ot
ラベル 世知入門 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 世知入門 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2012年4月7日土曜日

まだ若ければ、私もそうしたいです(チャーリー・マンガー)

4 件のコメント:
チャーリー・マンガーは順ぐりに世知を説いていくうちに、「規模の経済」の話題にすすみます。そして、その流れを受けて、どのような投資先を選ぶべきか、彼らしい忠告が登場します。

引用元はいつもながら「Poor Charlie's Almanack」の講演その2 「投資やビジネスで活かす世知入門」です。(日本語は拙訳)

長期でみれば、ビジネス自体が挙げる利益よりも大幅によい成績を株式からあげるのは、難しいものです。あるビジネスが40年間にわたって投下資本ベースで6%の利益を挙げるとして、その株をすごく割安に買えたとしても、40年間保有して得られる利益は年率6%ぐらいにおちつくでしょう。その反対に、投下資本ベースで18%の利益を20年から30年にわたってあげられる企業ならば、少しばかり高い株価で買っても大きな成功をおさめられるでしょう。

つまるところは、よいビジネスに投資することです。「勢いにのったおかげ」でそこまで達したようにみえるかもしれませんが、あらゆるスケールメリットも、よいビジネスの条件のひとつになります。[この文章の前では、規模の経済の話題がされている]

そのようなすばらしい企業に一枚加わるにはどうしたらいいか。ひとつには、企業規模がまだ小さい頃に手をつけておくやりかたがあります。例えば、サム・ウォルトンが株式を公開した時点でウォルマートを買ってしまうのです。そうしようとする人も多いですが、これは魅力的な考えですよ。わたしもまだ若ければ、ほんとうにそうするでしょう。

ただ、バークシャー・ハサウェイはもう大きすぎて、そのやりかたは通用しません。我々に見合った大きさの企業が見つからないからです。そのうえ、我々は独自のやり方をしています。ですが、規律を重んじて投資ができる人であれば、小さいうちに見つけるのは、まさしく知的なやりかただと思います。わたしがやってきたやつとは、ちょっとやりかたが違いますが。

あきらかに大きな企業から探すとなると、狙う人も多くて難しいものです。これまでのところバークシャーはなんとかやってきましたが、コカ・コーラに続くような投資が今後もできるかどうかは、わかりません。道は険しくなるばかりです。

理想を言えば、すばらしい経営者が率いるすばらしいビジネスを手に入れるべきです。我々は何度もそうしてきましたが、やはり経営は重要です。GEを率いるのがジャック・ウェルチか、それともウェスティングハウスを経営していた人かでは、まったくの大違いですよ。

Over the long term, it's hard for a stock to earn a much better return than the business which underlies it earns. If the business earns six percent on capital over forty years and you hold it for that forty years, you're not going to make much different than a six percent return - even if you originally buy it at a huge discount. Conversely, if a business earns eighteen percent on capital over twenty or thirty years, even if you pay an expensive looking price, you'll end up with one hell of a result.

So trick is getting into better businesses. And that involves all of these advantages of scale that you could consider momentum effects.

How do you get into these great companies? One method is what I'd call the method of finding them small - get 'em when they're little. For example, buy Wal-Mart when Sam Walton first goes public and so forth. And a lot of people try to do just that. And it's a very beguiling idea. If I were a young man, I might actually go into it.

But it doesn't work for Berkshire Hathaway anymore because we've got too much money. We can't find anything that fits our size parameter that way. Besides, we're set in our ways. But I regard finding them small as a perfectly intelligent approach for somebody to try with discipline. It's just not something that I've done.

Finding 'em big obviously is very hard because of the competition. So far, Berkshire's managed to do it. But can we continue to do it? What's the next Coca-Cola investment for us? Well, the answer to that is I don't know. I think it gets harder for us all the time.

And ideally - and we've done a lot of this - you get into a great business which also has a great manager because management matters. For example, it's made a hell of a difference to General Electric that Jack Welch came in instead of the guy who took over Westinghouse - one hell of a difference. So management matters, too.


