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2018年2月27日火曜日

2017年度バフェットからの手紙(2)10年越しの賭けの結果

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2017年度「バフェットからの手紙」からの引用が続きます。今回からの話題は、ウォーレンが前年度にとりあげた「賭け」の続きです(日本語は拙訳)。やはり今回も、この話題が一般(=非株主)向けのメイン・テーマだと思います。本シリーズの前回分投稿はこちらです。

なお、前年度分を紹介した投稿は以下のとおりです。未読の方は先に読まれることをお勧めします。

2016年度バフェットからの手紙(3)100歳になっても生きているだろうか
2016年度バフェットからの手紙(4)S&P500ファンドの威力
2016年度バフェットからの手紙(5)手数料は眠らない
2016年度バフェットからの手紙(6)アクティブ勢VSパッシブ勢
2016年度バフェットからの手紙(7)あのサルのように運が良ければ
2016年度バフェットからの手紙(8)金持ちはどう感じているのか
2016年度バフェットからの手紙(9)金持ちが熟練者と出会うとき

終わりをむかえた「例の賭け」から得られた、投資に関する意外な教訓

2007年12月19日にわたしが始めた10年越しの賭けについて、9割がた進んだ昨年の段階で、詳細な報告をしました(年次報告書に含めたその全文は、今回の年次報告書[PDF]の24-26ページに再掲してあります)。そして今では最終的な数字がそろいました。さまざまな観点において目を見張る結果でした。

賭けを始めた理由は2つありました。ひとつめは、わたしが拠出する31万8,250ドルをもとに、不相応なほど大きな金額に増やしたかったためです。わたしの予想する通りにものごとが進めば、2018年の初めにガールズ・インクのオマハ事務所へ寄付されることになる資金です。ふたつめは、わたしが確信していることを広く知ってもらいたかったからです。つまりそれは、「アクティブな運用者が関わらないS&P500のインデックス・ファンドを選ぶことで、実質的に費用のかからない投資となるわたしのやりかたが、ほとんどの資産運用のプロよりも優れた成績を、いずれは達成する」という考えです。ただしその「助力者」たる方々は、敬意を払われた上に、金銭面での見返りも厚遇されるとは思いますが。

この問題に取り組むことには、はなはだしく重要な意味があります。米国の投資家は毎年多額の費用を投資助言者へ支払っています。さまざまな階層にわたるがゆえの費用が課されることもよくあります。そのような投資家を全体としてとらえたときに、はたして支払った金額にふさわしい対価を受けているのでしょうか。実際のところ、助言者に対する総支出に対してなにかを受け取っているのでしょうか。

賭けの相手となったプロテジェ・パートナーズはS&P500の成績を上回ることをねらって、5本の「ファンド・オブ・ファンズ」を選択しました。彼らが選んだこの数が、少ないということはありません。ファンド・オブ・ファンズを5本選んだということは、結局のところ200本のヘッジ・ファンドへ投資することになったからです。

ウォール街では投資助言会社として知られているプロテジェは、実質的に5名の投資専門家を選んだことになります。さらには各々がヘッジ・ファンドを運営している、投資の専門家を数百名抱えたことになります。これは、「頭脳とアドレナリンと自信に満ちたエリートからなる要員のそろった集団」ということになります。

5本のファンド・オブ・ファンズそれぞれを運営するマネージャーには、さらに有利な点がありました。みずからのポートフォリオに含まれているヘッジ・ファンドを、10年の間に入れ替えることができた点です。実際のところ彼らは、新たな「スター」へ資金を投下し、その一方で運用者の神通力が失われたヘッジ・ファンドからは資金を引き揚げました。

プロテジェ側の役者諸氏は、成功に対する大きな見返りを約束されていました。ファンド・オブ・ファンズの運営者だけでなく、選択された各ヘッジ・ファンドの運営者も、儲けの大幅な部分が分配されることになっていたのです。たとえそれが単に市場全体が上昇したときであっても、です。(わたしたちがバークシャーを経営し始めた以降で10年にわたる期間を考えたとき、1年ずつずらすと都合43回ありましたが、S&P500はそのすべてにおいて、プラスだった年数がマイナスだった年数を上回りました)

