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2015年1月16日金曜日

2014年の投資をふりかえって(4)買い増し銘柄:日進工具、クラレ

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今回は、数年前から投資して2014年に若干ながらも買い増しした企業2社をとりあげます。日進工具とクラレです。日進工具に投資を始めたのは2011年の秋から、そしてクラレは2012年の秋からです。以下のリンクにあるとおり、両社ともに過去2年間の投稿でも取りあげました。

2013年の投資をふりかえって(3)継続投資銘柄:日進工具
2012年の投資をふりかえって(3)新規・追加投資編(日進工具)

2013年の投資をふりかえって(4)継続投資銘柄:クラレ
2012年の投資をふりかえって(3)新規・追加投資編(クラレ)

なお2014年の新規投資銘柄としてサンリオ(8136)をあげましたが、同社については昨年に一度投稿していますので、今回は省略します(過去記事)。購入した株式はそのまま保有しており、今後も継続するつもりです。当社の第2四半期決算説明会動画を観たところ、鳩山常務の出番が増えていました。彼の表情はいつもどおりに戻ったようで、社内での位置づけが少し好転したように感じられました。欧州での訴訟問題もあり、当社のためにバリバリ働いているのではないでしょうか。

■日進工具(6157)
- 当社Webサイト
- Yahoo Japan! 株価

<事業の状況>
スマートフォン向けや自動車向けの需要が伸びているとのことで、業績は好調です。設備の増設を検討されているようで、好調な時期はどこの会社も似たような匂いが感じられます。

<株価の状況>
当社は2012年の秋に株式分割(1:2)を行いましたが、昨年2014年秋にも再び1:2の分割を行いました。その影響があったのか、前半は横ばいだった株価が7月から上昇しました。年初に867円(分割調整後)だった株価が年末には1,665円となり、上昇率は90%強でした。


一昨年の2013年に買い増ししたときは購入数が少なかったので、2014年に買うならばもう少しまとめて、との意識はありました。が、振り返ってみるとそれほどにはなりませんでした。買った時期は上図の赤矢印で、2月、4月、5月でした。その後に株価が上昇してからは買い増ししていません。


■クラレ(3405)
- 当社Webサイト
- Yahoo! Japan 株価

<事業の状況>
上述した日進工具とはちがって、当社に対する市場の評価はもうひとつの1年でした。しかし事業や会社のほうは変化があり、個人的には当社のほうを注視しています。

まず変化のひとつめは、昨年も触れたデュポン社からの部門買収が完了した件です。この部門が製造している主要製品に、ビニル・アセテート・モノマー(VAM)と呼ばれる原料があります。これは当社の主力製品である光学用ポバールフィルムやエバールの原料であるため、今回の買収で上流の領域を統合したことになります。このことは当社が長期的な戦略を遂行する上で重要な一歩になる、と想像します。それというのも、当社はポバールやエバールでとことんやっていく覚悟を持っており、そのためには原料供給の面で不安を残したくないからです。後顧の憂いを断っておき、そして北南米市場で大きな前進を遂げる。これがビニル・アセテート系事業における当社の長期戦略です(と書きましたが、単なるわたしの妄想です)。

もうひとつは、この1月から社長が交代して新中期計画が始まると共に、組織が変更された点です。当社の稼ぎ頭である光学用ポバールフィルムがこれまで属していた事業部門は、「ビニルアセテートカンパニー」でした。ここには他の主力製品群であるポバール樹脂やエバールも含まれており、各々の業績が混合して示されていました。しかし1月からの組織体制では、これが2つに分割されます。(光学用も含む)ポバールフィルムの事業はデュポンから買収したGLS部門等とまとめられて、「ビニルアセテートフィルムカンパニー」になりました。一方、ポバール樹脂とエバールは「ビニルアセテート樹脂カンパニー」です。この組織変更には、「ポバール樹脂やエバールさん、助けがなくても自分たちだけでしっかり利益を増やしなさいよ」という意図が感じられます。前述した個人的妄想につながる部分です。さらに一般投資家の視点という意味では、主力事業の成績を個別に把握しやすくなるのでは、と期待しています(当社発表資料[PDF])。(2015/2/17追記:決算発表会の説明映像によれば、ビニルアセテート系事業の情報開示は、分割せずにひとつにまとめるとのことです)