私の投資する企業も、大手とは言えないところばかりです。マイクロソフトやバークシャー・ハサウェイにも投資していますが、それはポートフォリオのごく一部です。小さめの企業にはそれなりのリスクがいろいろありますが、割安に放置されやすいのと、成長性が大きいことを考慮し、判断しています。ただし、チャーリーがいうような「すばらしい経営者」は、水準はいろいろだと思いますが、なかなか難しい要件かなと感じています。

なお、チャーリーが世知のひとつとして説明する「規模の経済」は、また改めてご紹介します。

2012年3月16日金曜日

反射的に、にょきにょきと枝をのばす(チャーリー・マンガー)

0 件のコメント:
以前に取り上げましたが、チャーリー・マンガーが筆頭に挙げるメンタル・モデルは「順列と組み合わせ」でした。ただし、それを使うのが目的ではなく、狙いは決定木(Decision Tree)を描いて将来の期待値を求めることでしょう。今回もおなじみの「Poor Charlie's Almanack」の続きを引用します。過去記事では、前段にあたる文章をご紹介しています(「世の中の働きと驚くほど一致する」「慣れるように習え、そして慣れよ」)。(日本語は拙訳)

十分というには程遠いですが、多くの教育機関はこのこと[順列や組み合わせの重要性]を認識しています。例えばハーバードのビジネス・スクールでは、初年度のクラスの結束を強める上で、彼らが言うところの「決定木理論」が大きな役割を果たしています。何をやるかと言うと、高校で習う代数を実生活上の問題に適用してみる、これだけです。学生にはこれが好評で、高校時代の数学がふだんの暮らしに役立つんだと感激するわけです。

バフェットとはずっといっしょに働いてきましたが、彼のような同僚がいることの強みはいくつかあって、彼は何かを考えはじめると頭の中で反射的に、順列や組み合わせのような初歩的な計算を行って決定木を作ってしまうのも、そのひとつです。

Many educational institutions ? although not nearly enough ? have realized this. At Harvard Business School, the great quantitative thing that bonds the first-year class together is what they call “decision tree theory.” All they do is take high school algebra and apply it to real life problems. And the students love it. They're amazed to find that high school algebra works in life.

One of the advantages of a fellow like Buffett, whom I've worked with all these years, is that he automatically thinks in terms of decision trees and the elementary math of permutations and combinations.


個人的な話ですが、サイコロやトランプといった抽象度の高い事象には、順列や組み合わせといったモデルは、わりと違和感なく適用できるものです。一方、企業の見通しとなると想像力も洞察力も足りず、頭に思い浮かぶのは、ぱっとしないモデルばかりです。実践の回数を意識的に増やさないと、力が伸びないのでしょうね。

2012年3月5日月曜日

投資に活かす世知入門(はじめに)(チャーリー・マンガー)

4 件のコメント:
チャーリー・マンガーは学問的な話題を好んでとりあげます。彼には大きな持論があり、全てはそこに流れ込みます。学問は各専門領域にとどまるべきではなく、領域を超えて連携したり融合して使うことでもっと大きな力を発揮する、という主張です。その知識やスキルが、ビジネスや投資判断や日常生活にも適用できるとなれば、私のような一般大衆にとってはうれしいものです。チャーリーは自らがそれを実践し、体現してきました。その成果のひとつがバークシャー・ハサウェイです。バークシャーは売上高が10兆円を超える企業となりましたが、もしチャーリー・マンガーがいなかったらどうなっていたでしょう。企業規模はもちろんのこと、今のような存在感は出せなかっただろう、と思います。

学問的知識やスキルを横断的かつ自在に使えるにはどうしたらよいのか。チャーリーは「頭の中に多面的、学際的なメンタルモデルを作る」ように説いています(過去記事「ほとんどの人より、うまくいくやりかた」)。では、何から取組んでいくのがよいのか。チャーリーは細かな指針はあまり出さないタイプですが、ここではそれらしいことを示しています。短いですが重要な文章なので、ご紹介します。出典はおなじみの「Poor Charlie's Almanack」です。(日本語は拙訳)

基礎的なミクロ経済学的モデル、少しばかりの心理学、少しばかりの数学、そういった一切合財は、私が言うところの「世知を支える普遍的な礎(いしずえ)」を築くのに役立つでしょう。

Well, so much for the basic microeconomic models, a little bit of psychology, a little bit of mathematics, helping create what I call the general substructure of worldly wisdom.