成功に応じて受けられるそういった見返りは、本来は強調すべきところを、おいしくて巨大なケーキの上に塗り伸ばされていました。たとえファンドが10年の間に投資家の資金を失ったとしても、運用者諸氏は大金持ちになることができたでしょう。資産額に対する割合が、平均にして「驚きの2.5%前後」にのぼる固定手数料を、ファンド・オブ・ファンズへ投資する者が毎年支払うとなれば、それも実現する話です。その手数料の一部はファンド・オブ・ファンズ5本の各運用者へ、そして残りは下位にあたるヘッジ・ファンドの200名超にのぼる運用者へとわたったのです。(PDFファイル10ページ目)

(この節、つづく)

“The Bet” is Over and Has Delivered an Unforeseen Investment Lesson

Last year, at the 90% mark, I gave you a detailed report on a ten-year bet I had made on December 19, 2007. (The full discussion from last year’s annual report is reprinted on pages 24 - 26.) Now I have the final tally - and, in several respects, it’s an eye-opener.

I made the bet for two reasons: (1) to leverage my outlay of $318,250 into a disproportionately larger sum that - if things turned out as I expected - would be distributed in early 2018 to Girls Inc. of Omaha; and (2) to publicize my conviction that my pick - a virtually cost-free investment in an unmanaged S&P 500 index fund - would, over time, deliver better results than those achieved by most investment professionals, however well-regarded and incentivized those “helpers” may be.

Addressing this question is of enormous importance. American investors pay staggering sums annually to advisors, often incurring several layers of consequential costs. In the aggregate, do these investors get their money’s worth? Indeed, again in the aggregate, do investors get anything for their outlays?

Protege Partners, my counterparty to the bet, picked five “funds-of-funds” that it expected to overperform the S&P 500. That was not a small sample. Those five funds-of-funds in turn owned interests in more than 200 hedge funds.

Essentially, Protege, an advisory firm that knew its way around Wall Street, selected five investment experts who, in turn, employed several hundred other investment experts, each managing his or her own hedge fund. This assemblage was an elite crew, loaded with brains, adrenaline and confidence.

The managers of the five funds-of-funds possessed a further advantage: They could - and did - rearrange their portfolios of hedge funds during the ten years, investing with new “stars” while exiting their positions in hedge funds whose managers had lost their touch.

Every actor on Protege’s side was highly incentivized: Both the fund-of-funds managers and the hedge-fund managers they selected significantly shared in gains, even those achieved simply because the market generally moves upwards. (In 100% of the 43 ten-year periods since we took control of Berkshire, years with gains by the S&P 500 exceeded loss years.)

Those performance incentives, it should be emphasized, were frosting on a huge and tasty cake: Even if the funds lost money for their investors during the decade, their managers could grow very rich. That would occur because fixed fees averaging a staggering 2.5% of assets or so were paid every year by the fund-of-funds’ investors, with part of these fees going to the managers at the five funds-of-funds and the balance going to the 200-plus managers of the underlying hedge funds.

2018年2月26日月曜日

2017年度バフェットからの手紙(1)減税及び会計基準変更による影響

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バークシャー・ハサウェイのウォーレン・バフェットが、2/24(土)付けで2017年度の「バフェットからの手紙」を公開しています。今回は全16ページと、少なくとも今世紀に入ってから最も短いレターです。一読した印象も「地味であっさり」といったところですが、よく考えれば大切な文章も当然ながら見受けられます。これからまじめに読み込むつもりです。

今回は冒頭の文章から、拙訳付きでご紹介します。言葉通り、バークシャーの株主に向けた話題です。

SHAREHOLDER LETTER 2017 [PDF] (Berkshire Hathaway)

バークシャー・ハサウェイの株主のみなさんへ、

2017年度において、バークシャーの純資産は653億ドル増加しました。その結果、クラスA株及びクラスB株のいずれにおいても、1株当たりの簿価は23%増えています。過去53年間において(すなわち現経営陣が就任した後のことですが)、1株当たりの簿価は19ドルから21万1,750ドルに増加しました。これは年率にして19.1%の増加率になります。

巻頭にあげた[業績推移の]表は、30年間にわたって同じ書式を使ってきました。しかし2017年度は、これまでのお決まりから大きく逸脱しています。バークシャー内で達成したこと以外のものが、当社利益の大幅な部分を占めたからです。