その光学用ポバールフィルムで少し暗い話題があります。第2四半期の決算説明会で質疑が交わされたように、当社顧客の日東電工が自社開発した材料(コーディングPVA)をもとに製造した偏光版フィルムが、セット・メーカーに採用されたようです(iPhone 6?)。一方で当社は超超広幅(かつ薄膜)の製造ラインを新たに稼働させており、ターゲットとするアプリケーション領域が遷移しているようにみえます。各社のアナリストはこの件を心配し続けていますが、わたしも自分なりにリスク要因として念頭に置くようにしています。ただし、この事業が具体的にどのように縮小(あるいは持続)するのか、正直なところよくわかりません。

さて当社は会計期を変更したため、この1月から新会計年度になります。そのため年末のタイミングで業績修正が発表されましたが、デュポンからの買収関連に伴う評価損等で、純利益が50億円減少するとのことでした(当社発表資料[PDF])。「高値を払ったつけが回った」と非難を受けるかもしれませんが、それは前社長である伊藤文大会長の責任です。50億円は、彼から新社長伊藤正明氏に向けた餞別でしょう。バランス・シートの掃除がそれなりに済んで、新たな一歩を気持ちよく踏み出せると思います。

<株価の状況>
年初が1,253円、年末が1,378円と、上昇率は10%弱でした。買い増しをしたのは下図の赤矢印で、1月下旬から2月上旬でした。いつもと同じで、ポートフォリオに影響を及ぼせない程度の数量にとどまりました。


<おまけ>
新体制、新中期計画ということで、当社の企業CMのヒロインも変更になりました。当社のサイト「クラレ ミラバケッソ キャンペーンサイト」から、黒島結菜さんの映像をお借りしました。


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しかし、広告などのキャンペーンで女性を起用する慣習は、繊維業界の名残か何かで続けているのでしょうかね。

2015年1月14日水曜日

2013年度バフェットからの手紙 - (付録)企業年金制度について(7)

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ウォーレン・バフェットが、ワシントン・ポストのキャサリン・グラハム向けに書いた企業年金制度に関する注意について、7回目です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

企業年金制度運営の歴史(第2幕)躍進のとき

そして探索が始まりました。ウォール街は商売上の真空地帯ができることを嫌悪します。そのため、顧客の心に信じたいという想いが生じると、それに関する商品が提供されます。ただし保証は付いてきませんが。許認可を受けた企業を投資家が求めていると、証券引受業者がそのような企業を推奨してくれます。もし見つからなければ、新たに設立されるでしょう。それと同じで、平均以上の投資成績を求めていれば、十分すぎるほどに約束してもらえます。少なくとも、その幻想は生み出されるものです。

当初、ものごとのわかっている人たちは、できないことは約束したがらないものです。顧客が去り始める頃の投資顧問は、新たな潮流がいかに不健全であるか非難し、昔ながらの方法が持つ利点を主張します。しかしわずかな流れの中に大波へとつづく兆しがみえると、ビジネスにおけるダーウィン的進化が優勢となり、ほとんどの組織がその環境に順応するようになります。これは資産運用業界で実際に起こったことです。

銀行は伝統的に主要な資産運用業者でした(年金制度を除けば)。概して彼らの投資は、コミュニケーションと同じように活気のないものでした。しかし企業の経営者が、新たに発見された巨大な「事業部」の面倒を見る役目をだれに許すべきか決めようとしてそのモノサシを探しはじめると、諸銀行は改善を図ったり、少なくとも改善のそぶりだけでもする必要があると感じました。企業の経営陣が求める対象は、おのずと次のようなものになりました。見事な組織図を有しており、多くの若手をそろえて、貪欲ながらも責任感ある人材を擁し(優秀な学校を出た大勢のMBA保有者)、意思決定や行動をすばやく実行できる能力を備えた集団です。ありていに言えば、自社と似た組織を求めているのです。その上で、近年にあげてきた実績も要求しました。

