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2019年2月2日土曜日

2018年の投資をふりかえって(6)一部売却銘柄:ウィートン・プレシャス・メタルズ(WPM)

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当社が営んでいる事業は、「鉱山会社に対して資金を提供し、その対価として将来産出される銀やゴールド等の鉱産品を、低水準の固定価格で買い取る契約を結ぶ」ものです。端的に言えば、「価格変動を伴う将来キャッシュ・フローに対して、前払いするビジネス」です。

<株式の売買実績と現在の株価>
株価が比較的好調だった時期(年始、春、年央)に一部を売却しました。現在の株価は20$前後です。

WPM株価チャート約1年分(青矢印は売却)

一方でシルバーの価格が年を通じて低迷していたため、ETFのSLVを適宜買い増ししました。個人的に興味を持っている主な対象は、現在でも銀です。そのため以前の投稿でも書いたように、当社とSLVを比較して割安だと思えるほうへ資金を移せるように、適宜売買していく方針です。

<業績などに対する所感>
当社についても2点ほど、大きな話題と小さな話題をとりあげます。

・税務当局との和解
国外子会社との移転価格に関して係争中だったカナダ税務当局と12月に和解し、当初危惧されていた大規模なペナルティーを受けずに済むことになりました。同様の他社事案の動向を受けて少し前から楽観視する流れもありましたが、見事に軟着陸しました。カナダ以外(おもにケイマン子会社)からの収入には課税されないことになり、前納分の追徴課税も還付されます。「ペナルティーを被る確率が高い」と覚悟して個人的には持ち株を減らしていたものの、杞憂におわりました。

ただし移転価格税制が将来厳格に改定される可能性はゼロではないため、当社のような企業に投資する際には、そのリスクはひきつづき念頭におく必要があるかと思います。

・金銀以外を産出する鉱床への投資
当社が設立されたころに事業対象としていたのは、銀を産出する鉱山へのストリーミング案件でした。その後になって事業領域をゴールドにも拡大し、さらにはパラジウムやコバルトへのストリーミングも始めました。コバルトはリチウムイオン電池の正極材材料として使われており、電気自動車時代における重要な鉱物資源のひとつとみなされています。「シルバー・ウィートン」という社名だった当社は、希少鉱物を産する鉱床を対象とした投資会社へと変貌しつつあります。

2019年1月30日水曜日

2018年の投資をふりかえって(5)一部売却銘柄:マイクロソフト(MSFT)

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<株式の売買実績と現在の株価>
年の終盤になって一部を売却したものの、持ち株全体からすると若干絞りこんだ程度でした。当社に対する基本的な投資方針は、継続保有のままです。

直近の株価は105$前後で、実績EPSは2.13$だったものの、当社でもトランプ減税を機に国外利益を本国へ還流させたマイナスの影響があったため、実力は3.5$程度だったでしょうか。いずれにせよ、「株価倍率が割安である」とは言いにくい水準です。

MSFT株価チャート約1年分(青矢印は売却)

<業績などに対する所感>
当社の成長を支える2つの面について記します。1件目は表面的には目立たないものの増収著しい「クラウド事業」について、2件目は華々しい印象を残しながらも収益貢献はそれほどでもない「企業買収」についてです。

・クラウド事業の伸長
サティア・ナデラ氏が現CEOに昇進してから事業展開を加速させたクラウド事業は、ひきつづき急激に成長しています。当社の主力事業のひとつになると思われるAzure(アジュール)の2018年度成長率は、90%前後でした。大きく先行しているアマゾンAWSの市場シェアとは20ポイント程度離れていますが、これから加わる顧客層の性質を考えれば、肉薄できる確率は50%以上あると想像します。そこまで及ばないとしても、寡占をめざすプレーヤーにとって現在のクラウド市場(IaaS, PaaS)は、緊張感がありながらも心地よいビジネスの場であると思われます。イノベーションの継続と市場の拡大が好循環を生み出し、規模の経済へつながっていると想像できるからです。

・企業買収を通じた潜在顧客の囲い込み
当社はさまざまなIT系企業を買収して技術的資産を獲得していますが、近年の買収において金額的に大型だった企業LinkedInやGitHubはそれにとどまるものではありませんでした。サービスの利用者、すなわちコミュニティーの場を買い取る類の案件で、言わば「R&Dよりもマーケティングに重心をおいた」買収でした。会計面における目先の費用対効果は小さいですが、潜在顧客をまとめて手に入れた価値は小さくないと考えます。コミュニティーの熱量を維持していければ、長期的・継続的・伝播的なリターンが期待できます。Office, Dynamics, Azureといったサービスの拡販につながると共に、潜在的な要望をすくいあげて新サービス開発につなげる場としても有用です。当たりはずれがはっきりしやすいソフトウェア資産よりも、毀損されにくい価値を有しているかもしれません。利益の刈取りを急ぎすぎないことを願っています。