そうではあるものの、650億ドルになる利益は現実のものですから、ご安心ください。ただし、バークシャー自身の活動によって得た金額は、360億ドルにとどまっています。残りの290億ドルは、議会が連邦税法を改定したことによって、12月にもたらされたものです。(税務的な面によってバークシャーが得た利益に関する詳細は、年次報告書のK32やK-89~K-90ページをご参照ください)

そのような財務上の事実があることをお断りしましたので、早速バークシャーの経営状況についてご説明したいと思います。しかし、もう1件だけお待ちください。GAAP(米国会計基準)に規定された新たな会計基準について、触れておかねばならないからです。この改定によって今後提出される四半期及び年次の会計報告では、バークシャーの純利益の数字が大幅に変形したものとなります。それによってメディアに登場する解説者や投資家が誤解してしまうことが、たびたび生じると思われます。

新たな規則は、「株式投資における未実現損益の期間増減額を、純利益の数字へ含めて報告書に記載しなければならない」点を要求しています。そのことで、GAAPに準拠する当社の経営成績は、実に荒々しく気まぐれに変動することになるでしょう。バークシャーは市場で取引されている株式を1,700億ドル保有しています(ただしクラフト・ハインツ社の当社持ち分を除く)。それら持ち株の評価額は、四半期ごとの会計期間において100億ドル以上容易に変動します。そのような規模で旋回する数字を報告利益に加えることは、当社の営業成績を描き出すまさしく重要な数字を台無しにします。バークシャーが示す「稼ぎ」は、分析しようにも役に立たないものとなるでしょう。

この新たな規則によって、コミュニケーション上の問題も併せて生じます。この問題は以前からも存在していました。「[証券売却時の]実現損益を当社の純利益に含めるように」と、会計規則が強制していたからです。そのため、過去の四半期及び年度ごとの決算発表の際には、「それらの実現益には気を取られないように」とみなさんに常々警告してきました。なぜならば未実現損益と同様に、その数字も不規則に変動するからです。

証券を売却した理由の大半は、その時期にそうするのが賢明だと思えたからでした。「なんとかして報告利益に影響させたい」と考えたわけではありません。その結果、ポートフォリオ全体が残念な成績の間に大幅な実現益を計上したことが、当社では往々にしてありました(その反対もありました)。

未実現益に関する新たな規則は、実現益に適用されている現行の規則がもたらした歪曲を、一層悪化させると思われます。そのため、みなさんが納得のいく数字を得られるように、それに必要な調整値を四半期ごとに説明する労苦を、わたしたちは背負うことになります。しかし決算発表時に映像で流れる解説はたちまち反応を受けがちですし、新聞の見出しでは必ずと言っていいほど前年比でみたGAAP純利益の増減に焦点を当てています。その結果、メディアはときに数字を強調した報道を行い、多くの読者や視聴者を不必要に怖がらせたり、煽り立てたりします。

わたしたちはこの問題を緩和するために、「決算報告の発表時期を、金曜日の遅い時刻つまり市場が終了してから少し後、あるいは土曜日の早朝にする」との慣習をつづけたいと考えています。それによって市場が開く月曜日までに、みなさんが分析にかける時間をなるべく多くとれるようになり、また資産運用者たるプロの方々が自分たちの見解を含めた解説を配布する余裕ができるでしょう。そうだとしても、会計のことがチンプンカンプンな株主の間では、かなりの戸惑いが生じると思われます。

バークシャーがもっとも心を砕いていること、それは1株当たり調整後利益を生む力を増加させることです。その指標はわたしだけではなく、長きにわたるパートナーであるチャーリー・マンガーも傾注しています。またみなさんもそうであってほしい、と両名とも望んでいます。それでは、引き続いて2017年度の星取表を説明します。(PDFファイル2ページ目)

To the Shareholders of Berkshire Hathaway Inc.:

Berkshire’s gain in net worth during 2017 was $65.3 billion, which increased the per-share book value of both our Class A and Class B stock by 23%. Over the last 53 years (that is, since present management took over), per-share book value has grown from $19 to $211,750, a rate of 19.1% compounded annually.