少しばかりの数学として、順列と組み合わせは以前にご紹介しました(過去記事「世の中の働きと驚くほど一致する」)。心理学は既に「誤判断の心理学」シリーズを進めています。このシリーズでは、残りのモデルについて少しずつご紹介していきます。

2012年3月1日木曜日

IBMの株価は、簿価の何倍?(チャーリー・マンガー)

0 件のコメント:
以前に一部をご紹介した、チャーリー・マンガーの講演その2 「投資やビジネスで活かす世知入門」(A lesson on Elementary, Worldly Wisdom as It Relates to Investment Management and Business)で、IBMの名が引き合いに出されていました。今回はその部分を引用します。出典は、おなじみの「Poor Charlie's Almanack」です。(日本語は拙訳)

株式市場では、すぐれた競合や強い組合に頭を悩まされている鉄道会社には、簿価の三分の一の値になることもあります。対照的に、全盛期の頃のIBMは簿価の6倍で取引されていたものです。まさしくこれが、パリミュチュエル方式なのです [賭けの配分方式。代表的な例が競馬]。大ばか者なら、単に鉄道会社よりもIBMのほうが商売の見通しがよいからとみるでしょう。しかし株価を式に当てはめてくらべてみると、どちらの株を選んだほうがよいのか、あまりはっきりしなくなります。パリミュチュエル方式とよく似ています。だからこそ、勝つのは難しいのです。

In the stock market, some railroad that's beset by better competitors and tough unions may be available at one-third of its book value. In contrast, IBM in its heyday might be selling at six times book value. So it's just like the pari-mutuel system. Any damn fool could plainly see that IBM had better business prospects than the railroad. But once you put the price into the formula, it wasn't so clear anymore what was going to work best for a buyer choosing between the stocks. So it's a lot like a pari-mutuel system. And, therefore, it gets very hard to beat.

ところで現在のIBMの株価はUS$200の少し下ですが、PBRのほうは11となっています(Mkt. cap.が230Bで、Total IBM stockholders' equityが20B)。自社株買いを続けているため、株主資本が低く抑えられています。上述の講演は1994年のものですから、時代は変わるものですね、チャーリーさん。

2012年2月16日木曜日

慣れるように習え、そして慣れよ。(チャーリー・マンガー)

0 件のコメント:
前回取り上げた「学ぶ方法」は、学校だけではなく、企業でも重要視されている話題かと思います。「learning process」のようなキーワードで検索すると、インターネット上でも多くの検索結果が得られます。いずれそのような話題をとりあげるかもしれませんが、しばらくはチャーリー・マンガーの語りを咀嚼しつづけたいと思います。今回の引用は、おなじみの「Poor Charlie's Almanack」から、以前に取り上げた「世の中の働きと驚くほど一致する」に続く文章です。どうやって学べばよいのか、一例を示しています。(日本語は拙訳)

[順列や組み合わせといったやりかたを]無意識のうちには、なかなか実行できないものです。なぜそうなのかは、基本的な心理学に通じていれば、すぐにわかるでしょう。そう、脳の中の神経回路は、長きにわたった遺伝的、文化的な進化によって培われたものであり、パスカルとフェルマーの考えのようにはできていないからです。脳は物事を大雑把に見定めてしまうのです。パスカル・フェルマー的な要素も持ってはいますが、うまく働いていません。

だからこそ、この基礎的な数学[=順列、組み合わせ]を使いやすい形で学び、そして実生活で繰り返し使わなければならないのです。ゴルフがうまくなりたくても、もって生まれた体の動きでは自然にスイングできないのと同じです。ゴルファーとして自分がどこまでやれるのかわかるには、正しい握りを覚え、別のスイングを覚えなければならないのです。

By and large, as it works out, people can't naturally and automatically do this. If you understand elementary psychology, the reason they can't is really quite simple: The basic neural network of the brain is there through broad genetic and cultural evolution. And it's not Fermat/Pascal. It uses a very crude, shortcut-type of approximation. It's got elements of Fermat/Pascal in it. However, it's not good.

