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2013年4月15日月曜日

先行きがひどく不確かなとき(アーノルド・ヴァンデンバーグ)

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アーノルド・ヴァンデンバーグは個人的に好きなファンドマネージャーで、何度か取り上げています。彼の新しいインタビュー記事がファンドのWebサイトに転載されていたので、ご紹介します。今回引用するのは「バリュー投資」の心理的な本質をついた部分です。(日本語は拙訳)

Arnold Van Den Berg interviewed by Money Manager Review in spring 2013 issue (PDFファイル)

<質問>資産運用においてバリュー投資が優れたやりかただとお考えなのは、どうしてですか?

<回答>バリュー投資は一般大衆の心をとらえるものではありません。そうだとしたら、安値で買うことなどできないでしょう。割安株とは、本源的価値やビジネスの経験豊富な人がわかっている自分の会社の価値より安く売られている株です。割安株がみつかるのはたいてい、先行きがひどく不確かなときだけです。先がみえなくて不安になると、本源的価値より安値で、あるいはもっと激安価格で株を売りたがる人が大勢でてきます。これがよく起こるのは、特定の会社や特定の業界、あるいは市場全般が問題を抱えているときです。ただし、そういったことはふつう一時的におわるものです。にもかかわらずそこで割安株を買う投資家は、歴史が証明しているように、見通しがよくなったときに報われることが多いのです。このやりかたはいたって根本的なので、株式だけでなく、債券、不動産、商品、さらには非公開の事業と、あらゆる投資で使えます。ベンジャミン・グレアムはかつて言いました、「リターンを決めるのは価格である」。名だたる彼の弟子ウォーレン・バフェットも述べています。「不確かさは長期投資家のよき友です」と。

Why do you believe that value investing is a better way to manage money?

Value investing does not appeal to the masses. If it did, you would never be able to buy a bargain. Stocks selling below their intrinsic value or below what an experienced businessman knows his company is worth, bargain stocks, are usually only found during times of great uncertainty. Because of the fear surrounding uncertainty, many people are willing to sell stocks well below their intrinsic values and often times at bargain-basement prices. Typically this happens because a company, an industry, or in some cases the market at-large has a problem, which is usually temporary. Regardless, history has proven that investors who buy these bargains will frequently be rewarded when the uncertainty clears. This is as fundamental as it gets, and you can use this approach for any investment, whether it’s stocks, bonds, real estate, commodities, or a private business. As Benjamin Graham said, “Price determines return.” And, as his famous disciple, Warren Buffett, stated, “Uncertainty is the friend of the long-term investor”.


余談ですが、最近はインテル(INTC)の株を少しずつ買っています。マイクロソフト(MSFT)と同じように、PC市場が低調なだけでなく、スマートフォンやタブレット市場における出遅れも不安視されています(NY Times記事など)。明日4/16(火)には四半期決算が発表されますが、CEOの交代を5月に控えていることもあり、不透明感たっぷりの状況です。

2013年2月24日日曜日

2012年の投資をふりかえって(3)新規・追加投資編(クラレ)

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前回(マイクロソフト)に続いて4件目の企業です。

<当社の概要>
当社は投資雑誌などで取り上げられており、個人投資家にも知られている企業と思われますが、事業内容を概括しておきます。社名そのものやランドセルでおなじみだった「クラリーノ」から繊維系を想像させますが、現在の当社の主力製品はプラスチック(合成樹脂)です。ただしそれらは大手化学メーカーの汎用品とくらべると独自性を有しているため、価格競争力を維持し高収益につながっています。

事業セグメント毎の営業成績は次のような割合になります。樹脂事業(プラスチック)が利益の大半をあげています。


部品や部材を扱う優良企業として、日東電工がよく知られています。同社は液晶パネル向け製品を展開したことで、大きく飛躍しました。たとえば偏光版は、市場の多くを住友化学と占めています。偏光板を生産するそれらの企業に対して、当社はプラスチック原料(ポバールフィルム)を提供しています。これは工学的特性が優れていることで、現在でも代替品を排除しています。当社はさらに上流の原料(ポバール)の業界リーダーでもあるため、供給面においても競争力が高く、ポバールフィルムは80%のシェアを確保しています。

もうひとつの主力製品エバール(EVOH樹脂)は、他の一般的なプラスチックよりも空気などの気体をよく遮断する特徴を持っています。従来の代表的な採用先は食品包装材でしたが、最近は自動車の燃料タンクでの採用が増えています。

これらのプラスチック以外にも、独自な特性を持つ製品を展開しています。主なものとして、液状ゴム<クラプレン>、透明で柔軟なアクリル系熱可塑性エラストマー(ゴム)<クラリティ>、高耐熱性樹脂<ジェネスタ>があり、いずれも売上拡大が期待できます。

<投資に至った背景>
日本企業の中では、当社は今後もまずまずの成長が期待できる一社と捉えていたのですが、市場も妥当な評価をしていたため、株式を買うには至っていませんでした。しかし昨年(2012年)は株価が低調に推移したため、割安な金額に達したと判断し、投資することにしました。

1. 主力製品の継続的成長
当社が成長できると考える理由は、主力製品ポバールやエバールがいくつかの観点で利益拡大が期待できるからです。個別にみると第一にあげられるのが、地域的な市場の拡大です。直近の動向としては北米において、生産拠点を拡大したり、川下の企業を買収して展開を進めています。