残念なことに、そのどちらも見つけることができました。

しかしプロの資産運用業界をひとつの集合とみれば、平均以上の成績をあげられないことは、少し考えてみれば当然だれにでもわかります。これは単に、その業界が投資の世界全体で相当な範囲を占めているからです。現在の株式売買のうちプロの資産運用業者が占める割合は約70%になる、との推計があります。「全体の70%を占める部分が、全体を大幅に上回る成績をあげるだろう」、その手の発想は次の話とよく似ていると思います。ポーカーの席で居並ぶ友人たちを前に、男がこう話す様子です。「いいか、お前ら。今夜はみんな慎重にプレーしろよ。そうすれば、全員がちょいとばかし勝てるんだぜ」[*]。

The History of Corporate Pension Plan Management Act Two - The Great Leap

And so the hunt was on. Wall Street abhors a commercial vacuum. If the will to believe stirs within the customer, the merchandise will be supplied - without warranty. When franchise companies are wanted by investors, franchise companies will be found - and recommended by the underwriters. If there are none to be found, they will be created. Similarly, if above-average investment performance is sought, it will be promised in abundance - and at least the illusion will be produced.

Initially those who know better will resist promising the impossible. As the clientele first begins to drain away, advisors will argue the unsoundness of the new trend and the strengths of the old methods. But when the trickle gives signs of turning into a flood, business Darwinism will prevail and most organizations will adapt. This is what happened in the money management field.

The banks had traditionally been the major money managers (leaving aside insured plans) and, by and large, their investing as well as their communication had been lackluster. They felt obliged to seek improvement, or at least the appearance of improvement, as corporate managers searched for yardsticks by which to make their decisions as to whom care of this newly discovered giant "division" should be granted. The corporate managers naturally looked for groups with impressive organizational charts, lots of young talent, hungry but appropriately conscious of responsibility, (heavy on MBAs from good schools), a capacity for speed in decision making and action - in short, organizations that looked something like they perceived themselves. And they looked for a record of recent performance.

Unfortunately, they found both.

A little thought, of course, would convince anyone that the composite area of professionally managed money can't perform above average. It simply is too large a portion of the entire investment universe. Estimates are that now about 70% of stock market trading is accounted for by professionally managed money. Any thought that 70% of the environment is going to substantially out-perform the total environment is analogous to the fellow sitting down with his friends at the poker table and announcing: "Well, fellows, if we all play carefully tonight, we all should be able to win a little."[*]

2015年1月12日月曜日

2014年の投資をふりかえって(3)新規銘柄:シルバー・ウィートン(SLW)他

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シルバーに関する投資対象はいくつかありましたが、そのほとんどはシルバー・ウィートン社とシルバーETF(SLV)でした。シルバー自体については前回の投稿で書きましたので、今回はおもにシルバー・ウィートンを取りあげます。

■シルバー・ウィートン(銘柄コード:SLW, 英名:Silver Wheaton Corp.)
- 当社Webサイト
- Google Finance 株価

<投資に至った背景>
シルバーへの投資自体は以前からつづけていたのですが、近年はETFのひとつSLVへ投資していました(昨年の投稿)。しかし2014年になってもシルバーの価格下落がとまらず、それ以上に株価が下落している鉱山会社に興味を持つようになりました。それまで当社の銘柄コード(SLW)を目にしたことはあったものの、実質的には何も知りませんでした。しかし事業概要の文章を目にして、一般的なシルバー鉱山会社とは商売のやりかたが大きく違っていることがわかり、詳しく調べてみたいと考えるようになりました。

