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2019年2月25日月曜日

2018年度バフェットからの手紙(1)米国に吹きつづける追い風(前)

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バークシャー・ハサウェイのウォーレン・バフェットが、2/23(土)付けで2018年度の「バフェットからの手紙」を公開しています。拙訳付きで順次ご紹介するつもりですが、今年は一般向けの話題から取りあげます。例によって、米国に投資することの優位性を説いた話題です。

SHAREHOLDER LETTER 2018 [PDF] (Berkshire Hathaway)

米国に吹きつづける追い風

この3月11日をむかえると、わたしが米国企業にはじめて投資してから77年間が経ったことになります。あれは西暦1942年のことで、当時のわたしは11歳でした。6歳のときから貯め始めたお金114ドル75セントをつぎ込んで、シティーズ・サービス社の優先株を3株買いました。資本家になったことでうれしく感じたものです。

それではここで、わたしが株式をはじめて購入したその年から先立つこと、77年間の2周分をさかのぼってみます。西暦1788年、そこから話が始まります。ジョージ・ワシントンがこの国の初代大統領に就任する1年前になります。77年間という時代を三度くりかえすだけで、新たにうまれた国家がこれほどまでに発展するとは、当時のだれに想像できたでしょうか。

1942年に先立つ二度の77年間を経過する間に、4百万人の人口、すなわち全世界人口の1%のさらに半分ほどが暮らしていた米国は、世界で最も権勢を誇る国家へと成長しました。しかし1942年のあの春には、危機に直面していました。米国が3か月前に参戦した戦争のさなかで、ほかの連合国と同様に大打撃を被っていました。連日届くニュースは悪い知らせばかりでした。[過去記事]

しかし危急を告げる見出しがつづいても、3月11日時点でほぼすべてのアメリカ人が「この戦争には勝利する」と確信していました。その楽観的な見方は戦勝だけに限ったものではありませんでした。「現在の自分たちが手にしてきたよりもはるかにすぐれた生活を、子々孫々にわたって迎えられるだろう」と、根っからの悲観主義者は別として、アメリカ人は信じていたのです。

当然ですがこの国の人々は、行く手につづく道が平坦ではないことを覚悟していました。たしかに、そんなことは一度もありませんでした。米国史が始まってまもないころには、南北戦争という試練に直面しました。その内戦では全アメリカ人男子の4%が命を落とし、ひいてはリンカーン大統領が公の場で次のように問いかけることとなりました。「かほどの自由を創り出し、平等たらんと勤しむ人々の国家が、長きにわたって存続し得るだろうか」と。また大恐慌で苦しんだ1930年代は、失業者があふれかえった仮借なき時代でした。

それにもかかわらず、わたしが株式を購入した1942年の米国では、戦後における成長がすでに見込まれていました。そうなって然るべきだと信じられていました。この国がなしとげた発展をあらわすには、実のところ「傑出屈指」という言葉がぴったりなのかもしれません。

その証拠となる数字を当てはめてみましょう。もしも当時のわたしが114.75ドルの資金を、手数料不要のS&P500インデックス・ファンドに投資しており、受取配当金を全額再投資したとすれば、(本文書公開前の最新データが入手できる日付である)2019年1月31日現在のわたしの持ち分は、(税引き前で)60万6,811ドルへ成長したことになります。5,288倍に増えています。あるいはその当時に、年金基金や大学基金といった非課税の組織で100万ドルを投資していれば、約53億ドルに増加していたことになります。

もうひとつ計算を付け加えておきます。かならずや驚くと思いますよ。もし、そういった架空の組織がさまざまな「助力者」に対して、たとえば資産運用業者や投資顧問があげられますが、報酬として資産額のわずか1%相当を毎年支払ったとすれば、どうなったでしょうか。資産の増加幅は半減し、26億5千万ドルにとどまったことでしょう。S&P500が77年間にわたって年率11.8%の成長を実際につづけてきたなかで、その数字が10.8%へさがってしまうと、そのような結果を招いてしまうわけです。(PDFファイル12ページ目)

(つづく)

The American Tailwind

On March 11th, it will be 77 years since I first invested in an American business. The year was 1942, I was 11, and I went all in, investing $114.75 I had begun accumulating at age six. What I bought was three shares of Cities Service preferred stock. I had become a capitalist, and it felt good.

