しかし自分の意志で取り組みはじめ、さらには米国を代表する諸企業を保有する決断を自分でくだしたという視点を持たない限り、[株式投資という]賭けをするべきではありません。ほとんどの人は個別株を選び出せる立場にないと思うからです。それができる人もいるとは思いますが、米国を代表する諸企業を買ったら忘れておくほうが、結局のところはずっと良い成績をあげると思います。そうするだけで、つまりわたしが大学を出たときにそうしていれば、それだけで100倍になりました。そのうえ配当金も受け取れます。配当金は増額されていきますし、時が経つにつれて大幅に増えていきます。
アメリカに吹く追い風は驚嘆すべきものです。米国企業はそれを体現しています。しかし、不振の時期はたびたびやってくるでしょうし、そういった停滞は予見できないものです。ですから不振の時期がきたときに、自分が借り入れを使っていたり、数々の数字を目の当たりにして冷静に対処できなかったりと、そういったことが原因で悪影響を受けてしまうのは、きっと願い下げだと思います。
(Warren Buffett 01:19:06)
But you can't bet unless you're willing and have an outlook to independently decide that you want to own a cross section of America, because I don't think most people are in a position to pick single stocks; a few may be, but on balance, I think people are much better off buying a cross section of America and just forgetting about it. If you'd done that, if I'd done that when I'd got out of college, it's all I had to do to make 100 for 1 and then collect dividends on top of it, which increased, would increase substantially over time.
(Warren Buffett 01:19:43)
The American tailwind is marvelous. American business represents, and it's going to have interruptions, and you're not going to foresee the interruption, and you don't want to get yourself in a position where those interruptions can affect you either because you're leveraged or because you're psychologically unable to handle looking at a bunch of numbers.
2020年6月19日金曜日
2020年バークシャー株主総会(28)インデックス・ファンドを買ったら、あとは忘れよう
バークシャー・ハサウェイの株主総会より、一般的な個人投資家へ向けた助言が凝縮された文章です。前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)
2020年6月18日木曜日
2020年バークシャー株主総会(27)信頼できる会社に投資しよう
バークシャー・ハサウェイの株主総会より、農地の話題のなかで出てきた投資業界についてです(この話題が登場する通例とはちがって、今回の指摘は手厳しくありません)。前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)
今回や次回の投稿で取り上げる文章は、一見すると変哲もない話なのですが、何度も読み返すうちに、ウォーレンが抱く暗い側の予感が図らずもにじみ出ているように感じられました。
<ウォーレン・バフェット> そこでは莫大なお金が動いています[投資助言、投資信託業界]。だから彼らはこう言います。「大切なことなのですよ。値段の動きについては私たちが考えますから、その考えをしっかり守ってください」。あるいは顧客みずからが「重要なちがいがあるはずだ」と自分に言い聞かせるかもしれません。しかし真実はこうです。もしもウィルスが伝わってくる以前から気に入った企業を保有していたのであれば、株価が変わったところで「売却せよ」と強要してくる人などいません。その企業を本当に気に入っており、経営陣を信頼して会社を任せるのであれば、事業に根本的な変化がないかぎり、株式には著しい強みがあります。そして株式を保有することでアメリカの未来に賭けることができます。もう少し後でバークシャーの業績報告をしますので、その際に事業や環境の変化について少々お話しします。
(Warren Buffett 01:18:11)
There's huge money it. So people tell you that it's important, and they know, and that you should pay a lot of attention to their thoughts about what price changes should be, or you tell yourself that there should be this great difference. But the truth is, if you owned the businesses you liked prior to the virus arriving, it changes prices, and it changes, but nobody's forcing you to sell. And if you really like the business, and you like the management you're in with, and the business hasn't fundamentally changed, and I'll get to that a little when I report on Berkshire, which I will soon, I promise, the stocks have an enormous advantage. And you can bet on America.
