調査の対象は戦闘から帰還した機体に限られているので、攻撃を受けた戦闘機の一部しか見ていないのだ。さらに重大な問題は、実は調査されていない戦闘機の方が重要なサンプルだということだ。補強が必要な箇所を特定するには、基地に戻れないほど致命的な損傷を受けた戦闘機を調査しなければならない。
これは選択バイアスの典型的な例だ。一部のデータにのみ着目したことで誤った結論を導いている。 (p.76)
正解された方が多いと思いますが、いかがでしたでしょうか。このように文書にまとめて改まった形で問題が提起されると、人は冷静に解決できるように思います。どこかのスイッチが入ってモードが切りかわり、バイアスがかからないよう注意するのでしょうか。一方、自分だけなのかもしれませんが、実生活で短時間で判断を迫られる場合には、問題解決がずっと下手になります。あとになってじっくり考えるとアイデアがわくのに、その場では出てこない。チャーリー・マンガーのいう「人は速やかに疑念を払う」を地でいっています。
本書に戻りますと、著者のジェフリー・マーは、バイアスを起こさないためにデータ収集の指針を記しています。以下に引用します。
軍関係者が帰還した戦闘機だけでなくすべての戦闘機を調査していたなら、機体の補強すべき部分についてかなり異なった結論に至っただろう。確証バイアス[参考記事1,参考記事2]と選択バイアスの具体例は、過去のデータを漫然と眺めるだけではいけないことを教えてくれる。肝心なのは過去のすべてのデータに目を配ることだ。もちろん、データとして適切なサンプルを選び出すことも重要である。
では、データが適切であるという確信を得るにはどうすればよいか。一言で言えば、データを見るときは一部ではなく、必ず全体を見よということだ。
(中略)
それでは、データ収集においてよく見られる失敗を避けるため、いくつかのルールを設けよう。まずは、これまでに述べたバイアスを回避するにはどうすべきか。確証バイアスを回避するには、自説を裏付けるデータだけでなく、あらゆるデータを客観的に検討することが重要だ。選択バイアスを避けるには、包括的なデータを揃える必要がある。意識的であろうとなかろうと、抽出されるデータは母集団の一部を無視したものであってはならない。どちらのバイアスについても、原則は可能なかぎり多くのデータを検討することだ。
だが、ここで興味深い問題が生じる。データの重みは一律ではないということだ。データには、それ自体は客観的かつ包括的であるのに、将来を予測する力をほとんど持たないものもある。そして、将来を予測する力こそが私たちがデータに期待する最も重要な特徴だ。データは将来の予測に役立つものでなくてはならない。 (p.77)
ただし、いかによいデータがそろっていても解釈するのは人間ですから、データ収集プロセスだけではバイアスを完全には回避できないと思います。意思決定の際にもバイアス回避の仕組みが必要ですね。
(2012/2/26追記)コメント欄に、raccoon様よりマンガーの「まるごと抜粋」があります。そちらも、どうぞご覧になってください。
5 件のコメント:
== 訂正させてもらいます ==
本は手当たり次第に読んでも意味がないとマンガーは警告する。「なぜその情報が必要なのか、目的意識を持たなければなりません。年次報告書を読むのであれば、フランシス・ベーコンが提唱した科学の方法をとっていてはダメ。終わりのないデータを単に収集して、後からその意味を理解しようとすることになるからね。現実に関する概念を身に付けてから始めなければいけない。そして、今、自分の見ているものが、すでに証明された基本的概念に適合するかどうかを、見極めなければならないのです」
と、まるまる抜粋しちゃいましたけれど、ほとんど勘違いで覚えてましたね・・・。
== 目の前の現実に即したものに集中するべき、ですか ==
raccoonさん、こんにちは。ご指摘ありがとうございます。彼はデータ収集に関しても集中派ということですね。本質に迫れるだけの慧眼を持てるようになりたいものです。
== No title ==
投資参謀マンガーからの引用で気に入った文などに線を引いたりそれを暗記したりしてるんですが、間違って暗記してる可能性があるので後日訂正させてください><
== フォローありがとうございます ==
いつもお世話になります。よろしくお願いします。
== raccoonさん、ありがとうございました ==
まるまる抜粋して頂き、恐縮です。どうもありがとうございます。
コメントを投稿