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2013年11月18日月曜日

ヤクトマン・ファンドの投資方針

少し前の投稿で引用した文章に、ファンド・マネージャーのドナルド・ヤクトマンが短期的な成績を追わず、現金比率を上げている旨の一節がありました(過去記事)。彼の今年の成績を確認してみると、年初来の成績はS&P500を若干下回っています。また昨年2012年も5%ほど差をつけられていました(ファンドの成績資料PDFファイル)。もちろん現在の彼の動きは長期的な観点によるものであり、はたからそれを観察できるのは個人的には勉強になります。

今回引用するのは、ヤクトマン・ファンドのWebサイトに掲載されているファンドの紹介文です。ウォーレン・バフェットの説明する内容とよく似ていますが(過去記事など)、もう少し具体的な表現に踏み込んだものもあります。(日本語は拙訳)

Managers Investment Group: Yacktman Fund - Overview

<ファンドの狙い>

ヤクトマン・ファンドが主眼とするのは、長期でみたときの資産形成です。そのうえで、現在における収入も副次的な目標としています。当ファンドでは主に米国企業の普通株に投資しますが、多くの銘柄には分散させません。対象企業の規模は問いません。配当金の支払い状況は考慮しますが、必ずしも必須ではありません。[当ファンド]ヤクトマンは規律に基づいた投資戦略に従い、割安と考えられる価格で成長企業を購入します。この方針こそ、「成長株投資」と「バリュー株投資」の最良の特徴を合わせたものとヤクトマンは信じております。株式を購入する際には、次の3つの属性のうち1つ以上を有していると確信できる企業を追求します。その属性とは、第一に優れたビジネスであること、第二に株主本位の経営がされていること、第三が安値で購入できることです。

<優れたビジネスについて>

優れたビジネスは、以下の項目の1つ以上が該当することがあります。

・主力の製品群あるいはサービス群のマーケットシェアが高いこと。
・対有形資産比でのキャッシュ・リターン率が高いこと。
・相対的に少ない設備投資で、成長し続けながらもキャッシュを創出できること。
・顧客の購買頻度が高く、製品ライフサイクルが長いこと。
・独自のフランチャイズを有していること。

<株主本位の経営について>

株主本位の経営者であれば、過大な報酬をみずからに支払うことなく、会社が稼いだ金の使途を賢明に決めるものとヤクトマンは信じています。ヤクトマンが追い求めるのは次のような企業です。

・事業に再投資し、かつ余剰資金をうみだせる企業
・相乗効果のある買収をおこなう企業
・自己株式を買い戻す企業

<安い購入価格について>

ヤクトマンがさがす株式とは、投資家が企業全体を買う際に支払ってもよいと考える金額よりも安く売られているものです。

個々の企業の株価は短期間で大きく変動することがあります。そのような価格変動は企業の本質的な業績の変化と必ずしも連動するわけではありません。よってヤクトマンは通常、購入すべき機会を好んで待つことにしています。そのような機会は市場全体の価格動向と関係なしに出現することがあります。

Fund Focus

The Yacktman Focused Fund seeks long-term capital appreciation, and, to a lesser extent, current income. The Fund is non-diversified and mainly invests in common stocks of United States companies of any size, some, but not all of which, pay dividends. Yacktman employs a disciplined investment strategy, buying growth companies at what it believes to be low prices. Yacktman believes this approach combines the best features of "growth" and "value" investing. When they purchase stocks they generally search for companies they believe to possess one or more of the following three attributes: (1) good business; (2) shareholder-oriented management; or (3) low purchase price.

Good Business

A good business may contain one or more of the following:

High market share in principal product and/or service lines;
A high cash return on tangible assets;
Relatively low capital requirements allowing a business to generate cash while growing;
Short customer repurchase cycles and long product cycles; and
Unique franchise characteristics.

Shareholder-Oriented Management

Yacktman believes a shareholder-oriented management does not overcompensate itself and wisely allocates the cash the company generates. Yacktman looks for companies that:

Reinvest in the business and still have excess cash;
Make synergistic acquisitions; and
Buy back stock.

Low Purchase Price

Yacktman looks for a stock that sells for less than what an investor would pay to buy the whole company.

The stock prices of individual companies can vary significantly over short periods of time, and such price movements are not always correlated with changes in company fundamental performance. Accordingly, Yacktman generally prefers to wait for buying opportunities. Such opportunities do not always occur in correlation with overall market performance trends.