The format of that opening paragraph has been standard for 30 years. But 2017 was far from standard: A large portion of our gain did not come from anything we accomplished at Berkshire.

The $65 billion gain is nonetheless real - rest assured of that. But only $36 billion came from Berkshire’s operations. The remaining $29 billion was delivered to us in December when Congress rewrote the U.S. Tax Code. (Details of Berkshire’s tax-related gain appear on page K-32 and pages K-89 - K-90.)

After stating those fiscal facts, I would prefer to turn immediately to discussing Berkshire’s operations. But, in still another interruption, I must first tell you about a new accounting rule - a generally accepted accounting principle (GAAP) - that in future quarterly and annual reports will severely distort Berkshire’s net income figures and very often mislead commentators and investors.

The new rule says that the net change in unrealized investment gains and losses in stocks we hold must be included in all net income figures we report to you. That requirement will produce some truly wild and capricious swings in our GAAP bottom-line. Berkshire owns $170 billion of marketable stocks (not including our shares of Kraft Heinz), and the value of these holdings can easily swing by $10 billion or more within a quarterly reporting period. Including gyrations of that magnitude in reported net income will swamp the truly important numbers that describe our operating performance. For analytical purposes, Berkshire’s “bottom-line” will be useless.

The new rule compounds the communication problems we have long had in dealing with the realized gains (or losses) that accounting rules compel us to include in our net income. In past quarterly and annual press releases, we have regularly warned you not to pay attention to these realized gains, because they - just like our unrealized gains - fluctuate randomly.

That’s largely because we sell securities when that seems the intelligent thing to do, not because we are trying to influence earnings in any way. As a result, we sometimes have reported substantial realized gains for a period when our portfolio, overall, performed poorly (or the converse).

With the new rule about unrealized gains exacerbating the distortion caused by the existing rules applying to realized gains, we will take pains every quarter to explain the adjustments you need in order to make sense of our numbers. But televised commentary on earnings releases is often instantaneous with their receipt, and newspaper headlines almost always focus on the year-over-year change in GAAP net income. Consequently, media reports sometimes highlight figures that unnecessarily frighten or encourage many readers or viewers.

We will attempt to alleviate this problem by continuing our practice of publishing financial reports late on Friday, well after the markets close, or early on Saturday morning. That will allow you maximum time for analysis and give investment professionals the opportunity to deliver informed commentary before markets open on Monday. Nevertheless, I expect considerable confusion among shareholders for whom accounting is a foreign language.

At Berkshire what counts most are increases in our normalized per-share earning power. That metric is what Charlie Munger, my long-time partner, and I focus on - and we hope that you do, too. Our scorecard for 2017 follows.

2018年2月24日土曜日

ヨギ・ベラの卓見(ウォーリー・ワイツ)

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前回の投稿につづいて、ウォーリー・ワイツのインタビュー記事を引用します。今回の話題は「価格決定力」と「価値評価」についてです。ウォーレン・バフェットと同じように、ちょっとした冗談を折り込むのがワイツ氏も上手ですね。マネー・マネージャーとしての研鑽を積んでおられるようです。(日本語は拙訳)

<ロトンティ> 最近お書きになった文章の中で、「ほとんどの業界において企業側の価格決定力が弱くなった。それというのも、インターネットを利用して価格をすみやかに比較できる能力を、買い手側が手にしたからだ」としています。それではどのような種類の企業であれば、今もなお強力な価格決定力を確実に持っていると思いますか。

<ワイツ> 強力な価格決定力とは、手元に維持するのが難しいものです。今でもそれが存在すると考えられるのは、たとえばライセンスに守られた独自製品やニッチ製品、フランチャイズ契約、特許が挙げられます。また莫大な初期投資を必要とする事業であれば、優位性があるかもしれません。しかし資本がごく安価に調達できたり横溢している時期に、安全といえる企業はほとんどないでしょう。ほかには「ネットワーク効果」が発揮されることで、市場を「勝者の総取り」によって独占できるかもしれません。しかしこれも優位性が営々とつづくものは、きわめてわずかです。

<ロトンティ> 価値評価をどのように考えていますか。ディスカウンティド・キャッシュ・フロー(DCF)分析を使いますか。売却金額を定めていますか。また、好みの評価指標がありますか。たとえばPER、PBR、フリー・キャッシュ・フロー(FCF)利回りはどうですか。