Let’s now travel back through the two 77-year periods that preceded my purchase. That leaves us starting in 1788, a year prior to George Washington’s installation as our first president. Could anyone then have imagined what their new country would accomplish in only three 77-year lifetimes?

During the two 77-year periods prior to 1942, the United States had grown from four million people – about 1⁄2 of 1% of the world’s population – into the most powerful country on earth. In that spring of 1942, though, it faced a crisis: The U.S. and its allies were suffering heavy losses in a war that we had entered only three months earlier. Bad news arrived daily.

Despite the alarming headlines, almost all Americans believed on that March 11th that the war would be won. Nor was their optimism limited to that victory. Leaving aside congenital pessimists, Americans believed that their children and generations beyond would live far better lives than they themselves had led.

The nation’s citizens understood, of course, that the road ahead would not be a smooth ride. It never had been. Early in its history our country was tested by a Civil War that killed 4% of all American males and led President Lincoln to openly ponder whether “a nation so conceived and so dedicated could long endure.” In the 1930s, America suffered through the Great Depression, a punishing period of massive unemployment.

Nevertheless, in 1942, when I made my purchase, the nation expected post-war growth, a belief that proved to be well-founded. In fact, the nation’s achievements can best be described as breathtaking.

Let’s put numbers to that claim: If my $114.75 had been invested in a no-fee S&P 500 index fund, and all dividends had been reinvested, my stake would have grown to be worth (pre-taxes) $606,811 on January 31, 2019 (the latest data available before the printing of this letter). That is a gain of 5,288 for 1. Meanwhile, a $1 million investment by a tax-free institution of that time – say, a pension fund or college endowment – would have grown to about $5.3 Billion.

Let me add one additional calculation that I believe will shock you: If that hypothetical institution had paid only 1% of assets annually to various “helpers,” such as investment managers and consultants, its gain would have been cut in half, to $2.65 billion. That’s what happens over 77 years when the 11.8% annual return actually achieved by the S&P 500 is recalculated at a 10.8% rate.

備考です。リンカーンが語った言葉の訳文は、以下のサイトを参考にしました。

ゲティスバーグ演説 (1863年)|About THE USA|アメリカンセンターJAPAN (米国大使館の広報・文化交流部)

2019年2月24日日曜日

充実した人生を過ごすための方法(チャーリー・マンガー)

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デイリー・ジャーナル社の会長を務めるチャーリー・マンガーが2月14日の株主総会に出席した後に、CNBCのインタビューに応じていました。トランスクリプトが公開されているので、一部を拙訳にてご紹介します。応対者は、バークシャー担当としておなじみのベッキー・クイック女史です。

CNBC Transcript: Berkshire Hathaway Vice Chairman Charlie Munger Speaks with CNBC’s Becky Quick

<ベッキー・クイック> 本日ここに集まったみなさんには、ビジネスや投資のことよりも、人生についての助言を受けたいと考える人たちが大勢いました。今日の質問には、幸せな長い人生を過ごすための秘訣は何かを求めるものが数多くありました。チャーリーはどのようにお考えで..

<チャーリー・マンガー> たやすいことです。単純そのものですから。

<ベッキー> いったいそれは何ですか。

<チャーリー> あれこれと他人を妬まないこと、恨みがましく思わないこと。手にした収入を浪費しないこと、苦難に遭おうと明朗に努めること。関わりを持つのは信頼のおける人とし、為すべきことを為すこと。そういった単純な決まりを守ることが、実りある人生を確かにしてくれます。どれも言い古された教えですよ。[過去記事]