第二に、適用製品の拡大です。これは、日常的なマーケティングで進められる一般的なものです。が、以前に信越化学の回でも感じたのですが(過去記事)、上流に近い素材製品は市場での認知が進むと代替品への切り替えが起こりにくく、製品ライフサイクルが長期にわたる傾向があります。ポバールやエバールといった製品も、性能を顧客に認知してもらい、既存材料からの切り替えがまだ進行している段階です。軽薄短小化の進展も追い風となっています。マーケットシェアの面でもリードしており、優位な立場にあります。いずれはより高性能な素材に置き換えられたり、価格面で譲歩を余儀なくされるのでしょうが、顧客や適用先が多様で、シェア全体が浸食されるには時間がかかります。

第三が、コスト増に伴う製品価格改定、つまり値上げです。独占・寡占的な地位を活かせる製品については、ナフサ価格の上昇を製品価格へ転嫁することができます。

最後が、生産性向上によるコスト低減です。投資を検討した時点ではこの観点には気づいていませんでした。少し前に読んだ本から受けたアイデアですが(過去記事)、ふりかえってみると当社の説明会で経営陣が「コンパクトな新規設備」と発言していたことが思い出されます。効率化によって利益をしぼりだせるというのは、別の意味で魅力のある事業だとみています。

2. シーズ志向の好循環
研究開発の観点で成功している素材や部品メーカーを観察すると、2つのやりかたがみえます。ひとつは少し先の市場動向を的確にとらえ、すじのよい製品を開発して提供すること。これにあてはまる企業には日東電工やJSRなどが考えられます。マーケティングと研究開発がうまくかみ合った上で経営陣が機動的な采配を発揮することが要求されるため、総合力という意味で模倣しにくい競争力を持つ企業だと評価できます。

もうひとつは、独自の基礎的材料の研究開発や量産化に成功し、応用製品に展開するやりかたです。当社はこちらに当てはまると考えます。このやりかたの評価できる点は、2つの個人的な仮説に基づいています。第一が「独自な基礎材料は、応用の際にも独自の性質をあらわしやすい」とするものです。新規の適用先を探究する際に、独自な特性を持つ材料はそもそも化学組成や構造に特徴があるため、応用したあとでもそれが引き継がれ、思わぬ特性を導き出すのではないかと想像します。第二に「シーズをみきわめて育てる好循環が、企業内のDNAに刻み込まれる」とするものです。一般に、最初の成功を収めて財務的な安定が得られると、ふたたび同じやりかたを志向しやすくなるものです。成功体験に酔って転落することは少なくないので、このサイクル自体は両刃の剣として働きます。しかし第一の仮説が成り立つとしたら、良いサイクルとして働く可能性が高まります。独自性やニッチに生きる道を大切にするようになれば、より自律的な企業文化をはぐくむ可能性を秘めているからです。ただし、現在の当社に対して楽観視しているわけではありません。あくまでも「望ましい可能性が期待できる」という程度です。

3. 好財務
2011年度末の時点で総負債控除後の現金等流動資産がおよそ1,000億円あり、自社株買いや買収に使える点で魅力を感じました。なお当社の有形固定資産純額(除く建設仮勘定)は、約1,300億円です。

<リスク>
1. 次の大型製品がみえないこと
上の図で示したように、利益の大半を樹脂事業(ポバールやエバール)に依存しており、多岐な採用が見込まれる他の基礎的製品は顕在化していません。市場の開発は日々の地道なマーケティングを踏まえたものであり、将来の市場の幅や深さを予想するのは難しいものです。さらに投資家の視点で当社の次世代製品を占うには、専門知識と洞察力が要求されます。その意味で、個人的には次の大型製品の可能性はまったくみえていません。

2. ディスプレイ市場における、液晶から新技術への急速な変化
上記と関連する話題ですが、液晶パネルの偏光板の材料であるポバールフィルムにおいて当社は市場を寡占しており、高水準の利益率を維持していると思われます。そのためディスプレイの市場や技術動向が当社の利益に大きく影響するとみるべきです。直近のニュースで「超複屈折フィルム」を採用した新型液晶パネルがとりあげられていました。これは液晶技術を延命させるのに寄与すると思われる新技術です。しかし、有機ELのような非液晶技術においても革新を目指した研究がすすめられているでしょうから、遠くない時点(たとえば10年以内)で液晶が新技術に置き換えられる可能性は大きいと考えます。

3. 生産拠点の災害リスク
主力生産拠点の岡山事業所は規模が大きく、川上製品を生産していることもあり、災害が発生したときには当社全体でみた製品出荷が滞る恐れがあります。しかし地震リスクの小さい地方であるとともに、国内外に他生産拠点が展開されており、大きなリスクではないと捉えています。

<売買記録>
2012年7月下旬から10月上旬にかけて購入しました。平均購入単価は900円弱で、予想PER9倍程度の金額でした。株価がもっと下落するのに備えていたこともあり、本格的な買い付けには至りませんでした。割安な水準になれば、今後も買い増ししたい銘柄です。

2013年1月31日木曜日

2012年の投資をふりかえって(3)新規・追加投資編(マイクロソフト)