<事業の状況>
当社はカナダのバンクーバーを拠点とする鉱業会社で、シルバーやゴールドを販売して収益をあげています。ただし自前の鉱山を操業するのではなく、鉱山会社に対して資金を提供し、そのかわりに契約対象となる鉱山から産出されるシルバーを一定期間(あるいは当該鉱山での採掘終了まで)にわたって固定価格で買い取る契約を結ぶ事業を展開しています。たとえば契約先企業が生産したシルバーを1オンス当たり5ドルで買い取る契約をしていれば、市場やディーラーに1オンス15ドルで売却すると、粗利益は10ドルになります。彼らは自社を"streaming company"と呼んでいますが、日本語にすると「購買条件付き資本提供会社」といったところでしょうか。

2013年度の業績概要は、売上高が7億ドル、営業利益が4.2億ドル、純利益が3.7億ドルでした。従業員数は30名弱のため固定費が少ないのと、有効税率が低い点が特徴です(税率については後述します)。

契約を結ぶおもな相手企業は、シルバー以外の金属を採掘する鉱山会社です。おもに生産される金属がゴールドや銅、鉛、亜鉛などで、シルバーは副産物として生産されます。契約案件数は約20件で、2013年度に買い取ったシルバーの数量は約26Moz(ミリオン・オンス)でした。シルバー全体の年間新規産出量が約800Mozでしたので、それなりの位置にいます。

鉱山開発を進める企業では、当該鉱山が商業生産を始める前はキャッシュフローの流出がつづきます。そのため、そもそもの当初資金を調達したり、開発プロジェクト中に追加資金を工面するといった財務は、事業活動の初期段階における重要な仕事です。一方、生産が軌道に乗ればキャッシュフローは流入に変わり、シルバー等の副産物収入が減っても許容できると考えるのでしょう。そのため当社が提供するソリューションは、契約先企業にとっても有益なものだと考えられています。

具体的な契約先企業の例としては、次のような会社があります(数字は2013年度)。

・グレンコア・エクストラータ(Glencore Xstrata); 売上高2,396億ドル
・ヴァーレ(Vale); 売上高467億ドル
・バリック・ゴールド(Barrick Gold); 売上高125億ドル
・ゴールドコープ(Goldcorp); 売上高36億ドル

なお近年になって、ゴールドを産出したり鉱山開発している企業と契約を結び、ゴールドを買い取る事業も行っています。CEOのスモールウッド氏によれば、「基本的な投資先はシルバーだが、機会があればゴールドにも投資する」とのことです。

<株価の状況>
当社の株式はNYSEに上場されています(カナダのトロント市場にも上場)。2014年の年初が20.19$、年末が20.33$と、結果的には横ばいでした。現在の株価は21$強です。直近1年間の配当実績は0.26$で、配当利回りは1%強です。


<投資方針>
2014年の9月下旬から11月上旬にかけて集中的に購入しました(上図の赤矢印)。平均購入単価は20$弱でした。ただしETF銘柄のSLVを一部売却した資金も回しているので、その部分は銘柄を乗り換えたことになります(後述します)。

投資する際に当社を評価した大きな点は、次の2つです。

1. 複数の企業と契約し、シルバーやゴールドの調達先を分散していること
そもそもシルバーを副産物として産出する企業と購買契約を結ぶわけですから、ひとつの鉱山から産出される量は限定的です。そのため当社が商売を拡大しようとすれば、必然的に複数企業と取引することになります。しかし、この点がおのずと当社の優位につながると考えます。

契約先企業が複数社にわたることで、経営体が分散されるだけでなく、金属種的な分散(ゴールド、銅、亜鉛など)と地理的な分散が実現します。そして言うまでもなく、それらの契約先企業はシルバーの価格下落リスクからおおむね分離しています。このことは、シルバーの価格下落リスクやその他のリスクが生じても、当社が生存できる確率を高めることに寄与します。

生物学的にたとえれば、当社を「寄生虫」とみなすことができます。宿主が幼少期にあるときに生育を助ける代わりに、残りの生存期間にわたって寄生させてもらいます。ただし合意による寄生ですから、共存関係にあると言えるでしょう。さらに複数各種の宿主に掛け持ちで寄生することで生存確率を高めると共に、段階的に宿主を乗り換えることができます。そして、場合によってはシルバー価格の高騰も期待できます。これは、宿主から頂く栄養分がローヤルゼリーに変わるようなものです。

