■日進工具 (6157)
微細加工用エンドミル(超硬工具)のメーカーです。当社の工具のユーザーには自動車部品メーカーやカメラ2強会社などがありますが、おもしろいところではシマノの自転車部品やバンダイのガンプラ高級モデルの金型などでも使われているとのことです(後述の会社説明会より)。
この会社も2012年と状況はほとんど変わっていませんが、追記的な意味でいくつか記述します。なお昨年(2012年分)の投稿はこちらです。
<事業の状況>
2013年度第二四半期(4-9月)までの業績は前期並みでした。売上高は前期比で微減ですが、当社は国内顧客が多く、また輸出品も円建てで取引しているため、円高修正の影響は遅れて出てくる会社だと思います。
つづいて製品戦略の進展状況ですが、これまでと方向性は同じで高付加価値製品を上市し、新規市場での品ぞろえを広げています。取扱製品の種類が増える一方、当面は大規模な設備投資を行わず、ラインの自動化を進めるなどで吸収していく模様です。現在の段階はこういった施策の積み重ねによって粗利や営業利益率の向上をめざしているものとみています。
マーケティング上の施策では、海外初の営業拠点を香港に設置しました。この現地法人は在庫拠点として機能するため、近辺の顧客への納入リードタイムが短縮され、顧客サービス向上につながる施策だと思います。と書いたものの、実態は日中間の外交問題の影響で通関が遅れていることが主因のようです(個人投資家説明会(2013/11/29実施分)での後藤社長の説明など)。香港を経由することで問題が解消されるとのことでした。
当社はほぼ単一セグメントの事業に注力し、企業集団自体も小規模です。そのため上述したような経営上の判断や施策はどこの会社でもやっている日常的な運営の範疇にとどまっており、投資家としては事業動向を把握しやすいと感じています。
<株価の状況>
年初株価は1,462円、年末は1,739円で上昇率は18.9%でした。日経平均の56.7%やTOPIXの51.5%からは大きく離されました。市場の回復期に比較的優良な銘柄がおくれを取るのはそれなりにあることですが、絶対的水準でみてこれだけ上昇していれば特に気にするものではない、と考えています。
2013年は立会外分売が2回実施され、8月と11月に発行済み株式数の約10%が市場に出されました。それまで50%超を支配していた創業者一族が持ち株を手放し、所有比率が半数未満になりました。相対的に株価が低迷したのは、これが影響したのかもしれません。しかし特定同族会社に該当しなくなることは当社にとって画期的な一歩で、一時的な株価低迷より重要なできごとだと思います。
<当社に対する投資方針>
株価が短期的に下落した局面で追加購入しました。2012年に当社のことを書いたときには「当社の株式は買い上がる」としましたが、2013年もそうなりました。といっても追加購入したのは2単元にとどまっており、ポートフォリオ全体に対してほとんど影響を及ぼさず、意味のある投資行動とは言えないものでした。
「買い上がる」ことについて個人的にもっとも大切だと感じている教えは、チャーリー・マンガーが言うところの「本当にすばらしい企業であれば[ある程度の価格までは]買い上がるべし」です。この教えは2つの大切な要素が撚り合わさってできています。ひとつは「投資しようとしている企業は本当にすばらしいのか」で、もうひとつは「そこそこの価格とはいくらなのか」です。
当社の株式を買い上がることがこのマンガー・テストに合格するかですが、まずひとつめの問い「本当にすばらしい企業か」を通過できないと思います。ではなぜ当社に投資しているのかとなれば、次のような点で魅力を感じているからです。小さな市場で先駆者的な位置を占め、模倣されにくい競争優位性を有しており、顧客が離れにくく、利益率がまずまずで、財務が良好といった点です(もちろん株価が割安、という点が最後につづきます)。これらはそれなりに「すばらしい」ことですが、「本当にすばらしい企業」という基準からみると不足している点が少なくとも1つあります。余剰資本を有効活用できていない点です。経営者自身がやみくもに投資することを否定しており、個人的にはその方針に好感をもっているのですが、残念ながら最高水準の企業とは言えないととらえています。そのような企業を買い上がるといった非合理的な投資行動をとっているのが、自分自身の弱いところです。
ただし当社への投資が魅力がないとは言っておりません。成長がゆっくりなため華やかさに欠ける当社のような企業に投資するのは短中期では冴えないかもしれませんが、もう少し長い目で見れば(5-7年間)結局は十分な見返りが得られると考えています。当社の場合、2012年度の業績は売上高が約60億円、純利益が5.2億円でした。純利益が将来10億円超になり、現在の上場市場JASDAQから東証1部をめざすようになれば、市場から見直されてPERの水準が上がることも期待できます。当社のような企業に投資する際には、このようなダブルプレーが実現する可能性を考慮に入れています(業績向上 + PER上昇)。そしてそこに到るための経営上の施策は地道ながらも着実に実行されている、と評価しています。
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