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前回に続いて3件目の企業です。

<当社の概要>
当社の主力製品WindowsやOfficeは日常的に使われているものなので、細かくはとりあげません。ここでは事業部門ごとの営業利益の推移をみておきます。事業部門は5つあります。Windows、サーバー及び開発ツール、ビジネス向けシステム、娯楽(Xbox)及びデバイス(Phone)、オンライン広告(Bing, MSN)です。


要約すると、Windowsは横ばい、サーバーやビジネス向けシステムは成長中、娯楽はKinectのヒットで浸透し累積損失を取り戻している段階、オンライン広告は赤字継続の上に巨額の買収評価損を計上、となります。

<投資に至った背景>
本ブログで何度か取り上げているファンド・マネージャーに、アーノルド・ヴァンデンバーグという方がいます。読みごたえのある彼のレターは、何年か前から目を通してきました。当社に興味を持ったのは、最近の彼の文章を読んだのがきっかけです。大企業にはあまり投資しない時期が続いていたので、当社の経営状況を確認したのは初めてでした。PERが10倍前後で配当率が3%強と、単純に割安だと感じました。当社の利益の伸び率を調べてみると、グーグルやアップルからは離されていますが、2006年度から2011年度の5年間でEPSは倍増しています(2012年度は多額の評価損があったので対象から外しました)。当社の株式が不人気なのは、人気企業とくらべて低調だからか、それとも将来を見越したせいなのか。どちらにせよ、調べて考える価値のある企業だと判断しました。

当社の業績動向をみるさいに、さきに挙げた5つの事業分野ではなく、顧客種別に分けて考えてみます。消費者向けと企業向けの2つです。

消費者向け部門: Windows、娯楽(Xbox)、オンライン広告(Bing, MSN)
企業向け部門: Windows、サーバー及び開発ツール、ビジネス向けシステム(Office等)、デバイス(Phone)

当社の将来において実現性が高いと考えられるシナリオは、「消費者向け事業は伸び悩むが、企業向け事業は成長する」ものと考えます。この組み合わせであっても、一定の利益を株主に還元してくれるだろうと判断しました。当社が大きく成長したきっかけはMS-DOSやWindows、Officeといった企業向け製品であり、企業向けの商売には強みがあります。反対に、消費者に対するマーケティングや政策は、競合他社とくらべて優れているとは言えません。生え抜きの経営者が指揮をとる間は当社のDNAは変わらず、この傾向は今後もつづくものと予想します。

企業向けの需要が期待できる理由はいくつかあります。第一に、企業におけるIT化は米国で大きく進展していますが、他の国でも同様の道をたどる可能性は高く、マーケットは今後も拡大するものと考えます。当初は低コストの類似製品を選ぶかもしれませんが、組織の規模が大きくなり、対外的な取引が多くなるにつれ、当社製品のようなデファクト・スタンダード的なITシステムに移行するとみます。新興国が先進国を追いかける際にITの利用は梃子として働くため、教育水準の高い国のマーケットはいっそう期待できます。

第二に、当社の製品戦略がITツールの進展やデータ増大の潮流に乗っていることです。主要顧客である大企業や大規模な組織には、規模の大きさが持つ利点があります。IT武装化によって生産性を向上できることも、そのひとつです。規模の経済が効く上にネットワーク効果が働くことで、大きな組織ほど統一的にIT化することで利益を享受できます。当社は先駆者的な製品を開発販売するのではなく、社会的にある程度認知された情報ツールを企業向けに製品化してきました。過去数年分の10-Kを読むと、LyncやSharepointといった企業向けの情報インフラ的製品が売れていることが示されています。これらのシステムの裏側ではデータベース製品SQL Serverが稼働しており、これも毎年のように売上が増加しています。これらに付随して、サーバーOS製品Windows Serverやシステム管理製品System Centerも売れています。とどめはサポートサービスで、これも前述の売上増に従う形で伸長しています。このように、芋づる式に売上をあげられる製品構成がとられています。最後に、これらの製品間あるいはメール製品Exchangeとは連携的に機能しており、他社製品への乗り換えを難しくしています。

その他の増収の機会としては、以下のようなものが考えられます。
・サブスクリプションやライセンス料金の値上げ
・違法コピーから正規品への移行

<リスク>
1. 消費者向けWindowsのシェア低下
各種タブレットが出現したことで、消費者のWindows離れが進みました。この流れが継続し、一定の地点までシェアを失うリスクがあります。すでにWebブラウザーIEのシェアは大幅に低下しており、消費者向けOSの将来を暗示しています。Windowsは企業向けを強く意識した製品なので、守勢に回ると消費者にアピールしにくい側面があります。当社が消費者向け市場で戦い続ける当面の戦略は、タブレットPCを強く推し進め、キラーアプリケーションを開発したり、自陣営にひきつけることと考えます。また当社の持ち味である長期戦を戦いぬき、相手のミスをねばりづよく待つことも必要でしょう。しかし、ITツールに慣れた消費者の移り気を考えると、このマーケットでOSを独占できる時代は終わったようにみえます。さらに当社は、IT業界を席巻した時期に悪いイメージを確立してしまい、消費者に好かれていない歴史を背負っています。本丸である企業向けOSのシェアをある程度守ることができれば、後退もやむを得ないと考えます。