<ベッキー> そのように悟ったのは、何歳ぐらいの頃ですか。

<チャーリー> 7歳ぐらいのときですね。年長者にもイカれ気味の人がいるものだと思ったものです。あの人たちはイレれ気味だなと、つねづね思ったものですよ。しかしそれが良かったのでしょう。世界は不合理に満ちているわけですから。この件については長い間ずっと考え続けてきました。なぜそうなるのか、どうすれば避けられるのか、といったことをです。まさしく、それが良かったわけです。

「明朗たるべし」というのは、それが賢明だからですよ。そんなに難しいことでしょうかね。それでは、憎しみと怨念にふかく浸かりこんだ心境で、朗らかな様子をみせられますか。それは無理でしょう。だったら、なぜそんなところに入り込むのですかね。

BECKY QUICK: Charlie, so many of the people who come here come because they’re looking for advice not on business or investments as much as they’re looking for just advice on life. There were a lot of questions today, people trying to figure out what the secret to life is, to a long and happy life. And-- and I just wonder, if you were--

CHARLIE MUNGER: Now that is easy, because it’s so simple.

BECKY QUICK: What is it?

CHARLIE MUNGER: You don’t have a lot of envy, you don’t have a lot of resentment, you don’t overspend your income, you stay cheerful in spite of your troubles. You deal with reliable people and you do what you’re supposed to do. And all these simple rules work so well to make your life better. And they’re so trite.

BECKY QUICK: How old were you when you figured this out?

CHARLIE MUNGER: About seven. I could tell that some of my older people were a little bonkers. I’ve always been able to recognize that other people were a little bonkers. And it helped me because there’s so much irrationality in the world. And I’ve been thinking about it for a long time, its causes and its preventions, and so forth, that I-- sure it’s helped me.

CHARLIE MUNGER: And -- staying cheerful-- with-- because it’s a wise thing to do. Is that so hard? And can you be cheerful when you’re absolutely mired in deep hatred and resentment? Of course you can’t. So why would you take it on?

2019年2月20日水曜日

2018年の投資をふりかえって(10)買増し銘柄:しまむら(8227),銀ETF(SLV)および新規購入銘柄:アップル(AAPL)

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残りの3銘柄については、簡潔に触れる程度とします。なお、本シリーズの前回分記事はこちらです。

■しまむら(8227)
業績が不調な当社は、不況期に伸長することを期待してヘッジ的な意味で株式を保有しつづけるつもりでした。そのため、株価が下落するにつれて漫然と買い増ししたところがあります。客数減少がいずれ底を打って収益悪化もとまるだろうと、自分に言い聞かせてきた面もあります。しかし経営努力がなかなか実らない現状を辛抱するよりも、損切りをして他社に乗り換えたほうがいいとも感じるようになってきました。どちらの道を選ぶか、経営状況をみながら今年中には判断をくだしたいと考えています。

なお現在の株価は9,200円程度で、今期末のEPSは500円程度と想定されるため、単純にPERであらわすと18倍強になります。

しまむら株価チャート約1年分(赤矢印は購入、青矢印は売却)

■iShares シルバー・トラスト(SLV)
この銘柄も、なかばヘッジ的な意味で保有しています。ただししまむらとは違って単なるコモディティーなので、下落時にはそれなりの確信をもって買い増ししています。そして価格が上昇して損益がプラスにすれば、一部を適宜売却しています。残念ながら中核ポジションは継続保有のままなので、ずいぶんと長期間にわたってまともな利益をあげられないでいます。

SLV株価チャート約1年分(赤矢印は購入)

■アップル(AAPL)
12月と今年の1月に、それぞれ1回ずつ購入しました。今後の株価下落を期待しており、現在の株価では買い増ししないつもりです。

AAPL株価チャート約1年分(赤矢印は購入)

2019年2月18日月曜日

2018年の投資をふりかえって(9)買増し銘柄:日東電工(6988)

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(本シリーズの前回分記事はこちら)
(当社をとりあげた直近の過去記事はこちら)

