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2020年2月24日月曜日

2019年度バフェットからの手紙(1)内部留保について

バークシャー・ハサウェイのウォーレン・バフェットが、2/22(土)付けで2019年度の「バフェットからの手紙」を公開しています。ページ数は13ページと、前年度よりも1ページ減りました(実際の減り分は半ページ弱)。まだ全部は読んでいないのですが、一般向けとして読める話題から順に、拙訳付きで取りあげたいと思います。

SHAREHOLDER LETTER 2019 [PDF] (Berkshire Hathaway)


株主のみなさんには「営業損益のほうを注視していただきたい」とチャーリー[・マンガー]共々申し上げておきます。2019年度のこの数字は、[前年比で]ほぼ変化しませんでした。一方で投資損益のほうは、実現か未実現かを問わず、四半期及び年次のどちらも無視していただきたいと思います。

しかし、わたしたちがそのように促したからと言って、バークシャーが実行してきた諸々の投資の重要性を損なうものでは、まったくありません。「当社が保有する株式を全体としてみたときには、大きな利益をもたらしてほしい」と、チャーリーもわたしも考えつづけてきました。それが予想不能であると同時に、はなはだしく不規則な形でもたらされるとしてもです。なぜわたしどもがこの件を楽観視しているのか、以下の文章でその理由に触れてみましょう。

内部留保(留保利益)の持つ威力

1924年のことでした。まだ無名だった経済学者かつファイナンシャル・アドバイザーのエドガー・ローレンス・スミス氏が、薄い1冊の本『長期投資先としての普通株式(原題: Common Stocks as Long Term Investments、未訳)』を上梓しました。そして、この本が投資の世界を一変させることになりました。しかし本を書いたことで、実のところスミス氏自身が変化を遂げました。みずからが抱いていた投資に対する信念を見直さざるを得なくなったのです。

彼は執筆を進める間に、「インフレが継続する期間には株式が債券よりも良い成果をあげ、反対にデフレの期間には債券のほうがすぐれた成果をあげる」と論述するつもりでした。まずまず納得のいく説でしたでしょう。しかしスミス氏は予想外の結論を出すことになりました。

それゆえに彼は、本の書きだしで次のように打ち明けています。「本研究では、とある失敗を報告した次第である。それは、正しいと信じられてきた理論を維持しようとする諸事実があやまっていることを、報告するものである」。その失敗によってスミス氏は、株式をどのように評価すべきかをいっそう深く考えるようになりました。これは、ほかの投資家諸氏にとって幸運なことでした。

ここで、彼の本を初期に論評した人物の文章を引用することで、スミス氏が得た識見のかなめが何かを示したいと思います。かの高名なる人物、ジョン・メイナード・ケインズの言葉です。「スミス氏が示したもの、それはおそらくもっとも重要で、あきらかにもっとも革新的な点だが、それが何たるかを私はすっかり見逃していた。うまく経営されている企業では概して、利益のすべては株主へ還元しない。好調な期間には、もしそれが全期間でなければ、企業は利益の一部を留保し、事業へ投下しなおす。それがために、事業上の手堅い投資として運用される好条件のもとで、複利分が発生する。つまり株主へ支払われる配当金とは別に、良好な企業における保有資産の真なる価値は、時を経るにつれて複利で増加していくのだ」

そのように聖水を振りかけられたスミス氏は、一躍有名になりました。

「スミス氏の本が出版される以前の投資家が、内部留保を適切に評価できなかった理由」は、何とも理解しづらいものです。結局のところ、カーネギーやロックフェラーやフォードといった巨人が驚くほどの巨富を初期の段階で築きあげたことに、秘密などなかったのです。彼らはだれしもが、事業からあげた利益の大部分を留保して成長への原資としたことで、ますます利益を増大させました。米国全体でみても、おなじ段取りにしたがって裕福になった小型の資本家たちが、昔からいたものでした。

それにもかかわらず、事業の所有権が小さな断片たる「株式」へ細分化されてしまうと、スミス以前の時代にいた買い手たちは、手にした持分を「市場動向に左右される短期的なギャンブル」ととらえるのが普通でした。せいぜい「投機」とみなされるのが関の山でした。紳士たる者は債券を選好していたのです。

投資家の学ぶ速度はゆっくりとしたものでしたが、利益を留保して再投資することの勘定は、今ではよく理解されるようになりました。今日では学校に通う子供たちも、ケインズが「革新的」と銘打ったことを学んでいます。つまり、「貯蓄を複利で働かせると、驚くべき成果が得られる」ことをです。(PDFファイル2ページ目)

Charlie and I urge you to focus on operating earnings - which were little changed in 2019 - and to ignore both quarterly and annual gains or losses from investments, whether these are realized or unrealized.

Our advising that in no way diminishes the importance of these investments to Berkshire. Over time, Charlie and I expect our equity holdings - as a group - to deliver major gains, albeit in an unpredictable and highly irregular manner. To see why we are optimistic, move on to the next discussion.

The Power of Retained Earnings

In 1924, Edgar Lawrence Smith, an obscure economist and financial advisor, wrote Common Stocks as Long Term Investments, a slim book that changed the investment world. Indeed, writing the book changed Smith himself, forcing him to reassess his own investment beliefs.

Going in, he planned to argue that stocks would perform better than bonds during inflationary periods and that bonds would deliver superior returns during deflationary times. That seemed sensible enough. But Smith was in for a shock.

His book began, therefore, with a confession: “These studies are the record of a failure - the failure of facts to sustain a preconceived theory.” Luckily for investors, that failure led Smith to think more deeply about how stocks should be evaluated.

For the crux of Smith’s insight, I will quote an early reviewer of his book, none other than John Maynard Keynes: “I have kept until last what is perhaps Mr. Smith’s most important, and is certainly his most novel, point. Well-managed industrial companies do not, as a rule, distribute to the shareholders the whole of their earned profits. In good years, if not in all years, they retain a part of their profits and put them back into the business. Thus there is an element of compound interest (Keynes’ italics) operating in favour of a sound industrial investment. Over a period of years, the real value of the property of a sound industrial is increasing at compound interest, quite apart from the dividends paid out to the shareholders.”

And with that sprinkling of holy water, Smith was no longer obscure.

It’s difficult to understand why retained earnings were unappreciated by investors before Smith’s book was published. After all, it was no secret that mind-boggling wealth had earlier been amassed by such titans as Carnegie, Rockefeller and Ford, all of whom had retained a huge portion of their business earnings to fund growth and produce ever-greater profits. Throughout America, also, there had long been small-time capitalists who became rich following the same playbook.

Nevertheless, when business ownership was sliced into small pieces - “stocks” - buyers in the pre-Smith years usually thought of their shares as a short-term gamble on market movements. Even at their best, stocks were considered speculations. Gentlemen preferred bonds.

Though investors were slow to wise up, the math of retaining and reinvesting earnings is now well understood. Today, school children learn what Keynes termed “novel”: combining savings with compound interest works wonders.

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