2. ビジネス向けシステムのシェア低下
グーグルにOfficeの顧客をとられ、またクラウドシステムのシェアも獲得できない。このようなシナリオを想定することはできますが、現段階では大きなリスクには至っていません。その理由の筆頭にあげられるのは、よく言われるように、取引上の都合を考えると自社だけが別システムに移行するのは難しい点です。第二に、一般的に企業はITシステムの乗り換えには消極的な点です。製品の印象やマーケティングに反応しやすい消費者とは違って、移行にかかる工数やコストやそれに伴う機会費用、運用開始後のリスクを重視するからです。また従業員(すなわち被雇用者)の立場からみても同様で、たとえば自分の作成したファイルやノウハウから離れたくないといった心理的傾向が働きます。第三に、同等の製品やサービスを当社も提供できることです。なおOfficeの売上の多くは企業向けで、消費者向けは小さな規模にとどまっています。

3. 新市場参入の逸失から始まる、既存事業への脅威
過去をふりかえると、グーグルやアップルといった勢いのある企業は、適切な戦略にもとづいて攻勢をかけてきました。つまり、強者に対して正面から戦うのではなく、周縁を切り崩しながら中央に向けて進出するやりかたです。アップルがWindows向けにもiTunesソフトを無料配布したのはトロイの木馬的な戦略で、消費者向けの新市場を攻略する礎となりました。グーグルはIT技術の進展によって得られた果実を活かして消費者向け市場を身軽に攻め、Web検索や強力な電子メールサービスといった領域を短期間で席巻しました。いずれも、かつて当社が飛躍しはじめた頃の姿と重なるものがあります。一方の当社は守る立場で、周縁で戦うゆえに地力をいかせず、身重なままの戦いを強いられてきました。従業員の質も、相対的に劣ってきているのかもしれません。当社がこのような問題に再び直面するリスクは、ほぼ間違いないでしょう。

<売買記録>
大半は2011年に購入しましたが、2012年の後半にも少し買い増ししました。平均購入単価は26.5$で、現在の株価は28$です。


<おわりに>
当社に投資する理由を書き連ねてきたものの、当社の競争優位性がどこまでつづくのか、確信はもっていません。隆盛を極めたIBMが波から落ちるまでの期間をふりかえると、当社が衰退しはじめる時期もそれほど遠くないかもしれない、という想いはあります。テクノロジー業界ではいつまでも独走できない。当社に向けられた市場の評価は、このような不安が積み重なったものだと思います。

2013年1月14日月曜日

2012年の投資をふりかえって(3)新規・追加投資編(任天堂)

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前回に続いて2件目の企業です。

■任天堂(6157) (当社Webサイト)

<当社の概要>
事業内容は説明するには及びませんので、ここでは事業の現状を自分なりに概括します。

前期(2011年度)は450億円の損失を出しました。新型据置機Wii U発売発表にともなうWiiの失速と、新型携帯機3DSのマーケティング上の失策(価格設定および当初のソフト展開)が重なった結果ですが、大幅値下げを敢行したため、片肺どころか片方のエンジンが逆噴射したともいえる状況でした。

今期(2012年度)ですが、3DSはマスマーケット向けソフト「どうぶつの森」シリーズ新作を日本で発売したことで、国内市場ではハードの普及が軌道にのりました。一方、Wii Uはこの年末から販売を開始しました。先代のWiiには水をあけられていますが、一般的な水準からみれば、そこそこの出だしです。全体的にみれば、業績回復に向けて評価できる一歩を踏み出しています。

来期(2013年度)の目標としては、次の2点が予想されます。第一に、日本以外の市場における3DSの浸透です。もうひとつのマス向けソフト「ポケモン」シリーズ新作を10月に発売すると先日発表しており、今年にかける意気込みを感じさせます。第二に、Wii Uの主戦場である北米において、コアゲーマーへの普及を拡大させ、サードパーティーの参入意欲を維持向上させることです。これは当社の戦略にしたがうもので、次の展示会E3にむけて何らかの策を準備していると思われます。決算説明会で岩田社長が「お金の使い方」について述べていたコメントが思い返されます(過去記事)。

<投資に至った理由>
当社の中長期的な成長性が見通せたわけではなく、単に株価とくらべて企業価値が割安に思えたことが理由です。時価総額1兆2,800億円(株価10,000円)に対して、前期末(2012/3)の負債控除後の純現金有価証券9,000億円弱(一株当たり7,000円弱)を比べると、割安にみえました。およそ4,000億円で当社を買えることになるからです。このような、資産面から値踏みするやりかたはバリュー・トラップにおちいる可能性を秘めていますが、それなりに業績が回復することを前提にしています。確率的に大きくないとみますが、今後2年間ぐらいで一定の業績回復が果たせなければ、資金をひきあげるつもりです。なお長期保有(10年超)の対象としては、評価するのがむずかしい企業と感じています。

売上成長の手段や機会としては、少なくとも次の3点は期待できるとみています。
・市場の拡大(新興国)
・新たなIP(ソフトの新シリーズ)の創出
・インフレに追随した値上げや、競合動向を見据えた上での価格設定

Wiiが登場した2007年3月期以降の累積でみると、純利益合計が約1兆円に対して配当合計が約6,000億円と、利益の過半は株主に還元されています。一方、貸借対照表では土地建物等の有形固定資産や繰延税金資産(純額)が1,000億円ほど増加しています。差額分の資産がどうなったかは、追いきれませんでした。この期間にドルが120円から90円に下がっていますので、外貨建資産の評価減が大きいかもしれません。 このように、少なくともWii時代をみると、得られた利益は株主に還元されたり、目減りした外貨建資産となり、大規模な再投資には回っていません。買収をしてのれんを大きく増やすようなことはしておらず、財務は健全なままですが、投資家として当社を評価する際には、利益の推移が事業の成長とどうかかわるのか、見誤らないように注意する必要を感じます。なお従業員数は、連結ベースで50%増となっています。

