年金基金における資産運用の実態
最近のことですが、ある年金基金から興味ぶかい数字を見せてもらいました。1975年6月30日までの9年半の記録です。基金の扱う資産額は2億5000万ドルで、その数字には3つの大銀行が含まれていました(各銀行に運用を委託した金額は2000万から5000万ドル)。「平均」として定義されたS&P500とダウ工業平均の2者につづいて、それらの成績が比較対照されていました。
年複利収益率(配当含む)
ダウ・ジョーンズ工業平均 +2.8% S&P500 +3.8% コンチネンタル・イリノイ +1.8% ファースト・ナショナル・シティー +1.0% モルガン・ギャランティー +3.4%
最近まではチェースも同じ領域で資金を運用していましたが、成績が悪いため契約解消となりました。おそらくは、上述した他の銀行よりも悪かったのでしょう。対象期間において収益率が1%上下すれば、金額にして200万から400万ドルの違いを基金へもたらしたのです。
もっとおもしろい集計結果もありました。6月30日の時点でコンチネンタル社が運用するポートフォリオのうち、モルガン社のポートフォリオにも含まれる証券の割合は、市場評価額ベースにして64%でした。またファースト・ナショナル・シティー社とは44%が重複していました。同様の重複は他の面でもみられました。
この基金が残した成績のことはよく知っています。ですから、運用者に対して通常ならぬ制約が課せられていたわけではないですし、その数字を解釈する上で特別な要因は何も考慮する必要はないことも申し上げられます。他の大銀行とくらべてモルガンが平均以上の成績を残しているのは、他の年金基金でも同じような差になるのはまちがいないと思います。さらに、その相対的な位置が再現する確率は低いだろうと思います。
「年金と投資」誌がすこし前に、規模の面で上位の35銀行が運営している株式投資を含んだファンドの5年間の公表成績を評定しました。S&Pと同程度あるいはそれ以上だったのは10銀行でした。各々が独立して運任せで運営しており、売買費用が成績をある程度引き下げているとすれば、この数字は確率論から予想されるものと整合しています。それ以上に重要なことがあります。多額の資金を扱う運用者に関する統計において、逆の見方を示す数字をいまだ目にしたことがない点です。
この証拠は、「保守的に運用している企業の年金制度において、平均以上の投資成績を期待するのは賢明でない」ことを、きれいに支持していると思います。
Illustrations of Reality in Pension Fund Investment Management
I recently received some interesting figures from a pension fund involving about $250 million of assets. The 9-1/2 year record through June 30, 1975 of the three major banks involved (managing $20 - $50 million per bank) follows, compared to "average" as defined in two ways, the S & P 500 and the D-J Industrials:
Annual Compounded Rate of Return (including Dividends)
Dow-Jones Industrials +2.8% S & P 500 +3.8% Continental Illinois +1.8% First National City +1.0% Morgan Guaranty +3.4%
Until recently, Chase had managed a comparable segment of the funds but was terminated because of poor performance - probably worse than the other banks shown above. Each percentage point plus or minus affected this fund by about $2 to $4 million over the time period measured.
A further interesting calculation was made. On June 30, of the portfolio held by Continental, 64% of the securities held, measured by market value, also were in the Morgan portfolio and 44% were duplicated in the First National City portfolio. Similar overlap was demonstrated in other ways.
I am familiar enough with the record of this fund to state that no unusual constraints have been placed on the managers, and no special factors have to be recognized to interpret the numbers. I believe that Morgan's above-average record here, compared to that of other large banks, is typical of its relative performance at other pension funds. I also feel the predictive value of that relative standing to be low.
Pensions & Investments magazine recently rated the 35 largest banks for which five-year performance records of commingled equity funds were available. Ten did as well as or better than the S &P, consistent with what might be expected according to probability theory if everyone were operating solely according to chance and there was a modest drag on performance caused by transaction costs. More importantly, I know of no set of statistics which would demonstrate any opposite view relating to managers handling large amounts of money.
The evidence all seems to confirm that it is unwise to expect above-average investment results from a corporate pension plan, conventionally managed.
