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2012年3月26日月曜日

100年の大計が進められない?(信越化学工業金川会長)

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この週末は図書館で日経新聞の縮刷版を読んできました。新聞をとっていないので(過去記事)、情報を集めたり関連付けたりといった点で、新聞を読んでいる方には水をあけられていると感じています。また、年末年始にひととおり目を通した四季報からもあまりアイデアが得られず(過去記事)、最近は八方ふさがり気味です。そんなわけで初心にかえってみたところですが、半月分の紙面にざっと目を通したところで、都合のいい記事が待っているわけはないですね。

さて、今回ご紹介するのは1/5の日経新聞9面から、信越化学工業の金川会長の言葉です。「経営者」に対する辛口の批評ですが、投資家の視点で語ってくれています。

「市場が短期的な収益を求めるので『100年の大計』が進められないという経営者もいるが、ごまかしだと思う。長期的な成果は毎日毎日の積み重ねだ。今がちゃんとできない経営者は先もだめだし、私が投資家でも信用しない」

「研究開発投資などはしなければ先がないのでする。株主に説明して『今は負担だが、将来のためだ』と分かってもらえればいい。それにはまず利益という実績を示す必要がある。不信の言い訳に長期的な戦略を使ってはならない」

2012年3月23日金曜日

投資における最も価値ある道具(セス・クラーマン)

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株価が上がってしまって割安な銘柄があまり見つからなくなったら、ヘッジファンド・マネージャーのセス・クラーマンの言葉はどうでしょうか。見た目もしゃべりも温厚な雰囲気の彼ですが、投資のほうは凄腕です。今回の引用は、パートナーに向けた2004年度のレター(の転載)からです。

全額を投資せずに現金を大量に待機させておくのはギャンブルだ、という人がいます。市場に参加する時期をみはからっているのだろう、と。ですが、投資するかしないかを決めること自体、投資上の重要な要因だったはずではないでしょうか。「投資とは、あたりだろうがはずれだろうが、とにかく何か買うことだ」なんて、一体どこで決まったのでしょう。「今は投資しない」と言えない人は、投資における最も価値ある道具を投げ出しているわけです。ウォーレン・バフェットの古くからのパートナーであるチャーリー・マンガーは、こう助言してくれています。「将来得られるキャッシュフローを現在価値に割り引いて、それが買値以上のものをさがすのです。そして初歩的ですが、自分が有利なときだけ動くこと。勝率を見定め、勝ち目があるときだけ勝負に出るように自分を律する、これが大切です」。

Some argue that holding significant cash is gambling, that being less than fully invested is akin to market timing. But isn’t a yes or no decision the crucial one in investing? Where does it say that investing means always buying something, even the best of a bad lot? An investor who can’t or won’t say no forgoes perhaps the most valuable tool available to investors. Charlie Munger, Warren Buffett’s long-time partner, has counseled investors, “Look for more value in terms of discounted future cash flow than you’re paying for. Move only when you have an advantage. It’s very basic. You have to understand the odds and have the discipline to bet only when the odds are in your favor.

2012年3月22日木曜日

ひきつづき慎重です(ボブ・ロドリゲス)

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慎重派ファンド・マネージャーのボブ・ロドリゲスによる講演「注意!この先危険」をご紹介したのは、1ヶ月ほど前です。それなりに注目を集めたのか、最近になって同氏に対するインタビューがありましたので引用します。引用元の記事はBob Rodriguez on the Dangers in Today's Marketsです。(日本語は拙訳)

(質問者)
投資家に対する先日の講演では、株式や債券への投資では注意を忘れず、また辛抱するよう促していましたね。ある程度の安全余裕をみたうえで、どの資産クラスが現時点では好ましい価格だとお考えですか。

(ボブ・ロドリゲス)
一般的な投資ファンドということでしたら、株式にはわずかに魅力が残っています。講演でもとりあげたのですが、この半世紀でもっとも長くPERが減少し続けており、株式市場は魅力的だとみる人が多くなっています。この50-70年間の平均PERは15-16倍でしたが、現在は12-13倍です。だから安いと考えるのですね。ですが、過去のPERと今のものを比べるのは適切でないと思います。債務面において、経済状況が根本的に大きく変化したからです。

過去を振り返ると、1929年の大恐慌の始まりには、我が国のGDP債務比率は16%でした。その前の11年間は黒字です。第二次世界大戦初期の1942年には、その前の12年間は不況に苦しみましたが、41%でした。その上、当時は簿外債務は全然ありませんでした。

現在の状況は、当時のものとはかけ離れています。ですから、単純にPERを比べるのは適切だとは思えません。企業の成長見通しが低く、利益率は天井をつけており、ビジネス上の変化も激しい。そんな時代ですから、PERは低い水準で扱うのが適切だと思います。

(Q)
You have advised investors to be patient and cautious with respect to equities and fixed income. Are there any asset classes that you believe are attractively priced now, sufficient to provide the margin of safety that you mentioned at the beginning of “Caution: Danger Ahead?”