<リスク>

・Wii Uの失敗
3,4年先を考慮すれば新型機Wii Uはそこそこ普及していることを期待していますが、Wiiに迫るのは難しいと想像します。あたかも、当社のイノベーションと消費者が製品を受け入れる心情には長期的な共振サイクルがあるかのようです。波に乗っていないと感じる例としては、たとえばWii Uの特徴であるタブレット型コントローラーはiPadなどを連想させて一見わかりやすい面がありますが、逆にiPadを持っているので十分だと思われてしまう位置づけにあることも、そのひとつです。

ただしこの件は、事業上というよりも投資家が企業価値を判断する際のリスクかもしれません。長期的な事業継続を考えるならば、短期的な大成功を追うよりも、たとえばコアゲーマーを取り込んで当社顧客層の厚みを増すといった地道な積み重ねのほうが、正しい道筋かもしれないからです。

・ゲームソフトに対する価格意識の下方方向への変化
岩田社長が指摘したように(岩田聡GDC講演内容の7-8ページ目)、スマートフォンやタブレット端末では無料や安価なゲームをオンラインで気軽に入手できるので、既存ゲームに対する消費者の価格意識が変化するのではと危惧するものです。思い浮かべやすい例としては、100円ショップが登場したことで、日用品に対する品質意識が後退した事例があげられます。

この件は致命傷には至らないのでは、と予想しています。当社製品の主要ユーザーである子供にとっては、テレビゲームはクリスマスのプレゼントやお年玉の使い道として認知されています。それゆえ、「安くない値段とそれを裏付ける品質」にはそれなりの対価を払う価値があるとみなされ、値崩れしにくい傾向が今後も続くものと考えるからです。

・競合他社の拡大
汎用モバイル機器やネットワーク技術の進展によって、ハードの優位性やサービスの独自性が打ち出しにくくなってきました。差別化しようとしても無駄な努力におわるだけでなく、自社の得意な領域から逸れやすくなるリスクがあります。当社は求心力を持続できる企業のほうですが、たとえば業績が思うように回復しない時期に脱線する可能性は否定できません。なお、この件について逆からみると、ハードウェアコストの低下を見込める可能性があります。

・優れた経営者への依存
当社の事業は明らかに水商売的な性格が強いものですが、その反面、たくさんの消費者に認知されている知的消耗品を取り扱うことで、強力な支持を集めています。この競争優位性を表現すれば「強いが脆い」といったところで、経営者の手綱さばきにも細心の注意が求められます。当社は先代の山内氏、現任の岩田氏と、能力の高い経営者のもとで成功をおさめてきました。またゲームクリエイターの「神様」宮本専務も非常に大きな役割を果たしています。このような稀少な人材が次世代にも維持されるかどうかは、顕在化する可能性の大きいリスク要因とみています。

<売買記録>
2012年の5月と7月に買い、平均購入単価は8,930円です。現在の株価は9,070円ですが、その前日には8,590円でした。市場の見方は、まだ懐疑的なようです。

2013年1月1日火曜日

2012年の投資をふりかえって(3)新規・追加投資編(日進工具)

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一昨年(2011年)や昨年(2012年)は、主力の投資先が収穫期に入ってきたこともあり、株価上昇とともに少しずつ売却し、以下のような新規投資先へ資金を向けてきました。バイ・アンド・ホールドを理想としてはいますが、目の前の割安さにひかれる弱さがあります。

投資の基本的な方向性としては、循環的な銘柄を中心にしたいと考えました。その種の銘柄の株価が割安だったことと、将来の景気回復期に向けた投資をしたかったのが大きな理由です。投資先の業界は、自分がそれなりに理解できるものに限定しています。購入ペースはそれほど急いでいないため、投資金額は主力投資先ほどには達していません。株価が下落すれば、適宜買い増しするつもりです。

具体的な投資先企業は、次の5社でした。

・日進工具(6157)
・任天堂(7974)
・マイクロソフト(MSFT)
・クラレ(3405)
・日精エー・エス・ビー機械(6284)

何回かにわけて、各投資先について簡単に触れます。なお記載順序は、投資評価額の大きなものからとしています。

■日進工具(6157) (当社Webサイト)

<当社の概要>
当社は、超精密加工用の超硬工具(マイクロエンドミル)を製造しています。主なユーザーの業種はエレクトロニクスや自動車関連で、金型の製作だけでなく、部品加工にも使われています。同セグメントにおけるシェアは30%強でトップに位置しており、前期は売上高57億円に対して純利益5.3億円と、高い利益率を維持しています。

<投資に至った理由>
当社のことは数年前から継続的に監視してきましたが、PERが低く、余剰現金資産が豊富なことから割安だとみていました。ただし、株式購入までは至りませんでした。

当社の事業展開は、微細加工用の工具に注力しているのが特徴です。スマートフォンに代表されるように、エレクトロニクスの分野では軽薄短小が進展しており、その方向性は継続するものと考えられます。市場環境という面で、当社は追い風に乗っているとみています。

