ヘッブの法則[脳神経ネットワークの同じ箇所に同じ刺激が繰り返し与えられることで、学習がなされる]が重要な意味を持つのは、学習の原理としてだけではありません。人間の行動が強化される原理、つまり習慣化の原理としても、ヘッブの法則は重要な意味を持っています。
習慣化の原理として考えたときに、ヘッブの法則が怖いのは、それが望むと望まざるとにかかわらず、起こってしまう、ということ。本人が望んでいなくても、繰り返した行動がヘッブの法則により強化されてしまう、ということです。
たとえば、デスクについてまずパソコンを起動させる。起動させたら、まずブラウザを立ち上げる。ブラウザを立ち上げたら、何となくニュースサイトを読み始めて、特に興味のない記事までリンクを辿って読んでいく。そういう行動を毎日繰り返したとします(それが悪いことだというわけではありませんが)。
そうすると、その行動を習慣化したいと望んでいるわけではなくても、その行動にまつわる回路が強化されます。デスクにつくというきっかけの行動を取っただけで、後は自動再生されるように、一連の行動をとってしまう。
生活のごく一部にそういう望まない習慣を持っているだけならいいですが、私たちは普段から注意していないと、いつの間にか望まない習慣に生活を支配されている状態になりがちです。
サミュエル・スマイルズの『自助論』の中に、次のような表現が出てきます。
「時間の浪費は、精神に有害な雑草をはびこらせる」
神経学的に翻訳するなら、実際に(脳の中に)はびこるのは、悪習慣の強い回路です。そして、いつの間にかそれに動かされて、膨大な時間を浪費するようになってしまう。
これは若い頃だけの話ではありませんが、若い人の方が残されている人生の時間が長いので、より大きな損失を被るのは確かだと思います。(p.136)
2016年1月24日日曜日
望まない習慣に生活を支配される(『脳が冴える勉強法』)
チャーリー・マンガーやウォーレン・バフェットが好んで使う表現のひとつに、「習慣という鎖は、初めは軽すぎて感じられないが、やがて重くなって壊せなくなる」というものがあります。過去記事で何度かとりあげています(例1や例2)。 最近読んだ本『脳が冴える勉強法』でも同じことに触れた箇所がありましたので、以下に引用します。
2016年1月22日金曜日
バリュー投資家は難しい時期に恩恵を受ける(セス・クラーマン)
2009年3月のOID誌に掲載されたセス・クラーマンの講演記事から引用がつづきます。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
<クラーマン> 短期的な成績を追求する投資ビジネスに固有の圧力に抵抗でき、狙いを定め続けられるバリュー投資家は、むずかしい時期でさえも利益を上げることのできる多面的で柔軟な各種の道具を備えています。第一に、バリュー投資家はおのれの原則を守って良い時も悪い時も辛抱し続けられるので、割安な銘柄を保有できます。これは根底にある価値よりも割安に買った証券なので、安全余裕を授けられています。ただし保有銘柄の株価が下落しないとか下落などありえない、という意味ではありません。株価が下落すれば買い増しを検討したくなるような、より好ましいバーゲン銘柄になるという意味です。高い割合で借り入れをしている企業の株式や問題を抱えた金融会社、いつまで経っても大きくなれない事業やリスクの大きいジャンク債、そのような証券には手を出さないとする規律を厳格に守ってきたバリュー投資家は、むずかしい時期にはまちがいなく恩恵を受けます。それらの投機的な銘柄を保有している人は、市場が下落するとみずからの選択を早々に後悔することになるでしょう。(p. 2)
Klarman: Value investors who are able to maintain their focus and resist the pressures inherent in the investment business to pursue short-term results have a multifaceted and adaptable tool kit that should allow them to prosper even in difficult times. First, by maintaining their discipline and by remaining patient in good times and bad, value investors own bargains - securities trading at a discount to underlying value which confer a margin of safety. This doesn't mean those holdings can't or won't drop in price; it means that when they decline, they'll be an even better bargain to which you are likely to seek to add. In difficult times, value investors certainly benefit from their relentlessly-kept discipline by having avoided highly-leveraged stocks, troubled financials, perpetually marginal businesses, and risky junk bonds. When the market drops, holders of such speculations quickly regret their choices.
2016年1月20日水曜日
投資家がみせる行動特性で注目すべきもの(ハワード・マークス)
オークツリーの会長ハワード・マークスが新しいレターを公開しています(1月14日付)。今回引用する箇所は短い文章なので翻訳をつけるまでもないですが、いつもの形でやっています。なお投資雑誌Barron'sのWebサイトでも、全文がそのまま掲載されていました。
On the Couch [PDF] (Oaktree Capital Management)
On the Couch [PDF] (Oaktree Capital Management)
投資家がみせる行動特性の中でもっとも注目すべきひとつとして、悲観的なものごとが生じてもしばらくの間は見過ごしたり、あるいはその重要性を軽視したりしがちな点が挙げられます。しかし結局は下落の途中で降参し、今度は過剰に反応するのです。私としては、そういった行動の多くは心理的な弱点に因るものであり、そうでなければ出来事が持つ本当の重要性を的確に評価する能力がないことに帰すると考えています。(p. 4)
One of the most notable behavioral traits among investors is their tendency to overlook negatives or understate their significance for a while, and then eventually to capitulate and overreact to them on the downside. I attribute a lot of this to psychological failings and the rest to the inability to appreciate the true significance of events.