(A)
For what I would call a generalized investment fund, I view the equity markets as marginally attractive. As I tried to explain in the speech, we have just gone through the longest decline in P/E ratios in over half a century. Many are saying the stock market is attractive, because over the last 50 to 70 years the average P/E was 15 to 16 versus 12 to 13 now; therefore we have a discount. I would argue that to compare historical P/E ratios over this period is inappropriate, given the fundamental structures of our system are so dramatically different in terms of leverage.

I try to remind people that at the beginning of the depression in 1929, US debt-to-GDP was 16% after 11 straight years of surplus. And at the beginning of 1942, World War II, after fighting depression for 12 years, we were at 41% debt-to-GDP, and we didn't have any off-balance-sheet entitlement liabilities.

What we are looking at today is so far removed from any of these periods that I don't think it is an appropriate comparison. If you have a company with slow growth expectations, peak margins and business volatility, what type of P/E is given it? Typically, it is a lower P/E.

2012年3月21日水曜日

グランド・キャニオンをわたる(ウォーレン・バフェット)

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今回は、ベン・グレアムの言葉「Margin of Safety(安全余裕)」について。ウォーレン・バフェットは、この言葉をたびたび強調してきましたが、ここで彼による例え話をどうぞ。おなじみ『Seeking Wisdom』からの孫引きで、1997年開催のバークシャー・ハサウェイの株主総会での発言です。(日本語は拙訳)

ビジネスをきちんと理解しているのでしたら、つまり未来を完璧に見通せるということですが、[株式を買う際に]安全余裕はほとんどとらなくてもよいでしょう。反対に、ビジネスに関するさまざまな出来事がおきたり、不確実なことが多かったり、ビジネスが脆弱になっていたり、変化する可能性が高くなるほど、安全余裕を多くとらなければなりません。

車両総重量が4.4トンのトラックにのって活荷重が4.5トンの橋をわたる場合、橋の高さが地面から15cmぐらいだったら、まあ安心してわたれるでしょう。しかし、グランド・キャニオンにかかる橋だったら、もっと余裕がほしくなりますよね。たとえば2トンぐらいのトラックにしておくのではないでしょうか。ですから、どれだけ安全余裕が必要かは、そこに潜んでいるリスクに応じて決まってくるのです。

If you understand a business ? if you can see its future perfectly ? then, obviously, you need very little in the way of margin of safety. Conversely, the more things can happen, the more uncertainty there is, the more vulnerable the business is or the greater the possibility of change, the larger margin of safety you require...

If you're driving a 9,800 pound truck across a bridge that says it holds 10,000 pounds and the bridge is only about six inches above the ground, then you may feel OK. However, if the bridge is over the Grand Canyon, then you may want a little larger margin of safety. And, therefore, you may only drive a 4,000 pound truck across. So it depends on the nature of the underlying risk.

2012年3月20日火曜日

(答え)男の子が多く生まれる病院はどちらか?; 究極の鍛錬

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まずは、前回とりあげた問題の回答になります。

ここで驚かされるのは、確率論のロジックに学生があまり注意を払っていないことだ。男の子の割合が60パーセントを超える日数は、小さな病院の方が多い可能性が高いと考えられる。大きな病院のほうがサンプルが多く、平均からずれる可能性が低いからだ。 (p.105)

例えば、こちらのサイトの図8-1 標準正規母集団下での標本平均値の確率変動(6.5万回の実験)がわかりやすいかと思います。ちなみに私の回答ですが、反射的に「3.ほぼ同じ」を選んでしまいました。

自分の落とし穴に気づいたのはもちろんよかったことですが、この問題をはずして小さな悟りがひらけたような気がします。それは「問題に直面したら、自分なりに解決策を検討してみること」。自分で答えを考えずに回答を読んでいたら、この初歩的な落とし穴に気づかないまま、進んでいたと思います。あらゆる問題を検討する時間はないのでどれかを選ぶ必要がありますが、投資に立ち返ってみると、自分なりにチャンスがあると考えた銘柄に対しては、きちんと評価して文書化してみる、となります。

頭の中で漫然と評価してすぐに興味を失うのではなく、自分なりの枠組みを用意して、自分なりに評価する。このような作業をこなすことで、あとになって落とし穴や盲点に気づいたり、足りない部分を補うことができるのではないでしょうか。

そういえば、以前読んだ本『究極の鍛錬』では、鍛錬方法を以下のように定義していました。

1.実績向上のため、特別に考案されている。
例えば、改善が必要な要素を鋭く限定し、鍛え上げていく。
2.何度も繰り返すことができる。
3.結果に関し、継続的にフィードバックを受けることができる。
4.精神的にはとてもつらい。
5.あまりおもしろくない。

4番目とか5番目あたりに「究極」の秘密がかくされているような気がしますね。