当社は大阪に本社をおくメーカーです。おもな製品としては、最終製品に組み込まれる材料や作業中に使用される資材を生産しています。たとえば、スマートフォン向けのディスプレイ関連部材や自動車向けのフィルム及びテープがあげられます。近年は核酸医薬品の新薬開発を手がけたり、買収を通じて製造に携わったりしており、電子機器向けに偏重した収益構造の転換を模索しています。

当社の株式はずっと前にほぼ処分し、一口しか手元に残していませんでした。しかし材料関連の企業としては経営姿勢が敏捷だと感じていたため、監視は続けていました。

<現在の株価と売買実績>
現在の株価は5,800円前後で、1年前の半値ほどに下落しました。今期(2019年3月期)の予想EPSは460円で予想PERは13倍程度になりますが、当社も財務が良好なので、PERの数字よりも過小評価されているととらえています。例によって昨秋に株価が下落したため、久しぶりに追加購入しました。

日東電工株価チャート約1年分(赤矢印は購入)

<業績などに対する所感>
今期第3四半期までの業績は、売上高6,300億円、粗利益1,960億円、営業利益840億円、純利益600億円でした。営業利益率は13%、ROEの水準は10%程度です。これは利益額が前年同期比で25%ほど低下した上での数字です。業績悪化のおもな要因は、大黒柱の事業であるスマートフォン向け部材の販売低迷にあります。

当社はおそらく戦略的に、モバイル端末や映像機器そして自動車といった技術発展の著しい業界や分野を事業領域に選んでいると受けとめています。積極的に市場機会を求め、他社をしのぐ速さで競争力のある製品を実現し、見返りとして高い利益率を享受したいと考えているように見えます。これは裏返せば、景気変動や特殊要因の影響を大きく受けやすい収益基盤を招いていますが、当社にはそのリスクをある程度許容できる良好な財務体質があります。厳しい時期がやってきても、研究開発のペースを維持できるでしょうし、機に乗じて他社を買収できる余地もあります。急成長は望めないと思いますが、長期にわたって成長を見守っていきたいと感じさせる企業のひとつです。

2019年2月16日土曜日

2018年の投資をふりかえって(8)買増し銘柄:メック(4971)

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(本シリーズの前回分記事はこちら)

当社は兵庫県を本拠地とする化学薬品会社です。おもな事業としては、たとえばスマートフォンやディスプレイに搭載されるような、電子基板を製造する工程で利用される薬剤を製造販売しています。具体的な製品例としては、基板樹脂と銅配線の密着性を向上させる加工機能を持った薬品(CZシリーズ)があります。

<現在の株価>
現在の株価は1,100円強で、前年度(2018年12月期)の実績EPSは90円強でした。実績PERは約12倍となります。

<株式の売買実績>
昨年の9月いっぱいまでは株価が比較的安定していたものの(2,000円前後)、その後の3か月間で大きく下落して半値になりました。継続して買い増し始めたのは10月中旬ごろからで(その前にも買っています)、年明けまで適宜買いつづけました。なお一昨年(2017年)の段階では、持ち株を一部売却しました。

メック株価チャート約1年分(赤矢印は購入)


<業績などに対する所感>
前年度の業績は、売上高が110億円、営業利益が22億円、純利益が17億円でした。収益性としては、粗利益率が60%強、営業利益率が約20%、ROAが9%強と、高水準です。

市場環境としては、電子機器や部品の軽薄短小化・高性能化が一定の方向に進む間は、当社が扱うような製品がますます要求されるでしょうから、ひきつづき追い風がつづくと予想します。

小さくないリスクとしては、知的資産の流出による売上機会喪失が想定されます。ただし当社製品の付加価値は、研究開発や製造そして顧客に対する導入支援や品質評価の協調によって生じると思われるため、経営陣が職務面での人事制度に留意すれば、リスク軽減は可能だと考えます。

当社製品の関わる最終製品は耐久消費財や資本財であるため、景気変動の影響は当然ながら受けることでしょう。しかし当社に対する投資方針は、さらなる成長を期待して継続保有のままで、株価下落時にはさらに買い増しするつもりです。