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2013年3月15日金曜日

李鶴洙(サムスン電子元副会長)

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今回は「備える、逃げる」というテーマについて、何年か前に手にとった本『サムスンCEO』で印象に残っていた箇所をご紹介します。このテーマは自分の中でもそれなりに重要な位置を占めているものです。

1976年12月のとても寒い夜だった。ある病院が火事になり、そこから水に濡らしたベッドのシーツを身にまとってかけだしてくる者がいた。李鶴洙[イ・ハクス]だった。彼はその年、急性肝炎で大邱病院に入院していた。彼の病室は6階。そして、その病院で火事が発生した。当時、第一化織の管理部長だった李鶴洙は、「火事だ!」という叫び声で目が覚めた。彼は突然の出来事にもかかわらず、シーツを水で濡らし、非常口に向かって走り出した。幸いにも、外へ逃げることができた。彼のこのような行動は、以前から火災が起きることを予見し準備していたかのようだった。

彼が非常事態でも適切、迅速に対処できたのは、父親のおかげだった。彼が大邱病院に入院して数日も経たないうちに、父親が見舞いにやってきた。その時、父親は李鶴洙にこのように言ったという。

「私がさっき見たのだが、この病棟には非常口が2つある。右側の非常口は閉じられ、左側は空いている。もしかして知らないと思ったので知らせておく。人間はいつも準備しておくものだ

李鶴洙が「火事だ!」という声を聞いて目が覚めた時、最初に浮かんだのはこの父親の言葉だったという。そのため、彼は迷うことなく冷静に左側の非常口に向かって逃げ出せたのだった。(p.37)


余談になりますが、はじめて買った株がノキアだったこともあり、アメリカ市場における各社の動きを注視していた時期がありました。当時はRAZRを擁するモトローラが息を吹き返す一方、サムスン電子もクラムシェル型(折りたたみ型)端末を連発していました。センスのよい日本各社の端末とくらべるとサムスンの初期製品は「ドン亀」といった見ためでしたが、折りたためないストレート型の端末が多い市場でクールな印象を与え、着実にシェアを伸ばしていました。

サムスンの最新型端末ギャラクシーS4が本日発表されました。製品のデモを一瞥して同社の大躍進ぶりに感嘆するとともに、この業界の生態系は次の新たな勝者を望んでいるようにも感じられました。

2013年3月13日水曜日

グロッツ印の炭酸甘味飲料(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーの講話『実用的な考え方を実際に考えてみると?』の第6回目です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

次にパブロフの条件付け[いわゆる条件反射のこと]ですが、こちらも欠かせないので考えておく必要があります。パブロフの条件付けでは、単に連想するだけで強力な効果がうまれます。エサが出てこないベルが鳴ったときでも、パブロフの犬の神経系は唾液を出すように働きました。同じように人間の男性の頭脳も、高嶺の花が手にしている類の飲み物をほしがるのです。ですからグロッツさん、称賛に値するきちんとしたものであれば、思いつく限りのあらゆるパブロフの条件付けを我々は利用すべきです。この商売を続けていく以上、消費者が自分の好きなものや賞賛するものを思い描く際には、そのどれをとっても我らの飲み物や広告が思い起こされなければなりません。

パブロフの条件付けを広範にわたって進めることになると、特に広告面で多額の費用がかかります。想像をはるかに超えた莫大な資金を費やすことになるでしょう。ですが、無駄金にはなりません。新たな飲料市場を迅速に拡大することで、競合他社がパブロフの条件付けをつくりだすために広告代を払おうとしても、全体としてみれば規模の不利益に直面するからです。これは、他の「大は力なり」効果とあいまって再び追い風を送ってくれ、あらゆる新市場で少なくとも半分は押さえられるようになるでしょう。実際のところ、我々は大量の製品を扱うがために、買い手が分散しているほど配送コストの面できわめて優位に立てるのです。

