<質問37:シアトル在住の株主> 株式を判断するのに、どのような定量的指標を使っていますか。
<ウォーレン・バフェット> われわれは株式という切り口ではなく、つねにビジネスを買うという観点でみています。バスケットボールのコーチなら身長が7フィート[≒213cm]以上の選手をさがすように、事業に応じてちがう数字で判断しています。ただしわれわれには深く考察できないものもありますし、わからないことがあるのも承知しています。ときには、それによって考え直すこともあります。バンク・オブ・アメリカの件では、風呂に入っていたこと自体は重要ではありませんでした[案件をひらめいたときの場所]。同行について書かれた本"Biography of a Bank"を50年ほど前に読んだのですが、すばらしい内容でしたよ。保険業界をみるときとイスカル[買収した切削工具メーカー]とでは違った観点で考えますし、ブランドがものをいう業界となれば、また別の見方になります。コークのようにうまくいくブランドもあれば、そうでないものもありますね。風呂に浸かっているときにバンカメはいい投資かもしれないと思いあたり、電話をかけたのです。そのときは、PERやPBRを厳密に計算したわけではありません。会社が5年後にどうなっているかを考え、価格と現在価値がかい離していると思ったのです。
<チャーリー・マンガー> 何かの指標にもとづいて株を買うやり方はよくわかりませんね。知りたいのは、ある企業が実のところどのように機能しているかです。ウォーレンはコンピュータを使ってスクリーニングしていますか。
<ウォーレン> いいえ、どうやるのか知らないのですよ。ただしスクリーニングは使っていませんが、別の意味であらゆるものをふるいにかけています。だれかが提示してくれたかのように、あらゆるものについて考えるようにしているわけです。5年,10年後にどうなっているか、どこまでそれを確信できるか、そして価格にどれだけ織りこまれているか、ということをです。われわれでは答えがだせなかったり、未来がうまく見通せないと感じるビジネスも数多くあります。自動車業界をみてきて50年になりますが、あれは非常におもしろいビジネスですね。
<チャーリー> 10年後のBNSF[買収した鉄道会社]は競争優位を手にしているでしょうが、アップルや石油会社がどうなるかは我々には判断できないですね。
数学の得意な人は、数字を追いかけることで答えを見つけられると考えがちです。やるべきことは競争する上での企業の立ち位置を理解することで、そんなに簡単ではないですよ。必要なのはビジネスを知ることで、数学ではありません。
<ウォーレン> ベン・グレアムから教わったやりかたとはちがいますね。数字だけをみることになっていたら資金をうまく運用できていたか、なんともいえません。
<チャーリー> きっとお粗末な結果だったでしょうな(笑)。
Q37, Station 1: Seattle. Which quantitative metrics to judge a stock?
WB: We aren't looking at the aspects of stocks, but always are buying a business. If you were a basketball coach, you can look for all seven-footers. We look at different numbers for different businesses. We see certain things that shut out to us to look further. We also know what we can't know. Often we have a fact that slips back in which causes us to change our mind. The bathtub wasn't the central factor for Bank of America. I read a book 50 years ago, Biography of a Bank, a great book. We have certain things we look for in insurance. We have things that we think about which is different when we think about Iscar. There are things we think about when dependent on brands. Some brands travel well, like Coke, some don't. In the bath, I thought Bank of America might be good idea, so I gave him a call. It is not because I calculated some precise PE or book value ratio. I have some idea of what company will look like in 5 years, and there is a disparity between that price and today's value.
CM: We don't know how to buy a stock based on ratios. We need to know how a company actually functions. Do you use a computer to screen anything?
WB: No I don't know how to. We don't really use screens but we are really screening everything. We look at it just as if someone offered us the whole thing, and what will it look like in five to ten years, and how sure of it we are and if it is in the price. There are a lot of businesses that we just don't know the answers to and feel that we can't foresee the future well enough. We have watched the auto business for 50 yrs. It is a very interesting business.
CM: BNSF will have a competitive advantage in 10 yrs. We don't know that about Apple or an oil company.
CM: People who are good at math look for numbers and think they can find an answer. You need to understand a company's competitive position, but it isn't that easy. It isn't math, you need to need to know the business.
WB: Not what I learned at Ben Graham. Not sure whether I would know how to manage money if I just had to look at the numbers.