今回や次回の投稿で取り上げる文章は、一見すると変哲もない話なのですが、何度も読み返すうちに、ウォーレンが抱く暗い側の予感が図らずもにじみ出ているように感じられました。
2020年6月17日水曜日
2020年バークシャー株主総会(26)となりのオッサンが何をわめき立てるかを当てる仕事
バークシャー・ハサウェイの株主総会より、農地の話題のつづきです。前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)
備考です。ベスト・エッセイ以外でも、ウォーレンは同じ主旨の話を披露しています。たとえば、以下の過去記事はおすすめです。
・べろんべろんの酔っぱらい(ウォーレン・バフェット)
<ウォーレン・バフェット> つまり、農地がもたらしてくれる可能性を考えるわけです。そこへ、隣りの農地を所有するおバカさんがやってきます、彼は、ある種の躁うつ病をかかえた呑み助でもあり、さらには大麻を少しやっているかもしれません。そんな彼があちこちに現れて、売買の呼び値を告げてくれます。ですからここではただ一つ、次のことを覚えておくだけで大丈夫です。「その隣人は私に尽くす人であり、私を導く人ではない」と。「その農地で儲けられる可能性がある」と自分で考えたからこそ、自分で買うのです(笑)。実際のところ、呼び値を出してもらう必要はありません。ジョン・D・ロックフェラーやアンドリュー・カーネギーといった人と取引する際には、呼び値はありませんでした。のちになってから呼び値が出てきましたが、基本的にはその事業を営むために買うわけですから、株式を買うときにも同じようにすればいいのです。しかしその際にさきほど述べた利点があるので、それが活かせます。つまり「こちらは聞く耳を持たないものの、呼び値を毎日提示してくれる隣人」のことです。彼の出す値段には上下動があるでしょう。高騰した[soaring]値段で買おうと言ってくる日もあります。そんなときに売りたいと思えば、そうしてください。
あるいは彼が非常に安い値段を提示すれば、彼の農場を買い取ればいいでしょう。ただし、そうしなくてもかまいません。そうせざるを得ない状況に身を置きたくはないでしょう。ですから株式には、「常に株価をわめき立てる人たちがいてくれる」という絶大な強みが、もともと備わっているのです。しかし、多くの人がそれを弱みに変えているのが現実です。そして、「となりの農夫が明日や来週や来月に何をわめき立てるのか、それを予想して他人に教える」ことで何やら稼いでいる人たちも、当然たくさんいます。
(Warren Buffett 01:16:19)
But you think about the potential of the farm, and now we get this idiot that buys the farm next to you, and on top of that, he's sort of a manic depressive and drinks, maybe smokes a little pot. So his numbers just go all over the place. Now, the only thing you have to do is to remember that this guy next door is there to serve you and not to instruct you. You bought the farm because you thought the farm had the potential. You don't really need a quote on it. If you bought in with John D. Rockefeller or Andrew Carnegie, and da, da, da, da, there were never any quotes. Well, there were quotes later on, but basically you bought into the business. And that's what you're doing when you buy stocks. But you get this added advantage that you do have this neighbor who you're not obliged to listen to at all who is going to give you a price every day. And he's going to have his ups and downs. And maybe he'll name a selling price that they'll buy at, and in which case you sell if you want to.
(Warren Buffett 01:17:34)
Or maybe he'll name a very low price, and you'll buy his farm from him. But you don't have to. And you don't want to put yourself in a position to where you have to. So stocks have this enormous inherent advantage of people yelling out prices all the time to you, and many people turn that into a disadvantage. And of course many people can profit in one way or another from telling you that they can tell you what this farmer's going to yell out tomorrow or next... your neighboring farmer's going to yell out tomorrow, or next week, or next month.
