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2012年3月21日水曜日

グランド・キャニオンをわたる(ウォーレン・バフェット)

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今回は、ベン・グレアムの言葉「Margin of Safety(安全余裕)」について。ウォーレン・バフェットは、この言葉をたびたび強調してきましたが、ここで彼による例え話をどうぞ。おなじみ『Seeking Wisdom』からの孫引きで、1997年開催のバークシャー・ハサウェイの株主総会での発言です。(日本語は拙訳)

ビジネスをきちんと理解しているのでしたら、つまり未来を完璧に見通せるということですが、[株式を買う際に]安全余裕はほとんどとらなくてもよいでしょう。反対に、ビジネスに関するさまざまな出来事がおきたり、不確実なことが多かったり、ビジネスが脆弱になっていたり、変化する可能性が高くなるほど、安全余裕を多くとらなければなりません。

車両総重量が4.4トンのトラックにのって活荷重が4.5トンの橋をわたる場合、橋の高さが地面から15cmぐらいだったら、まあ安心してわたれるでしょう。しかし、グランド・キャニオンにかかる橋だったら、もっと余裕がほしくなりますよね。たとえば2トンぐらいのトラックにしておくのではないでしょうか。ですから、どれだけ安全余裕が必要かは、そこに潜んでいるリスクに応じて決まってくるのです。

If you understand a business ? if you can see its future perfectly ? then, obviously, you need very little in the way of margin of safety. Conversely, the more things can happen, the more uncertainty there is, the more vulnerable the business is or the greater the possibility of change, the larger margin of safety you require...

If you're driving a 9,800 pound truck across a bridge that says it holds 10,000 pounds and the bridge is only about six inches above the ground, then you may feel OK. However, if the bridge is over the Grand Canyon, then you may want a little larger margin of safety. And, therefore, you may only drive a 4,000 pound truck across. So it depends on the nature of the underlying risk.

2012年3月20日火曜日

(答え)男の子が多く生まれる病院はどちらか?; 究極の鍛錬

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まずは、前回とりあげた問題の回答になります。

ここで驚かされるのは、確率論のロジックに学生があまり注意を払っていないことだ。男の子の割合が60パーセントを超える日数は、小さな病院の方が多い可能性が高いと考えられる。大きな病院のほうがサンプルが多く、平均からずれる可能性が低いからだ。 (p.105)

例えば、こちらのサイトの図8-1 標準正規母集団下での標本平均値の確率変動(6.5万回の実験)がわかりやすいかと思います。ちなみに私の回答ですが、反射的に「3.ほぼ同じ」を選んでしまいました。

自分の落とし穴に気づいたのはもちろんよかったことですが、この問題をはずして小さな悟りがひらけたような気がします。それは「問題に直面したら、自分なりに解決策を検討してみること」。自分で答えを考えずに回答を読んでいたら、この初歩的な落とし穴に気づかないまま、進んでいたと思います。あらゆる問題を検討する時間はないのでどれかを選ぶ必要がありますが、投資に立ち返ってみると、自分なりにチャンスがあると考えた銘柄に対しては、きちんと評価して文書化してみる、となります。

頭の中で漫然と評価してすぐに興味を失うのではなく、自分なりの枠組みを用意して、自分なりに評価する。このような作業をこなすことで、あとになって落とし穴や盲点に気づいたり、足りない部分を補うことができるのではないでしょうか。

そういえば、以前読んだ本『究極の鍛錬』では、鍛錬方法を以下のように定義していました。

1.実績向上のため、特別に考案されている。
例えば、改善が必要な要素を鋭く限定し、鍛え上げていく。
2.何度も繰り返すことができる。
3.結果に関し、継続的にフィードバックを受けることができる。
4.精神的にはとてもつらい。
5.あまりおもしろくない。

4番目とか5番目あたりに「究極」の秘密がかくされているような気がしますね。

2012年3月19日月曜日

(問題)男の子が多く生まれる病院はどちらか?

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最近読んだ本『ギャンブラーの数学』では、ギャンブルにまつわる確率や心理が取り上げられています。数学者の書いた本なのですが、個人的には歴史上の逸話のほうがおもしろく、ドストエフスキーの伝記あたりを読んでみたくなりました。

さて、確率についての基礎的な考え方はわかったつもりでいたのですが、本書を読んで反省しました。文中で挙げられていた次の問題で、答えをはずしてしまったのです。

高校レベルの確率の知識があれば正解できる簡単な問題です。解答は次回にご紹介します。

赤ん坊の50パーセントが男の子で、ある町の大きな病院では1日に約45人の赤ん坊が生まれ、小さな病院では1日に約15人の赤ん坊が生まれる。それぞれの病院で1年にわたり、新生児の60パーセント以上が男の子だった日数を記録した。では問題。
その日数が多かったのはどちらの病院か?

