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2015年11月20日金曜日

1990年代終盤を思い出させる(ドナルド・ヤクトマン)

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バリュー志向のマネージャーであるドナルド・ヤクトマン氏のことは何度か取りあげています。少数の大企業に集中投資する彼のスタイルは一般の投資家にとってなじみやすく、参考になるものがあると思います(過去記事でもポートフォリオを載せました)。今回は、ファンドの顧客向けに彼が書いた第3四半期のレターから引用します。(日本語は拙訳)

AMG Yacktman Focused Fund 2015 Q3 COMMENTARY [PDF]

この第3四半期の投資環境は、私たちのやりかたにとってずっと有利なものでした。現在の市場は1990年代の終盤に少し似ていると考えています。株価の高い時期が長期間継続した強気相場が終わる前の頃です。私たちがバリューを求めるやりかたは、今年は現在のところ後れをとっています。世の中の投資家はいくつかの割高な成長株を追いかける一方、注目すべき価値を提供しながらも短期的な問題が進行中の証券を避けてきたからです。しかし同様の環境が重なった1990年終盤には、成績低調な時期が存在したことで、長期にわたるずば抜けた好成績が準備されたのでした。

この数か月の間に、投資比率を大幅に増やすことができたお気に入りの投資先が何件かありました。一方で、好成績だった投資先は縮小あるいは売却しました。本物のバーゲンが到来したときにはもっと積極的かつ楽観的になれるものですが、そうなるのはほとんどの場合下落相場においてです。当ファンドを管理運営するにあたり、私たちはこれまでどおり辛抱強く、慎重に、そして客観的であり続けて参ります。(p. 2)

The investment environment was much more favorable to our approach during the third quarter. We believe the current market is a bit like the late 1990s, near the end of that expensive, long-running bull market. Our value style has lagged so far this year, as investors have chased a few high-priced growth stocks and shunned securities that offered compelling valuations but were undergoing near-term issues. Under a similar set of circumstances in the late 1990s, a period of underperformance set up exceptional outperformance over the long term.

In the last few months we were able to significantly increase our weightings in some of our favorite ideas while reducing or selling investments that have performed well. We become more aggressive and opportunistic when true bargains materialize, and this happens most during declining markets. As always, we will continue to be patient, diligent and objective when managing the AMG Yacktman Focused Fund.

2015年11月18日水曜日

アクティビスト投資家について(ウォーレン・バフェット)

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ウォーレン・バフェットが今年の2月にウェスタン・オンタリオ大学の学生と面会した際の質疑応答その6です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

<質問7> 現在の企業統治の状況をどのようにみなしていますか。アクティビスト[物言う投資家]の存在は株主に価値をもたらすのでしょうか。

<バフェット> もしわたしが資産運用者になりたてで、資金を募ることだけを考えていたら、自分はアクティビストだと公言すると思います。すごく流行っていますからね。ですがアクティビスト投資家の数が増えるにつれて、行動を起こす先の企業をみつけるのがむずかしくなります。その一方で、企業における経営陣の自浄作用は失敗しつづけてきました。

アクティビスト投資家で問題なのは、株価が「跳ね上がる」ことだけを求めている様子がみられる点です。短期的な視野で動くアクティビストは個人的には好まないので、応援するアクティビスト投資家は一握りになると思います。

アクティビストの時代はまだ頂点には達していません。アクティビストの率いるファンドが儲からなくなるまでは続くと思います。すごいアイデアが馬鹿げたものに変わるまで、金融界はそのアイデアをずっと後押しします。ですが大切なのは、アイデアがどこまで通用するのかを忘れないことです。アクティビスト投資家の数が増えすぎれば、いずれは問題になります。

Question #7: How would you characterize the state of corporate governance today? Do activist investors bring value to shareholders?

Answer #7: If I were solely interested in attracting money as a new money manager, I would call myself activist investor as they are very popular now. As the numbers of activist investors grow, these managers are having more and more trouble finding companies to be active in. On the other hand, the self-cleansing method of management in companies has continuously failed.

One problem with activist investors is that they are sometimes only looking for a "pop" in the stock, so I personally do not like the short term horizon of some activists and would only back a small handful of activist investors.

The activist phase has not reached its peak yet and will be with us until activist funds stop making money. Wall Street pushes great ideas until they are silly. It is important to remember the limitations of ideas and once there are too many activist investors there will be problems.

2015年11月16日月曜日

ニッチとは居心地の良い場所(日東電工髙﨑社長)

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今週号の日経ビジネス(2015年11月16日号 No.1816)で日東電工がとりあげられていました。髙﨑社長のインタビュー記事もあり、興味深い内容でした。同社の強みが感じられた文章を以下に引用します。

はじめは髙﨑社長の発言です。

<問> ニッチを重視すると言っても、ニッチな分野は市場規模も限られます。どう稼ぐのでしょうか。

<答> もうかるかどうかではなく、もうけるんですよ。ニッチと言うと「隙間」というイメージがあるかもしれませんが、我々の考え方はちょっと違います。市場規模が小さいというより、競合がなかなか入れない「居心地の良い場所」が我々の定義するニッチです。

ここを守り続ければいずれ大きな事業に育つ可能性もある。今は大きな収益基盤となっている液晶パネル向けの偏光板だって 、最初は電卓など小さい市場からスタートしているんです。