2015年2月6日金曜日
2013年度バフェットからの手紙 - (付録)企業年金制度について(10)
ウォーレン・バフェットが、ワシントン・ポストのキャサリン・グラハム向けに書いた企業年金制度に関する注意について、10回目です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
2015年2月4日水曜日
ひとから学ぶな、自分から学べ(チャーリー・マンガー)
チャーリー・マンガーが1986年にハーヴァード高校の卒業生に贈った祝辞の5回目です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
つづいて、みじめになるための2番目の処方です。「何を学ぶにしても、なるべく自分で経験したことから学びとること。存命か故人かを問わず、他人の成功や失敗といった間接的なものからは、できるだけ学ばないこと」。そうすれば効き目抜群、人並み以下のことしか達成できず、みじめになれるのは確実です。
他人の失敗から学ばないとどうなるか。それは、自分のまわりを見回せばわかります。人間のしでかす災厄とは、よくあるものばかりです。飲酒運転による自爆死、無謀運転で負った重傷、不治の性病、聡明な新入生を洗脳して破滅的カルトの一員に仕立てること、ビジネスにおいて先人も犯したあたりまえのあやまちをくり返して失敗すること、さまざまな群集的愚行、などです。よくある軽率なあやまちが、実際に問題へとつながるものです。それを思い出せるように、こんな現代風の言い回しを覚えておくといいでしょう。「しょっぱなから成功したくないんだったら、そうだな、ハンググライダーがばっちりだね」。
「他人から学ばないこと」を別の観点でとらえると、「自分以前になされた最上の成果からは学ばない」という決まりを持つことになります。これは、できる範囲でなるべく無学でいることを指示しています。
ここでひとつ歴史の小話をしておきましょう。そうすれば、ちっともみじめでない例がよくわかるでしょうから、その例には倣わないようにできます。その昔、最上の先達たちが残した業績をたいへん熱心に習得した男がいました。まずしい身分の出で、そのうえ解析幾何学をやるには厳しい時代でした。やがて彼の業績はひろく注目を浴びるようになり、彼はみずからの業績を次のように評しました。
「他の人より少しでも遠くを見渡せるとしたら、私が巨人の肩の上に乗っているからです」
その男の遺骨は一風変わった碑文の下で、ウェストミンスター寺院に埋葬されています。
「アイザック・ニュートン卿として生きた者、ここに眠る」
My second prescription for misery is to learn everything you possibly can from your own experience, minimizing what you learn vicariously from the good and bad experience of others, living and dead. This prescription is a sure-shot producer of misery and second-rate achievement.
You can see the results of not learning from others' mistakes by simply looking about you. How little originality there is in the common disasters of mankind - drunk driving deaths, reckless driving maimings, incurable venereal disease, conversion of bright college students into brainwashed zombies as members of destructive cults, business failures through repetition of obvious mistakes made by predecessors, various forms of crowd folly, and so on. I recommend as a memory clue to finding the way to real trouble from heedless, unoriginal error the modern saying: "If at first you don't succeed, well, so much for hang gliding."
The other aspect of avoiding vicarious wisdom is the rule for not learning from the best work done before yours. The prescription is to become as non-educated as you reasonably can.
Perhaps you will better see the type of nonmiserable result you can thus avoid if I render a short historical account. There once was a man who assiduously mastered the work of his best predecessors, despite a poor start and very tough time in analytical geometry. Eventually, his own work attracted wide attention, and he said of his work:
"If I have seen a little farther than other men, it is because I stood on the shoulders of giants."
The bones of that man lie buried now, in Westminster Abbey, under an unusual inscription:
"Here lie the remains of all that was mortal in Sir Isaac Newton."
2015年2月2日月曜日
2014年の投資をふりかえって(8)その他:日精ASB,任天堂,しまむら,ツムラ
2014年の投資に関する振りかえりは、今回で最後です。昨年と保有数の変わらない2社(日精エー・エス・ビー機械、任天堂)と、購入したもののすぐに売却した2社(しまむら、ツムラ)について、簡単に触れます。
■日精エー・エス・ビー機械(6284)
- 当社Webサイト
- Yahoo! Japan ファイナンス 株価
以下のリンク先は、昨年の振りかえり記事です。
2013年の投資をふりかえって(6)継続投資銘柄:日精ASB機械
株価は年始が2,600円、年末が3,000円でした。上昇率は15%です。
当社への投資はポートフォリオ中に占める割合が小さいため、業績を細かく確認することなく放置したままでした。半値近くまで下がる局面がありましたが、持ち株数は昨年と変わらずです。決算資料によれば受注残は前年度以上の数字ですが(当社発表資料最終ページ[PDF])、円安が進んでいる影響は割り引いてとらえています。当社は景気変動が大きい製造装置業界に属しており、下りの局面では売上げが大きく低下すると予想します。ですが現在の株価ではあえて売買はせず、今年も継続保有したいと考えています。
■任天堂(7974)
- 当社Webサイト
- Yahoo! Japan ファイナンス 株価
以下のリンク先は、昨年の振りかえり記事です。
2013年の投資をふりかえって(5)継続投資銘柄:任天堂
株価は年始が14,010円、年末が12,605円でした。下落率は10%強です。
先週発表された第3四半期決算では、営業利益が下方修正されました。400億円から200億円への減額です(当社発表資料[PDF])。ただしそれは早い時期からある程度予想できたものです。今期発売した主な自社製品は、実質的にマリオカート8(WiiU)、ポケモンのリメイク作品(3DS)とスマブラ新タイトル(3DS及びWiiU)の3.5本と言える状況だったからです(この2月にはゼルダのリメイクが3DSで発売予定)。実質的にこれだけのバリエーションと既発売の作品と他社製品で、前年度並みのソフトウェア売上げを計上しています。
来期はWiiUの大型自社製品がいくつか発売されますが(ゼルダ、スターフォックス等)、個人的に注目している製品があります。5月に発売予定のスプラトゥーンです。
(下の映像は、2014年6月のE3で公開されたものです)
この作品からは「前向きなニンテンドー」らしさが感じられ、来期のWiiU拡販の試金石として働くのではないかと想像しています。ただし中心的な遊びかたがインターネット対戦型のソフトのようで、当社としては微妙なマーケティングと思える節もあります。ですが、北米での評判や売上げに注目したいと思います。
今期の当社は「定番ゲーム屋」さんとして消費者に受け入れられる施策を堅実に実行してきたと受けとめています。来期2015年度には、まいた種の成果がある程度実るだろうと思われます。ただし当社が掲げている基本戦略「ゲーム人口の拡大」の視点からみると、ほとんど前進していないようです(トモダチコレクションの国外販売は評価できます)。現在は収益基盤を取り戻すことで精いっぱい、といったところでしょうか。「消費者に新しいオドロキを与える」ことが当社らしい商売のやりかたですから、次の回ではぜひ期待したいものです。
最後に備考です。昨年の投稿で、当社の研究開発費が急増した話題をとりあげました。以下のグラフは、今期までの3年間にわたる研究開発費の推移です。
これをみると、昨年度の増加は期末に集中しており、金額も突出しています。どうやら、ゲームソフト開発に資金を大量投下したというよりも、新開発棟での業務開始に備えた物品やソフトウェアの購入に使われた、とみるべきだったようです。
■しまむら(8227)
- 当社Webサイト
- Yahoo! Japan ファイナンス 株価
当社の株を購入したのは、昨年4月中旬に株価が90万円を下回った頃でした。そして8月のはじめに売却しました。ただし1単元だけ残しています。現在は模索の時期に入ったようにみえる当社ですが、今回もかつてのように殻を破って新たな段階へと進めるのでしょうか。優良企業である当社には、それなりの金額を投資したい気持ちもあります。株価がふたたび下がる時機がくれば、購入を検討しなおすつもりです。
■ツムラ(4540)
- 当社Webサイト
- Yahoo! Japan ファイナンス 株価
当社については過去の投稿で一度取りあげています。
『復活を使命にした経営者』、芳井順一会長によるツムラ再生の物語
しまむらと同様、当社も昨年投資に踏み切り、時を置かず売却した会社です。両社に共通するのは、良好な業績をあげており、すばらしい企業文化を持っており、そして輸入型の企業であることです。円安の時期だからこそ、市場からの評価が低迷して株式を購入する機会が生まれるのでしょう。ですが、購入した株価水準が納得できなかったため、早々に売却しました(損失を確定しました)。次に機会があるかどうかわかりませんが、そのときがくれば今度は継続保有したいと考えている会社です。
