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2020年5月13日水曜日

2020年バークシャー株主総会(2)今ここにあるアメリカ

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バークシャー・ハサウェイの株主総会より、今回からとりあげる話題はウォーレン・バフェットが何度もあらわにしてきた「米国に対する想い」です。前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

<ウォーレン> それではここからは、基本的にはわたしに関わるちょっとした歴史話をご紹介したいと思います。もしも自分が産まれる年代や場所を好きに選べるとしたら、どうするでしょうか。ただし性別の指定はできず、頭の良さも選べないとします。また特別な能力や弱みの有無も選べません。そのような選択が1回できるとしたら、西暦1720年は選ばないでしょう。1820年も違いますし、1920年も選びません。選ぶ時代は「現在」で、選ぶ場所はアメリカでしょう。もちろんですがこの質問がおもしろいのは、1789年にアメリカが独立してジョージ・ワシントンが政府で宣誓をしてからこのかた、人々が「現在のここ」を選んできた点です。想像できますか。「現在のここ」を望む人たちが、231年間にわたって必ずいたのです。

みなさん、どうやら少々先走ってしまったようです。まずはこちらのスライドをお見せします。つづきのスライドは話が進んでから取り上げます。さて、この1枚目のスライドをみたときに、この国について目をひくのは何でしょうか。それは、きわめて若々しい国である点です。では、それなりに年を取った数名の人間と比較してみましょう。つまり、わたしとチャーリーの年齢や人生経験、さらにはここに列席している若きグレッグ・アベルの人生を合算してみます。すると、アメリカ合衆国建国以来の年数を超えることになります。つまり、この国はそれほどまでに若いわけです。しかし、この国の人たちが成し遂げてきたことは驚嘆に値します。歴史的にみると、この領域がどれだけわずかなものなのか、どうか考えてみてください。


(Warren Buffett 14:39)

I would like to take you through a little history to essentially my case that if you were to pick one time to be born and one place to be born, and you didn't know what your sex was going to be, you didn't know what your intelligence would be. You didn't know what your special talents or special deficiencies would be. That if you could do that one time, he would not pick 1720, you would not pick 1820, you would not pick 1920. You'd pick today, and you would pick America, and of course the interesting thing about it is that ever since America was organized in 1789 when George Washington took the oath of office, people have wanted to come here. Can you imagine that? For 231 years, there's always been people that have wanted to come here.

(Warren Buffett 15:52)

My friend, I think I just jumped the gun just a shade. I'm putting up slide on. But I'm going to call from some slides as we go along. But the interesting thing about this country is what is on slide one? Let's put it up. This is an extraordinarily young country. Now I'm comparing it to a couple of guys that are pretty old, but when you think about the fact that my age, Charlie's age, our life experience, and then we'll throw in this young guy over here, Greg Abel, and if our life experiences combined exceed the life of the United States, we are a very, very young country. But what we've accomplished is miraculous. Now just think of this. This little spot in history.

2020年5月12日火曜日

2020年バークシャー株主総会(1)チャーリー・マンガーのいない総会

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バークシャー・ハサウェイの株主総会が5月2日(土)に開催されました。例年とはちがって、今年は取締役会を中心とするメンバーのみが参加する次第となりました。また壇上に座る2名はウォーレン・バフェットと、事実上の後継者と思われる副会長のグレッグ・アベル(発音は"エイベル"に近い)でした。

総会の模様はYahoo Financeがストリーミング中継をしましたが、そのアーカイブ映像は以下の2つのサイトでも公開されています。今回からご紹介するシリーズでは、トランスクリプトが付けられている前者のサイトから原文を引用させていただきます。

Berkshire Hathaway Shareholder Event 2020 (rev.com) (トランスクリプト付き)

2020 Berkshire Hathaway Annual Meeting - Part 1 (CNBC) (映像拡大表示可)

総会全体の構成としては、前半にウォーレンから長いスピーチがあり、途中に公式の議事をはさんで、後半はいつものように株主から寄せられた質問に対して2名が見解を述べていました。まず今回は、前半冒頭部の話をご紹介します。(日本語は拙訳)

なお、総会全般の基調とそれを受けた反応について、あらかじめ少し触れておきます。前半部に取り上げられた話題に重苦しい面があったり、質疑応答ではバークシャーが慎重な資本配分を堅持していく方針を伝えたことで、既存株主からは批判的な感想も挙げられました(某所での話)。もちろん、航空会社株の売却があったことや、さらにはバークシャーの株価が低迷していることも大きな理由なのでしょう。しかしさまざまな要因を考慮すれば、ウォーレンが選んだ事業上の方針や今回のスピーチは、個人的には同意できるものですし、改めて学ぶところもいろいろとありました。またグレッグ・アベルの姿勢や人柄にも、好印象を持ちました。

