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2012年1月5日木曜日

(メンタル・モデル)熱力学の法則

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チャーリー・マンガーは戦時中にカルテックで熱力学を専攻しました。熱力学の教義は彼のメンタル・モデルに当然含まれているはずです。最近読んだ『サイエンス入門〈1〉』では爆発や温度などの話題がわかりやすく取り上げられており、楽しめました。今回は熱力学の法則を同書から引用します。

(第0法則)
接するもの同士は同じ温度になろうとする。

(第1法則)
エネルギーは保存される。

(第2法則)
熱エネルギーを取り出すには、温度差が必要である。
ある物体のエントロピー(無秩序さ)は増えたり減ったりするが、宇宙のエントロピーの総量はつねに増えつづけている。

(第3法則)
何物も絶対零度に達することはできない。

2011年12月14日水曜日

大丈夫ですよ、私たちはうまく対応できますから

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以前に取り上げたチャーリー・マンガーの「システムを理解するには様々な学問分野で登場する様々なモデルをうまく当てはめることが必要になる」は、言われてみればその通りです。自分の仕事でもいろいろな立場の人の意見をききながら、適切な方策を検討修正することがあります。

最近読んだ本『ウェザー・オブ・ザ・フューチャー ― 気候変動は世界をどう変えるか』でも、学者たちの似たようなやりとりがあったので引用します。ニューヨーク市で水不足が起きる事態を想定した科学者たちの会話です。

水不足が頻繁に起こるようになると、海面上昇の影響とも重なって、水供給に影響を与えるようになるだろう。「あらゆるシステムは絡み合っています」とローゼンツワイクは説明する。「ニューヨークのような都市部では、いくつもの気候変動の影響が完全に混ざり合っています。私たちの科学者チームが、いろいろな分野の科学者の集まりでなければいけないのはそのためです。もしそうでなければ、正しい答えは出ません」。ニューヨークでは、さまざまなバックグラウンドをもつ科学者を巻き込んで、学際的なアプローチを取ることが不可欠だ。異なる分野の科学者がいれば、それぞれ違う視点から問題に取り組める。

ローゼンツワイクはこう説明する。「私たちは毎月、チームの科学者全員で集まることにしています。水文学者というのは、たいてい非常に自信たっぷりに振る舞うんです。彼らはよくこう言っています。『大丈夫ですよ、私たちはうまく対応できますから。気候変動っていうのは私たちの得意分野ですよ』。たとえば、渇水の深刻度を表すのによく使われるパルマー渇水強度指数から、ニューヨーク一帯での渇水の頻度の増加が見られることを話し合っていると、水文学者はこう言い出します。『大丈夫。チェルシーという、ハドソン川の上流の小さな街に、ハドソン川への取水パイプがあります。チェルシーでハドソン川から水をくみ上げて、水の供給量を補うつもりです』。そこへ、NPCCのメンバーの研究者が部屋の後ろのほうで手を振って、『でも計算したところでは、海面上昇の影響を考慮すると、河口部にあった塩水と淡水の境界線が上流のチェルシーまで進んでしまうんですよ』と言うんです」

「専門家が一つの部屋で議論する必要があるのは、こういうことがよくあるからです。もちろん、チェルシーでハドソン川からの追加取水は可能です。でも、それが塩水だったらあまり役には立たないでしょう」(p.325)


ところで、文中にでてくるチェルシーの街がここだとすると、現在の河口から100kmほど離れた地点です。

2011年12月2日金曜日

われわれが錯覚に捕らわれているとき

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晩年のファインマンと親交のあったムロディナウ氏の著作『たまたま―日常に潜む「偶然」を科学する』から引用です。

われわれが錯覚に捕らわれているとき-そしてそのことで言うなら、何か新しい考えを抱いたときはいつでも-われわれはたいてい、その考えが間違いであることを証明する方法を探るのではなく、それが正しいことを証明しようとする。(p.279)


さらに悪いことに、われわれは自分の先入観を裏付ける証拠を優先的に探し求めるだけでなく、曖昧な証拠を自分の考えに有利になるように解釈する。(p.280)


以前にご紹介したチャーリー・マンガーの意見と似ていますね。

2011年11月30日水曜日

取り組むのにちょうどよい問題(リチャード・ファインマン)

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投資対象候補の選定について、前回の引用でチャーリー・マンガーは「時間や才能に限りがある」とコメントしていましたが、ファインマンのインタビューに同様の発言があるので、引用します。『ファインマンさんベストエッセイ』からです。1979年のインタビューなので、彼の年齢は60歳を過ぎた頃です。ちなみに、ノーベル物理学賞は40歳代後半に受賞しています。

(質問)先生はどの問題なら、取り組むのにちょうど格好の大きさだとわかるのですか?