備考です。ベスト・エッセイ以外でも、ウォーレンは同じ主旨の話を披露しています。たとえば、以下の過去記事はおすすめです。
・べろんべろんの酔っぱらい(ウォーレン・バフェット)
2020年6月16日火曜日
2020年バークシャー株主総会(25)オレの農地を買わねえか
バークシャー・ハサウェイの株主総会より、今回からつづく話題は「バフェットからの手紙」の2013年度版で書かれていた内容の再現と言えるものです。だからといって読み飛ばす必要はありません。「重要なことは何度も話すべし。何度も聞くべし」、これは年を重ねた者が理解している知恵のひとつだからです。
蛇足になりますが本ブログでは、そのレターつまり2013年度「バフェットからの手紙」を「ウォーレン・バフェットのベスト・エッセイ」と独断で銘打っています。そのときの投稿などを含む目次はこちらです。また前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)
蛇足になりますが本ブログでは、そのレターつまり2013年度「バフェットからの手紙」を「ウォーレン・バフェットのベスト・エッセイ」と独断で銘打っています。そのときの投稿などを含む目次はこちらです。また前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)
<ウォーレン・バフェット> 今まさに資金を投じて農場を買おうとする瞬間を想像してみてください。このあたりの農地を、たとえば面積が160エーカーの農地を買おうとして、1株いや1エーカーあたりXドルで買ったとします。そのとき、隣接した土地の農夫もまったく同じ160エーカーの農地を所有しているとします。土地の形状も同じで、同じ質つまり土壌の質も同じ、いろいろな点で同一と考えてください。その同じ農地を所有する隣人はひどく変わった性格の持ち主で、毎日こんな風に語りかけてきます。「オレの農地を買わねえか。それとも、アンタの農地を売らねえか」。そして彼は売買ともに同じ値段の言い値を示してきます。
彼はずいぶんと手厚い人でした。つまり「となりの農地にその手の人がいると、ありがたい」という意味です。このとき、農地のかわりに株式に置き換えて考えればいいのです。GMの株を100株買いたいとすれば、月曜日の朝にだれかが100株売ってくれます。また、同じ値段で100株を買い取ってくれます。どういうわけか、そんな取引が1週間に5日間行われるのです。
しかし、もし農家の人であればここでどのような行動をとるか、想像してみてください。農地を買うときには、その土地でなにを生産しているのかを確かめるでしょう。心をよぎるのはそういったことです。こんな風にも自問するでしょう。「1エーカー当たりXドルで買ったとして、トウモロコシやら大豆やらが、豊作と不作の年を考えると平均して何ブッシェルぐらい収穫できるだろうか」「作物が高値で売れる年もあるだろうし、安値になる年もあるだろう」などと。
(Warren Buffett 01:14:28)
Imagine for a moment that you decided to invest money now, and you bought a farm. And the farmland around here, let's say you bought 160 acres, and you bought it at x per share, or per acre. And the farmer next to you had 160 identical acres, same contour, same quality, soil quality, so it was identical. And that farmer next door to you was a very peculiar character because every day that farmer with the identical farm said, "I'll sell you my farm, or I'll buy your farm at a certain price," which he would name.
(Warren Buffett 01:15:29)
Now, that's a very obliging neighbor. I mean, that's got to be a plus to have a fellow like that with the next farm. You don't get that with farms, you get it with stocks. You want 100 shares of General Motors, and then on Monday morning, somebody will buy you 100 shares or sell you another 100 shares at exactly the same price. And that goes on, I don't know, five days a week.
(Warren Buffett 01:15:58)