<ウォーレン> これからバークシャ・ハサウェイの年次総会を始めます。とても年次総会にはみえないと思います。なおさら年次総会に感じられないのは、60年来のわがパートナーであるチャーリー・マンガーが列席していないからでしょう。この総会に参列されるみなさんは、実のところチャーリーの話を聞きたくて集まっている人ばかりだと思います。しかしながら、ご安心ください。96歳になったチャーリーは元気にやっております。知性のほうも以前と変わらず明敏です。強い声音もそのままです。しかし、この総会のために彼をオマハに呼ぶのが妙案だとは思えませんでした。実のところ今回の件で、彼は新しい生活を始めています。日々の作業にZoom[によるオンライン会合]を加えたのです。彼は毎日さまざまな人と会合をしています。ですから、わたしからすれば彼という存在をテクノロジー的に飛ばした形になります。これは、それほど大したことではありません。いわば、ピーナッツなどを踏まないようにして歩くようなものです(笑)。それはともかく、チャーリーが元気なことはたしかです。来年には、ここに戻ってきます。来年は例年どおりにすべてが開催できるよう、準備を進めていきます。

当社の保険部門を統括する副会長アジート・ジェインも、ニューヨークで健在にやっています。彼についても、この総会のためにオマハに来てもらう必要はないと考えました。ただし、本日わたしの左隣にはグレッグ・アベルが列席しています。副会長である彼は、保険事業を除く全事業を統括しています。つまり、売上高の総額が15兆円以上で、産業の領域は何十にもわたり、総従業員数が30万名以上になる企業群を管理しています。彼はその仕事に就いてから数年目になります。正直なところ、数年前のわたしにはろくにできていなかった責務を、もしもアジートとグレッグに任せていなかったら、今日のわたしになにができていたのか想像もできません。グレッグには大いに感謝しています。今日の話が進むうちに、彼の出番が増えてくると思います。


(Warren Buffett 00:06)

This is the annual meeting of Berkshire Hathaway. It doesn't look like an annual meeting. It doesn't feel exactly like an annual meeting, and it particularly doesn't feel like an annual meeting because my partner of 60 years, Charlie Munger, is not sitting up here. I think most of the people that come to our meeting really come to listen to Charlie. But I want to assure you, charlie at 96 is in fine shape. His mind is as good as ever. His voice is as strong as ever, but it just didn't seem like a good idea to have him make the trip to Omaha for this meeting. Charlie, Charlie is really taking to this new life. He's added Zoom to his repertoire. So has meetings every day with various people, and he's just skipped right by me technologically. But that really isn't such a huge achievement. It's more like, kind of like stepping over a peanut or something. But nevertheless, I want you to assure you, Charlie is in fine shape, and he'll be back next year. We'll try to have everything in the show that we normally have next year.

(Warren Buffett 01:26)

Ajit Jain also, who is the vice chairman in charge of insurance, is safely in New York. Again, it just did not seem worthwhile for him to travel to Omaha for this meeting. But on my left we do have Greg Abel, and Greg is the vice chairman in charge of all operations except insurance. So Greg manages a business that has more than 150 billion in revenues and crosses across dozens of industries and has more than 300,000 employees. He's been at that job a couple of years, and frankly, I don't know what I'd be doing today if I didn't have Ajit and Greg handling the duties that I was doing only about a quarter as well a couple of years ago. So I owe a lot of thanks to Greg, and you'll get exposed to him more as this meeting goes along.

2020年4月20日月曜日

嵐をむかえたバークシャーの舵取り(チャーリー・マンガー)

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バークシャー・ハサウェイの副会長であるチャーリー・マンガーが、ウォール・ストリート・ジャーナルの電話インタビューに応じていました。聞き手はジェイソン・ツヴァイク氏、同紙ではおなじみのコラムニストです。彼の文章は過去に何度か取り上げたことがあります。今回は、バークシャー経営陣の用心ぶりがうかがえる発言をご紹介します。(日本語は拙訳)

なお原典は有料記事ですが、以下のサイトにも全文が転載されているようです(某掲示板での情報提供に感謝します)。

Charlie Munger : 'The Phone Is Not Ringing Off the Hook'

「まあ、我々の状況は基本的に、最悪のタイフーン来襲を迎えたときの船長といったところですね」とマンガーは答えた。「ただただタイフーンをやり過ごしたいと願っていますよ。さらに言えば、大量の流動性を携えたまま乗り切りたいところです。『さあ、いいですか。みんな真っ逆さまに落ちているので、手持ちを全部注ぎ込んで事業を買いましょう』といった行動はとっていません」