<ワイツ> 私たちが信奉している理論が2つあります。第一に、「事業の価値は、将来得られるキャッシュ・フローを現在価値に割り引いたものである」こと。第二に、「事業価値は、いずれ株価に反映されるであろう」ことです。しかしヨギ・ベラが言ったように、「理論と実践に理論上の違いはないが、実践してみると違いはある」ものです。

おなじみの評価指標は、様々な文脈を考慮して使わなければ、ほとんど意味がありません。DCF分析も同様にかなり鈍い道具で、「科学的精度を有する」という幻想を生み出しかねません。以前からの冗談でこんなものがあります。「DCFで使う割引率と掛けて、ハッブル宇宙望遠鏡と解く」。その心は、「数度動かせば、別の惑星系が見える」。

そうであれ、私たちが念入りに調べる企業については、DCFモデルを必ず作成しています。ただしモデルが一点の場所として示す「価値」は、すなわち購入に踏み切れと指示するものではありません。しかしモデルを構築するアナリストはその作業を通じて、当該企業がどのように機能しているか必然的に理解することになります。またモデルが存在すること自体によって、私たちの投資検討チームが企業の魅力や価値を議論・討議しやすくなります。

FCFについて一点申し上げますと、その定義は使う人それぞれによって異なっています。私たちは「随意利用可能な」キャッシュ・フローの意味で使っています。これは保守・保全費用を支払った後の現金収支[原文はcash earnings]を指しており、成長を期した投資費用は含みません。一例をあげると、ホテルは客室を定期的に改装する必要がありますが、これは保守・保全費用になります。一方、新規の客室棟を建て増す場合は成長投資、すなわち「随意」分となります(この差異は財務諸表上で明確ではないこともありますが、違いがある点を認識しておくことが大切です)。

「売却目標」についてですが、企業価値の見積もりや計算に変更があったり、株価が満額あるいは割高だと思われたり、さらには資本投下先としてもっと魅力的な対象が他にある場合に売却します。

JR: You recently wrote that the pricing power of companies in most industries has decreased because of the shopper’s ability to quickly compare prices using the Internet. Which types of companies do you believe still have strong pricing power?

WW: Strong pricing power is hard to come by. Unique products and niches protected by licenses, franchise agreements, patents, etc. still exist. Businesses that require huge, upfront capital investments can have an advantage, but in a period of very cheap and abundant capital, few companies are safe. “Network effects” can lead to “winner take all” market dominance, but again, very few advantages are permanent.

JR: How do you think about valuation? Do you use discounted cash flow analysis? Do you set sell targets? Do you have a preferred valuation ratio such as price-to-earnings (P/E), price-to-book (P/B), free cash flow (FCF) yield?

WW: We believe in the theory that (1) the value of a business is the present value of its future cash flows and that (2) business value is likely to eventually be reflected in its stock price. However, as Yogi said, “In theory there is no difference between theory and practice. In practice, there is.”

Popular valuation ratios mean very little without lots of context. Discounted cash flow analysis is also a very blunt instrument which can create the illusion of scientific precision. There’s an old joke that DCF discount rates are like the Hubble Telescope…move it a couple of degrees and you’re in a different solar system.”

We do make DCF models on all the companies we get serious about, though. While the single point “value” that comes out of the model doesn’t dictate our buying decision, building the model forces the analyst to understand how the business works and the model itself facilitates discussion/debate among our investment team about the attractiveness and value of the business.

One note on “FCF”: Practitioners differ on the definition of “free cash flow.” We talk about “discretionary” cash flow. That is, cash earnings after maintenance capex but before growth investments. For example, regular refurbishment of hotel rooms is required - maintenance capex. Adding a new wing of rooms is discretionary - growth capex. (The difference may not always be clear from financial statements but the distinction is important.)

As for “sell targets,” we sell if our estimate or calculations change, if a stock becomes fully/over-valued, or if we have a more attractive alternative use of the capital.

