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2015年11月10日火曜日

所得格差について(ウォーレン・バフェット)

ウォーレン・バフェットが今年の2月にウェスタン・オンタリオ大学の学生と面会した際の質疑応答その5です。今回は2件分の質疑です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

<質問5> あなたとマンガーさんは今後50年間の展望を書かれたとのことですが、実のところどうなっていくのでしょうか。

<バフェット> これまでの50年間を通じて、容易に拡張していける事業を買うことに専念してきました。そのように企業を買収したことで、容易に拡張できるものを築けたと信じています。またわたしたちが保有しているのは、妥当な水準で成長することができ、正しい形態や文化を持った事業でもあります。

<質問6> 所得格差[原文はincome inequality]についてどのようにお考えですか。

<バフェット> 所得の平等性[原文はincome equality]はますます悪化すると思います。ですが、「所得格差」という言葉には誤りがあります。平等になることを目指すべきとしているからです。目指すところは機会の平等です。しかし資本主義が発展するほど、下位10%や20%の人はいっそう取り残されていくと感じるでしょう。これは、社会がより専門化してきたからそうなったと言えます。農業の時代だったころには、IQが150の人と80の人で所得の差をみても、ひどくはありませんでした。農作業をする人がほとんどだったからですね。その後、製造業の時代に移って専門化が若干進んだものの、まだ大丈夫でした。そして現在の市場構造は、特定の技能を持った人が有利になっています。たとえばボクシングの場合、TVが登場する前には1回の拳闘試合で最強のボクサーが得ていた金額は6千ドルほどだったでしょう。しかし今やマニー・パッキャオ対フロイド・メイウェザー・ジュニアの試合では、数億ドルになると思います。つまり、まずはTVを発明した人がいましたし、その後にボクシングの試合興行で金を儲ける人がでてきたわけです。

所得格差に影響する大きな要因として税制も挙げられます。大金持ちを優遇するよう、大幅に歪められています。申告ベースによる収入の上位400名が払っている税率は20%を下回っています。

実際のところ、市場システムでは不平等を正すことはできません。ですが、わたしたちが持つシステムの中では最良のものだと思います。

Question 5: Both you and Mr. Munger are writing down your 50-year visions. What are these visions going to be?

Over the past 50 years, we've always focused on buying companies that are scalable. With the companies that we've acquired, we believe we have created something very scalable. We also have the right form, culture and business to grow at a reasonable rate over time.

Question #6: How do you feel about income inequality?

Answer #6: Income equality will get worse but the term income inequality is in itself flawed because implies that equality is something we should aspire to. We should aspire towards equal opportunity. But as capitalism moves forward, the bottom 10% or 20% will find themselves further and further behind. This is because society has become much more specialized. Back in the farming days, the income difference between someone with an IQ of 150 vs. someone with an IQ of 80 would not have been disastrous, since most people could do farm work. Then we moved into manufacturing, a bit more specialized, but still okay. Now the market structure is giving more advantage to people with particular skills. Take the example of boxing. Before the advent of TV, the best boxers may be getting six thousand dollars per fight. Now we have Manny and Mayweather, who will be fighting for hundreds of millions. Someone came along and invented TV, and then someone figured out how to promote the fight and make money.

Another big factor that affects income inequality is the tax code, which is largely skewed to favour the super rich. The top 400 gross income earners based on their tax returns pay less than 20% tax.

So the market system doesn't really address inequality. However, it is the best system that we have.

同様の内容を扱った過去記事(ウォーレンの講演)として、「社会への貢献度とそれに対する報酬について」があります。

3 件のコメント:

ナッキー さんのコメント...

はじめまして。価値を適切に評価して割安株に投資し富を創造したバフェットとマンガー両氏の背中を遠くから仰いできました、というより、彼らがいたからこそ、今の私〜ほんのちっぽけな存在です〜があります。自分のポートフォリオも今後50年間を展望できる、ゆるぎないものにできるといいなあ。富の格差とは論点が異なりますが、人はみな生まれる前に各自にとって最適な人生を設計して生まれてくるそうです。思いどおりにならないポイントをプロットしてくるんですね。ですから未来はシナリオどおり、計画通り順調です。感謝して受け入れるだけ。どこかに感謝できるポイントがあるはずだと主体的に刹那刹那に集中することで、格差など問題にしない生き方もあるように思います。

betseldom さんのコメント...
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betseldom さんのコメント...

ナッキーさん、はじめまして。

ナッキーさんがお考えになっている人生哲学を披露してくださり、どうもありがとうございます。個人的には共感するところもあり、参考になりました。

それとは別に本記事の主題に戻りますと、格差自体は生物にビルトインされた仕組みなので問題と捉えるべきではないでしょうが、人類という種を発展存続させる上で格差の程度は問われるべきだと思います。その意味でウォーレンが「機会の平等」を謳った点は穏当ですし、米国の税制を非難した点は健全だと感じました。経済界の中心に彼のような存在がいることは、米国にとっては救いだと思います。

それでは失礼します。

(誤字を訂正したため、前のコメントは削除しました)