さらに彼はこう言った。「純資産の90%を当社に投資している人たちもいます。だからウォーレン[・バフェット]は、バークシャーが彼らにとって安全な投資先であり続けたいと望んでいるのです。いつであろうと我々は、安全な側にいるつもりです。果敢な行動は起こさないとか、機会をとらえないとか、そうは言っていませんよ。しかし基本的には、十分保守的にやるつもりです。その一方で当社は、いっそう強力になっていくでしょうね」

まさしく鈴なりとなった企業経営者たちが、バークシャーに資本要請の連絡をしてきたことでしょうね。

「いいや、来ていないですね」とマンガー氏は言った。「たいていの人は、すくみあがっていますよ。航空業界をごらんなさい。なにが起こっているのか、彼らはわかっていませんね。どこも政府とは交渉していますが、ウォーレンには連絡をとっていません。立ちすくんでしまってるわけです。かつてそういう事態に遭ったことがないのです。こういうことが起こる可能性は、彼らの手の内にはなかったわけですよ」

(中略)

「マクロ経済が今後どのようになるのかを、我々が正確にわかっているとは思いませんね」とマンガー氏は言った。「遅かれ早かれ、経済は復活してそこそこの状態に戻るとは思いますよ。しかし今回失われる以前の水準まで雇用が回復する可能性は、かなり低いでしょうね。少なくとも相当な期間においてはそうでしょう。実質的には、二度と戻らないと言えるのかもしれません。まあ、私にはわかりませんが」

「株式市場が過去に記録した諸々の安値よりも下回るのかどうか、うっすらとした考えも浮かびませんね」と、マンガー氏は言った。また、コロナウィルスによる社会活動停止は「生きていく上で忍従せざるを得ないこと」であり、なるようにしかならないとも言った。「他に何ができるのでしょうかね」

"Well, I would say basically we're like the captain of a ship when the worst typhoon that's ever happened comes," Mr. Munger told me. "We just want to get through the typhoon, and we'd rather come out of it with a whole lot of liquidity. We're not playing, 'Oh goody, goody, everything's going to hell, let's plunge 100% of the reserves [into buying businesses].'"

He added, "Warren wants to keep Berkshire safe for people who have 90% of their net worth invested in it. We're always going to be on the safe side. That doesn't mean we couldn't do something pretty aggressive or seize some opportunity. But basically we will be fairly conservative. And we'll emerge on the other side very strong."

Surely hordes of corporate executives must be calling Berkshire begging for capital?

"No, they aren't," said Mr. Munger. "The typical reaction is that people are frozen. Take the airlines. They don't know what the hell's doing. They're all negotiating with the government, but they're not calling Warren. They're frozen. They've never seen anything like it. Their playbook does not have this as a possibility."

(snip)

"I don't think we know exactly what the macroeconomic consequences are going to be," said Mr. Munger. "I do think, sooner or later, we'll have an economy back, which will be a moderate economy. It's quite possible that never again -- not again in a long time -- will we have a level of employment again like we just lost. We may never get that back for all practical purposes. I don't know."

Mr. Munger told me: "I don't have the faintest idea whether the stock market is going to go lower than the old lows or whether it's not." The coronavirus shutdown is "something we have to live through," letting the chips fall where they may, he said. "What else can you do?"

2020年4月17日金曜日

なにをどうすれば、こう上がるのか(ハワード・マークス)

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ハワード・マークスが矢継ぎ早にメモを公開していました(4月14日付)。今回中心となる話題は二つで、ひとつめは新型肺炎に対する政治的対応について、ふたつめは連銀による金融面での対応についてです。

Knowledge of the Future [PDF] (Oaktree Capital Management)

政治的対応については、むずかしい判断を取り上げていました。具体的には、ロックダウンを緩和して経済活動を再開することのマクロ的なトレードオフの是非についてです。ここでは、同じく著名な投資家エドワード・ランパートの言葉を借りて、冷徹な観点から選択肢を提示していました。一方でミクロ的な観点では、以前と同じ状態に少なくとも即座には復帰できないことも触れており、個々人の事情を慮っていました。全体としてみれば、個人的には同意できる主張でした。

もうひとつの話題は、連銀による無制限の金融緩和についてです。ボロ債券の底値買いを身上とする彼の立場からすれば、極端なまでの連銀の救済対応は商売上の好機を早々につぶすことにつながります。米国における投資家の一人としてその恨み節を公表した、といった具合の文章でしょうか。今回ご紹介するのは、その結びに当たる部分です。(日本語は拙訳)

どうやら市場は、将来に関する判断を下したようです。米国における[新型肺炎の]死者数は2万3000人を超えて、なお増加中です。失業保険の週次給付申請は、過去最大だった数字の10倍に達しています。そして、今四半期のGDP減少率は史上最悪になると予想されています。しかし、世間は治療体制やワクチン開発の見通しを歓迎しており、また投資家は「連銀と財務省が痛みを抑制してV字回復をもたらしてくれる」と判断しました。古くから言われているように、「連銀と闘うことはできない」、つまり連銀は望むところを達成できるわけで、投資家はそれに対して信を置いているのです。それゆえ、3月23日に底を打ったS&P500指数は23%上昇しました。過去に市場が上昇した局面では押しなべて資金抑制が懸念されましたが、今回はほとんど問題視されていない状況です。

