両者で特に共通していると思われたのは、現在の不確実性を好機として単純にはとらえていない点です。彼らはみずからが判断しかねる事象を謙虚に認め、そこから離れるあるいは安全余裕をとるといった行動をとるよう努めています。そこには、成功した年長者らしい知恵深さを感じます。
今回も常識人ハワードらしい主題が詰まったメモですが、全文が読むに値する文章です。今回からのシリーズで、興味深い箇所をご紹介します。(日本語は拙訳)
Uncertainty [PDF] (Oaktree Capital Management)
だれもが知っているように、今日私たちは4つの領域において前例のない(あるいは少なくともはなはだしく例外的な)事態をむかえています。その4つとは、Covid-19のパンデミック、経済の縮小、原油価格の崩壊、連銀及び政府による対応です。そのように、現在は考慮すべき点が数多くあるため、将来を予測することがことさら難しくなっています。
・経済の領域は、混乱して曖昧模糊としています。この分野が「暗澹(あんたん)たる科学」と呼ばれているのには、ふさわしい理由があります。それは、物理学のような「本物の」科学とは異なり、経済学には所与の解を得るために頼ることのできる、「もし甲であれば、乙である」といった一貫した諸定理が存在しない点です。繰り返し生じるパターンが存在するだけです。それは歴史的、論理的、あるいは観察的なものかもしれませんが、いずれにせよ単なる傾向に過ぎません。
・私が最近書いたメモのなかで、マーク・リプシッチ氏について何度か取り上げました。彼はハーバード大学T. H. Chan公衆衛生大学院で、疫学の教授を務めています。彼の述べた階層を私なりの表現にすると、次のようになります。(a)事実、(b)過去の経験に照らし合わせた論理的推論、(c)憶測。経済学は不確かなため、将来における経済面での事実というものは、あきらかに存在しません。経済学者や投資家は、過去にあったパターンから推論しているのです。ただしそれはせいぜい「信頼するに足らぬもの」であり、彼らの判断は多くの場合において、「憶測」と題するのが然るべきだと思います。
・今日では、次のような質問をたびたび受けます。「どのような形で回復するのでしょうか。V字かU字かW字か、あるいはL字ですか」「あなたが経験したなかで、今回の危機と一番似通っているのは、どれですか」。そういった質問に答えるには、歴史的な視点から考える必要があります。
・しかしながら、上述したような異例の展開になっている以上、今日に類するような事例は、過去にほとんどみられないか、皆無だと言えます。つまり、逃げ込んだり外挿するために使う過去のパターンは存在しません。先に申し上げたように、過去に経験したことがない以上、「これからどうなるのか、私にはわかる」と発言することはできません。
・今日起きている前例なき展開ゆえに、これほど将来を予測するのがむずかしいことは、滅多にありません。いや、4つの要因が同時に生じたことで、おそらくそれは不可能になっています。各要因を個別に理解することが難しいだけでなく、それらがどのように関連しあうのか、はっきりとわからないからです。たとえば次のような例が考えられます。
* 連銀及び財務省が実行する、莫大かつ多相的な貸付・給付・支援・債券購入のプログラムは、Covid-19に対する闘いによって経済がこうむった比類なき損害を帳消しにするほど、十分なものとなるのか。
* 経済活動を再開することで、以前と比較してどの程度まで回復するのか。また、そのことによって疫病の感染拡大がどの程度再燃するのか。再度のロックダウンがどの程度必要になってくるのか。
As everyone knows, today we're experiencing unprecedented (or at least highly exceptional) developments in four areas: the pandemic, the economic contraction, the oil price collapse and the Fed/government response. Thus a number of considerations make the future particularly unpredictable these days:
- The field of economics is muddled and imprecise, and there's good reason it's called "the dismal science." Unlike a "real" science like physics, in economics there are no rules that one can count on to consistently produce a given outcome, as in "if a, then b." There are only patterns that tend to repeat, and while they may be historical, logical and often-observed, they're still only tendencies.
- In some recent memos, I've mentioned Marc Lipsitch, Professor of Epidemiology at Harvard's T.H. Chan School of Public Health. In my version of hierarchy, there are (a) facts, (b) logical inferences from past experience and (c) guesses. Because of the imprecision of economics, there certainly are no facts about the economic future. Economists and investors make inferences from past patterns, but these are unreliable at best, and I think in many cases their judgments fall under the heading of "guesses."
- These days, I'm often asked questions like "Will the recovery be V-shaped, or a U, W or L?" and "Which of the crises you've lived through does this one most resemble?" Answering questions like those requires a historical perspective.
- Given the exceptional developments enumerated above, however, there's little or no history that's relevant to today. That means we don't have past patterns to fall back on or to extrapolate from. As I've said, if you've never experienced something before, you can't say you know how it's going to turn out.
- While unique developments like those of today make forecasting unusually difficult, the presence of all four elements at once probably renders it impossible. In addition to the difficulty of understanding each of the four individually, we can't be sure how they'll interact. For example:
* Will the massive, multi-faceted Fed/Treasury program of loans, grants, stimulus and bond buying be sufficient to offset the unparalleled damage done to the economy by the fight against Covid-19?
* To what extent will the reopening bring back economic activity, and to what extent will that cause the spread of the disease to resume, and the renewal of lock-downs?
0 件のコメント:
コメントを投稿