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2014年9月22日月曜日

2013年度バフェットからの手紙 - (付録)企業年金制度について(1)

半年前に発表された2013年度「バフェットからの手紙」では、企業年金や公的年金の問題についてウォーレン・バフェットは短いながらも警告を出しています。そして年金問題を理解する材料としてワシントン・ポストのキャサリン・グラハムに書いた文章のコピーを掲載し、一読するように勧めています。今回から始まるこのシリーズでは、キャサリン向けの文章を全訳します。

なお原文が再掲されているのは、いわゆる「バフェットからの手紙」のみのPDFファイルではなく、アニュアル・レポートPDFファイル(ページ数:140ページ)のほうになります。

BERKSHIRE HATHAWAY INC. 2013 ANNUAL REPORT [PDF]

まずは2013年度「バフェットからの手紙」に書かれている文章から引用します。

地方自治体や州政府の財政問題は加速しています。その原因の多くは、年金制度において維持できないほどの保証をしてきたからです。財政に寄生する巨大なサナダムシのことを、市民も役人もたいていは過小評価してきました。それが生まれたのは、資金を手当てしたいとする意思と対立する約束がなされたときでした。残念なことに、今日の年金数理はほとんどの国民には謎のままとなっています。

それと同じように、投資におけるポリシーもそれらの問題において重要な役割を果たしています。1975年にわたしは、ワシントン・ポスト社の会長だったキャサリン・グラハムのために文章を書きました。企業年金における落とし穴と、投資上のポリシーの重要性を説明したものです。その文章は118-136ページに添付しています。

次の10年間は、公的年金制度に関するニュースをみなさんもいろいろと目にすることでしょう。それも悪いニュースです。問題の存在する箇所において速やかに対応策を講じる必要性があることを理解する上で、わたしの書いた文章がお役に立てれば幸いです。 (p.21)

Local and state financial problems are accelerating, in large part because public entities promised pensions they couldn't afford. Citizens and public officials typically under-appreciated the gigantic financial tapeworm that was born when promises were made that conflicted with a willingness to fund them. Unfortunately, pension mathematics today remain a mystery to most Americans.

Investment policies, as well, play an important role in these problems. In 1975, I wrote a memo to Katharine Graham, then chairman of The Washington Post Company, about the pitfalls of pension promises and the importance of investment policy. That memo is reproduced on pages 118 - 136.

During the next decade, you will read a lot of news - bad news - about public pension plans. I hope my memo is helpful to you in understanding the necessity for prompt remedial action where problems exist.


つづいて、ここからが本文になります。

年金について

企業年金の費用において、経営者が重大な影響を及ぼし得る課題には2つの側面があります。ひとつめは従業員に提供する年金制度上の保証内容を、冷静に統制しつづけることです。もうひとつは、年金資産があげる投資リターンを増大させることです。

年金における保証内容の不可逆的性質について

保証内容を合理的に統制するには、年金計画を支配する基本的な算術や実際的な規則を理解する必要があります。

年金給付について何を決定する際でも、最初に認識しておくべきことがあります。それは、この問題がほぼ間違いなく、真剣に取り組むことになる点です。つまり水準以下の利益しか出せなくても、決定した内容は今後取り消すことができなくなります。

現実的な問題として、利益の出ている大企業で年金給付を削減することはほぼ不可能です。なんとか利益を出している大企業でも、これは同じことです。制度の決まりでは、会社側にはいかなる時点でも打ち切る権利があり、拠出の有無を選択できるのは会社側だけであると、非常に強調して明文化しているかもしれません。しかしながら法律は、そのような"時代遅れの"条項が持つものと見做されていたさまざまな意義を浸食してきました。そして実際的な慣習として、非現実的な施策を終結するためのあらゆる残余的権利がもたらされています。

そのため年金費用に関する第一の掟は、契約を締結する前にこれからどこへ足を踏み入れようとしているのかを知っておくことです。飛びつく前によく見ておいてください。経営者がよくわかっていないという点では、重要性の面でほど遠いどんな費用よりも、おそらく年金費用のほうがひどい状況です。これは国民にとって将来高くつくのが明白なことと同じです。公的年金費用に対して、有権者はますます理解しなくなっています。数理計算上の考え方自体が、ほとんどの人には直観的に理解できません。使われている用語は難解ですし、数字が現実離れしています。ですから契約を締結しようとする際でも、小切手を切るときに思い起こされるような、体の中から湧き上がる反応が起きないのです。

年金債務では年次費用や現金の支出が累進的に増加していくため、合計すると非常に大きくなる債務です。しかしそれはたやすく作られながらも、直近では財務上の痛みがほとんど生じません。このような債務は、経営上の他の領域ではみられないものです。プレスルームにおける労働慣習のように、小さなあやまりが大きく膨らんでいきます。配慮や注意が望まれます。 (p.118)

PENSIONS

There are two aspects of the pension cost problem upon which management can have a significant impact: (1) maintaining rational control over pension plan promises to employees and (2) increasing investment returns on pension plan assets.

The Irreversible Nature of Pension Promises

To control promises rationally, it is necessary to understand the basic arithmetic and practical rules governing pension plans.

The first thing to recognize, with every pension benefit decision, is that you almost certainly are playing for keeps and won't be able to reverse your decision subsequently if it produces subnormal profitability.

As a practical matter, it is next to impossible to decrease pension benefits in a large profitable company - or even a large marginal one. The plan may embody language unequivocally declaring the company's right to terminate at any time and providing that contributions shall be solely at the option of the company. But the law has eroded much of the significance such "out" clauses were presumed to have, and operating practicalities render any residual rights to terminate moot.

So, rule number one regarding pension costs has to be to know what you are getting into before signing up. Look before you leap. There probably is more managerial ignorance on pension costs than any other cost item of remotely similar magnitude. And, as will become so expensively clear to citizens in future decades, there has been even greater electorate ignorance of governmental pension costs. Actuarial thinking simply is not intuitive to most minds. The lexicon is arcane, the numbers seem unreal, and making promises never quite triggers the visceral response evoked by writing a check.

In no other managerial area can such huge aggregate liabilities - which will be reflected in progressively increasing annual costs and cash requirements - be created so quickly and with so little immediate financial pain. Like pressroom labor practices, small errors will compound. Care and caution are in order.

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