さらには単なる連想が起こすパブロフの条件付けは、風味や舌触りや色をどうすればよいのか選ぶ際の案内役にもなります。パブロフの効果を考慮すれば、ありきたりな名前「グロッツ印の炭酸甘味飲料」などとつけるのではなく、エキゾチックで高価な印象を漂わせた「コカ・コーラ」と名づけるほうが賢明でしょう。同じようにパブロフの理由から、砂糖水よりもワインに似せた感じのほうが利口です。濁らないのであれば人工的に着色し、そしてシャンパンなどの高価な飲み物を思わせるように炭酸を注入します。これは風味がよくなるだけでなく、競合製品から真似されにくくなります。最後に、風味には高級な心理的効果をいろいろ持たせたいので、他によくあるものとは異なったものとすべきです。なるべく模倣されないために、また風味上の効果がたまたま一致して既存製品が利を得ることのないようにです。

このほかにも、我々の事業に役立つものが心理学の教科書からみつかるでしょうか。ひとつあげられるのが「猿真似すること」、人間が持つ本性の強力な一面ですね。心理学者は「社会的証明」と名づけていますが、たとえば単に他人が消費しているのを目撃したことで、それを真似して消費する行動です。これは我々の提供する飲料を試してみようかと思わせるだけでなく、飲むと得られる報酬を補強する役割も果たしてくれます。ですから、我々が広告や販売促進の企画をする際には、また現在の利益を我慢して今後の消費拡大を図るには、この強力な社会的証明の要因を必ず考慮にいれることになります。他のほとんどの製品以上に、売上数の増加が販売力の強化につながるのです。

グロッツさん、ここまで3つの要因の組み合わせをみてきました。第一に強いパブロフ型条件づけ、第二に強力な社会的証明によって得られる効果、そして最後にオペラント条件付けを力強くも呼び起こす、美味上々、滋養豊富、刺激爽快、冷涼愛好な飲み物。このように我々の選んだ要因が劇的に合わさることによって、我らの事業は長きにわたって売上げをどんどん増やしていくでしょう。つまり化学でいうところの自触媒作用的なもの、より正確には複合要因によって生じる種類の「とびっきりな」効果が始まります。これこそ、私たちの望むものであります。

We must next consider the Pavlovian conditioning we must also use. In Pavlovian conditioning, powerful effects come from mere association. The neural system of Pavlov's dog causes it to salivate at the bell it can't eat. And the brain of man yearns for the type of beverage held by the pretty woman he can't have. And so, Glotz, we must use every sort of decent, honorable Pavlovian conditioning we can think of. For as long as we are in business, our beverage and its promotion must be associated in consumer minds with all other things consumers like or admire.

Such extensive Pavlovian conditioning will cost a lot of money, particularly for advertising. We will spend big money as far ahead as we can imagine. But the money will be effectively spent. As we expand fast in our new-beverage market, our competitors will face gross disadvantages of scale in buying advertising to create the Pavlovian conditioning they need. And this outcome, along with other volume-creates-power effects, should help us again and hold at least fifty percent of the new market everywhere. Indeed, provided buyers are scattered, our higher volumes will give us very extreme cost advantages in distribution.

Moreover, Pavlovian effects from mere association will help us choose the flavor, texture, and color of our new beverage. Considering Pavlovian effects, we will have wisely chosen the exotic and expensive-sounding name “Coca-Cola,” instead of a pedestrian name like “Glotz's Sugared, Caffeinated Water.” For similar Pavlovian reasons, it will be wise to have our beverage look pretty much like wine instead of sugared water. And so, we will artificially color our beverage if it comes out clear. And we will carbonate our water, making our product seem like champagne, or some other expensive beverage, while also making its flavor better and imitation harder to arrange for competing products. And, because we are going to attach so many expensive psychological effects to our flavor, that flavor should be different from any other standard flavor so that we maximize difficulties for competitors and give no accidental same-flavor benefit to any existing product.

What else, from the psychology textbook, can help our new business? Well, there is that powerful “monkey-see, monkey-do” aspect of human nature that psychologists often call “social proof.” Social proof, imitative consumption triggered by mere sight of consumption, will not only help induce trial of our beverage. It will also bolster perceived rewards from consumption. We will always take this powerful social-proof factor into accounts as we design advertising and sales promotion and as we forego present profit to enhance present and future consumption. More than with most other products, increased selling power will come from each increase in sales.