小さな消耗品を作って高く売れているという商売には、いくつかの参入障壁が隠れていると考えています。第一に、市場規模があまり大きくないことで、大企業の本格的な参入時期を遅らせること。第二に、製品の優位性が製造プロセスにも依存するため、組立系の製造業とは異なって容易には模倣しにくいこと。第三として、製品固有の特性や性能がものをいうため、顧客が離れにくい傾向があることです。このような優位性は、医療用の精密消耗器具を製造販売しているマニーや朝日インテックといった企業のものと似ていると感じています。

またよくあることですが、技術の極限を追求する企業には最新の需要情報が集まりやすく、新製品開発を推し進める好循環が当社でも働いているのではないかと推測します。この好循環はチャーリー・マンガーが言うところの自触媒反応的に進み、ユーザー拡大の「波に乗りつづける」原動力になると考えられます。

投資に踏み切る理由として上記のようなものを漠然と考えていたのですが、どこかひっかかるものがあり、二の足を踏んできました。それを覆したのが、2011年の大地震後の当社の対応でした。具体的には、生産再開までの復旧が早かったことと、顧客からの要望を受けてその後は安全在庫を積み増したことの2点です。これによって自分なりに悟りが得られたように感じ、株式購入に踏み切ることにしました。

<リスク>
第一に、主力の製造拠点が仙台1か所のみに集中していることが挙げられます。火災等の災害に見舞われると、バックアップする拠点がありません。小さな企業が生き残るには運が大きく左右するものですが、拠点リスクはその典型かと思います。ただし当社の場合は現金資産が豊富なため、何かがおきても、ある程度までは再起可能とみています。ただしその場合、企業価値が大きく毀損するのは避けられないでしょう。

第二に、他社が本格的に参入することで価格競争を招き、利益水準が低下する恐れがあります。また当社の製品は物理的に接触させて加工する切削工具ですが、他の方式(化学的、電気的、光学的)の技術が大きく進展することで、中長期的に要素技術が切り替わる恐れがあります。個人的な予想ですが、これらのリスクは顕在化するにしても、それほど直近ではなく、5年や10年以上先のことではないかとみています。

第三に、マーケットの限界を個人的に理解できていない点です。微細化というマーケットにどれだけの深みがあるのか、自分の洞察力に自信がありません。

第四は、株式の流動性リスクです。

<売買記録>
以下のチャートのように、震災対応がおちついた2011年秋から買い始め、2012年に何度か買い増ししました。ふだんはあまりしないのですが、当社については買い上がっています。平均購入単価は1,200円弱で(分割調整済)、現在の株価は1,462円、予想PERは7.7倍です。




2012年12月25日火曜日

2012年の投資をふりかえって(2)一口投資で撤退編

4 件のコメント:
ピーター・リンチが投資する際に、「気になった企業はひとまず少し買い付ける」という文章をどこかで読んだ記憶があります。この1年はわたしも同じやり方をとってしまい、リンチさんには申し訳ありませんが、あまり誉められたものではないと自省気味に感じています。

今回は、昨年や今年に少額を投資したものの、早々にひきあげた銘柄を振り返ります。基本的には、昨年の投稿で注目銘柄としてあげた企業が対象となります。

6140 旭ダイヤモンド工業
6157 日進工具
3891 ニッポン高度紙工業
6988 日東電工
5201 旭硝子
5333 日本ガイシ
2178 トライステージ

上記のうち、最終的に本格的に投資した銘柄は1社のみとなりました。各銘柄について、以下に売却した理由等を若干記します。

■旭ダイヤモンド工業(6140)
当社は、機械加工で使用する工具のうち、主にダイヤモンドを刃材とするものを製造しています。ニッチで利益率がまずまずだったのですが、近年になってシリコンウエハー切断用のワイヤー「エコメップ」が大ヒットし、利益水準を押し上げました。また財務や配当方針の面でも、株主のほうを向いているように見受けられます。このように、自分の投資方針と合致している会社なのですが、どこか腑に落ちない点が残り、投資をひきあげました。購入は1000円強、売却は1077円で若干の売却益ですが、時期がたまたまよかったようです。その後、昨年来の太陽電池の需給バランスが悪化したことで主力のエコメップの販売が伸び悩み、それに同調して株価も低迷気味で、現在は780円前後です。

何がひっかかっているのか自分でもよくわからないのですが、きちんと納得できないときは、じっとするか手を引くことを旨としています。

■日進工具(6157)
当社は今年の主要投資先となったので、別の回でとりあげます。

■ニッポン高度紙工業(3891)
当社は、主にコンデンサ用セパレータを製造しており、製造技術や素材に特徴があることで、それなりの利益率を確保してきました。地方に本拠地をかまえていることもあり、個人的には応援したい企業なのですが、投資はやめとしました。購入は1400円前後、売却は1250円前後で損失を出しました。現在の株価は650円前後です。

投資をやめた主な理由は2つです。まずは製造拠点の立地についてです。株式投資を始めたころから、リスク管理の中心テーマとして巨大地震のリスク回避を念頭においてきました。今回は東日本でしたが、東海地方を最大のリスクと捉え、同地域周辺を中心拠点とする企業への投資は避けてきました。当社の主要拠点は高知県ということで、当初は確認していませんでしたが、拠点の地図をみると海岸沿いに立地しており、津波の直撃を受ける恐れがありました。なお、このリスクは当社の有価証券報告書に明記されており、新工場を日本海側に建設する大きな理由にも挙げられています。

