ベンジャミン・グレアムの会社をやめてから、ウォルター・シュロスは自分のファンドを立ち上げました。1955年のことです。ウォーレンが同氏を「大投資家」と紹介した講演資料に彼の成績を残しているので、グラフの形で以下にご紹介します。なお、Y軸の目盛は対数表示です。
青線がシュロスのパートナーシップの成績です。シュロスへの報酬をひいた後の金額です。当初元本が28年間で67倍になっています。赤線はS&P(500?)の配当込みのリターンですが、こちらは12倍弱にとどまっています。インフレによってドルは1/3程度に減価しているので額面どおりには受け取れないのですが、1975年以降の成績はあざやかです。1973年から1974年の厳しい下げの時期も、年率1ケタ台の減少で乗り切っています。
もう一つ引用があります。こちらはウォーレン・バフェットの2006年度「バークシャーの株主のみなさんへ」からで、同氏を取り上げた一節です。(日本語は拙訳)
ウォルターはビジネススクールだけでなく、大学にも行きませんでした。1956年当時、彼の事務所にはファイル・キャビネットが1本あるだけでした。2002年までには、それが4本に増えました。ウォルターは、秘書や事務員、会計係を雇いませんでした。ただ、息子のエドウィンとだけ、仕事に勤しみました。エドウィンはノースカロライナ芸術学校の卒業生です。ウォルターとエドウィンは、インサイダー情報には一切近寄りませんでした。彼らが手にしたのは公開された情報だけで乏しいものでしたが、ウォルターがベン・グレアムのもとで働いていた頃に学んだ簡単な統計手法を使って株式を選び出しました。ウォルターとエドウィンは、1989年にOutstanding Investors Digest[バリュー投資家に好評のインタビュー誌]のインタビューで、こう聞かれています。「おふたりのやりかたを一言でいうと、どうなりますか」。エドウィンの答えは「株を安く買うようにつとめています」。モダンポートフォリオ理論、テクニカル分析、マクロ経済の見解、複雑なアルゴリズム。そういうのはお呼びじゃなかったのです。
Walter did not go to business school, or for that matter, college. His office contained one file cabinet in 1956; the number mushroomed to four by 2002. Walter worked without a secretary, clerk or bookkeeper, his only associate being his son, Edwin, a graduate of the North Carolina School of the Arts. Walter and Edwin never came within a mile of inside information. Indeed, they used “outside” information only sparingly, generally selecting securities by certain simple statistical methods Walter learned while working for Ben Graham. When Walter and Edwin were asked in 1989 by Outstanding Investors Digest, “How would you summarize your approach?” Edwin replied, “We try to buy stocks cheap.” So much for Modern Portfolio Theory, technical analysis, macroeconomic thoughts and complex algorithms.
(p.21)
ウォルター・シュロスが残してくれた投資家へのメッセージ「株式投資で利益をあげるのに必要な16の要因」、ご興味を持たれた方はごらんになってください。
4 件のコメント:
== はじめまして ==
はじめまして。isと申します。
こんな素晴らしいブログを見逃していたなんて。。
シュロスが亡くなっていたのですか、、
かなりショックですね。
シュロスは日本株にもシケモク投資していたみたいです
ここ最近のシケモク株の上昇がシュロスの追悼の様に思います。
私もバリュー投資狂ですので是非おじゃまさせて下さい。
== isさん、はじめまして ==
お読み頂きまして、どうもありがとうございます。
isさんのような方に、少しでもお役に立てればうれしいばかりです。
シュロス氏の件は残念でしたね。たしかに高齢でしたが、ずっと長生きするような佇まいでしたので、虚をつかれました。彼のまわりには偉大な投資家がいますが、逆に地に足のついた彼のような存在ほど、我々には励まされるような気がします。
isさんのバリュー投資は相当なものとお見受けします。よいアイデアがありましたら、ぜひ教えてください。微力ながら、私も話題を提供するように致します。
それでは、これからもよろしくお願いします。
== No title ==
今日は午前中より、betseldomさんのサイトに釘付けです!笑
ほんとなんで発見できなかったのか・・素晴らしすぎで、
記事により何回も見てしまいます。
シュロスですが、投資を始めた当初が10万ドル(8000万円)とのことでしたが、
確か1955年?現在の日本円価値としてどのくらいだったんでしょうかね?
??~3億円位だったのでしょうか?
それでもやはりインセンティブだけを考えるとかなり少ないかもしれませんよね。
私はほんとまだまだ弱小物ですのであまりご期待に添えないかもしれません。
個人的には恐らくマンガーの投資手法に似ている気がします。
今は小型割安株に資金がぐっと入ってきている気配ですね。
一次、金融、不動産などが長期で売り込まれていてその反動が相場を
押し上げた時がありましたが、それに似た感じになるのではないかと思っています。
個人的には不動産株(マンデベ)に力を入れています。
一時期に不動産系の会社が潰れまくった後遺症から異様に割安と思える株がありました。
??投資している会社には今期・来期と販売戸数ベースで計画・進捗の把握を心がけています)
最近はそれなりに戻して安全域が減っている感じがしますね。
ただ、これも出口を探りながらの投資ですので永久保有ではないですが。。
それでは、長文失礼しました。
== isさん、返信ありがとうございます ==
早々にご返信頂きまして、ありがとうございました。
様々な先達の言行をご紹介していますが、特にチャーリー・マンガーの文章は秀逸ですよね。isさんや折に触れてコメント頂くraccoonさんが日本にいることを、彼にも知ってもらいたいものです。
さて、シュロス氏の10万ドルの件ですが、当時のドルは現在の8倍の価値と捉えています。例えば、以下のサイトをご覧ください。現在の円に換算すると、10万USD * 8 * 100円/USD = 8,000万円となります。ウォーレンの感じたとおり、ちょっと心配になる金額です。
Historical Value of U.S. Dollar (Estimated)
http://mykindred.com/cloud/TX/Documents/dollar/
シュロス氏のインセンティブは、ウォーレン・バフェットの資料によればゲイン分の25%のような感じです。最近はマンハッタンに住んでいたようですが、当時はどうだったのでしょうか。たとえばブルックリンあたりは家賃が安かったのでしょうか。
isさんは不動産がお得意ということで、今後は是非いろいろと教えて頂ければと存じます。四季報を読んでも1000番台にはあまり近寄らなかったので、よき先生に教えを伺えればと考えておりました。そういえば、チャーリー・マンガーも初期の頃は不動産で財をなしていますね。isさんの投資手法をうかがえる日を楽しみにしております。
度々のコメントをありがとうございました。
それでは失礼します。
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