We can now see, Glotz, that by combining (1) much Pavlovian conditioning, (2) powerful social-proof effects, and (3) a wonderful-tasting, energy-giving, stimulating, and desirably cold beverage that causes much operant conditioning, we are going to get sales that speed up for a long time by reason of the huge mixture of factors we have chosen. Therefore, we are going to start something like an autocatalytic reaction in chemistry, precisely the sort of mutifactor-triggered lollapalooza effect we need.

2013年3月11日月曜日

ニュートンとバブル

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バブルの本家といえば、18世紀のイングランドでおきた南海泡沫事件です。その騒ぎの中で科学者アイザック・ニュートンも投機に失敗したとされる話は、よく知られているかと思います。今回ご紹介するのは最近読んだ本『ニュートンと贋金づくり』からで、ニュートンが具体的にどれぐらい損をしたのか描かれた箇所です。

1720年1月、噂の流布からバブルが始まった。出どころは、市場のご他聞に洩れず社内の消息筋で、南海会社の株価が上がりそうだという内容だった。エクスチェンジ・アレイが、それにしっかりと食いついた。南海会社の株価は1か月で128ポンドから175ポンドに上昇し、同社がさらに国債を引き受けると発表されると、3月末には330ポンドに跳ね上がった。

だが、それはまだほんの序章だった。あぶく銭が簡単に手に入るという感覚が、投機ブームを煽った。5月には、株価は550ポンドとなり、その1か月後には、夏に10パーセントの配当が出るという告知によって1,050ポンドに達した。

しかしその後、株価はあっけなく暴落した。初めはともかくも、終わりの頃には南海会社はネズミ講同然で、後から投資した者の金に報酬がついて先に投資した者の利益になるという、できすぎた仕組みになっていた。やがて新しく投資する者がいなくなり、その仕組みは破綻した。同社の株価は7月に下落し始め、8月にはまだ800ポンドの値を保っていたものの、その後急落した。そして、1か月もたたないうちに175ポンドとなり、わずか数週間前には絶対に枯れるはずがなさそうに見えた金の成る木に飛びついていた大勢の投資家が、ほぼ完全に姿を消した。

その最後に飛び乗り、最初に打撃をこうむった投資家の一人が、アイザック・ニュートンだった。彼は、そもそも初期に南海会社に投資した、理論上は最も傷の少ない投資家だった。記録を見ると、1713年頃には彼の所有財産のなかに同社の株式がかなり含まれているが、その一部は1720年4月の株価上昇の折に首尾よく売っている。だが、同社の株価がその後も上昇を続けたため、元手をさらに膨らませようとする大胆なプレーヤーのように機を待ったニュートンは、2度目の賭けに出た。6月、株価が最高値を記録した頃、彼は取次ぎ業者に指示して、1,000ポンド分の株を購入した。そして1か月後、株価が下落し始めたときにも、さらに買い足した。その後の暴落によって、彼は2万ポンドにおよぶ損失を被ったと、姪のキャサリン・コンデュイットは記している。彼の造幣局監事の基本給に換算すると、およそ40年分の額だった。(p.264)


損失は間違いなく身に堪えていたものの、ニュートンの全財産が泡と消えたわけではなかった。東インド会社の大株主の一人であることに変わりはなく、1万1000ポンドという同社への投資は、1724年当時としては非常に安定した事業だといえた。また、彼の所有する不動産の評価額はその数年後に最高値となり、リンカンシャーの所有地を除いても3万2000ポンドであった。つまり、彼はどこから見ても、やはり裕福な男だった。しかし、最悪の失敗の記憶は彼を苛み、自分に聞こえるところで誰かが南海会社の話をするのを嫌がったといわれている。彼がそれほどいら立ったのは、大損をしたせいだけではないかもしれない。理性にかけるただの愚か者と同じように、自分もだまされたと思えて腹立たしかったのではないだろうか。投機熱が最高潮に達していた頃の南海会社株の魅力的な値上がりに関する話が出たとき、彼はラドナー卿に「大衆の熱狂を計算することはできない」と言ったという。