2019年1月28日月曜日

2018年の投資をふりかえって(4)一部売却銘柄:モザイク(MOS)

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当社は3大肥料のうち、主としてリン酸及びカリウムを採掘・生産・販売する米国企業です。

<株式の売買実績と現在の株価>
2018年秋になって株価が高まったので、ある程度の株数を売却しました。現在の株価は30$強で、一方の昨年度実績EPSは-0.31$ですが、今期は為替差損の逆風が大きいなかで、第3四半期までに0.93$の利益を上げています。

MOS株価チャート約1年分(青矢印は売却)

<業績などに対する所感>

米中貿易戦争の影響もあるせいか肥料価格が前年比で上昇しており、当社の売上高増加・利益改善につながっています。また社内における事業の状況としては、年の早い時期にもたついたものの、それ以降は順調に推移してきました。サウジアラビアでのJVはまだ立ち上げ中ですが、買収が完了したヴァーレの肥料部門が収益拡大に大きく寄与しました。またカリウムの新鉱山K3が一部稼働を始めており、中長期的な費用削減の施策が進行中です。さらには、環境対策のうるさいフロリダ州でリン鉱床拡張プロジェクトの許可を得たことで、長期的な資源枯渇リスクを低減しています。

DAP価格の5年間推移(引用元: www.indexmundi.com)


しかし以前にも書いたように、当社への投資方針としては残りの持ち株も株価上昇期に売却し、ひとまず資金を引きあげる予定です。コモディティーである以上、肥料ビジネスの業績は市場価格に左右されます。そして今日まで観察してきた価格変動サイクルを振り返ると、市場価格の動向(特に安値とその期間)を合理的に予想する自信が、以前のようには持てなくなりました。ひいては、当社の企業価値をみつもる自信も減少しました。農業関連の企業に投資することを望んではいましたが、当社のような企業の株式は永続的に保有するよりも「安買高売」したほうが、少なくとも個人的には取り組みやすいと考えるようになりました。

2019年1月24日木曜日

<新訳>誤判断の心理学(0)はじめに(3)首から上にあるものは

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チャーリー・マンガーによる「誤判断の心理学<新訳>」、前書き部にあたる本文が続きます。前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

我が探求の道を進むにあたり、次に説明する2つの考えかたが、力強い支えとなってくれました。第一に、なにかを見極めようとする際に、徹底して逆から考えるやりかたを長期間にわたってとってきたことです。偉大なる代数学者ヤコビの教え「逆だ、いつでも逆からやれ」という言葉に導かれたのです。良き判断を下したいがためにしたことと言えば、悪しき判断の実例を収集し、そのような結末をむかえない方法を思案するばかりでした。第二に、悪判断の実例を熱心に収集する際に、専門領域を区切る境界などまるで気にしなかったことです。規模が大きくて重大な柵越え級のおろかさが、他人の専門領域において容易に見出せるというのに、ちっぽけで取るに足らない上に探すのも一苦労なおろかさを、みずからの専門領域において新たに探さねばならないのは、一体どういうわけでしょうか。そもそものところ、実世界における問題が各分野の境界内にきちんと収まっておらず、飛び出して向こう側へ移っていることが、私には見て取れました。「2つの物事がねじれ合って連携して分かちがたくなっているときに、片方だけを考えて反対側を考えない」、なんであろうとそのようなやりかたには疑いを抱いていました。そんな限定されたやりかたでは、ジョン・L・ルイスが示した不朽の言葉どおりになると危惧したからです。「首から上にあるものは、頭ではなく毛髪だけ」。(p. 444)

I was greatly helped in my quest by two turns of mind. First, I had long looked for insight by inversion in the intense manner counseled by the great algebraist, Jacobi: “Invert, always invert.” I sought good judgment mostly by collecting instances of bad judgment, then pondering ways to avoid such outcomes. Second, I became so avid a collector of instances of bad judgment that I paid no attention to boundaries between professional territories. After all, why should I search for some tiny, unimportant, hard-to-find new stupidity in my own field when some large, important, easy-to-find stupidity was just over the fence in the other fellow's professional territory? Besides, I could already see that real-world problems didn't neatly lie within territorial boundaries. They jumped right across. And I was dubious of any approach that, when two things were inextricably intertwined and interconnected, would try and think about one thing but not the other. I was afraid, if I tried any such restricted approach, that I would end up, in the immortal words of John L. Lewis, "with no brain at all, just a neck that had haired over.”