もうひとつはあくまでも推測に過ぎませんが、操業をつづける複数の鉱山会社と長期の契約を結ぶことで、鉱床から採掘する際の鉱床学的な事実情報を相手先から入手でき、知見を深められる点を評価したいと思います。このような知見は、将来の契約候補先を検討評価する際に役に立ちます。リスクの項目で触れますが、この事業で競争相手に差をつけられるとすれば、「案件に対する目利きの良さ」が重要になると考えます。その点で現在おかれている当社の位置づけは、将来にもつながるものと捉えています。

2. 契約先企業との契約期間が長期であること
当社がシルバーを買い取る期間として、契約条件に「鉱山が経済的寿命をむかえるまで」と定める案件が少なくありません。それ以外でも10年間や20年間といった期間を指定しています。そして、当社が相手先からシルバーを買い取る固定価格はおよそ5ドルです。シルバー主体の鉱山会社の財務を考慮すると、シルバーの価格がこの水準まで下落する可能性は著しく低いと予想します。上述した1.の要因と組み合わせれば、当社にとってシルバーの価格上昇に賭けられる期間が長期間持てることを意味します。

前回の投稿で書きましたが、現在のシルバーは需給バランスの観点から見ると、価格上昇の機会が十分にあると予想します。そうであれば、「シルバーの価格上昇時に市場から高く評価されるシルバー主体の鉱山会社のほうが、投資先として良い選択だろう」と考えるかもしれません。しかしこれも前回触れたように、先物市場の行方が短期的にどうなるのかは予測しがたく、低迷が長く続いても分のある当社に投資したほうがよいと考えました。

<リスク>

1. タックスヘイブン子会社の活用
当社の収益の大半は、ケイマン諸島に設立された子会社が計上しています。また過去においてもタックスヘイブン子会社を使っています。そのため、当社の本社がカナダ本国で課される税率は本来の25%ではなく、大幅に少ない金額にとどまっています。たとえば2012年には、営業利益6億ドルに対して本来のカナダの税率(25%)に従うと、所得税は1億5千万ドルになります。しかし、実際の税額は1,400万ドル強にとどまっています。なおこの件に関連して当社の年次報告書では、カナダの税務当局が当社の2005年度から2010年度の国際取引について現在監査中であることが記載されています。

この件がどのような結末に落ち着くのか予想できません。ただし、あまり厳しく締め上げると、当社がカナダを出ていくことも考えられます。そのため更生や新たな規制が実施されるとしても、ほどほどの水準にとどまるのではないか、と(希望的なのですが)考えています。

2. 今後の事業の拡張発展に対して、特定個人の力量が大きな影響を及ぼすこと
当社が新規の契約を獲得するには、相手先企業の存在が不可欠です。そのほかに、適切なタイミングと資金、そして学術的(鉱床地質学)な洞察力が要求されます。それらがそろうことで、当社にとって質の高い投資案件を得ることができます。この中でもっとも安価に入手できる可能性のあるものが、人材です。たとえば当社のナンバー2の地質学者が別の会社に引き抜かれたら、商売自体は容易に模倣できます。この課題は当社に限らず不変のもので、やがては顕在化するリスクだと予想します。

ただしすでに成立している契約案件は確定的です。そのため、当社の企業価値を判断する上では、あくまでも過去を評価し、将来の発展性はボーナスと考えるようにしています。

3. 他社の参入による事業拡張機会の減少
当社の事業に参入するには、資本と学術的能力と交渉力があれば可能で、参入障壁はあまり高くありません。そのためシルバーやゴールドの価格が高値の水準に戻れば、新規参入が増えると思われます。その場合、当然ながらパイを争うことになり、投下資本利益率は下がるでしょう。