But just imagine if you had a farmer doing that. When you bought the farm, you looked at what the farm would produce. That was what went through your mind. You were saying to yourself, "I'm paying x dollars per acre. I think I'll get so many bushels of corn or soybeans on average, some years good, some years bad. And some years the price will be good. Some years the price will be bad," etc.
2020年6月15日月曜日
長期投資を心がける際の売却方針について(3)マイクロソフトの事例
今回からは個人的な経験を題材にして、長期投資における気づきや教訓を掘り起こしていきたいと思います。 本シリーズの前回分投稿はこちらです。
今回取り上げる銘柄はマイクロソフト(MSFT)です。当社の株式をはじめて購入したのは2011年秋なので、保有期間は9年弱になります。現在までに若干は売却したものの、大半はそのまま継続保有中です。
<株式投資で大きな利益をあげる構図のひとつ>
話を進める前に、株式投資によってそれなりの利益をあげる基本構造を確認しておきます。
1) 投資先の価値を市場が見逃している間に、株式を購入する。
2) その価値が表面化したり、市場が認識した結果、株価が上昇する。
3) 株式を売却する。あるいは継続保有して配当金を受領し続ける。
(参考記事) 投資が簡単だと思っている人間は愚か者だな(ハワード・マークス)の3つ目の引用
<株式購入当時の状況(2011-2012年)>
当社の株式購入を検討していたのは2011年でした。そのころに市場で人気があったのはアップルやグーグルといった企業でした。「オールド・テック」とみなされた当社は、表面的には失敗が目立ちました。2012年にはタイル型UIを取り入れたWindows 8がリリースされました。携帯電話会社Nokiaに資金を投じ始めたのは2011年です。のちになってわかることですが、その取り組みの多くが失敗に終わりました。しかし表舞台で失敗していた裏側では、地道に利益をあげていました。サーバー向けソフト事業では、売上高の増加率は2011年・2012年のどちらも10%超、営業利益の増加率は15%超でした。
<株式を購入した動機>
当時の不人気ぶりは覚えていたつもりでしたが、実際には記憶以上の不人気でした。そのころに書いた投稿を読むと、市場からの評価は実績PER10倍前後とあります。個人的にも、当社の将来性が輝かしいと考えて投資したわけではありません。期待していたことはもう少しささやかで、「主力事業の収益基盤が安定しているため、その分野だけでもゆっくりと成長できる」と予想した程度でした。株式を長期的に保有する間に利益が増加して、市場からの評価もその分は上昇するだろうと考えていました。
(参考記事) 2012年の投資をふりかえって(3)新規・追加投資編(マイクロソフト)
<転機の到来(2014年2月)>
当社の転機はCEO交代という形でやってきました。前CEOを務めていたのは、ビル・ゲイツの僚友スティーブ・バルマーでした。その彼が退任することになったのは、おそらく同業他社と比較した業績不振の責任を取らされたからでしょう。話題を呼んだ次期CEO選びの末に、サティア・ナデラが選任されました。対抗馬として有力視されていたNokiaのスティーブン・エロップ氏とは対照的に、サティアの専門領域は企業向けシステムでした。
(参考記事) もはやサル社長ではない
(参考記事) 米マイクロソフト次期CEOを予想する
あとから振り返ってみれば、この人選が新生マイクロソフトを決定づけたと思います。個人的にはこのできごとの重要性に気づいていませんでした。当社の株式は単に割安だというだけで継続保有していました。しかし「新CEOの登用」という埋没価値をリアル・オプションとして認識評価できていれば、当社の株価はもっと割安だと判断できていたでしょう(つまり、どこかの時点で株式買い増しに踏み切れたかもしれない)。それほどに当社や業界の将来性のことを真剣に考えていなかったわけです。さらには、当社のような代表的企業に集まる人的資源の豊かさを認識させられました。
<当社の変化(2014年2月以降)>
新CEOとなったサティア・ナデラは、積極的な改革を段階的に進めました。具体的な施策の例を以下にあげます。
・事業の選択; クラウド事業(Azureやサーバー製品等)への注力、スマートフォン事業からの撤退、その他製品のクラウド・サービス化
・社内文化の変革; エンジニアリング志向、オープン志向への転換
・潜在的顧客の獲得; 各社の買収(Mojang(マインクラフト)、LinkedIn、GitHub)、Linuxの積極的受入れ、Visual Studio Codeのマルチ・プラットフォーム提供
・消費者向け製品の差別化; Surfaceブランド製品
これらの施策がクラウド事業の拡大を手伝ったことは、あとになって考えてみればある程度理解できます。そして具体的な業績の進展をみることで、市場は当社に対する評価を上げていきました。