2019年1月20日日曜日

2018年の投資をふりかえって(3)一部売却銘柄:日進工具(6157)、インテル(INTC)

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■日進工具(6157)
(当社をとりあげた直近の過去記事はこちら)

<株価の状況>
現在の株価は2,400円強で、前年度の実績EPSは150円強でした。そのため、実績PERは16前後となります。

<株式の売買結果>
2月上旬にかけて株価が上昇している間は、持ち株を段階的に売却しました。その後、株価が下落を始めてからは売却をやめて、残りの持ち株を維持しました。

(青矢印は売却)

<業績などに対する所感>
景気拡大に合わせて、当社の業績も続伸しています。電子機器やそれに使われる部品の小型化・高性能化が漸次進んでおり、微細化を追求する当社の事業にとっては、ひきつづき追い風の環境にあると思われます。景気後退局面がくれば、金型や部品の加工に使われる当社製品への需要も減退するでしょうが、その後の回復期になれば市場規模はさらに拡大すると想像します。現在の状況及び株価水準であれば、継続保有したいと考えています。


■インテル(INTC)
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<株価の状況>
現在の株価は49$強で、前年度の実績EPSは2$弱でした。実績PERは24.5前後となります。ただし今期は第3四半期までにEPS3.35$の利益をあげています。

<株式の売買結果>
10月中に何度かに分けて売却しました。振り返ってみると、直近では株価がもっとも低迷していた時期でした。売却した理由は主として個人的な理由によるものですが、当社における技術面での行き詰まりに意気消沈していた部分も、若干ありました。(この技術的問題はその後に好転。後述)

(青矢印は売却)

当社へ投資したそもそもの目的は、マイクロソフトへの投資をヘッジする意味にありました。しかし現在までのところは、逆の位置づけになってしまいました。業績と比較した市場からの評価はマイクロソフトのほうが高く、当社は相対的に低迷しています。ただし企業価値の観点からみれば、現在の市場評価がそれほど正当だとは受けとめていません。

<業績などに対する所感>
当社の現状において注視している点2つを記します。

・10nmノード製品の開発遅延による余波
当社が先だって発表した声明によれば、技術的な問題をともかく解消して、10nmプロセスで製造する実質的に最初の量産製品を、年末にむけて出荷できる見通しが立ったようです。しかし数年にわたる開発遅延によって、微細化実現時期の面で当社が保ってきた優位性は、少なくとも現在においてはほとんどなくなったように思われます。つまり製品の優位性、ひいては価格競争力が低下するリスクが大きくなったと判断します。さらに、当社からの製品供給を重大なリスクと考える顧客が策を講じる傾向が強くなっていくとも想像します。当社の最重要な競争力が損なわれたわけですから、株式市場からの評価が低迷し続けるのも、ある程度は納得できます。

一方で、失敗に終わった今回の技術的挑戦において直面したさまざまな問題から得られた知見も少なくないと想像します。そして「転んでもただでは起きぬ」、その失敗を成功につなげる猶予が残されていると考えます。当社の製品を要望する顧客とのつながりや、実際に製品を製造する有形資産は、依然として健在です。短中期的にはむずかしいでしょうが、中長期的(3-7年程度)には今回の技術的なマイナスをある程度取り返せる可能性があると評価します。現在の株価水準にはその可能性が織り込まれていないように感じられます。

・事業領域の広範囲化
メモリー事業から開始した当社の事業は、その後にPC用CPU等の事業にうつって大成功し、現在はデータ・センター向け製品でも大きな利益をあげています。近年はネットワーク機器や4G/5Gモデムや自動運転車載用デバイス/システム、そして祖業だったメモリー事業にも再び取り組んでいます。これらの取り組みを全体としてとらえれば、自動運転を契機として自動車社会のコンピュータ化およびネットワーク化が急速に進むことを見越した、横断的な収益機会を追求し始めたと見受けられます。

当社IR資料より。2018/11/12開催の
UBS Global Technology Conference

そのような大きな市場において、他社との戦いから逃げずにあらゆる領域を事業の対象とする姿勢は、大切だと思います。自社が手がけない領域があると、そこを制圧した競合他社が事業領域を拡大浸食してくるリスクが大きくなるからです。端末(=自動車)からデータセンターに至るまでのあらゆる処理(センサー、通信、演算、データ保存)を実行する製品を事業対象とする企業戦略は、当社のような規模を持った企業だからこそ可能だと言えます。その一方で、他社からの切り崩しを抑制するために不可欠な戦略だとも思われます。つまり、当社が現状維持あるいは成長を望むのであれば、必然的に進まざるを得ない経営の方向だと受けとめています。

事業領域拡大に伴う大きなリスクとして、社内における官僚主義的体質の悪化が予想されます。当社では新CEOを選定中で、今年中には決定すると思われます。その人物に求められるのは、従来よりも多岐にわたる競争の激しい事業群を束ねることのできる手腕です。新CEOによる実績があらわれてくる時期、少なくとも2,3年後までは安易にはあきらめずに動向を追っていきたいと考えています。