So you have to learn in a very usable way this very elementary math and use it routinely in life - just the way if you want to become a golfer, you can't use the natural swing that broad evolution gave you. You have to learn to have a certain grip and swing in a different way to realize your full potential as a golfer.


振り返ってみると、小学校で学んだことはきちんと身についているものです。例えば割り算の筆算だったり、分数の割り算だったり。幾度となく繰り返してきたものです。反対に、大学入試の直前に身につけた大量の知識や解法は、入学後まもなくすると消え失せてしまいました。他方、社会人になって身につけたスキルは、日常的な仕事でいやになるほど使ったせいか、これもよく定着しています。こうしてみると、実際的な形で身についていないのは、チャーリーの説くような基本的な学問(高校レベル)のようです。

それらを再学習する際に「使いやすい形で学び、実生活で繰り返し使う」、まだまだ実践できていないのですが、個人的にはこのテーマにこだわって取り組んでいきたいと考えています。

2011年12月12日月曜日

世の中の働きと驚くほど一致する(チャーリー・マンガー)

0 件のコメント:
様々なメンタル・モデルを使って物事を分析しようとするとき、チャーリー・マンガーが筆頭に挙げるモデルは数学関連のものです。今回はおなじみの「Poor Charlie's Almanack」に収録されている講演その2 "A lesson on Elementary, Worldly Wisdom as It Relates to Investment Management and Business"から、数学の話題を引用します。(日本語は拙訳)

最初にくるのが数学です。当然ですが、基本的な計算ができなければなりません。

その上で大変重宝するモデルとして複利計算が挙げられますが、その次にくるのが初歩的な順列と組み合わせです。私の頃は高校2年で教わったものですが、最近の進んでいる私立校では中学2年ぐらいまで前倒ししているようですね。

計算自体は至極簡単なもので、パスカルとフェルマーが1年間にわたる手紙のやりとりで完成させたものです。

やりかたを覚えるのは、そう難しくありません。難しいのは、日常生活で毎日のように繰り返し使い込むことです。このパスカルとフェルマーが築いたやりかたは、世の中の働きと驚くほど一致しています。まさしく真理といえるものです。だからとにかく、このやりかたを身につけるべきです。

First there's mathematics. Obviously, you've get to be able to handle numbers and quantities - basic arithmetic.

And the great useful model, after compound interest, is the elementary math of permutations and combinations. And that was taught in my day in the sophomore year in high school. I suppose by now, in great private schools, it's probably down to the eighth grade or so.

It's very simple algebra. And it was all worked out in the course of about one year in correspondence between Pascal and Fermat. They worked it out casually in a series of letters.

It's not that hard to learn. What is hard is to get so you use it routinely almost every day of your life. The Fermat/Pascal system is dramatically consonant with the way that the world works. And it's fundamental truth. So you simply have to have the technique.


私の場合、順列はなんとか使えても、組み合わせは全く使えていません。順列のほうも毎日使うというほどではなく、意思決定で迷う場合に登場する程度です。それでも、確率的に考えて選んだものが正しい結果につながるときは、うれしいものです。

蛇足になりますが、学生時代に中学生の塾講師をしていたとき、3年生の夏期講習かなにかで、対象外なのに順列と組み合わせを教えてしまったことがあります。あのときは「早まったなあ」と心にひっかかっていましたが、そんなことはなかったんですね。世間知らずの二十歳の頃でした。