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2013年10月2日水曜日

ある投資家が描くチャーリー・マンガー像(4)

前回からのつづきの話題です。今回が最終回です。(日本語は拙訳)

なぜポートフォリオの投資先を非常に集中させているのだろうか。たとえば33銘柄に等しく配分しているポートフォリオを考えてみよう(各社に3%ずつ)。ミューチュアル・ファンド[=投資信託]であれば、これは「集中」と言えるだろう。たしか[ロバート・]ハグストロームは、フォーカス・ファンドにおいて20から25銘柄を保有している。これだと1社が消えたとしても、ポートフォリオ全体に与える影響は軽微にとどまる。その点から、何千億円もの資金を投じるバフェットがなぜ株式市場から遠ざかったのか、はっきりする。本当に気に入った会社をそれなりの規模で買い込もうとすると、15%保有の制限に達してしまうからだ。買いの決断を20件や30件も下す場合、それらが正しい上に、ポートフォリオ全体に重大な影響を与えるほどになる確率は、いったいどれぐらいなのだろうか。ポートフォリオのわずか3-5%を占めるために、何ヶ月あるいは何年も時間を費やして企業を研究しなければならないのか。バフェットのように重荷を背負っていないという点で、我々は幸せだ。マンガー方式のやり方にしたがい、抜きんでたビジネスをいずれは3つから8つほど集められれば、それぞれが変動する中でポートフォリオ全体へ大きな影響をもたらしてくれるだろう。もちろんここで肝心なのは誤った判断を下さないことで、だからこそ「確実性という点に重きをおく」のだ。バフェットやマンガーが有名になったいきさつを考えれば、たしかに初期のころは安値買いだったが、やがては安定的かつ一貫して支配的なフランチャイズ、つまり独自の競争優位をもった企業を購入するようになったことが、まっさきに思い浮かぶ。バフェットはコークという支配的なフランチャイズを買い込み、当初はポートフォリオ全体の35%を占めるほどだった。このような行動がどんな結果となったかは周知のとおりで、10年間でバークシャーはずっと上昇した。同様に、サラダオイルのスキャンダルのさなかにアメリカン・エキスプレスへ40%投資したことが、ポートフォリオを押し上げてくれた(運用方針から外れることを許可してもらったとどこかで読んだが、忘れてしまった。たぶんOID誌だと思う)。それらの2件はバフェットが(マンガー式のやり方で)下した10ほどの決断に含まれるもので、まさに彼の投資人生を決定づけた。決断を挙げていくと、最初が60年代の株価上昇期にパートナーシップを解散して、バークシャー・ハサウェイ一本にしたこと。2番目がサラダ事件当時にアメックスへ投資したこと。3番目がワシントン・ポスト社、4番目がコカ・コーラ、5番目がGEICO[ガイコ]、6番目がGeneral Re[再保険会社]。その6つの決定をのぞいたら、バークシャーには何が残っているだろうか。

マンガーの重要な点は「備えておくこと」で、残念ながらそれは投資における魔法の公式から導き出せるものではないと思う。彼がそのような式を持ちだして自分の世界へ当てはめているとは、とても想像できない。投資におけるマンガーの本質とは、何をしないかを定め、残ったものに対して徹底した学際的やりかたで取り組み、そして機会があらわれたその瞬間をつかみとることだ。私はそう考えている。(おわり)

Why a very concentrated portfolio? Think for a moment what it means to have a portfolio of say 33 stocks equally distributed (3% weighting for each company). Such a portfolio would be "focused" for a mutual fund. Hagstrom I believe owns from twenty to twenty-five in his focus fund. Even if one of those companies hits the lights out its impact on the overall portfolio would be minimal. In this light, with billions to deploy, it's obvious to see why Buffett has moved away from the equity markets. He just can't load up on a company he really likes in any meaningful way without hitting the 15% ownership threshold. What are the chances of making twenty or thirty purchase decisions and having those decisions first be correct and second having them result in significant impact to the overall portfolio? Why spend months or years learning a company inside out only to make it a 3-5% portfolio weighting? We're fortunate in that we're not weighted down like Buffett is. If a Munger-like approach can manage over time to collect from three to eight superior businesses then the dynamics of each would have significant impact on the overall portfolio. Key to this of course is avoiding mistakes in judgement - therefore, "We place a high premium on certainty." Certainty I think comes first by paying a low price and then purchasing the stable, consistent dominant business franchises which have distinct competitive advantages and for which Buffett and Munger are famous. We have seen what happens when one can load up on a dominant franchise as Buffett did with Coke and initially make it 35% of the total portfolio - it drove Berkshire ever higher for a decade. Likewise, the 40% weighting to American Express in the salad scare days drove the portfolio (and yes I read somewhere that he had to get an exception to policy for this but I can't remember where! Perhaps OID). Those were two of the ten or so decisions which Buffett made (in a Munger like fashion) that really define his investment life - 1) Closing the partnership at market high in 60s and going with just Berkshire Hathaway; 2) AXP in salad scare days; 3) Washington Post; 4) Coca Cola; 5) Geico; 6) General Re. Remove those six decisions and what would Berkshire be today?