後悔はしていたにせよ、友人たちの記憶にあるニュートンの晩年は、おおむね満ち足りていて、知的で獰猛なファイターであった若かりし日よりも、ずっと温和になっていた。裕福であったにもかかわらず暮らしぶりは控えめで、朝食にはバターを塗ったパンを食べ、ワインを飲むのは夕食時だけだった。彼の姪によれば、彼は動物に辛くあたるのを嫌い、古くからの友人を大切にし、かつてはよそよそしく他人行儀だったものの、親戚の者たちに対して家長らしい振る舞いを見せるようになった。結婚式には必ず出席し、「いつもの生真面目さはどこかにしまって、自由に、楽しげに、くつろいでいた」。しかも、家族にとってはさらに嬉しいことに、「彼はたいてい、花嫁には100ポンドを贈り、花婿には商売や仕事の面倒を見てやった」。(p.265)


「彼は2万ポンドにおよぶ損失を被った」とありますが、当時の1ポンドが現在の日本円で25,000円の価値とすると、5億円に相当する損失になります。なおイギリスポンドのインフレ換算は、以下のサイトをお借りして計算しました(1751年までさかのぼれます)。

Historical UK Inflation And Price Conversion

2013年3月9日土曜日

2012年度バフェットからの手紙(3)配当政策について(3/3)

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ウォーレン・バフェットの2012年度「株主のみなさんへ」から、「配当政策」の話題です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

最後にわたし自身の実例を示して、算数の演習はおしまいにしたいと思います。定期的に持ち株を処分しても、ビジネスにおける投資が増加していく一例です。虫歯を削るドリルを離してくれて助かった、みなさんの喜ぶそんな声が聞こえるようです。さて、この7年間にわたり、わたしはバークシャーの株式を毎年4.25%ずつ手放してきました。B株(分割後)に換算して712,497,000株だったのが528,525,623株となり、当社におけるわたしの持ち分は明らかに大きく減少しています。

しかし、このビジネスにおけるわたしの投資は、実際には増加しています。バークシャーの簿価におけるわたしの持ち分は、7年前とくらべると大幅に大きくなっているのです。(具体的な数字をあげると、2005年には282億ドルだったのに対して、2012年には402億ドルになりました)。いいかえれば、会社における持ち分はかなり減ったにもかかわらず、現在のほうがずっと多額のお金をバークシャーで働かせていることになります。バークシャーの本源的価値や通常時の収益力に関するわたしの持ち分が、2005年時点よりずっと大きくなったとも言えるでしょう。たしかに型破りなやり方ではありますが、いまでは毎年4.5%以上の株を手放しているにもかかわらず、持ち分の価値はこれからも増加し続けるものとみています(ある財団に対する生前贈与分を最近になって倍に増やしたので、数字が大きくなっています)。

配当方針というものは結局のところ、常に明確かつ合理的で一貫したものであるべきです。熟慮せずに方針が変更されると株主は困惑しますし、投資しようと検討している人たちを遠ざけることになります。54年前にフィル・フィッシャーが著書 "Common Stocks and Uncommon Profits"[邦訳『フィッシャーの「超」成長株投資』]の第7章でうまく表現しています。この本は、真剣な投資家が読むべき歴代ベスト書籍の中で、『賢明なる投資家』と『証券分析1940年版』の次にあげられる一冊です。フィルの説明はこうです、ハンバーガーか中華料理のレストランを出して成功するかもしれない。しかし、思いつきで反対の店に暖簾替えしてしまったら、どちらであろうとお得意さんは戻ってきませんよ、と。

ほとんどの企業では一貫した形で配当をしています。一般的に言えば、毎年増配しようとしていますし、減配にはひどく消極的です。われわれの「4大」投資先[アメックス、コカ・コーラ、IBM、ウェルズ・ファーゴ]も、この妥当でわかりやすい方針に従っています。また非常に大胆な自社株買いを実施することもあります。

