企業分割に関する話題から離れる前に、前述したコングロマリットの件で得られた教訓に触れておきます。ここでは概要だけを示しますが、よく書けた金融関連の話を好んで読む人は、Dマガジンの1982年10月号に掲載されたジミー・リング氏に関する文章を読むといいでしょう。インターネットで探してみてください。
リングはさまざまな企業版奇術を講じたことで、1965年の年商が3,600万ドルにすぎなかったLTV社を、わずか2年間でフォーチュン500の14位にまで持っていきました。ここで断っておきますが、それまでのリングは経営面でいかなる才能もみせたことがなかったのです。しかし、ずいぶん昔にチャーリーがこう教えてくれました。「自分を過大評価する人間を過小評価してはならない」と。その点でリングに並ぶ者はいませんでした。
みずからは「再配置プロジェクト」と称していたリングの戦略は、買収した大企業をさまざまな事業に分離することでした。1966年のLTV社の年次報告書によれば、彼はこの魔法を次のように説明しています。「買収にあたってもっとも重要な点は、次の公式『2 + 2 = 5 (あるいは6)』に合格しなければならないことです」。報道や大衆そしてウォール街も、その種の話には夢中になりました。
1967年に、リングはウィルソン&カンパニーを買収しました。巨大な精肉業者だった同社は、ゴルフ器具や医薬品も手がけていました。その後まもなく、彼は買収した企業を3つの事業へと分割し、別会社として本体から切り離しました。精肉業のウィルソン&カンパニー、ウィルソン・スポーツ・グッズ社、ウィルソン・フォーマシューティカルズ社です。ウォール街はそれら各社をすぐにこう呼ぶようになりました。ミートボール、ゴルフボール、グーフボール[睡眠薬・鎮静薬の俗称]と。
それからまもなく、リングはイカルスと同様に太陽の近くまで飛びすぎたことが明らかになりました。1970年代の早い時期に、リングの帝国が溶け始めたのです。そして彼自身もLTV社から切り離されました。つまりクビです。
金融市場は周期的に現実と縁を切るものです。それは請け合います。いつの日か次のジミー・リングが現われて、その厳かな姿から重々しい言葉が語られるでしょう。報道は彼らの言葉すべてに耳を傾け、銀行家は彼らのために戦うことでしょう。彼らの言うことは間を置かずして「うまくいった」と結ばれ、当初からの信者は「自分はなんと賢明だったのか」と感じるでしょう。ここでわたしどもから助言があります。彼らの商売が何であろうと、いつでも「2 + 2 = 4」であることを忘れてはなりません。「そのような計算はいかにも古めかしい」とたしなめる人がいたら、財布のひもをしっかり締めて休暇をとってください。そして数年経ってから戻ってきてください。安い値段で株が買えます。
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今日のバークシャーは次のものを有しています。第一が並ぶもののない事業群で、そのほとんどは好ましい経済的見通しを享受しています。第二が傑出した経営者陣で、彼らはほぼ例外なく、みずからの運営する子会社やバークシャーに対して他ではみられないほど身を捧げています。第三は、利益の基盤が非常に多岐にわたり、飛び抜けた財務力を持ち、満々と湛えた流動性を確保していることです。それらによって、当社はいかなる環境下でもやっていけると思います。四番目は、事業売却を熟慮する事業所有者や経営者にとって、売却先の筆頭にあげられていること。そして五番目が文化です。これは前述の要素と関連しますが、ほとんどの大企業でみられるさまざまなやりかたと異なるものです。これは50年間にわたって築いてきたもので、今では堅牢強固なものとなりました。
そしてそれらの強みが、わたしたちが事業を発展させる際のすばらしい礎となってくれるのです。
Before I depart the subject of spin-offs, let's look at a lesson to be learned from a conglomerate mentioned earlier: LTV. I'll summarize here, but those who enjoy a good financial story should read the piece about Jimmy Ling that ran in the October 1982 issue of D Magazine. Look it up on the Internet.
Through a lot of corporate razzle-dazzle, Ling had taken LTV from sales of only $36 million in 1965 to number 14 on the Fortune 500 list just two years later. Ling, it should be noted, had never displayed any managerial skills. But Charlie told me long ago to never underestimate the man who overestimates himself. And Ling had no peer in that respect.
Ling's strategy, which he labeled "project redeployment," was to buy a large company and then partially spin off its various divisions. In LTV's 1966 annual report, he explained the magic that would follow: "Most importantly, acquisitions must meet the test of the 2 plus 2 equals 5 (or 6) formula." The press, the public and Wall Street loved this sort of talk.
In 1967 Ling bought Wilson & Co., a huge meatpacker that also had interests in golf equipment and pharmaceuticals. Soon after, he split the parent into three businesses, Wilson & Co. (meatpacking), Wilson Sporting Goods and Wilson Pharmaceuticals, each of which was to be partially spun off. These companies quickly became known on Wall Street as Meatball, Golf Ball and Goof Ball.
Soon thereafter, it became clear that, like Icarus, Ling had flown too close to the sun. By the early 1970s, Ling's empire was melting, and he himself had been spun off from LTV . . . that is, fired.
Periodically, financial markets will become divorced from reality - you can count on that. More Jimmy Lings will appear. They will look and sound authoritative. The press will hang on their every word. Bankers will fight for their business. What they are saying will recently have "worked." Their early followers will be feeling very clever. Our suggestion: Whatever their line, never forget that 2+2 will always equal 4. And when someone tells you how old-fashioned that math is --- zip up your wallet, take a vacation and come back in a few years to buy stocks at cheap prices.
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Today Berkshire possesses (1) an unmatched collection of businesses, most of them now enjoying favorable economic prospects; (2) a cadre of outstanding managers who, with few exceptions, are unusually devoted to both the subsidiary they operate and to Berkshire; (3) an extraordinary diversity of earnings, premier financial strength and oceans of liquidity that we will maintain under all circumstances; (4) a first-choice ranking among many owners and managers who are contemplating sale of their businesses and (5) in a point related to the preceding item, a culture, distinctive in many ways from that of most large companies, that we have worked 50 years to develop and that is now rock-solid.
These strengths provide us a wonderful foundation on which to build.
2015年3月16日月曜日
2014年度バフェットからの手紙(11)空高く飛びすぎた者のさだめ
ウォーレン・バフェットによる2014年度「バフェットからの手紙」の「第2部バークシャー現在編」は、今回でおわりです。これまでの11回分で、ウォーレンが書いた「第2部バークシャー・ハサウェイの過去・現在・未来」を網羅しています。なお前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
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