■日精エー・エス・ビー機械(6284)
- 当社Webサイト
- Yahoo! Japan ファイナンス 株価
以下のリンク先は、昨年の振りかえり記事です。
2013年の投資をふりかえって(6)継続投資銘柄:日精ASB機械
| 日精エー・エス・ビー機械(6284)株価の推移(2014年) |
株価は年始が2,600円、年末が3,000円でした。上昇率は15%です。
当社への投資はポートフォリオ中に占める割合が小さいため、業績を細かく確認することなく放置したままでした。半値近くまで下がる局面がありましたが、持ち株数は昨年と変わらずです。決算資料によれば受注残は前年度以上の数字ですが(当社発表資料最終ページ[PDF])、円安が進んでいる影響は割り引いてとらえています。当社は景気変動が大きい製造装置業界に属しており、下りの局面では売上げが大きく低下すると予想します。ですが現在の株価ではあえて売買はせず、今年も継続保有したいと考えています。
■任天堂(7974)
- 当社Webサイト
- Yahoo! Japan ファイナンス 株価
以下のリンク先は、昨年の振りかえり記事です。
2013年の投資をふりかえって(5)継続投資銘柄:任天堂
| 任天堂(7974)株価の推移(2014年) |
株価は年始が14,010円、年末が12,605円でした。下落率は10%強です。
先週発表された第3四半期決算では、営業利益が下方修正されました。400億円から200億円への減額です(当社発表資料[PDF])。ただしそれは早い時期からある程度予想できたものです。今期発売した主な自社製品は、実質的にマリオカート8(WiiU)、ポケモンのリメイク作品(3DS)とスマブラ新タイトル(3DS及びWiiU)の3.5本と言える状況だったからです(この2月にはゼルダのリメイクが3DSで発売予定)。実質的にこれだけのバリエーションと既発売の作品と他社製品で、前年度並みのソフトウェア売上げを計上しています。
来期はWiiUの大型自社製品がいくつか発売されますが(ゼルダ、スターフォックス等)、個人的に注目している製品があります。5月に発売予定のスプラトゥーンです。
(下の映像は、2014年6月のE3で公開されたものです)
この作品からは「前向きなニンテンドー」らしさが感じられ、来期のWiiU拡販の試金石として働くのではないかと想像しています。ただし中心的な遊びかたがインターネット対戦型のソフトのようで、当社としては微妙なマーケティングと思える節もあります。ですが、北米での評判や売上げに注目したいと思います。
今期の当社は「定番ゲーム屋」さんとして消費者に受け入れられる施策を堅実に実行してきたと受けとめています。来期2015年度には、まいた種の成果がある程度実るだろうと思われます。ただし当社が掲げている基本戦略「ゲーム人口の拡大」の視点からみると、ほとんど前進していないようです(トモダチコレクションの国外販売は評価できます)。現在は収益基盤を取り戻すことで精いっぱい、といったところでしょうか。「消費者に新しいオドロキを与える」ことが当社らしい商売のやりかたですから、次の回ではぜひ期待したいものです。
最後に備考です。昨年の投稿で、当社の研究開発費が急増した話題をとりあげました。以下のグラフは、今期までの3年間にわたる研究開発費の推移です。
| (データの出所: 当社四半期報告書) |
これをみると、昨年度の増加は期末に集中しており、金額も突出しています。どうやら、ゲームソフト開発に資金を大量投下したというよりも、新開発棟での業務開始に備えた物品やソフトウェアの購入に使われた、とみるべきだったようです。
■しまむら(8227)
- 当社Webサイト
- Yahoo! Japan ファイナンス 株価
| しまむら(8227)株価の推移(2014年) |
当社の株を購入したのは、昨年4月中旬に株価が90万円を下回った頃でした。そして8月のはじめに売却しました。ただし1単元だけ残しています。現在は模索の時期に入ったようにみえる当社ですが、今回もかつてのように殻を破って新たな段階へと進めるのでしょうか。優良企業である当社には、それなりの金額を投資したい気持ちもあります。株価がふたたび下がる時機がくれば、購入を検討しなおすつもりです。
■ツムラ(4540)
- 当社Webサイト
- Yahoo! Japan ファイナンス 株価
当社については過去の投稿で一度取りあげています。
『復活を使命にした経営者』、芳井順一会長によるツムラ再生の物語
| ツムラ(4540)株価の推移(2014年) |
しまむらと同様、当社も昨年投資に踏み切り、時を置かず売却した会社です。両社に共通するのは、良好な業績をあげており、すばらしい企業文化を持っており、そして輸入型の企業であることです。円安の時期だからこそ、市場からの評価が低迷して株式を購入する機会が生まれるのでしょう。ですが、購入した株価水準が納得できなかったため、早々に売却しました(損失を確定しました)。次に機会があるかどうかわかりませんが、そのときがくれば今度は継続保有したいと考えている会社です。
2015年1月30日金曜日
2013年度バフェットからの手紙 - (付録)企業年金制度について(9)
ウォーレン・バフェットが、ワシントン・ポストのキャサリン・グラハム向けに書いた企業年金制度に関する注意について、9回目です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
光明はあるのか? 賢明なる企業は、年金基金の運用で確実に優れた成績をあげられるだろうか?
