は渋谷から世田谷まで、他人の地所を踏まずに行けたとあります。

第1条「時は金なり」
時は金なりである。時間は有効に使うべきである、決して忘れてはならない。

第3条「銭のない顔」
いつもお金がないという顔をすべきである。お金があるという顔をしていると、余分な出費が多くなる。仮に、お金がないという顔をしていて人様に笑われることがあっても、後々成功した暁には、流石だと褒められるものである。

第4条「質素」
派手な暮らしぶりはよくない。できるだけ質素な生活をすべきである。着物は垢が付きにくく、すぐに洗える木綿の服で十分であるので、無駄なことはするな。

第5条「人を選ぶ」
自分の財産を減らさないようにするには、平素の付き合いをする人は誰でもよいというものではない。質素倹約をして地道に生活をしている人がよいので、そのような人を交際相手に選ぶべきである。

第9条「知恵を得る」
いろんな人に会って、その人々から多くのことを教えてもらうように心掛けるべきである。

第10条「馬鹿になる」
賢い人は、いつでも馬鹿になれる人である。このような人になれば、頭を下げて色々な人に質問もでき、商売もできるのである。気位が高いだけの人間になってはいけない。

第13条「2年先を見よ」
2年先の予測、見極めができるようにすべきである。また、たまたま儲かったお金は労働の対価でないので、他人のお金を預かったのと同じことであると、心得るべきである。(p.271)


質素倹約を旨としていますが、かといって商機は逃さなかったようです。商用で汽車に乗るときは、必ず1等か2等の切符を購入し、3等には乗らなかったとあります。当人いわく「1等や2等の乗客は学識があり、実力のある人が乗り合わせている。このような人と乗り合わせるのは、商機が多く、自分のためになる。いたずらに少しのお金をケチって、チャンスを失うことは大きな利益を失うことになり、大きな損失である」としています。

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