さて本日2月24日(土)の夜10時には、バークシャー・ハサウェイの年次報告書(及び「バフェットからの手紙」)が公開される予定です。新たな副会長2名の件は、必ずや取り上げられることでしょう。また現在の金利環境についても触れそうな印象があります。そして、アップル社や暗号通貨の話題は登場するでしょうか。

2018年2月20日火曜日

バリュー投資家ウォーリー・ワイツのインタビュー

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ときどき取り上げるバリュー志向のファンド・マネージャー、ウォーリー・ワイツ氏が顧客向けレターの最新版を公開していました。そのなかで、株式投資情報サイトのモトリー・フールから受けたインタビュー記事が転載されていますので、一部をご紹介します。(日本語は拙訳)

Value Matters: Fourth Quarter 2017 Letter to Investors (Weitz Investment Management, Inc.)

(前略)その一方で、投資からのリターンがなだらかに、あるいは想定可能なスケジュールにもとづいて得られることはありません。株式市場から「冷や飯を食わされる」期間がしばらく続くことには、すっかり慣れっこになっています。私たちの場合、「安い株を買い、高い株を売る」ことのどちらも、早い時期に実行することがよくあります。しかし作為的な低金利環境がここまで継続していることや、[証券が]高い評価を受けている現状や経済及び地政学的なリスクに直面しても投資家が無頓着でいることを過小評価していました。その結果、慎重を期した私たちのポートフォリオに対して、相対的リターンという意味でマイナスの影響をもたらしました。

そのようなやりかたで私たちが投資するのは、「長期にわたる投資期間でみたときに、成功する確率を最大化できる」と考えているからです。顧客であるみなさんから寄せられた資金は、大学進学にかかる費用や引退後に快適な生活水準を保つといった長期的な目標に向けたものと受けとめています。そのため、短期的な成績競争には重きを置いていません(資産が大幅に増加する年があっても、やぶさかではありませんが)。

(中略)

自分たちの投資プロセスやそれを実践する能力については、満足しています。それが不朽の原則にもとづいているからです。そして、「論理的に価値を測定できる資産は、高低どちらへも誤った値付けが必ず生じる」と考えています。なぜならば、「投資家はときに感情に従い、高値で買って安値で売る」ものだからです。ウォーレン・バフェットが言っているように、私たちのやるべきことは「他人が恐れをなすときに買い、他人が欲深いときに売る」ことにあります。先だってモトリー・フールから受けたインタビューの記事を、以下に一部再掲します。私たちの取り組むバリュー投資がどのようなものなのか、思い起こす際のお役に立てれば幸いです。

On the other hand, investment returns do not arrive smoothly or on a predictable schedule. We are very accustomed to being “out of step” with the stock market for stretches of time. We are often early both in buying cheap stocks and selling expensive ones. However, we underestimated the persistency of artificially low interest rates as well as investor complacency in the face of high valuations and both economic and geopolitical risks. As a result, our overly cautious portfolio positioning has had a negative impact on our relative returns.

The reason we invest the way we do is that we think it gives us the highest probability of success over long investment periods. We are investing client capital with an eye to funding long-term goals such as college education and improving the quality of life in retirement. We are not focused on short-term performance contests (though we are not opposed to outsized annual gains from time to time).

We feel good about our investment process and our ability to implement it because we think it is based on timeless principles. We believe that assets with logically measurable values become mispriced—both on the high and low sides—because investors’ emotions lead them to, on occasion, buy high and sell low. Our job, as Warren Buffett has said, is to “buy when others are fearful and to sell when they are being greedy.” A portion of our recent interview published by The Motley Fool is reproduced on the following pages. Hopefully, it will provide a good reminder of how we approach our version of value investing.

ここからがインタビュー記事になります。

ワイツ資産管理会社における連携作業及び利益について
創業者ウォーリー・ワイツが語る、見込み投資先のみつけかたと評価方法
2017年11月、モトリー・フール社ジョン・ロトンティ記

<ジョン・ロトンティ> 質の高いビジネスをどのように定義していますか。

<ウォーリー・ワイツ> ある著名な投資家がすばらしいビジネスについて次のように定義したことがあります。「原価は1円、売値は100円。そして中毒性があること」。この冗談はやがて魅力を失います、次の一言が付け加えられてからですね。「ただし顧客の命を奪うこと」。おそらくだれもが次のような事業を保有したいと考えることでしょう。まずは、大幅な競争優位性(バフェット言うところの「濠」(moat))を持っていること。2番目に、余剰の現金を生み出すこと。3番目に、当該事業において高いリターンを生み出す再投資の機会を有していること。そして4番目に、経営者が誠実であると共に、強力な資本配分の能力を持っており、株主を事業上のパートナーとして処遇し、長期的視点から1株当たりの企業価値を成長させることに注力する人物であること、です。

