1つの戦略を実行するコストを相対的に理解しようとする際、一般に企業は2つの誤りを犯す可能性がある。1つは、自社のコントロールする経営資源の独自性を過大評価してしまうことである。たしかに個々の企業の歴史はすべて独自のものであり、まったく同じマネジメント・チームは2つとして存在しない。だが、これをもってその企業の保有する経営資源やケイパビリティが稀少であるとはならない。似たような業界で似たような歴史を経験してきている企業は、多くの場合同じようなものを醸成してきているものだ。もしも企業が自社の経営資源やケイパビリティの稀少性を過大評価してしまうと、その企業は自社の競争優位を獲得する能力も過大評価してしまうことになる。
たとえば、自社の競争優位の最も重要な源泉は何かと問われて、多くの企業は、そのトップ経営陣の質の高さ、保有する技術の質の高さ、そして自社の企業活動のすべてにわたって最高を追求するコミットメントの強さなどを列挙するだろう。だが、それらの企業が今度は競合他社のほうはどうか、と聞かれれば、競合も同じように質の高いマネジメント・チームや、質の高い技術や、最高を求めるコミットメントを持っていると認めるだろう。つまり、これら3つの属性は競争均衡の源泉とはなり得ても、競争優位の源泉とはなり得ないのである。(上巻 p.284)
決算説明会などの資料で自社の強みを謳っているのを読むことがありますが、個人的には「なるほど、そういうものなのか」と鵜呑みにしがちです。あれは営業トークのようなもの、と冷静に捉えるべきなのですね。本当のところは何が強みなのか、それは長持ちするだろうか、といった疑問をいだき、客観的に自答できるよう訓練していきたいものです。
2 件のコメント:
== No title ==
たしかチャーリーはこういう場合、学際的に考えるみたいですね。コカ・コーラを例に出して、結局の所、消費者の他の企業の製品やサービスへの容易な乗り換えを難しくさせれば良いということを、心理学や生理学の視点から考えているようです。
== マンガーのやりかた、ありがとうございます ==
raccoonさん、コメントありがとうございました。
今回頂いたコメントはとても重要ですね。同じように競争していても、業界によって利益率が大きく異なる理由が潜んでいるように感じました。
利用者に対して、なぜ乗り換えしないのかと質問してさっと答えが出にくい場合ほど、Moatが広いのかもしれませんね。
それでは失礼します。
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