これについては当社経営陣の規律が試されるときであり、ひとりの個人投資家としてできることと言えば、過去の実績を振り返るぐらいです。当社の投資家向けプレゼンテーション資料(2014年9月版)で、過去の契約実績が図示されていました。それによれば、2011年のシルバー価格高騰前後の時期には新規契約を締結していません。このことから、現在の経営陣は一定の規律を保っていると評価できそうです。



■シルバーETF(銘柄コード:SLV、英名:iShares Silver Trust)
- Google Finance 株価

シルバーのETFが上場されてからは、基本的にSLVを対象に資金を投じてきました。しかし上述したように今回はシルバー・ウィートン(SLW)に興味を持ち、SLVのほうはある程度売却して乗り換えることにしました(SLV売却にともなって、損失を確定しました)。ただしSLWとは値動きが異なるため、価格下落時に追加投資する際には、相対的に割安な銘柄のほうにしたいと考えています。


■その他のシルバー関連の投資
上記以外にもシルバーに関する投資先がありましたが、ポートフォリオに占める割合がわずかなので、それらの説明は省略します。なおシルバー関連の全投資を単一の銘柄としてとらえれば、ポートフォリオに占める割合は主力級となりました。

2015年1月10日土曜日

みじめな人生を絶対につかめる方法(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーが1986年にハーヴァード高校の卒業生に贈った祝辞の2回目です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

カーソン氏の言ったことは、「卒業する学生に対して幸せになる方法は教えられないけれど、絶対に不幸な人間となる方法ならば個人的な経験から教えられる」というものでした。彼の出したみじめな人生必定の処方箋とは、次のものでした。

1. 気分や感覚を変える手段として、化学物質[麻薬など]を摂取すること。
2. ねたむこと。
3. うらむこと。

彼はそれらをひとつまたひとつと試した経験を話し、そのたびにみじめな気持ちになったと語ってくれました。その話しぶりが強い信念に満ちていたことを、私はいまだに覚えています。

カーソン氏のあげた「みじめになるための処方その1」の「麻薬などの薬物に頼ること」は、わかりやすいですね。私からも申し上げると、まだ若かった頃に親友が4人いました。とても頭がよく、倫理的で、その上ユーモアがあって、人間的にも経歴的にも好ましい人たちでした。しかし、そのうちの2人はずっと昔に死んでしまいました。アルコール関係で命を落としたのです。もう1人はアル中として生きています。それを生きていると呼べるものかは、わかりませんが。

かかりやすさは人それぞれですが、中毒というものは誰にでも起こるものです。その歩みはささやかなので、悪化という名の鎖は、はじめは軽くて感じられない程度です。しかしやがては強固となり、うちこわすことができなくなります。私は60年来生きてきましたが、「心を惑わして破滅へと導くたぐいのことは恐れ遠ざけてきたが、そのせいでひどい人生になった」、そんなことを言う人にはいまだ出会ったことがありません。

What Carson said was that he couldn't tell the graduating class how to be happy, but he could tell them from personal experience how to guarantee misery. Carson's prescription for sure misery included:

1. Ingesting chemicals in an effort to alter mood or perception;
2. Envy; and
3. Resentment.

I can still recall Carson's absolute conviction as he told how he had tried these things on occasion after occasion and had become miserable every time.

It is easy to understand Carson's first prescription for misery - ingesting chemicals. I add my voice. The four closest friends of my youth were highly intelligent, ethical, humorous types, favored in person and background. Two are long dead, with alcohol a contributing factor, and a third is a living alcoholic - if you call that living.

While susceptibility varies, addiction can happen to any of us through a subtle process where the bonds of degradation are too light to be felt until they are too strong to be broken. And yet, I have yet to meet anyone, in over six decades of life, whose life was worsened by fear and avoidance of such a deceptive pathway to destruction.