I think the key to Munger is the "prepared mind" which sorry to say can not be derived from some magic investment formula. I just can't imagine Munger applying some formula to his universe. I think that the essence of Munger the investor is defined by what not to do, followed by a thorough multi-disciplinary attack on what remains, and then seizing the moment when it appears.

6 件のコメント:

遠藤たつや さんのコメント...

== はじめまして! ==
はじめまして!
遠藤たつやと申します。(本名です)
25歳で山形県で仕事をしながら株式投資をしています。
当ブログではいつも貴重な情報をありがたく拝見させていただいています。
今回の記事はチャーリーマンガーの思考プロセスを分かりやすく表していますね。
心に残っているというのもわかる気がします。
私もウォーレンバフェット、チャーリーマンガーの投資プロセスを勉強しているのですが、2人の投資って一番合理的でかっこいい投資の仕方ですよね。
これからもブログの更新を楽しみにしています!

betseldom さんのコメント...

== たつやさんへ ==
たつやさん、こんにちは。コメントをありがとうございました。
以前にもご連絡いただいたかと存じますが、当方の勘ちがいかもしれません。
いずれにせよ、どうぞよろしくお願い申し上げます。
ブログを拝見しましたが、幅広い観点で投資を勉強なさっているようですね。500ページもの
本を読むには、わたしなら8時間ぐらいはかかります。本を読み方を研究するというのも
合理的な行動のひとつだと思います。
ウォーレンやチャーリーは、ビジネスの上で少なくとも公正であろうとしていますし、
社会に対して模範を示そうとしているようにみえます。彼らの頭脳や行動力や実績だけでなく、
そのような姿勢に基づいているからこそ、人を惹きつけるのだと感じています。
またよろしくお願いします。それでは失礼致します。

遠藤たつや さんのコメント...

== 失礼しました ==
返信ありがとうございます。
お察しの通り、以前にも「東北の投資家」というネームで連絡させていただいております。
お伝えせず大変失礼しました。

ブロンコ さんのコメント...

== 勉強になりました。 ==
マンガーやバフェット、ルー・シンプソンの投資理論や投資に対する心構えに賛同し集中投資を信条としていながらCOH,PM,MO,NVO,NKE,LMT,WU,NOV,POT,ROSTetc・・・と米国企業だけで15も保有し、日本企業を含めるその倍を保有している現状に自分の甘さを再認識しました。この甘さを克服するためにもさらなる鍛錬をと思った次第です。

betseldom さんのコメント...

== たつやさんへ(2) ==
たつやさん、やはりそうでしたか。読書家ぶりは以前にご連絡いただいたときと変わっていませんね。
ひと言だけの返信になりますが、これにて失礼します。

betseldom さんのコメント...

== ブロンコさんへ ==
ブロンコさん、こんにちは。
ブロンコさんほどではないですが、わたしもこの文章を再読して投資方針を見直す必要性を感じました。チャーリーが言っていた「機会費用」の考えを真剣にとらえなければ、と反省しています。同様に、個別銘柄ばかりをひたすら追いかけるのではなく、メンタル・モデルや逆から考えるなどのメンタル・アプローチを実際的に使いこなす訓練に時間を費やすべきとも感じています。
ところでご開陳いただいた保有銘柄は見事ですね。ブロンコさんらしさがみなぎっているようです。わたしは2004年頃にNVOを買おうかずいぶん迷ったのですが、結局手を出せませんでした。悔やまれる思い出です。
いつもコメントをどうもありがとうございます。それでは失礼します。