それら6つの観察結果から、チャーリー・マンガーが投資一般について指摘した手厳しい言葉が、リスク管理にも見事に当てはまるのは当然だと思います。彼の言葉はこうでした、「簡単ではないですよ。投資を簡単だと思っている人は愚か者ですね」[過去記事]。リスク管理が効果を発揮するには、深い洞察や妙技を必要とします。その際には、将来のできごとを統べる確率分布を深く理解していることが前提となります。それができる人には、次のようなことをうまく把握できる力も求められます。かなめとなる可動部はどこか、影響を及ぼすものは何か、想定できる結果にはどのようなものがあるのか、そして結果の各々が起こる可能性はどれぐらいか。チャーリーの考えに従えば、「リスク管理なんて楽勝だ」と考えるのは投資において最大の落とし穴になると思います。というのは、制御下にあるリスクに対して行き過ぎた自信を持っていると、投資家は非常に危険な行動をとることがあるからです。
そのためリスク管理において決め手となる前提条件には、謙虚であって、尊大でなく、そして自分が何を知らないかをわきまえていること、これらも含んでいます。予知能力がないことを自認したり、リスク意識が高かったり、果ては投資を恐れている人が問題を抱えたことはありません。リスクをコントロールすると、危機的状況や極端に過小評価されている時期から反発する局面では、投資の成果を抑制してしまう可能性があります。そのような時期は一般に、最もリスクをとった者が最も利益をあげることができます。しかしリスク管理を行うことによって、投資業界における経歴を発展させ、長期的に成功する確率が高まることも期待できます。だからこそ、リスク管理が「もっとも重要である」という信念に基づいてオークツリーを築いたのです。
あくまでも一般論になりますが、最後に指摘しておきたいことがあります。それは、リスク管理は不可欠であるものの、リスク回避を目標としてめざすのは適切ではないという点です。その理由は単純です。リスクを回避すれば、たいていの場合、リターンを回避することと同じ意味になります。リスクを受け入れるだけで利益が得られると期待すべきではありません。しかし、リスクをとらなければ利益を期待することもできません。 (p.14)
Taken together these six observations convince me that Charlie Munger's trenchant comment on investing in general - "It's not supposed to be easy. Anyone who finds it easy is stupid." - is profoundly applicable to risk management. Effective risk management requires deep insight and a deft touch. It has to be based on a superior understanding of the probability distributions that will govern future events. Those who would achieve it have to have a good sense for what the crucial moving parts are, what will influence them, what outcomes are possible, and how likely each one is. Following on with Charlie's idea, thinking risk control is easy is perhaps the greatest trap in investing, since excessive confidence that they have risk under control can make investors do very risky things.
Thus the key prerequisites for risk control also include humility, lack of hubris, and knowing what you don't know. No one ever got into trouble for confessing a lack of prescience, being highly risk-conscious, and even investing scared. Risk control may restrain results during a rebound from crisis conditions or extreme under-valuations, when those who take the most risk generally make the most money. But it will also extend an investment career and increase the likelihood of long-term success. That's why Oaktree was built on the belief that risk control is "the most important thing."
Lastly while dealing in generalities, I want to point out that whereas risk control is indispensable, risk avoidance isn't an appropriate goal. The reason is simple: risk avoidance usually goes hand-in-hand with return avoidance. While you shouldn't expect to make money just for bearing risk, you also shouldn't expect to make money without bearing risk.
攻めと守り、あるいは資金を失う不安と機会を逃す心配のバランスをうまくとることは、投資家の仕事です。今日の段階では、利益を追求するよりも損失を防ぐほうに意識を向けることが重要だと私は感じています。この3年間、オークツリーで唱えていた文句は「前進せよ、ただし注意深く」でした。今となってはその言葉を繰り返す上で、最後の言葉をなおさら強調したいものです。「ただし注意深く」と。 (p.15)
It's the job of investors to strike a proper balance between offense and defense, and between worrying about losing money and worrying about missing opportunity. Today I feel it's important to pay more attention to loss prevention than to the pursuit of gain. For the last three years Oaktree's mantra has been "move forward, but with caution." At this time, in reiterating that mantra, I would increase the emphasis on those last three words: "but with caution."
2 件のコメント:
== ハワード・マークス ==
ハワード・マークスの徹底したリスク管理とディフェンス重視の姿勢に「防御」は最大の攻撃という言葉を思い出しました。
リスクに対して注意を払わない投資家が増えつつあるこの相場環境で、そういった人間が慎重さを欠いているときほど我々はより慎重に行動しなければなりませんね。
??サンリオは私も継続保有しています。)
== 防御は最大の攻撃(ブロンコさんへ) ==
ブロンコさん、コメントをありがとうございます。
未来がいつどうなるのかは、わたしにはまるでわかりません。しかしブロンコさんが引用された「防御は最大の攻撃」の言葉を支えにしながら、ひきつづき投資の機会を慎重にさぐっていきたいと思います。
またよろしくお願いします。
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