CM: You would do it poorly. [laughter]
蛇足になりますが、ある石油会社が気になったことをきっかけに、石油業界を勉強しつづけています。今回引用したチャーリーの指摘は耳が痛いです。
蛇足その2です。昨日7日(金)は手持ちの日本株がそれなりの水準まで下落したため、わずかな金額ですが、売却してきた株を買い戻したり、買い増しをしました。割安と判断した指標はPERとPBRです。チャーリーの教えにことごとく背いているようで、微妙な思いがあります。
6 件のコメント:
== 指標 ==
??ERやPBRといった指標は大事だと思いますよ。
??ERやPBRを算出するのに使われる利益や純資産がどういったものかを正しく理解していれば非常に重要な指標であると思います。
そのためにはやはりその企業とそのビジネスをよく理解するしかないでしょうがね。
石油業界といえば、私はバークシャーも投資している掘削機器メーカーのナショナル・オイルウェル・バーコに投資しています。投資にいたった理由についてはまた改めて。かつては原油流出事故で大暴落したBPにも投資しました。
== No title ==
こんにちは。お久しぶりです。
素晴らしい記事ですね。あと100回は読ませていただくと思います(笑)
石油会社といえば、バークシャーもペトロチャイナに投資していましたよね。
既にご存知かもしれませんが、この辺の記事がとても面白かったですよ。
http://alpha75.blog107.fc2.com/?mode=m&no=190
== RE: 指標 ==
ブロンコさん、こんにちは。コメントをありがとうございます。
「PERやPBRといった指標は大事」とのご指摘は、わたしも同じ思いをいだいています。肝心なのはブロンコさんが書かれているとおりで、「やはりその企業とそのビジネスをよく理解するしかない」という前提条件だと思います。チャーリーはその優先順位を説いたものと解釈しています。
暴落後のBPへ投資したのはブロンコさんらしいですね。わたしは、株価がいっしょに安くなったリグ・オペレーターの競合会社Diamond Offshore Drilling(DO)のほうに投資しましたが、そもそも業界知識が貧弱だったこともあり、どこかのタイミングで売却してしまいました。今回は本腰を入れてこの業界に取りくむつもりです。
石油業界周辺といえばわたしの好きなファンド・マネージャーのボブ・ロドリゲスが重点的に投資していたり、セス・クラーマンのBaupostがBPへ大きく投資している点が気になっています。BPについてはAnnual Reportを読みはじめたばかりで、これから調べていくつもりです。
有意義なコメントをありがとうございました。
それでは失礼致します。
追伸: ロッキード・マーティンの例の本は読了しました。つぎに軍事予算が大幅削減されるような事態になったときには、ぜひとも購入を検討したい銘柄ですね。
== isさん、ありがとうございます ==
isさん、こんにちは。どうもありがとうございます。
バークシャーのペトロチャイナへの投資は有名ですね。その後にコノコフィリップスへも投資していますが、高値の買い物だったとウォーレンが告白していたかと記憶しています。過去にさかのぼればウォーレンもチャーリーも石油業界へ投資していたと思いますが、チャーリーは文明人風の見方をますます強めているようで、「掘ったら終わり」的ビジネスには厳しい姿勢をみせるように感じられます。
ご紹介いただいたブログ記事はとても参考になりました。ありがたい記事が掲載されているサイトですね。以前にいくつか拝見したことがあったのが、今回のものは初見でした。ありがとうございました。
またよろしくお願い致します。それでは失礼します。
== 石油 ==
??Pに投資したのは暴落前から50%以上下げたときでした。投資に至ったのは次の点からです。
・大事故を起こしたとはいえ、他の石油メジャーと同じ商品(石油)を扱っているのにここまで企業価値に差が開くのは間違っている。
・世界の経済状況をおおざっぱに見ても現在の原油価格が大きく下げるとは考えにくい。
・莫大な賠償金が発生し、その額が不確定であるとはいえ、一括で支払うようなことにはならない。その額も配当金停止と資産売却を組み合わせれば稼ぎの中から十分支払いは可能ではないか。配当を停止したとしても売り上げが落ち込むわけではないので、既存株主の不満を少しでも和らげるためにもすぐに復配するはずである。
・間抜けな朝のワイドショーですら、もし、BPが倒産するようなことがあればBPショックが起きて市場が大混乱するといった薄弱な根拠をもとに不安を煽るようなことを言っていた。
上記をもとに3年以内に株価が少なくとも50%上げる確率を考えたらなかなか良い賭けのように思えたので投資に至りました。(今はもう保有していません。)
石油メジャーの利益の増減は原油価格によって決まるものなので、ビジネスの優劣を見るにはコスト面を見るのが良さそうですね。もし、石油メジャーが一斉に暴落して、その中から1社投資するとすれば、最も低コストで運営されているエクソンモービルでしょうかね。石油は無価値になったり時代遅れになったりしませんし、打倒エクソンモービルを掲げるバカげた新参者があらわれることもないでしょう。暴落して配当利回りが上がったら、AAAの信用格付けを生かして低コストで資金調達して自社株買いをするだけで配当に必要な資金を減らしつつ株主価値を高めることができるわけですから、経営陣は気楽でたまらないでしょうね。
== RE: 石油 ==
ブロンコさん、BPに関するご説明をありがとうございました。毎度のことですが実践的な内容で、参考になりました。あとになってみれば常識的に感じられても、その時点で決断されていたのはしっかりした見識をお持ちだったからと思います。
エクソンモービル(XOM)は、個人的にはベンチマークとして位置づけるつもりでいました。ですがブロンコさんがご提案されるように、当社に投資するのが最良の道かもしれないですね。ちょうどこれから10-Kを読みはじめるところでした。しばらくはエクソン漬けになる予定です。
どうもありがとうございました。
それでは失礼致します。
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