1.大きな病院
2.小さな病院
3.ほぼ同じ

(p.104)

2012年3月17日土曜日

誤判断の心理学(8)羨望・嫉妬する傾向(チャーリー・マンガー)

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今回の傾向は、誰にでもわかりやすいでしょう。ねたみ、そねみ、うらやみなど、微妙な意味の違いはありますが、その手の感情です。(日本語は拙訳)

誤判断の心理学
The Psychology of Human Misjudgment

(その8)羨望・嫉妬する傾向
Eight: Envy/Jealousy Tendency

ときに不足してしまう食料を摂取するように進化した種は、最初に食料をみつけるとそれを得ようと躍起になってしまいがちです。また同じ種の自分以外の者が食料を持っているときにも、いさかいが始まりやすいものです。人の本性に深く根ざしている「羨望・嫉妬する傾向」は、進化をたどると、ここに始まるものだったと思われます。

A member of a species designed through evolutionary process to want often-scarce food is going to be driven strongly toward getting food when it first sees food. And this is going to occur often and tend to create some conflict when the food is seen in the possession of another member of the same species. This is probably the evolutionary origin of the envy/jealousy Tendency that lies so deep in human nature.


羨望や嫉妬は、現代社会でもひどくなっています。大学界を例にとると、たとえば資産運用の担当者や外科の教授が標準的な年俸の何倍もとっているとなれば、おかしな方向に進んでしまうのです。もっと極端なのが、投資銀行や法律事務所のたぐいです。大手の法律事務所あたりでは、羨望や嫉妬からくる混乱を避けて、個人の貢献度合いに差があってもシニアパートナーには一律同じ報酬をだしてきたものです。ウォーレン・バフェットと共に何十年も世間をながめてきましたが、そういえば彼はうまいことを繰り返していました。「世界を動かすのは傲慢かと思いましたが、そうではなくて、他をうらやむ力でした」

And envy/jealousy is also extreme in modern life. For instance, university communities often go bananas when some university employee in money management, or some professor in surgery, gets annual compensation in multiples of the standard professorial salary. And in modern investment banks, law firms, etc., the envy/jealousy effects are usually more extreme than they are in university faculties. Many big law firms, fearing disorder from envy/jealousy, have long treated all senior partners alike in compensation, no matter how different their contributions to firm welfare. As I have shared the observation of life with Warren Buffett over decades, I have heard him wisely say on several occasions: “It is not greed that drives the world, but envy.”


投資家は、この傾向に対して二重に注意する必要があると思います。まずは自分自身について。他人や市場の成績に追いつこうと、あせって自分の意思決定を誤ってしまうリスクが考えられます。もうひとつは投資先の経営者について。同業他社、社会動向、公私にわたるつきあいといったものが、経営者の心をゆさぶります。その経営戦略や設備投資は、本当に会社のためになっているのですか? ウォーレンが言うように、どちらに向かおうとしても企業を動かしているのは、他をうらやむ力なのかもしれませんね。

2012年3月16日金曜日

反射的に、にょきにょきと枝をのばす(チャーリー・マンガー)

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以前に取り上げましたが、チャーリー・マンガーが筆頭に挙げるメンタル・モデルは「順列と組み合わせ」でした。ただし、それを使うのが目的ではなく、狙いは決定木(Decision Tree)を描いて将来の期待値を求めることでしょう。今回もおなじみの「Poor Charlie's Almanack」の続きを引用します。過去記事では、前段にあたる文章をご紹介しています(「世の中の働きと驚くほど一致する」「慣れるように習え、そして慣れよ」)。(日本語は拙訳)

十分というには程遠いですが、多くの教育機関はこのこと[順列や組み合わせの重要性]を認識しています。例えばハーバードのビジネス・スクールでは、初年度のクラスの結束を強める上で、彼らが言うところの「決定木理論」が大きな役割を果たしています。何をやるかと言うと、高校で習う代数を実生活上の問題に適用してみる、これだけです。学生にはこれが好評で、高校時代の数学がふだんの暮らしに役立つんだと感激するわけです。

バフェットとはずっといっしょに働いてきましたが、彼のような同僚がいることの強みはいくつかあって、彼は何かを考えはじめると頭の中で反射的に、順列や組み合わせのような初歩的な計算を行って決定木を作ってしまうのも、そのひとつです。

Many educational institutions ? although not nearly enough ? have realized this. At Harvard Business School, the great quantitative thing that bonds the first-year class together is what they call “decision tree theory.” All they do is take high school algebra and apply it to real life problems. And the students love it. They're amazed to find that high school algebra works in life.

One of the advantages of a fellow like Buffett, whom I've worked with all these years, is that he automatically thinks in terms of decision trees and the elementary math of permutations and combinations.


個人的な話ですが、サイコロやトランプといった抽象度の高い事象には、順列や組み合わせといったモデルは、わりと違和感なく適用できるものです。一方、企業の見通しとなると想像力も洞察力も足りず、頭に思い浮かぶのは、ぱっとしないモデルばかりです。実践の回数を意識的に増やさないと、力が伸びないのでしょうね。