わたしどもはこうしたやりかたを称賛し、今後も同じ道を歩みつづけることを望んでいます。増配もありがたいですし、適正価格での自社株買いは大歓迎です。

しかしバークシャーでは、違うやりかたを一貫してとりつづけて参ります。わたしどもはそれが妥当だと考えておりますし、ここまで文章をお読みくださったことでご理解頂けたのではないかと存じます。わたしどもの仮定、つまり簿価の成長度合いと市場における価格の割り増し分が妥当なものと信じられる間は、今後もこの方針に従っていくつもりです。しかし、それらの要因の見通しが大きく悪化することになれば、取るべき行動を見直すことになります。(PDFファイル20ページ)

(この項、おわり)

Let me end this math exercise - and I can hear you cheering as I put away the dentist drill - by using my own case to illustrate how a shareholder's regular disposals of shares can be accompanied by an increased investment in his or her business. For the last seven years, I have annually given away about 4.25% of my Berkshire shares. Through this process, my original position of 712,497,000 B-equivalent shares (split-adjusted) has decreased to 528,525,623 shares. Clearly my ownership percentage of the company has significantly decreased.

Yet my investment in the business has actually increased: The book value of my current interest in Berkshire considerably exceeds the book value attributable to my holdings of seven years ago. (The actual figures are $28.2 billion for 2005 and $40.2 billion for 2012.) In other words, I now have far more money working for me at Berkshire even though my ownership of the company has materially decreased. It's also true that my share of both Berkshire's intrinsic business value and the company's normal earning power is far greater than it was in 2005. Over time, I expect this accretion of value to continue - albeit in a decidedly irregular fashion - even as I now annually give away more than 4.5% of my shares (the increase having occurred because I've recently doubled my lifetime pledges to certain foundations).

Above all, dividend policy should always be clear, consistent and rational. A capricious policy will confuse owners and drive away would-be investors. Phil Fisher put it wonderfully 54 years ago in Chapter 7 of his Common Stocks and Uncommon Profits, a book that ranks behind only The Intelligent Investor and the 1940 edition of Security Analysis in the all-time-best list for the serious investor. Phil explained that you can successfully run a restaurant that serves hamburgers or, alternatively, one that features Chinese food. But you can't switch capriciously between the two and retain the fans of either.

Most companies pay consistent dividends, generally trying to increase them annually and cutting them very reluctantly. Our "Big Four" portfolio companies follow this sensible and understandable approach and, in certain cases, also repurchase shares quite aggressively.

We applaud their actions and hope they continue on their present paths. We like increased dividends, and we love repurchases at appropriate prices.

At Berkshire, however, we have consistently followed a different approach that we know has been sensible and that we hope has been made understandable by the paragraphs you have just read. We will stick with this policy as long as we believe our assumptions about the book-value buildup and the market-price premium seem reasonable. If the prospects for either factor change materially for the worse, we will reexamine our actions.

2013年3月7日木曜日

2012年度バフェットからの手紙(3)配当政策について(2/3)

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ウォーレン・バフェットの2012年度「株主のみなさんへ」から、前回に続いて「配当政策」の話題です。(日本語は拙訳)

さて、いよいよ配当の話になります。ここからはいくつかの仮定をふまえて計算します。いろいろでてくる数字は注意して追う必要がありますが、配当の是非を理解するために不可欠なものです。しばしの間、ご容赦ください。

はじめに、あなたとわたしの二人で200万ドルの価値があるビジネスを対等に所有しているとします。事業からあがる利益は純有形資産の12%、すなわち24万ドルです。また再投資分からも同じように12%の利益が期待できるとします。さらには、われわれのビジネスを純資産の125%で買い付けたいと希望する部外者がいます。そのため、あなたとわたしがそれぞれ保有する分の価値は125万ドルになります。

われわれ二人の株主の利益を処分する方法として、1/3を配当として受け取り、2/3を再投資に回したいとお考えになるかもしれません。この案であれば、手取りの収入を得られる上に将来の成長もにらむという両方のニーズをうまく満たしているだろうと。つまりは8万ドルを配当し、16万ドルを事業の将来の利益拡大のために留保するものです。こうすれば初年度には4万ドルがあなたに配当されます。また利益も成長して1/3の配当割合も維持されれば、将来の配当も同じように成長していきます。配当と株式の価値を合算すれば、毎年8%の成長が見込まれます(純資産比で12%の利益が出るところ、4%の配当を控除するため)。