平均以上の成績をあげることがモノサシとなるのでしたら、資産運用者の大多数は不合格まちがいなしです。それでは、偶然あるいは腕前を問わず、成功する人は出てくるものでしょうか。もちろんです。ある程度の年数でみれば、偶然に導かれて平均よりも良くなる人が必ずや出てきます。「コイン投げマネージャー」が1000人集まって競技を行うようなものです。5回目や10回目のコイン投げ競技が終わった時点で、「勝者」が何名か残っていることでしょう(コインを5回投げると、全部「勝ち」の成績をあげる人が31名出てくると期待できます。そのような人は、市場という試練を通じて確かめられた予知能力を持っているでしょうから、きっと年金などの話題に関するエッセイを訳知り顔で書くと思います)。
しばらくの間ツイていたことが幸いする人のほかに、才能のおかげで(ほどほど)成功する人がいくらか出てきてもおかしくないと思います。ただし、過去の成績を分析するだけでその人物を特定できる、とは思いません。コインを使っているかもしれません。表が出やすいとわかっていて、いつも表を選んでいるのかもしれません。しかし単に過去の成績をみたところで、ランダムにコイン投げをして今まで幸運がつづいてきた人たちと、区別することはできないものです。
あなたが他人の性格をうまく見抜けるのと同じことを、投資の分野でもできるとしましょう。そうであれば、堅実な実績を築いてきた運用者と話をして、彼が他の投資家よりも本当に有利な方法を使っていることが理解でき、どうやら今までのように今後も優秀さが発揮されそうだとわかるかもしれません。しかしそうなるには、顧客が非常に賢明で、そして十分に説明を受けなければなりません。仮にそうだとしても、さまざまな落とし穴が待っています。
最初の地点で、わかりやすい巨大な落とし穴があります。それは、多額の運用資産を以って平均以上の成績を維持することです。ほぼまちがいなく、それは不可能だと思います。200億ドルを一つ所で運用する、そう考えてみればいいと思います。そうすれば資金が十分にもたらされるので、世界で一番有能な投資の人材を雇えるでしょう。結局のところ、ラスベガスの大金が最高のエンターテイナーをステージへと呼び寄せていますよね。200億ドルの資産を運用して5千万ドルの年間手数料があれば、次の人たちを集めるのは容易でしょう。(a)各企業へ影響を及ぼす展開を分刻みで追いかける業界別の専門家をひと揃えと、(b)世の中の流れを研究する極上のエコノミスト、そして(c)それらの豊富な情報を踏まえた上で、市場において適切な行動へと変換する、迅速で意志の固いポートフォリオ・マネージャーです。
ところが、そううまくはいきません。
すぐそばでも、別の200億ドルで同じものを手に入れているからです。その手の組織は、自前のブリッジ専門家の一団を備えているのです。彼らは同じハンドを使い、みな同じ本を読んでおり、同じコンピューターを頼りにしています。さらには、200億ドルもしくは重要な部分を、易々とあるいは安価に動かすことはできません。みんなの視線が同じところへ、つまり投資における目下の問題や機会へと集まっていないときには、なおのことです。運用資産が増加すれば、投資の機会は劇的に減少します。というのもポートフォリオを埋めるには、実のところ非常に大規模な企業しか使えないからです。資金が増えるということは、選択肢が減るということです。さらにその選択肢は制限されています。金融面で腹を空かせた他の者たちへ差し出されたお品書きとまったく同じものに、です。
つまり、年金基金で平均以上の成績を保証できる合理的可能性は、ほとんど皆無と言えます。
Is There Hope? Can a Wise Corporation Assure Superior Investment Performance for its Pension Plan?
If above-average performance is to be their yardstick, the vast majority of investment managers must fail. Will a few succeed - due either to chance or skill? Of course. For some intermediate period of years a few are bound to look better than average due to chance - just as would be the case if 1,000 "coin managers" engaged in a coin-flipping contest. There would be some "winners" over a 5 or 10-flip measurement cycle. (After five flips, you would expect to have 31 with uniformly "successful" records - who, with their oracular abilities confirmed in the crucible of the marketplace, would author pedantic essays on subjects such as pensions.)
In addition to the ones benefitting from short-term luck, I believe it possible that a few will succeed - in a modest way - because of skill. I do not believe they can be identified solely by a study of their past record. They may be operating with a coin that they know favors heads, and be calling heads each time, but their bare statistical record will not be distinguishable from the larger group who have been calling flips indiscriminately and have been lucky - so far.
It may be possible, if you know a good deal about investments as well as human personality, to talk with a manager who has a decent record and find that he is using methods which really give an advantage over other investors, and which appear to be likely to provide continued superiority in the future. This requires a very wise and informed client - and even then is not free from pitfalls.
For openers, there is one huge, obvious pitfall. I am virtually certain that above-average performance cannot be maintained with large sums of managed money. It is nice to think that $20 billion managed under one roof will produce financial resources which can hire some of the world's most effective investment talent. After all, doesn't the big money at Las Vegas attract the most effective entertainers to its stages? Surely $50 million annually of fees on $20 billion of managed assets will allow (a) an array of industry specialists covering minute-by-minute developments affecting companies within their purview; (b) top-flight economists to study the movement of the tides; and (c) nimble, decisive portfolio managers to translate this wealth of information into appropriate market action.