(参考記事) 2014年の投資をふりかえって(5)継続銘柄:マイクロソフト他
<株式売却の逡巡その1(2018年)>
この時期の市場評価は、株価が90ドル前後、実績PERが30倍強と、高い成長を織り込んだものでした。そして個人的に注視しつづけているファンド、FPAクレセントのスティーブン・ローミック氏が当社株式を一部売却したとのレターを読んだことで、そろそろ売却時かと迷いました。
どうしたものかと考えるなかで、当社のジョン・トンプソン会長の発言をとりあげた記事を目にしました(2018年2月分)。彼は「クラウドへの移行は、まだ本当に始まったばかりだ」と発言していました。具体的な根拠は示されていなかったものの、この発言内容をきっかけに市場の将来性を考え直してみました。
当社はそもそも大企業向けの事業を手がけています。その市場規模のことは、わたしよりもはるかによく理解しているはずです。その立場にあって先のような発言をするのは、額面通り正しいことを言っているか、あるいは虚勢を張っているかのどちらかだと考えました。仮に後者だとしても、平均に回帰するまでの成長分によって市場評価低下分を相殺できると判断しました。そして継続保有したまま数年が経過した時点で、彼の発言の真偽を確認すればよいだろうと。
トンプソン会長の発言がまちがっていたという証明は、今のところはできていません。クラウド事業についてFY2018-2QとFY2020-2Qを比較すると(6か月ベース)、売上高は140億ドルから220億ドルに成長し、成長率は年換算で21%,26%と推移しています。個人的に彼を信頼する度合いは、高止まりしたままです。
<株式売却の逡巡その2(2020年現在)>
現在の当社の株価は190ドル前後で、実績PERは約38倍と、さらに高い成長性を織り込んだ評価になっています。個人的には低PERに慣れているので、率直に言えば高いです。売却を迷うところです。株価が短中期的に低迷する可能性は十分にあると思います。期待度の高いクラウド事業の成長率に大きな翳りがみられれば、市場評価が下落基調に変わってもおかしくありません。しかし次の長期的期間(たとえば7年以上)までみれば、成長によって下落分を取り返せると踏んでいます。社会がコンピューティングの進展を望み、その領域と深度のいずれにおいても拡大すると予想できるからです。トンプソン会長の予言だけではなく、産業界の動きからも感じとれるように思います。またサティア・ナデラのリーダーシップにも不満はありません。そのため、少なくともしばらくは継続保有のままでいようと考えています。ただし小さくないリスクとして、国際的な安全保障面での規制圧力は高まってくると感じています。これがどのように悪影響を及ぼし得るのか、考えていくつもりです。
<今回のまとめ>
・強みを活かせる優良企業がくすぶっていた時期に、割安な値段で購入した(2011年)。
・当社自身が強みと弱みを見つめなおし、CEO交代という転換点をつくった(2014年)。
・新CEOが躊躇なく、事業や組織や文化を改革した。
・市場や当社の成長に任せて、株式を継続保有した。
今回取り上げる銘柄はマイクロソフト(MSFT)です。当社の株式をはじめて購入したのは2011年秋なので、保有期間は9年弱になります。現在までに若干は売却したものの、大半はそのまま継続保有中です。
<株式投資で大きな利益をあげる構図のひとつ>
話を進める前に、株式投資によってそれなりの利益をあげる基本構造を確認しておきます。
1) 投資先の価値を市場が見逃している間に、株式を購入する。
2) その価値が表面化したり、市場が認識した結果、株価が上昇する。
3) 株式を売却する。あるいは継続保有して配当金を受領し続ける。
(参考記事) 投資が簡単だと思っている人間は愚か者だな(ハワード・マークス)の3つ目の引用
<株式購入当時の状況(2011-2012年)>
当社の株式購入を検討していたのは2011年でした。そのころに市場で人気があったのはアップルやグーグルといった企業でした。「オールド・テック」とみなされた当社は、表面的には失敗が目立ちました。2012年にはタイル型UIを取り入れたWindows 8がリリースされました。携帯電話会社Nokiaに資金を投じ始めたのは2011年です。のちになってわかることですが、その取り組みの多くが失敗に終わりました。しかし表舞台で失敗していた裏側では、地道に利益をあげていました。サーバー向けソフト事業では、売上高の増加率は2011年・2012年のどちらも10%超、営業利益の増加率は15%超でした。
<株式を購入した動機>
当時の不人気ぶりは覚えていたつもりでしたが、実際には記憶以上の不人気でした。そのころに書いた投稿を読むと、市場からの評価は実績PER10倍前後とあります。個人的にも、当社の将来性が輝かしいと考えて投資したわけではありません。期待していたことはもう少しささやかで、「主力事業の収益基盤が安定しているため、その分野だけでもゆっくりと成長できる」と予想した程度でした。株式を長期的に保有する間に利益が増加して、市場からの評価もその分は上昇するだろうと考えていました。
(参考記事) 2012年の投資をふりかえって(3)新規・追加投資編(マイクロソフト)
<転機の到来(2014年2月)>