10年後、われわれの会社は431万7850ドルの価値を持つようになります(当初の200万ドルが8%複利で成長するため)。その年にあなたが受け取る配当の金額は86,357ドル、われわれ各々が所有する株式の価値は269万8656ドルずつになります(会社の純資産の半分の125%)。配当金を受けとることで、続く成長が8%となるにしても、われわれ二人は幸せものでしょう。

次に、もうひとつ別のやり方をご紹介します。こちらのほうがもっと幸せになれると思いますよ。この方針では利益の全額を会社に残し、一方でわれわれの持ち株を毎年3.2%ずつ売ることとします。株は簿価の125%で売れるので、初年度にはそれぞれ4万ドルの現金が得られますし、この金額は年々成長していきます。このやりかたを「売却」方式と呼ぶことにします。

「売却」方式の場合、われわれの会社の純資産は10年後に621万1696ドルへと増加します(200万ドルが12%複利で増加)。株式を毎年売るのでわれわれの保有比率は低下し、10年後にはそれぞれが会社の36.12%ずつを保有することになります。そうではあっても、会社の純資産に占めるあなたの持ち分は224万3540ドルに達しますし、それに忘れてならないのは、われわれに帰する会社の価値1ドル分は1.25ドルで売ることができます。ですから、あなたのぶんの株の市場価値は280万4425ドルになります。これは、さきにあげた「配当」方式よりも4%高い値です。

さらに、「売却」方式をとることであなたが1年間に受け取る金額は、「配当」方式のときよりも4%大きくなります。ほらこのとおり、使えるお金が毎年増えるだけでなく、資産価値のほうも増えるのです。

もちろんこの計算では、仮想上のわれわれの会社が純資産に対して平均12%の利益を毎年あげ、株主が平均して簿価の125%の金額で株を売れることを前提としています。この点においてS&P500をみると、純資産の12%をかなり上回る利益をあげており、なおかつ純資産の125%よりずっと高い値段がついています。ですからここであげてきた仮定は、バークシャーに対しても妥当なものと思われます。むろん、保証できるものではありませんが。

さらに、うまくいけば仮定を超える可能性もあります。そうなれば、「売却」方式を推す根拠はさらに強まります。バークシャーの歴史をふりかえってみると、これまでの成績を再現するのは難しいと認めざるを得ませんが、「売却」方式は「配当」方式よりもはるかに優れた成果を株主のみなさんにもたらしてきました。

このような好ましい計算のほかにも、「売却」方式にはさらなる重要な理由が2つあります。まずひとつめですが、配当金を出すのは、すべての株主に対して特定の現金還元方針を強制することになります。たとえば利益の40%分をその方針とすれば、30%や50%を望む人には意に反するものでしょう。60万人になる株主のみなさんが、現金に対する見解をそれぞれお持ちです。しかし大多数、おそらくほとんどのみなさんの家計は黒字が続いている状況でしょうから、まったく払い戻さないほうが合理的であると言っても差し支えないと思われます。

他方、「売却」方式であれば、現金化と資本蓄積の間のどこをとるか、株主のみなさんがそれぞれ決めることができます。たとえば60%の現金化を望む人がいる一方、20%あるいはゼロでよい人もいらっしゃるでしょう。もちろん「配当」方式の場合でも、受け取った配当を再投資に回すこともできます。ただし、そのやりかたは損を出すことになります。税金が課されるだけでなく、再投資する際に25%分を上乗せして支払うことになるからです(市場で株式を購入する際には、簿価の125%になることをお忘れなく)。

「配当」方式が不利な第二の理由も、重要なものです。税金がかかることを考えると、納税をする株主のみなさんの立場は「売却」方式の人とくらべて不利、それもたいていはかなり不利なものとなります。「配当」方式では株主が毎年受け取る現金の全額が課税対象となりますが、それに対して「売却」方式では現金化した分にとどまるからです。(PDFファイル19ページ)

And that brings us to dividends. Here we have to make a few assumptions and use some math. The numbers will require careful reading, but they are essential to understanding the case for and against dividends. So bear with me.