It just doesn't work that way.
Down the street there is another $20 billion getting the same input. Each such organization has its own group of bridge experts cooperating on identical hands - and they all have read the same book and consulted the same computers. Furthermore, you just don't move $20 billion or any significant fraction around easily or inexpensively - particularly not when all eyes tend to be focused on the same current investment problems and opportunities. An increase in funds managed dramatically reduces the number of investment opportunities, since only companies of very large size can be of any real use in filling portfolios. More money means fewer choices - and the restriction of those choices to exactly the same bill of fare offered to others with ravenous financial appetites.
In short, the rational expectation of assuring above average pension fund management is very close to nil.
2015年1月28日水曜日
2014年の投資をふりかえって(7)継続銘柄:モザイク
■モザイク(MOS)
- 当社Webサイト
- Google Finance 株価
肥料を採掘・生産・販売する当社に投資し始めたのは、2013年の夏からです。以下のリンク先はそのときの振りかえり記事です。
2013年の投資をふりかえって(8)新規投資銘柄:モザイク
<株価の状況>
年初の株価が47.27$、年末は45.65$となり、3.5%の下落でした。現在の株価は47.94$です。発表されたばかりの最新の業績予想を反映すると、当社の2014年度実績EPSは約2.6$、PERは約18.5になります。過去1年間の配当実績が1$、配当利回りは2%強です。
<事業の状況>
当社の2大事業であるカリウムとリン肥料はコモディティーであり、業績はそれらの販売価格に左右されます。2013年夏にカリウム業界で大きな事件が発生したことで、カリウム肥料の価格が大きく下落しました(リンも連れ安の状態です)。それから1年以上が経過しましたが、価格の大幅回復には至っていません。カリウムの主要生産者であるウラルカリ社とベラルーシカリ社がいまだに関係を改善していないことが、価格低迷がつづく大きな原因だと思われます(併せて、穀物価格も低迷しています)。ただし後述するように、ウラルカリの供給体制に変化があり、価格改善の動きが出てきています。またインドで政権が交代したことも、需要回復そして価格改善につながる材料とみられています(肥料に対する補助金政策の見直し)。
(以下の2つのチャートは、いずれもIndexMundiからお借りしたものです)
一方のリン肥料の価格は底を打ち、ある程度(450$/t)の水準まで回復しました。ただしこの水準では利益をあげるのが厳しい生産者も少なくないので、価格がもう一段階上がるのではと予想しています。
価格水準は別として、当社の事業自体は順調に進展しています。ひとつは販売量の状況です。リン肥料(DAP)は第3四半期の実績で前年比20%増の3.3Mt、カリウム肥料(MOP)は30%増の1.38Mtでした。いずれも価格が低下したところで需要が増加しているわけですから、経済学的な法則がすなおに働いています。業績見通しの上方修正が先日発表されましたが、需要状況は好ましい状態です。価格が見直されていく段階にあると受けとめています。
もうひとつは事業拡張への投資です。ひきつづき市場拡大が期待できるブラジルでは、流通案件の買収が12月に完了しました。またリン事業で競合していたCFインダストリーズ社から買収した部門(フロリダのリン鉱山)も統合されました。この買収は「市場低迷時に競争環境が集約整理される」典型的な事例で、当社にとってはありがたい案件だったと思います。その他に以前から遂行中のプロジェクト(カリウム鉱山のK3増強や、サウジの国営企業Ma'aden社とのリン事業JV)がありますが、第3四半期決算の発表資料によれば順調に推移しているとのことです。
<当社に対する投資方針>