2016年1月18日月曜日
さらばシボレー、ようこそキャデラック(チャーリー・マンガー)
チャーリー・マンガーが2000年にフィランソロピー円卓会議で行った講話の4回目です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
しかしそのような経済学的考えかたはまちがいなく、現在の実情を相当誤解していますね。まちがった数字を見ていますし、まちがった疑問を投げかけています。それでは究極のアマチュアたる私がもう少し上手なやりかたを、あるいは少なくとも若干は異なるやりかたを大胆にも試みてみましょう。
ひとつめとして、たぶん次の内容で合っていると思いますが、「FRBのデータ群は実際的な障害のせいで年金から生じる影響を適切に考慮していない」とする話を聞いたことがあります。これには401Kや同様の制度などが含まれます。たとえば次のような例を考えてみましょう。ある63歳になる歯科医が私的年金口座でGE株を100万ドル分保有しているとします。ところが株価が上がって持ち分が200万ドルになると、気分がほくほくした歯科医はかなり古くなったシボレーを下取りに出して、新しいキャデラックを現在一般的なタダのような料率のリースで乗り始めます。私からすればこれは言うまでもなく、歯科医の消費行動に大きな「資産効果」が働いています。しかしFRBのデータを使う多数の経済学者にすれば、この状況が歯科医による浪費性の貯蓄取り崩しにみえるのではないですかね。しかし彼や彼と同じような人たちが多額の消費をしたのは、年金にかかわる非常に強力な「資産効果」が働いたからだと思いますよ。ですから、現在生じている年金制度由来の「資産効果」は些細とは程遠いものであり、過去に生じたものよりもずっと巨大であることは間違いないと思います。
I believe that such economic thinking widely misses underlying reality right now. To me, such thinking looks at the wrong numbers and asks the wrong questions. Let me, the ultimate amateur, boldly try to do a little better, or at least a little differently.
For one thing, I have been told, probably correctly, that Federal Reserve data collection, due to practical obstacles, doesn’t properly take into account pension effects, including effects from 401(k) and similar plans. Assume some sixty-three-year-old dentist has $1 million in GE stock in a private pension plan. The stock goes up in value to $2 million, and the dentist, feeling flush, trades in his very old Chevrolet and leases a new Cadillac at the giveaway rate now common. To me, this is an obvious large “wealth effect” in the dentist’s spending. To many economists, using Federal Reserve data, I suspect the occasion looks like profligate dissaving by the dentist. To me, the dentist, and many others like him, seems to be spending a lot more because of a very strong pension-related “wealth effect.” Accordingly, I believe that present-day “wealth effect” from pension plans is far from trivial and much larger than it was in the past.
2016年1月16日土曜日
グレアムとドッドに返れ(セス・クラーマン)
2009年3月のOID誌に掲載されたセス・クラーマンの講演記事から、ひきつづきの引用です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
<クラーマン>バリュー投資家が自分以外の何かになりたいと望むのであれば、グレアムとドッドがみせてくれた知恵を思い返すのが一番です。この75年間で最高の成功をおさめた投資には、彼らが示した見事なロードマップに従うことで達成されたものがあったからです。難解かつ未知なこともある領域を通過する者を導き、成功をおさめさせてくれる地図です。
現在継続している市場環境において、ほとんどの投資家は舵を失っています。無能力となったことで、極端な混乱や企業業績の悪化、苦悶する経済や積み上がる損失がつづく最中に舵を取れないでいます。現金を手放そうとはせず、資金償還や損失増加を恐れています。しかし市場から身を引き、ある種の「絶対明白な」徴候が現われるまで再参入するのを待ちたいと思案する投資家にとって、有益なことがあります。1934年にグレアムとドッドが書いた忠告を思い返すことです。「我々は本書を書き記す間、世間に広まった『金融崩壊は永続必然』とする信念と戦わなければならなかった」。彼らが当時そう言えたのであれば、今私から同じように申し上げねばならないでしょう。
Klarman: When a value investor is tempted to become something other than what he or she is, I find it best to recall the wisdom of Graham and Dodd. Graham and Dodd have provided us with a remarkable road map that has been carried on some of the world's most successful investment journeys for 75 years - a road map that allows us to navigate through difficult, even uncharted, territory and come out ahead.
In a market like we've been experiencing, most investors lose their rudders. They become incapacitated, unable to navigate amidst extreme turmoil, declining corporate results, and a litany of economic woes and mounting losses. They become unwilling to part with their cash - afraid of possible redemptions, and afraid of adding to their losses. Investors today, who are tempted to pull out of the market and wait for some kind of "all clear" signal before recommitting, would be well advised to remember the counsel of Graham and Dodd who wrote in 1934: "While we were writing, we had to combat a widespread conviction that financial debacle was to be the permanent order." If they could say that then, I must restate it now.
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