<ロトンティ> 投資に関するチェックリストをお使いですか。もしそうであれば、どのような項目をあげられているのか、少しばかり教えていただけないでしょうか。

<ワイツ> 正式なリストは作成していません。しかし作るとすれば、「質の高いビジネス」に関する属性が筆頭にくると思います。「生存能力」や「支配力の継続性」に関する項目がいくつか来るでしょう。「慎重な形で」借り入れを活用することは気にしませんが、会社の財務が十分な強靭さを持ち、想像し得るほぼすべての困難時にも耐えられる点は要求します。「パラシュートは、ほぼ常に開いていますから」では不十分です。スカイダイビングをするつもりはありません。

<ロトンティ> どのようにして投資対象の範囲を狭めているのか、またその範囲がどれほど広いものなのか、ご説明いただけますか。

<ワイツ> 正式のスクリーニングはあまりやりません。しかし10名からなるアナリストとポートフォリオ・マネージャーは、各々が投資候補の案を収集しています。読み物をしたり、各社と対話をしたり、投資業界内で話を交わしたり(バイサイド[機関投資家]とセルサイド[証券会社]の両方)などです。そして、あげられた投資候補について調査分析し、議論します。そのような精査を通過したものが、購入対象となったり、あるいは価格が適切と思われる時期が来たときに実際に投資する対象として、「待機」リストに加えられます。

<ロトンティ> 好みの業界や、あるいは避けている業界がありますか。

<ワイツ> 理屈の上では、投資候補に対して広く柔軟性をもって取り組んでいます。しかしながら、その企業がどのように機能しているのか理解できることが不可欠ですし、5年から10年後にどんな様子になっており、その期間内にどれだけの現金を生み出せるのか、それらを妥当に見積もれることも必要です。「予測可能であること」を要求するので、コモディティー関連あるいは競争が厳しくて急激に変化するビジネスには、あまり興味がありません。「軽資本」で済み、ケーブルテレビのような継続契約のビジネスのほうが好みです。正味で現金を生み出し、そこそこの借入で済む企業がいいですね。

[以降もインタビューは続く]

Collaboration and Profit at Weitz Investment Management
Founder Wally Weitz talks about how he finds and evaluates potential investments.
By John Rotonti • The Motley Fool • November 2017

John Rotonti:How do you define a high-quality business?
Wally Weitz: One well-known investor used to define a great business as one whose product cost a penny, sold for a dollar, and was addicting. That joke lost its appeal when people began to add, “but it kills its customers.” We would probably all like to own businesses that (1) have significant competitive advantages (Buffett’s “moat,”) (2) generate excess cash, (3) have high return reinvestment opportunities in the business, and (4) management with integrity and strong capital allocation skills who treat shareholders like partners in the business and who focus on long-term growth in the per share value of the business.

JR: Do you use an investing checklist? If so, would you mind sharing a few of those checks?
WW: We don’t have a formal list. If we did, the attributes of a “high-quality business” listed in No. 1 would be on it. There would also be some “viability” and “staying power” items. We are fine with the “prudent” use of leverage, but we insist that a company’s balance sheet be strong enough to withstand almost any conceivable type of adversity. “The parachute almost always opens” is not good enough—we don’t go sky-diving.

JR: Please explain how you narrow down your investable universe and how large that universe is.
WW: We do not do much formal screening, but each of our ten analysts and portfolio managers collects potential ideas from reading, interacting with other companies, talking to others in the investment business (both buy side and sell side), etc. Potential ideas are researched and discussed. Those that survive scrutiny may be bought or placed on the “on-deck” list for future investment when the price is right.

JR: Are there any industries you tend to prefer? Or avoid?
WW: We have great theoretical flexibility in what we may invest in. However, we need to be able to understand how the business works, to be able to make a reasonable estimate of what it will look like in 5-10 years and how much cash it will generate over that period. The need for predictability tends to lessen our interest in commodity related or highly competitive and rapidly changing businesses. We tend to favor “capital-light” and subscription businesses like cable TV. We like net cash generators and companies with modest leverage.