当社への投資を評価するにあたって、現在の株価ではPER水準が高い点を指摘すべきでしょう。前述したように現在のPERは約18.5です。1/22現在のS&P500が18.6なので(3か月遅れの決算ベース)、ほぼ同じ水準です。
コモディティーの適正価格を見積もるのはむずかしい仕事なので、個人的には供給側のコストを基準にして判断しています。シルバーへの投資でも触れたように、採算割れの供給は長続きできないからです。カリウム業界は寡占が進んでいることから、現在の価格水準でも生産者は利益をあげられます。そのため、利益確保のために価格を無理に上昇させる理由はありません。リン業界は先にも触れたように450$/tの価格ではほとんど利益が出ない企業もあると考えます。もしリン肥料の価格改善が1割程度進むとすれば、当社の利益水準は現在の5-10%増しになると予想されます。しかしそうだとしてもPERはそれほど下がらず、割安とは言いがたい株価です。
そうだとしたら、そもそも2013年夏の事件で暴落した株価を割安だと判断したこと自体が甘かったのでしょうか。この可能性は自分でも折に触れて考え直しています。当時は、いずれ商品価格がもっと回復する可能性を評価していたのですが(特にカリウム肥料)、その判断が甘いのではないかと。
超長期的(10年以上)にみれば、肥料価格が上昇する可能性は高いと思います。しかし中長期的にどうなるかは、正直なところ読めません。しかし逆に言えば、これは機会にもつながります。当社はカリウムとリン事業の利益バランスが比較的とれており、両事業とも大手です。厳しい価格低迷がつづいても、生存できる確率は相対的に高いと期待できます。逆に、競合他社の資産を安く取得できる機会がうまれます。一方で以前の投稿でも触れたように、食糧政策では政治や気象・天災といった巨大リスクを考慮する必要があります。そのため、甘い見積もりと思われるかもしれませんが、若干のリスク・プレミアムは上乗せできると考えています。
つまり現在の株価水準は無条件に安いと言える水準ではないと考えますが、次のような点を考慮すると、中長期的にはまずまずの利益が期待できる投資対象かと判断しています。
・キャッシュフローを再投資することによる販売数量の増加
・それと併せて、規模の経済が進展することによる利益率の向上
・突発的リスクに対するプレミアム
・肥料成分バランスの見直しから生じる販売水準の改善(インドや中国では窒素系が優位)
・超長期的なインフレ傾向による肥料価格の上昇
・低迷期にも競争力を強化できる潜在的な可能性
その一方で、最近の原油価格下落は穀物需要の低迷につながる可能性があります(バイオ燃料)。これは、上記の追い風を相殺するリスク要因としてあげられると思います。
具体的な持ち株数についてですが、上記の株価チャートに示したように正味で少し売却しました(赤矢印が購入、青は売却)。しかし基本的には継続保有したいと考えています。そうは言っても、ずっと有望なコモディティー関連の銘柄をみつけたときには、乗り換える可能性はあります。
最後に、「カリウム肥料業界の問題児」ウラルカリ社の近況について触れておきます。同社の状況はインターネット上のニュースでも散見されますが、業界紙である化学工業日報でも事故の状況をとりあげていました(2015年1月8日)。かん水が流入して問題となったソリカムスク2鉱山は、閉山するリスクが高いようです。年間の生産能力が約2Mtなので、市場シェアの数%に相当します。さて、今年は需要側が動いてくれるでしょうか。
(写真はPotash Investing Newsから、孫借りしました)
- 当社Webサイト
- Google Finance 株価
肥料を採掘・生産・販売する当社に投資し始めたのは、2013年の夏からです。以下のリンク先はそのときの振りかえり記事です。
2013年の投資をふりかえって(8)新規投資銘柄:モザイク
<株価の状況>
年初の株価が47.27$、年末は45.65$となり、3.5%の下落でした。現在の株価は47.94$です。発表されたばかりの最新の業績予想を反映すると、当社の2014年度実績EPSは約2.6$、PERは約18.5になります。過去1年間の配当実績が1$、配当利回りは2%強です。
| MOS株価チャート(2014年) |
<事業の状況>
当社の2大事業であるカリウムとリン肥料はコモディティーであり、業績はそれらの販売価格に左右されます。2013年夏にカリウム業界で大きな事件が発生したことで、カリウム肥料の価格が大きく下落しました(リンも連れ安の状態です)。それから1年以上が経過しましたが、価格の大幅回復には至っていません。カリウムの主要生産者であるウラルカリ社とベラルーシカリ社がいまだに関係を改善していないことが、価格低迷がつづく大きな原因だと思われます(併せて、穀物価格も低迷しています)。ただし後述するように、ウラルカリの供給体制に変化があり、価格改善の動きが出てきています。またインドで政権が交代したことも、需要回復そして価格改善につながる材料とみられています(肥料に対する補助金政策の見直し)。
(以下の2つのチャートは、いずれもIndexMundiからお借りしたものです)
| 塩化カリウム月次価格(USD/t) |