しかし、義理の息子で芸術家のジャスティン・ビールは、これを不可解に感じています。土曜日のことですが、彼はこう話してくれました。「わたしにはわからんですよ。ウィルスが猛威をふるい、商売は休業中、一方で政府はそこらじゅうにカネをばらまいている。税収が減ること必至にもかかわらずですよ。なにをどうすれば、市場はこんなに激しく上昇するのですかね」。それは行方が開けたときに、露わとなるのでしょう。

The market seems to have passed judgment with regard to the future. U.S. deaths have reached 23,000 and continue to rise. Weekly unemployment claims are running at 10 times the all-time record. The GDP decline in the current quarter is likely to be the worst in history. But people are cheered by the outlook for therapies and vaccines, and investors have concluded that the Fed/Treasury will reduce the pain and bring on a V-shaped recovery. There’s an old saying that “you can’t fight the Fed” - that is, the Fed can accomplish whatever it wants - and investors are buying it. Thus, the S&P 500 has risen 23% since its bottom on March 23, and there’s little concern about the retrenchments that typically have been part of past market rallies.

But Justin Beal, my artist son-in-law, is mystified. “I don’t get it,” he told me on Saturday. “The virus is rampant, business is frozen, and the government’s throwing money all over the place, even though tax revenues have to be down. How can the market be rising so strongly?” We’ll find out as the future unfolds.

備考です。「芸術家のジャスティン・ビール」氏との姻戚関係をたどってみると、彼はどうやらハワードの継子の夫のようです。

・Nancy Marks, Justin Beal, Jane Hait, Sasha Puryear, Howard Marks at Sies Marjan and OMA Celebrate the opening of Countryside, The Future / id : 4229659 by Ryan Kobane/BFA.com


2020年4月14日火曜日

2019年度バフェットからの手紙(2)株価が半減するかもしれない

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前回分から少し時間がたってしまいましたが、2019年度の「バフェットからの手紙」から金利の話題をご紹介します。今年の2月22日に発表された本文章には、改めて心に留めておきたい警告も含まれています。(日本語は拙訳)

金利を予測することがわたしどもの取り柄だったことは、これまでに一度もありませんでした。次の1年間や10年間、30年間の利率が平均するとどの程度になるか、わたしやチャーリー[・マンガー]には考えもつきません。この件について見解を述べる評論家たちをみると、嫉妬まじりの見方なのでしょうが、将来予測のこと以上に、彼らの振舞い自体が本人のことを語っているように思えてなりません。

わたしどもの口から言えるとすれば、こうです。「もし現在の水準に近い金利が今後何十年間とつづくようなことがあれば、さらには企業が現在享受しているような低水準の法人税率のままであれば、利率が固定された長期債券よりも株式のほうが、ほぼまちがいなく好成績をあげつづけると思われる」

ただし、そのような明るい見通しには警告が付きます。明日になれば株価がどうなるのかはわかりませんし、いずれは市場で大暴落が生じるでしょう。50%あるいはそれ以上の下落になるかもしれません。しかしわたしが昨年度に書いたように、米国は追い風を受けている国です。さらにはスミス氏の描写にあったように複利の威力に授かることで、借り入れに頼らずに自分自身の感情を律することのできる人にとっては、株式というものが長期的には実に優れた選択肢となるでしょう。そうでない方々は、どうぞご注意あれ。(PDFファイル10ページ目)

Forecasting interest rates has never been our game, and Charlie and I have no idea what rates will average over the next year, or ten or thirty years. Our perhaps jaundiced view is that the pundits who opine on these subjects reveal, by that very behavior, far more about themselves than they reveal about the future.

What we can say is that if something close to current rates should prevail over the coming decades and if corporate tax rates also remain near the low level businesses now enjoy, it is almost certain that equities will over time perform far better than long-term, fixed-rate debt instruments.

That rosy prediction comes with a warning: Anything can happen to stock prices tomorrow. Occasionally, there will be major drops in the market, perhaps of 50% magnitude or even greater. But the combination of The American Tailwind, about which I wrote last year, and the compounding wonders described by Mr. Smith, will make equities the much better long-term choice for the individual who does not use borrowed money and who can control his or her emotions. Others? Beware!

備考です。バークシャー自体の株価が半値近辺に暴落したときの話題は、以下の過去記事でウォーレンが触れています。

・2017年度バフェットからの手紙(6)大暴落が待っている