<問> 模倣対策はどうしているんですか。

<答> そこは、ビジネスモデルから特許でバチッと押さえます。過去にたくさん苦い汁を吸っていますからね。

特許で守らなければ、どんなに良い物ができても、すぐまねされて、あっという間に追いつかれます。それこそ世界中で特許を取っておかないと戦えない。攻めの特許戦略が必要なんです。(p. 80)

もうひとつはCTOの西岡氏による説明です。

「『こんな製品があればいいのに』と思ったお客さんは、それを作ってくれそうな企業に相談する。結果的に、様々な分野で市場シェアの高い製品を抱える我々の元に、顧客ニーズが集まるようになる。そうした情報を照らし合わせることで、ものになりそうな技術、なりにくそうな技術の見極めができる」(p. 75)

蛇足です。数年前に当社へ投資してから少しずつ売却し、現在は1単元を残すのみです。名残惜しくて売り切れない。当社もそんな企業のひとつです。

2015年11月14日土曜日

反証と知恵とチェックリスト(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーが2007年に南カリフォルニア大学グールド・ロースクールの卒業式で述べた祝辞の13回目です。今回はチャーリーおなじみのテーマです。短くまとめられた発言ですが、リンク先の過去記事では詳しく説明されています。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

客観性を保つことのできる定型的なやりかたに従っていれば、当然ながら認知の面でとても有益です。ダーウィンが反証することに熱を入れたのはだれもが知っているとおりですね。自分が信じて愛した考えに対してこそ、彼は熱心に反証を試みたのです[参考記事]。できるだけ正しく考えることが人生だとすれば、そのような手順は欠かせません。そしてもうひとつ必要なのが、チェックリストを使って確認することです。これはたくさんのあやまちを防いでくれますよ。パイロットだけのものではないのです[参考記事]。多岐にわたる基礎的な知恵を身につけるだけでなく、その知恵を頭の中のチェックリストに並べて使うことです。そこまでうまくいく方法は、他にはありません。

Engaging in routines that allow you to maintain objectivity are of course, very helpful to cognition. We all remember that Darwin paid special attention to disconfirming evidence, particularly when it disconfirmed something he believed and loved. Routines like that are required if a life is to maximize correct thinking. And one also needs checklist routines. They prevent a lot of errors, and not just for pilots. You should not only possess wide-ranging elementary wisdom but also go through mental checklist routines in using it. There is no other procedure that will work as well.

2015年11月12日木曜日

善意が最悪につながるとき(『人と企業はどこで間違えるのか?』)

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遅ればせながら『人と企業はどこで間違えるのか?』を読みました。本書はビル・ゲイツが推薦した本として知られていますが、さらに元をたどればウォーレン・バフェットにたどりつくとのことです。本書では米国経済界で起こった10件の出来事(原書Business Adventuresでは12件)が節度ある文章で語られており、自然と引き込まれました。今回引用するのは1962年5月に起きた株式市場の暴落後に、ある株式ブローカーが書き残した文章です。

私たちはブローカーならではの憂鬱も抱えていた。顧客は誰もが裕福というわけではない。にもかかわらず、私たちの助言のせいで多大な損失を被っているのだ。信じてもらえないかもしれないが、他人の金を失うことはどうしようもなく嫌なものだ。あの暴落が起きるまで、相場は12年間も上昇し続けてきた。誰でも10年ものあいだ、自分や顧客にひたすら利益ばかりもたらしてきたら、自分はとてつもなく有能だと思うようになる。自分はすごい、金儲けの達人だ、と。しかし相場が崩れ、無力さが露呈した。あのとき誰もがいくばくかの自信を失い、すぐにはそれを取り戻すことができなかった。どうやら市場が受けた衝撃は、ブローカーがデ・ラ・ヴェガの提唱する次の基本ルールを守るべきだったと後悔するほど大きかったようだ--「株の売買についてはけっして助言してはならない。なぜなら、洞察力が鈍ったとき、善意の助言が最悪の結果につながることがあるからだ」(p.322)

参考までに当時のS&P指数のチャートを転載します。1929年は別格として、第2次大戦後の上昇がつづく期間では急激な下落だったようにみえます。

(出典) The Intelligent Investor (4th Revised Edition)

こちらはおまけです。上述の話とは別のもので、アメリカ政府で原子力委員会の委員長などを務めた人物デビッド・リリエンソール氏に関する章からです。民間企業の経営者へと転身した彼が、ストック・オプションで財産を築いたことについて抱いていた想いです。

「(前段省略)ここ数年、『金持ちになるってどんな気分だ』としょっちゅう訊かれます。最初は暗に非難されているようで気分が悪かったのですが、もう慣れました。今ではとくにどうこう思わないと答えています。本音はというと……ただし、これを言うと傲慢に聞こえるでしょうが……」

「いいえ、ちっとも傲慢じゃないわ」、リリエンソール夫人が先回りして言った。

「いや、傲慢さ。だが、とにかく言わせてもらうなら」とリリエンソールは続けた。「ある程度の財産があれば、お金はそれほど重要だとは思いません」

「私はそうは思わないわ」と夫人は反論した。「お金が重要じゃないと言えるのは若いうちよ。若ければなんとか頑張れますから気にならないでしょう。でも、歳をとってくるとお金があれば何かと心強いものです」(p.268)