一方のリン肥料の価格は底を打ち、ある程度(450$/t)の水準まで回復しました。ただしこの水準では利益をあげるのが厳しい生産者も少なくないので、価格がもう一段階上がるのではと予想しています。
| リン酸二アンモニウム月次価格(USD/t) |
価格水準は別として、当社の事業自体は順調に進展しています。ひとつは販売量の状況です。リン肥料(DAP)は第3四半期の実績で前年比20%増の3.3Mt、カリウム肥料(MOP)は30%増の1.38Mtでした。いずれも価格が低下したところで需要が増加しているわけですから、経済学的な法則がすなおに働いています。業績見通しの上方修正が先日発表されましたが、需要状況は好ましい状態です。価格が見直されていく段階にあると受けとめています。
もうひとつは事業拡張への投資です。ひきつづき市場拡大が期待できるブラジルでは、流通案件の買収が12月に完了しました。またリン事業で競合していたCFインダストリーズ社から買収した部門(フロリダのリン鉱山)も統合されました。この買収は「市場低迷時に競争環境が集約整理される」典型的な事例で、当社にとってはありがたい案件だったと思います。その他に以前から遂行中のプロジェクト(カリウム鉱山のK3増強や、サウジの国営企業Ma'aden社とのリン事業JV)がありますが、第3四半期決算の発表資料によれば順調に推移しているとのことです。
<当社に対する投資方針>
当社への投資を評価するにあたって、現在の株価ではPER水準が高い点を指摘すべきでしょう。前述したように現在のPERは約18.5です。1/22現在のS&P500が18.6なので(3か月遅れの決算ベース)、ほぼ同じ水準です。
コモディティーの適正価格を見積もるのはむずかしい仕事なので、個人的には供給側のコストを基準にして判断しています。シルバーへの投資でも触れたように、採算割れの供給は長続きできないからです。カリウム業界は寡占が進んでいることから、現在の価格水準でも生産者は利益をあげられます。そのため、利益確保のために価格を無理に上昇させる理由はありません。リン業界は先にも触れたように450$/tの価格ではほとんど利益が出ない企業もあると考えます。もしリン肥料の価格改善が1割程度進むとすれば、当社の利益水準は現在の5-10%増しになると予想されます。しかしそうだとしてもPERはそれほど下がらず、割安とは言いがたい株価です。
そうだとしたら、そもそも2013年夏の事件で暴落した株価を割安だと判断したこと自体が甘かったのでしょうか。この可能性は自分でも折に触れて考え直しています。当時は、いずれ商品価格がもっと回復する可能性を評価していたのですが(特にカリウム肥料)、その判断が甘いのではないかと。
超長期的(10年以上)にみれば、肥料価格が上昇する可能性は高いと思います。しかし中長期的にどうなるかは、正直なところ読めません。しかし逆に言えば、これは機会にもつながります。当社はカリウムとリン事業の利益バランスが比較的とれており、両事業とも大手です。厳しい価格低迷がつづいても、生存できる確率は相対的に高いと期待できます。逆に、競合他社の資産を安く取得できる機会がうまれます。一方で以前の投稿でも触れたように、食糧政策では政治や気象・天災といった巨大リスクを考慮する必要があります。そのため、甘い見積もりと思われるかもしれませんが、若干のリスク・プレミアムは上乗せできると考えています。
つまり現在の株価水準は無条件に安いと言える水準ではないと考えますが、次のような点を考慮すると、中長期的にはまずまずの利益が期待できる投資対象かと判断しています。
・キャッシュフローを再投資することによる販売数量の増加
・それと併せて、規模の経済が進展することによる利益率の向上
・突発的リスクに対するプレミアム
・肥料成分バランスの見直しから生じる販売水準の改善(インドや中国では窒素系が優位)
・超長期的なインフレ傾向による肥料価格の上昇
・低迷期にも競争力を強化できる潜在的な可能性
その一方で、最近の原油価格下落は穀物需要の低迷につながる可能性があります(バイオ燃料)。これは、上記の追い風を相殺するリスク要因としてあげられると思います。
具体的な持ち株数についてですが、上記の株価チャートに示したように正味で少し売却しました(赤矢印が購入、青は売却)。しかし基本的には継続保有したいと考えています。そうは言っても、ずっと有望なコモディティー関連の銘柄をみつけたときには、乗り換える可能性はあります。
最後に、「カリウム肥料業界の問題児」ウラルカリ社の近況について触れておきます。同社の状況はインターネット上のニュースでも散見されますが、業界紙である化学工業日報でも事故の状況をとりあげていました(2015年1月8日)。かん水が流入して問題となったソリカムスク2鉱山は、閉山するリスクが高いようです。年間の生産能力が約2Mtなので、市場シェアの数%に相当します。さて、今年は需要側が動いてくれるでしょうか。
(写真はPotash Investing Newsから、孫借りしました)
![]() |
| ソリカムスク2鉱山から3.5Km離れた地点での陥没(30m * 40m) |
登録:
コメント (Atom)