第2の理由は、設備投資費用が重いことです。この影響のせいか、財務諸表をさかのぼって読むと、株主資本がそれほど増加していない点が気にかかりました。

■日東電工(6988)
投資家に人気のある企業なので、他言は無用かと思います。和製3Mという言葉がぴったりで、経営がうまくまわり、勢いの良さが感じられます。しかし昨年に2900円前後で購入するも、早々に3200円前後で売却しました。現在は4000円前後です。売却した理由として、利益が液晶関連の事業に偏重していることを考えましたが、当社の実績を鑑みれば、もう少し長い目で見て、売らずに保有すべきだったと感じています。株価がまた下がることがあれば、継続保有したいと考えています。

ただし、このような優良企業は全部は売らず、最後の一口(1単元)だけは残すようにしています。

■旭硝子(5201)
当社は液晶ディスプレイ用ガラスで世界シェア第2位につけており、寡占的な事業のため、利益率が高水準です。購入したのは1単元のみで600円、売却は570円なので売却損です。現在は640円です。

売却した理由は2つです。第一に、競合他社のコーニングを調べると、そちらのほうが有望かつ割安に思えたからです。ただし、同社の株式を買うには至っていません。第二は、利益水準と比して自動車関連の事業に関する設備投資が重いことです。これには中長期的な成長戦略が織り込まれているのかもしれませんが、うまく判断できませんでした。きちんと納得できなかったので、利益が出ていたとしてもいずれは売却したと思います。

■日本ガイシ(5333)
当社には投資していません。

■トライステージ(2170)
以前の投稿で触れたので、ここではとりあげません。

これ以外の「一口投資」としては、マニーに投資しました。数単元購入しましたが(2600円強)、日東電工と同じように、株価が若干上がったところで売却し、今は1単元だけの保有です。現在は3200円強です。売却した理由は、そもそもの自分の買値にもうひとつ納得できなかったからです。買値に自信が持てない最大の要因は、当社の顧客動向をきちんと理解していないことです。そのため、顧客との力関係や市場の成長性を、自信をもって判断できていません。当社に対しては、株価が大きく下がらないと本気になって勉強しない、という悪い面がでています。

2012年6月15日金曜日

TOPIX Core30ひとかじり(2)任天堂(岩田社長、円高の見解)

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任天堂の経営陣が、E3でアナリスト向けにプレゼンテーションを行った様子が公開されています。その中で、現在の円高をどのように捉えているか岩田社長が答えていますので、ご紹介します。引用元は、2012 E3 アナリスト Q&Aセッション質疑応答4ページ目です。

<A10 岩田社長>
(前半省略)
ただ一方で、かなり長いレンジで考えますと、国のファンダメンタルズ(経済指標)から考えて、今の為替レートが今のまま長く続くというようには私は見ておりません。また潮目が変わるときが必ず来ると思っており、そのときのことも考えながらいろいろな対策をしています。二度と元に戻れないような方法を選ぶのが正しいとは思っていません。

この質疑に限らず、アナリストが当社の今後の業績に不安を抱いているのが、全体を通して感じられます。個人的には、そこに機会があるとみて、当社の株式を若干買い始めています。平均購入単価は9,550円で、現在の価格は9,000円前後。8,700円まで下げたことがあるので、少し早かったようです。次の買い増しは、それよりもう少し下の予定です。ただし、当社はこれまでの自分の投資基準からはずれた企業なので、あまり入れ込まないように注意しています。

もうひとつおまけです。財務体質を生かす機会はあるのかという主旨の質問に対する、岩田社長の回答です。投資家好みの言葉がでてきています。引用元は1ページ目です。

<A3 岩田社長>
まず、任天堂の強固な財務体質をどう生かすべきかということに関してはさまざまな可能性を考えています。

(中略)

来年お会いするときまでに、「任天堂はお金の使い方が下手だ」と言われないように努力したいと思います。

2012年6月4日月曜日

株価が上がりそうだから買うのではない(ウォーレン・バフェット)

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アメリカの経済誌Forbesの1974年11月1日号に掲載されたウォーレン・バフェットのインタビューは、次の有名な言葉で締めくくられています。「今こそ投資をして、お金持ちになりましょう」(Now is the time to invest and get rich.)。今回は同記事の中から、株を買うときにはどうしたらよいか、ウォーレンの助言をご紹介します。(日本語は拙訳)

常識的なものになりますが、あきれるほど安値になっている株を買うことです。どういう基準で安いのかというと、以前から使われているような、純資産、簿価、継続価値[DCF等]といった指標があります。あまり手を出しすぎるのではなく、自分の知っているものにこだわることです。自分で理解しているビジネスだけに的をしぼり、さきほど挙げた評価額や、よい経営者がいるか、厳しい時期でも深手を負わなくてすむかといった点で評価し、基準に達しないものは除きます。わたしの場合はハイテク企業やコングロマリットは理解できないので、手を出しません。そして、株価が上がりそうだから買うのではなく、自分で所有したいと思う企業を買うのです。

Just commonsense ones. Buy stocks that sell at ridiculously low prices. Low by what standards? By the conventional ones of net worth, book value, the value of the business as a going concern. Above all, stick with what you know; don't get too fancy. "Draw a circle around the businesses you understand and then eliminate those that fail to qualify on the basis of value, good management and limited exposure to hard times." No high technology. No multicompanies. "I don't understand them," says Buffett. "Buy into a company because you want to own it, not because you want the stock to go up." (p.41)