当社の転機はCEO交代という形でやってきました。前CEOを務めていたのは、ビル・ゲイツの僚友スティーブ・バルマーでした。その彼が退任することになったのは、おそらく同業他社と比較した業績不振の責任を取らされたからでしょう。話題を呼んだ次期CEO選びの末に、サティア・ナデラが選任されました。対抗馬として有力視されていたNokiaのスティーブン・エロップ氏とは対照的に、サティアの専門領域は企業向けシステムでした。
(参考記事) もはやサル社長ではない
(参考記事) 米マイクロソフト次期CEOを予想する
あとから振り返ってみれば、この人選が新生マイクロソフトを決定づけたと思います。個人的にはこのできごとの重要性に気づいていませんでした。当社の株式は単に割安だというだけで継続保有していました。しかし「新CEOの登用」という埋没価値をリアル・オプションとして認識評価できていれば、当社の株価はもっと割安だと判断できていたでしょう(つまり、どこかの時点で株式買い増しに踏み切れたかもしれない)。それほどに当社や業界の将来性のことを真剣に考えていなかったわけです。さらには、当社のような代表的企業に集まる人的資源の豊かさを認識させられました。
<当社の変化(2014年2月以降)>
新CEOとなったサティア・ナデラは、積極的な改革を段階的に進めました。具体的な施策の例を以下にあげます。
・事業の選択; クラウド事業(Azureやサーバー製品等)への注力、スマートフォン事業からの撤退、その他製品のクラウド・サービス化
・社内文化の変革; エンジニアリング志向、オープン志向への転換
・潜在的顧客の獲得; 各社の買収(Mojang(マインクラフト)、LinkedIn、GitHub)、Linuxの積極的受入れ、Visual Studio Codeのマルチ・プラットフォーム提供
・消費者向け製品の差別化; Surfaceブランド製品
これらの施策がクラウド事業の拡大を手伝ったことは、あとになって考えてみればある程度理解できます。そして具体的な業績の進展をみることで、市場は当社に対する評価を上げていきました。
(参考記事) 2014年の投資をふりかえって(5)継続銘柄:マイクロソフト他
<株式売却の逡巡その1(2018年)>
この時期の市場評価は、株価が90ドル前後、実績PERが30倍強と、高い成長を織り込んだものでした。そして個人的に注視しつづけているファンド、FPAクレセントのスティーブン・ローミック氏が当社株式を一部売却したとのレターを読んだことで、そろそろ売却時かと迷いました。
どうしたものかと考えるなかで、当社のジョン・トンプソン会長の発言をとりあげた記事を目にしました(2018年2月分)。彼は「クラウドへの移行は、まだ本当に始まったばかりだ」と発言していました。具体的な根拠は示されていなかったものの、この発言内容をきっかけに市場の将来性を考え直してみました。
当社はそもそも大企業向けの事業を手がけています。その市場規模のことは、わたしよりもはるかによく理解しているはずです。その立場にあって先のような発言をするのは、額面通り正しいことを言っているか、あるいは虚勢を張っているかのどちらかだと考えました。仮に後者だとしても、平均に回帰するまでの成長分によって市場評価低下分を相殺できると判断しました。そして継続保有したまま数年が経過した時点で、彼の発言の真偽を確認すればよいだろうと。
トンプソン会長の発言がまちがっていたという証明は、今のところはできていません。クラウド事業についてFY2018-2QとFY2020-2Qを比較すると(6か月ベース)、売上高は140億ドルから220億ドルに成長し、成長率は年換算で21%,26%と推移しています。個人的に彼を信頼する度合いは、高止まりしたままです。
<株式売却の逡巡その2(2020年現在)>
現在の当社の株価は190ドル前後で、実績PERは約38倍と、さらに高い成長性を織り込んだ評価になっています。個人的には低PERに慣れているので、率直に言えば高いです。売却を迷うところです。株価が短中期的に低迷する可能性は十分にあると思います。期待度の高いクラウド事業の成長率に大きな翳りがみられれば、市場評価が下落基調に変わってもおかしくありません。しかし次の長期的期間(たとえば7年以上)までみれば、成長によって下落分を取り返せると踏んでいます。社会がコンピューティングの進展を望み、その領域と深度のいずれにおいても拡大すると予想できるからです。トンプソン会長の予言だけではなく、産業界の動きからも感じとれるように思います。またサティア・ナデラのリーダーシップにも不満はありません。そのため、少なくともしばらくは継続保有のままでいようと考えています。ただし小さくないリスクとして、国際的な安全保障面での規制圧力は高まってくると感じています。これがどのように悪影響を及ぼし得るのか、考えていくつもりです。
<今回のまとめ>
・強みを活かせる優良企業がくすぶっていた時期に、割安な値段で購入した(2011年)。
・当社自身が強みと弱みを見つめなおし、CEO交代という転換点をつくった(2014年)。
・新CEOが躊躇なく、事業や組織や文化を改革した。
・市場や当社の成長に任せて、株式を継続保有した。
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