(ファインマン) (中略) 重要な要素の正しい組み合わせさえ手に入れば、深遠だが解けない問題を抱えて一生を棒に振ったり、だれにだってできるような小さな問題ばかりゴマンと解いて、一生を浪費したりしないですむ。(p.232)

2011年11月26日土曜日

ダーウィンの「逆ひねり」

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チャーリー・マンガーの敬愛する人物といえば、ベンジャミン・フランクリンが挙げられますが、それに劣らずチャールズ・ダーウィンも彼のお気にいりです。前回ご紹介したチャーリーの講演の続きになりますが、ダーウィンのシステムが簡潔かつ端的にとりあげられています。

公認伝記マニアの私が思うに、チャールズ・ロバート・ダーウィンは、1986年度のハーバード[高校。L.A.にあるプレップスクール]の卒業生の中でみれば、真ん中あたりの成績になるかと思います。しかしながら彼は、科学史において今でも名だたる人物です。これこそ、もって生まれた才能を無駄にせずに生かしたお手本の最たるものといえるでしょう。

ダーウィンのなしとげた業績は、彼自身のやりかたによるものでした。さきに私がお話しした「悲惨への道」には一切近寄らず、「逆ひねり」することに注力しました。持論がどんなに手塩をかけた大切なものでも、それをくつがえす証拠を真っ先にみつけようとしたのです。普通であればその反対で、早々に結論を出したあとは、新情報や否定的な情報がでても、持論が揺るがないように処理するものです。作家フィリップ・ワイリーのみるところの「自分がすでに知っていることを超えたところで学ばないようでは、何もだせない」人間になりさがるものです。

It is my opinion, as a certified biography nut, that Charles Robert Darwin would have ranked near the middle of the Harvard School graduating class of 1986. Yet he is now famous in the history of science. This is precisely the type of example you should learn nothing from if bent on minimizing your results from your own endowment.

Darwin's result was due in large measure to his working method, which violated all my rules for misery and particularly emphasized a backward twist in that he always gave priority attention to evidence tending to disconfirm whatever cherished and hard-won theory he already had. In contrast, most people early achieve and later intensify a tendency to process new and disconfirming information so that any original conclusion remains intact. They become people of whom Philip Wylie observed: "You couldn't squeeze a dime between what they already know and what they will never learn."


自説に固執しがちなのは人間の心が持つ本質的な傾向であると、チャーリーは以前から述べてきました。心理学の分野で数々の研究結果が裏付けてくれるようになりましたが、我々が自分自身のそのような面を乗り越えるのは、依然として難しいものです。このような話題は本ブログの主題として、今後も取り上げていきます。

2011年11月21日月曜日

科学的に研究する際のやりかた(リチャード・ファインマン)

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バフェットやマンガーは、投資をする際の意思決定では「合理性」が大切なことを強調しています。今回は「合理」の代表格であるハード・サイエンスの分野、物理学者ファインマンの「ファインマンさんベストエッセイ」からの引用です。科学的アプローチが簡潔に記されていますが、投資にも適用できるものです。先だって取り上げたマンガーの「多面的メンタルモデル」に通じるところもあります。

すでに答えがわかっているのなら、それについて証拠を集める必要などありません。とにかく何かについて確信がもてないとすると、つぎはこれについて証拠を探すことになるのですが、科学的方法ではまず試すことから始まります。しかしそれ以外にも、もっと大切なことがあるのを見過ごしにはできません。それは自分のさまざまな知識を論理的に一貫して筋がとおるよう、まとめるということです。わかっていることのあれとこれとをつなぎあわせ、それとこれとに矛盾がないかどうかテストすることは、非常に意義のある作業で、方向の異なる考えをつなぎあわせようとするこの努力は、すればするほど意味があるのです

さてこうして証拠を探す作業のつぎにくるのが、その判断です。発見した証拠の判断については、一般的につぎのようなきまりがあります。それは自分の気に入ったものだけを選ぶのではなく、何もかも一つ残らず考えに入れること。そして研究をつづけられるだけの客観性を絶えず保ち、究極的に権威ある意見なんぞに頼らないということ、これがそのルールです。権威は真実が何であるかのヒントにはなるかもしれませんが、それは断じて情報の源ではありません。自分の観察が権威ある意見に反する場合は、できるだけ権威のほうを無視すべきです。そして最後に、その結果の記録には決して私観をまじえてはなりません。(p.85)