質の高いビジネス(high-quality business)に関する話題は、過去記事でも何度か登場しています。たとえば、以下のような記事があります。

・企業はすばらしくても自分はがっかり(アーノルド・ヴァンデンバーグ)
・レストランを品定めするように(ジョン・テンプルトン)

2018年2月16日金曜日

2017年の投資をふりかえって(3)サンリオ(8136)

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(当社について前回とりあげた過去記事はこちらです。また本シリーズの前回分記事はこちらです)

当社の株を買ったのは2014年5月で、株価が大きく下落した時期でした。少なからぬリスクがあると承知はしていましたが、その後懸念していたリスクが発現し、昨年2017年6月に全売却するまでの投資成績は、散々な結果に終わりました。本投稿では当社における近年の業績を振り返り、教訓を書き記しておきます。

<株価動向と投資成績について>
現在の株価は1,900円前後です。一方、株の全売却時は2,100円程度でした。平均購入単価は約2,600円で、現物買い持ちだけをみた投資成績は赤字でした。受取配当金とつなぎ売りをしていた時期の利益も含めれば赤字ではないものの、それでも黒字幅はおしるし程度のものでした。投下した資金の割合が小さかったため、ポートフォリオ全体でみた資本効率にはほとんど影響していませんが、結果的には実行する意味のない投資でした。

下図の株価チャート上に、取引時期を示してあります。赤矢印が株式購入、青が売却、緑がつなぎ売り、黄がその買戻しです。

サンリオ株価チャート(2013-2017年)

<業績の概要>
当社が営む主な事業形態は以下の3つです。

a. 自社キャラクターを活用した物販
b. 自社キャラクターのライセンス
c. テーマパーク

当社の前副社長であり、次代を担うはずだった辻邦彦氏(故人)は経営上の重要課題として「b. 自社キャラクターのライセンス」事業の強化を掲げていました。そこで2008年に社外から鳩山玲人(れひと)氏を迎え入れ、海外展開を強力に推進して、劇的な増収増益を果たしました。

(再掲)サンリオ営業利益の推移(2013年度まで)

しかし2014年初に前社長が突然死去したことで、当社の創業者で故人の父親でもある辻信太郎社長が実権を握り直しました。そして鳩山氏が加わった以降の成長路線を覆し、みずからが従来進めていた路線に回帰しました。そのなかで、海外ライセンス事業における鳩山氏主導体制をやめてしまいました。それ以降、すなわちポスト鳩山時代における業績は下図のようになります。

サンリオ営業利益の推移(2016年度まで)

鳩山時代に積み上げられた海外ライセンス契約からの利益は、年を追うごとに減少しています。鳩山氏が注力していた欧州及び米州のライセンス事業が壊滅的で、元の木阿弥となりました。業績不振の理由として当初は『アナと雪の女王』の影響を挙げていましたが、俯瞰してとらえると鳩山氏の尽力が失われたことが大きな要因だと想像します。

なお業績に関してアジア向けライセンスが伸長していること、そして国内アトラクション(=テーマパーク)の赤字幅が縮小してきた点は評価できます。しかし欧米ライセンスの退潮を埋めるまでには至っていません。

経営陣としての権限や海外での担当領域を剥奪されていった鳩山氏は、それでもアニメーションに関する新規事業の責任者として在籍していました。しかし、とうとう2016年5月に取締役を退任されました。退任発表日の翌日に株を全処分すべきでしたが、その事実を真剣に受け止めていなかったせいで、機会をのがしました。

<教訓>
当たり前のことですが、「一般投資家の利益を考えない経営がなされている企業に、投資してはならない」ことを実感しました。鳩山氏以前の時代と同じように、当社における最大のリスクは「経営者リスク」であることを再認識しました。

話は変わりますが、ときに簡易生命表(PDF)を参照することがあります。たとえば、しまむらの創業者である島村恒俊氏は、まもなく92歳になります(生年月日はWikipediaによる)。92歳の平均余命は3.65年となっています。一方、サンリオの現社長は12月に90歳になったところです。90歳の平均余命は4.28年です。