蛇足の話題です。数年前までには自宅で晩酌する回数を減らして、週末前夜の2日間をめどにお酒を飲んでいました。そして1年半ぐらい前からは、その晩酌もやめました。人と会合する席では今までと同じように飲酒しますし、お酒のギフトをもらえばすぐに片付けます。しかし、それ以外に日常的にはお酒を飲まなくなりました。以前の日経ビジネスで、日本電産の永守社長が飲酒をやめた経緯の記事がありましたが、その手の話題で共感できたのは初めてでした。

2015年1月8日木曜日

2014年の投資をふりかえって(2)シルバーの価格及び需給動向

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昨年は主にシルバー(銀)に関する対象へ投資しました。今回は話題の前半として、シルバーに関する一般的な動向に触れておきます。

1. 価格動向
シルバーのスポット価格(2000年以降)

日本で大地震があった2011年の4月に高値48ドル台に達して以来、シルバーの価格は3年以上にわたって下落しつづけてきました。2014年12月末のスポット価格は15.5ドルと、高値の1/3まで下落しました。年初比では19.43ドルからなので、約20%の下落です。個人的には18ドルを下回り続けることはないだろうと考えていたのですが(参考記事)、その一線を超えて3か月以上が経った今でも18ドルを回復できていません。

シルバーのスポット価格(2014年)

昨年の下落傾向は単一のものではなく、2つの期間あるいは要因に分別できるととらえています。上の図をみればわかるように、前半の6月末までは下落局面ながらも反発を繰り返しており、18ドルは割り込んでいませんでした。しかし7月以降に米ドルの上昇が始まると、他の通貨や資源と同様に継続的な下落を始めました。そのため円ベースでみると、7月以降のシルバーの価格下落はそれほど厳しいものではないことがわかります(下図)。

円換算によるシルバーのスポット価格(2014年)

シルバーの価格を事実上決定しているのは、アメリカの先物市場であるCOMEX(Globexも含む)です。現在の先物市場は一部の限られたプレーヤー(主に大銀行)が活躍している場であり、価格を誘導することもできます。さらに言えば、シルバーの価格の方向性はゴールドの価格によって決定され、ひいては主要国中央銀行や政府の思惑が影響していると思われます。

2. 需給動向
以前の投稿では、主に生産者によって構成されている団体The Silver Instituteが公開している2010年の調査結果をとりあげました。今回はその3年後にあたる2013年の統計(同書p.7に掲載)を引用します。

World Silver Survey 2014 A Summary [PDF]

<需要>

(単位: Moz(ミリオン・オンス))
種別2010年2013年
産業用途487.4536.2
写真72.750.4
宝飾品167.0198.8
銀食器50.350.0
コイン等101.3245.6
(小計)878.71081.1
正味投資分178.0-96.0
(合計)1,056.8985.1

上の表で正味投資分がマイナス96.0Mozというのは、総体としての投資家が手持ちの在庫を売り越して供給不足を補ったことを意味しています。

2010年は金融危機が発生してそれほど時間がたっていない時期で、経済が大きく停滞し、シルバーの需要も落ち込みました。その年と比較しているので数字の増加率は重要な指標にはならないと思いますが、定性的な傾向はつかめると思います。

・写真用途の減少量よりも産業全般の増加量が上回ってきています。写真用途は50Mozと全体に占める割合が小さくなり、需要減退への影響度が縮小し続けます。

・産業用途のうち太陽光発電パネル向けの長期的な需要増加が予想されています。ただし実際の需要には波があり、報告書の本文によれば、2013年に需要が縮小した地域があると記されています(たとえばアメリカ)。最近の原油価格の下落も太陽電池には向かい風になるため、この分野での需要は横ばいが続くかもしれません。

・一方で特筆すべき点は、コインやバーの需要増です。シルバーの著名アナリストであるテッド・バトラーは、J.P.モルガン・チェースがそれらを買い込み、ETFからも現物を引き出し、デリバティブの売建玉を相殺する以上の現物を保有するに至った、と読んでいます。たしかにアメリカ造幣局等のシルバー・コインの出荷数量は、数年前とくらべて大きく増加しています。しかし彼の予想がはずれていたとしても、価格下落局面で需要を増加させるという経済学的に正当な購買者がいることは、今後数年間の総需要量を占う上で大きな要因として考えてよいのかもしれません。