(追記2013/11/19) 「ウォーレン・バフェットの説明する内容とよく似ている」と書きましたが、通りがかりさんからコメントでご指摘頂いたように、「似ている点はあるが、ちがいもある」といった表現のほうが適切でした。


6 件のコメント:

ブロンコ さんのコメント...

== ヤクトマン ==
先々週のバロンズにヤクトマンのインタビューが掲載されていましたので注意深く何度も読み返しました。2013年第3四半期に新規購入した21世紀フォックスが最大保有銘柄になっているのも非常に興味深いです。

通りがかり さんのコメント...

== No title ==
さらっと読んで、疑問に思ったことが2つ
買収先が株主本位の経営を行っていなくてもいいのか
自社株買いは安い購入価格でなくてもよいのか
詳しく読むと
「3つの属性のうち1つ以上」とありますね
バフェットはすべてを確信できなければ、買わないでしょう

betseldom さんのコメント...

== 21世紀フォックス(ブロンコさんへ) ==
ブロンコさん、こんにちは。コメントをいつもありがとうございます。
バロンズのヤクトマンの記事は見出しをどこかでみかけた記憶があるのですが、別の記事ヤルデニの「メルトアップ」のほうを読んでしまいました。21世紀フォックスの件は彼の3Qのレポートで少し読みました。「cable content valueが2010年とくらべて大幅に増加した」とのくだりが印象に残っていました。このような企業もブロンコさんらしい銘柄ですね。
またよろしくお願いします。
それでは失礼致します。

betseldom さんのコメント...

== 通りがかりさんへ ==
通りがかりさん、こんにちは。
分析的で貴重なコメントをありがとうございました。
「さらっと読んで、疑問に思ったことが2つ」とありますが、ヤクトマンの説明自体が要点だけなので、細かな方針は彼の実績なり、レターなりを検証しなければ確認できないと思います。ただひとつ実例で言えるのは、彼のファンドが保有しているマイクロソフト(MSFT)をわたしも保有している件です。同社は買収で失敗することはよくありますし、また自社株買いが上手だとも思えません。それでもビジネス自体が有する特性と時価をくらべた結果、リスク対リターンで妙味があると考え、マイナス面も承知の上で投資に踏み切ったものととらえています。
「バフェットはすべてを確信できなければ、買わないでしょう」とありますが、彼のフィルター方式による投資基準をふりかえれば、おっしゃるとおりだと思います(ただし最近のバークシャーの余剰資金額を考えると、購入株価の割安度の面ではハードルが下がっているようですが)。しかし投資方針とは個々の人間とその包括的状況によって異なりうる、と個人的には考えています。そのような発言はマイケル・バーリがしていましたし、バークシャー内部でもウォーレンから絶賛されていたルー・シンプソンは彼とは別の投資方針をいだいていました。それぞれの人がそれぞれのニッチの投資機会をものにできるところが、投資ひいてはビジネスという生態系のありがたい性質だと感じています。
またよろしくお願いします。
それでは失礼致します。

通りがかり さんのコメント...

== No title ==
返信ありがとうございます
誤解させてしまったようで、すみません
バフェット以外の手法は駄目というつもりはありませんでした
自分が株を買う時の条件を
自分の代理人である会社経営者が株を買う時にも
満たしている必要があるという考え方を
私が勝手にしていただけです
投資やビジネス、あるいは社会全体でも
多様性がある事は重要ですね

betseldom さんのコメント...

== 通りがかりさんへ(2) ==
通りがかりさん、こんにちは。
たびたびのコメントをありがとうございました。
こちらこそ、文意を誤解してしまい、もうしわけございませんでした。
投稿した後になって、わたしのほうが誤解していると思い直したのですが
いったん公開された文章なので、自分の至らぬさを振り返れるようにと
あえてそのまま残してあります。
「自分の代理人である会社経営者が、株を買う時にも満たしている必要がある」と
されていますが、これは厳格な投資基準で見習うところが大きいと感じました。
このような厳しい見解をご披露頂けるのは、個人的には貴重な機会だととらえています。
どうもありがとうございます。なお、わたしの投資先にそのような企業があるかと
問われれば、自信をもってそうだと言えるのは残念ながら1社だけです。
バークシャー・ハサウェイです。
またよろしくお願いします。
失礼致します。