以下の図は、この記事が掲載された頃のS&P500のチャートです。赤の矢印は、掲載号の発売日を示しています。さすがはウォーレン、どんぴしゃりです。








一方の日本市場、株価の底がいつやってくるのかわかりませんが、個人的には5月から株を買い進めています。先走ってしまったので、このところは手綱をひいていますが、アメリカ大統領選の11月に向けて、機をみながら買い続けるつもりです。

2011年12月29日木曜日

銀に関する基本知識(1)需要と供給

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12/28も銀CMEスポットは下落し、終値が$27.15(-5.50%)となりました。今夜はETFのSLVを少し買い増しします。








さて、今回は銀の需給動向について基本情報をご紹介します。わかりやすい参考資料がThe Silver Instituteにあります。World Silver Survey 2011 A Summaryです。

以下は、同書p.6にある2010年の世界の銀需給動向です。(日本語訳は拙訳)
単位は、Moz(ミリオンオンス)です。

■供給
鉱山からの新規産出 735.9
政府部門による売却 44.8
スクラップ 215.0
鉱山業者のヘッジ売り 61.1
--------------------------
合計 1,056.8

■需要
産業用途 487.4
写真 72.7
宝飾品 167.0
銀食器 50.3
コイン 101.3
純投資 178.0
--------------------------
合計 1,056.8

需給の両側の合計値が一致しているのは、需要側の純投資の値で帳尻を合わせているためです。

ここ10年ほどの需要動向の推移はp.10に載っています。総需要はほぼ横ばい状態だったのですが、構成比は変化しています。デジカメが主流となったことで写真用途が漸減する一方、産業用途が漸増しています。しかし写真向けはもはや70Moz強しか使われておらず、減りしろはあまり残っていません。銀の電気的特性を考えると今後も産業用途は増加すると思われるため、総需要は漸増すると個人的には予想しています。

2011年12月15日木曜日

金銀スポットも下落(2011/12/14)

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金と銀の値段がさがってきました。昨日の銀CMEスポットの終値は$29.02、銀ETFのSLVは$28.07です。3ヶ月ほど前に話題にしたときの水準に戻りました(9/23(金)のSLVは$29.98)。以下はCMEスポットの3年チャートです。









少しずつですが、またSLVを買い始めました。一方、株式のほうは静観中です。

2011年10月7日金曜日

チャンスに対する備え

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投資の成功要因としてチャーリー・マンガーの発言を先だって取り上げましたが、信越化学工業の金川会長が似ているのでご紹介します。先日読んだ『危機にこそ、経営者は戦わなければならない!』からの引用です。

経営者は、常に備えていなければなりません。ピンチに対してもそうですが、チャンスに対しての備えも重要です。
チャンスが来たときには資金がなければどうしようもありませんが、よそから資金を調達するというのは大変なことです。チャンスというのは突然来ることがよくあり、そんな場合には資金の用意はさらに難しくなります。

チャンスというのは本当に予測できないものです。ですから、いつそれがやって来てもいいように資金を用意しておくことが出来るならば、それが望ましいわけです。たとえ、チャンスがしばらくやって来ないとしても、キャッシュをそのまま保持しておくだけのことで、損をするわけでもなければ、会社が傾くわけでもありません。

この8月から、少しずつ株式を買い続けています。できるだけ安値で買いたいのですが、現在が株価の底なのかどうかは検討もつきません。歴史をふりかえると、下げ相場では30%から40%の下落は珍しくないので、まだ下がるのかもしれません。ですが、目の前の株価はそれなりのチャンスと捉えています。

割安になった既存銘柄を少し買い増し、また新規投資先をいくつか物色中です。既存のやつは自信を持って買い増しできるのですが、新規のほうは勉強不足なので、投資額はわずかにとどめています。ただしトライステージは安全余裕がそれなりに確保されていると判断し、牛歩ペースで買い続けています。

2011年9月22日木曜日

気に入っている株が値下がりしたら

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ニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストのどちらのWebサイトも、トップ記事は株式相場の下げを取り上げています。MarketWatchでは「ダウ、350ポイントの下げ」とのこと。アメリカ、欧州、そして中国と、どこも先行きの暗い経済ニュースばかりです。

バークシャー・ハサウェイのチャーリー・マンガーであれば、買いを始めるのはまだ先だと思いますが、下げ相場での心がけとして「Poor Charlie's Almanack」で紹介されている彼のコメントをご紹介します。(日本語は拙訳)
もう何十年もやってきたことですが、我々が気に入っている株が値下がりしたら、たいていは、もっと買い続けました。何かが起きて自分の判断が間違っていたということになれば、売ってしまえばいいのです。でも自分の判断に自信があるんだったら、安値に乗じてもっと買うべきです。

Over many decades, our usual practices is that if [the stock of] something we like goes down, we buy more and more. Sometimes something happens, you realize you're wrong, and you get out. But if you develop correct confidence in your judgement, buy more and take advantage of stock prices.

というわけで、私もバークシャー・ハサウェイ(BRK.B)を少しだけ買い増ししました。今回の単価は$65.58です。前回に買ったのは2009年3月9日で、単価(調整済)は$46.04でした。