<供給>

種別2010年2013年
鉱山からの新規産出735.9819.6
政府部門による売却44.87.9
スクラップ215.0191.8
鉱山会社の正味ヘッジ売り61.1-34.3
(合計)1,056.8985.1

・採鉱・生産する金属の価格が下落中の局面では、鉱山会社はキャッシュフローの減少を補うために生産量を増加させる傾向があります。それも手伝っているせいか、近年は生産量が増加しています。ただし調査会社ロイターGFMSの報告では、2015年以降は生産量が減少すると予測しています。

・政府部門からの売却は、2011年以後のデータを見る限り激減しています(同報告書p.9)。

・鉱山会社のヘッジ売りとは、先物市場であらかじめ売り建てておき、収益を確定させる手段などを指します。数字がマイナスになっているということは、総体としての生産者が流通を絞ったり先送りしていると解釈できそうです。

・シルバーを生産する鉱山会社には2種類あります。ひとつは主にシルバーを含む鉱物を採掘する会社です。もうひとつは他の資源(ゴールド、銅、鉛、亜鉛等)を主に含む鉱物を採掘し、その副産物としてシルバーも生産する会社です。以前にも述べましたが(過去記事)、シルバー主体の会社にとって現在の価格水準では会計上の利益が大幅に減少し(あるいは赤字)、会社の余命(あるいは株主価値)を削っているような状況です。

・しかしシルバーの供給量の多く(約70%)を担うのは、もう一方の種類の鉱山会社です。たとえば以下のサイトではシルバーの生産量上位10社が挙げられています。その中でシルバー主体の会社は2社ほどです。

World's top 10 silver producers updated – companies & countries (Mineweb)

シルバーを主体としないそれらの鉱山会社は、金属価格の値動きが相対的に小さいために、企業の体力も現在のところは安定的です。そのためシルバーの価格が下落しても、採算が合わないために採掘を休止する可能性は非常に小さく、シルバーの供給が急減するリスクは考えにくいものです。

ただしシルバーだけでなく、他の金属(特にゴールドや銅)の価格も低い状況がつづくことも考えられます(現在の状況です)。多額の資金を必要とする大型の鉱山開発プロジェクトは、ここぞという苦境で延期される傾向があります。そのようなプロジェクトは再開されても、商業生産開始までに余計な手続きや作業を必要とします。ですから、現在のような金属価格の状況がつづいて新規鉱山開発が停滞すると、既存鉱床の品位低下を補えずにシルバーの供給量が減少するサイクルへといずれ遷移します。そこまでいくと直近で供給不足を埋められるのは、ETFなどの形ですでに地上在庫となっている現物やスクラップになります。

現在の価格下落に伴って、シルバーのETFやコイン、宝飾品といった地上在庫の需要が増加しています。これを裏返せば、つまり価格が反転して十分に上昇すれば、これまでに在庫となった現物が流通市場に戻って供給不足を埋める可能性はほぼ確実です。そのため、鉱山側の総供給量がしばらく回復しない状況になったとしても、「価格が上昇するのであれば」需要を満たす現物が中期的に不足することはないと想像します(USGSが出した2014年の報告[PDF]からデータを借りれば、現状の生産量が続く仮定での可採年数は、単純計算で約20年間です)。もちろん価格上昇に伴って新規に加わる投資家の需要も大きくなるはずです。その場合、新規投資家と産業需要家による価格の競り合いが起こるのではないでしょうか。そのような局面がつづけばブームとなり、やがてはさまざまな供給体制が追いついて需給のバランスが落ちつき(あるいは崩れて)、価格はふたたび下落するでしょう。しかし「今」がそのようなブームの局面ではないことは明らかです。

上のほうの文章で、「シルバーの価格を決めているのは先物市場である」と書きました。しかし現物の受け渡しを伴う市場において極端な価格変動が進めば、最後に大きな影響力を発揮するのは「現物を供給する能力」だと想像しています(そのほかに、市場のルールを変更するという強制力も考えられますが)。