We'll start by assuming that you and I are the equal owners of a business with $2 million of net worth. The business earns 12% on tangible net worth - $240,000 - and can reasonably expect to earn the same 12% on reinvested earnings. Furthermore, there are outsiders who always wish to buy into our business at 125% of net worth. Therefore, the value of what we each own is now $1.25 million.

You would like to have the two of us shareholders receive one-third of our company's annual earnings and have two-thirds be reinvested. That plan, you feel, will nicely balance your needs for both current income and capital growth. So you suggest that we pay out $80,000 of current earnings and retain $160,000 to increase the future earnings of the business. In the first year, your dividend would be $40,000, and as earnings grew and the one-third payout was maintained, so too would your dividend. In total, dividends and stock value would increase 8% each year (12% earned on net worth less 4% of net worth paid out).

After ten years our company would have a net worth of $4,317,850 (the original $2 million compounded at 8%) and your dividend in the upcoming year would be $86,357. Each of us would have shares worth $2,698,656 (125% of our half of the company's net worth). And we would live happily ever after - with dividends and the value of our stock continuing to grow at 8% annually.

There is an alternative approach, however, that would leave us even happier. Under this scenario, we would leave all earnings in the company and each sell 3.2% of our shares annually. Since the shares would be sold at 125% of book value, this approach would produce the same $40,000 of cash initially, a sum that would grow annually. Call this option the "sell-off" approach.

Under this "sell-off" scenario, the net worth of our company increases to $6,211,696 after ten years ($2 million compounded at 12%). Because we would be selling shares each year, our percentage ownership would have declined, and, after ten years, we would each own 36.12% of the business. Even so, your share of the net worth of the company at that time would be $2,243,540. And, remember, every dollar of net worth attributable to each of us can be sold for $1.25. Therefore, the market value of your remaining shares would be $2,804,425, about 4% greater than the value of your shares if we had followed the dividend approach.

Moreover, your annual cash receipts from the sell-off policy would now be running 4% more than you would have received under the dividend scenario. Voila! - you would have both more cash to spend annually and more capital value.

This calculation, of course, assumes that our hypothetical company can earn an average of 12% annually on net worth and that its shareholders can sell their shares for an average of 125% of book value. To that point, the S&P 500 earns considerably more than 12% on net worth and sells at a price far above 125% of that net worth. Both assumptions also seem reasonable for Berkshire, though certainly not assured.

Moreover, on the plus side, there also is a possibility that the assumptions will be exceeded. If they are, the argument for the sell-off policy becomes even stronger. Over Berkshire's history - admittedly one that won't come close to being repeated - the sell-off policy would have produced results for shareholders dramatically superior to the dividend policy.

Aside from the favorable math, there are two further - and important - arguments for a sell-off policy. First, dividends impose a specific cash-out policy upon all shareholders. If, say, 40% of earnings is the policy, those who wish 30% or 50% will be thwarted. Our 600,000 shareholders cover the waterfront in their desires for cash. It is safe to say, however, that a great many of them - perhaps even most of them - are in a net-savings mode and logically should prefer no payment at all.

The sell-off alternative, on the other hand, lets each shareholder make his own choice between cash receipts and capital build-up. One shareholder can elect to cash out, say, 60% of annual earnings while other shareholders elect 20% or nothing at all. Of course, a shareholder in our dividend-paying scenario could turn around and use his dividends to purchase more shares. But he would take a beating in doing so: He would both incur taxes and also pay a 25% premium to get his dividend reinvested. (Keep remembering, open-market purchases of the stock take place at 125% of book value.)

The second disadvantage of the dividend approach is of equal importance: The tax consequences for all taxpaying shareholders are inferior - usually far inferior - to those under the sell-off program. Under the dividend program, all of the cash received by shareholders each year is taxed whereas the sell-off program results in tax on only the gain portion of the cash receipts.