<質問28:キャロル・ルーミス> バークシャー弱気派をさがしていましたが、無意味でしたね[今年の株主総会に出席してもらうつもりだった]。わたしはバークシャーを弱気には考えていませんが、一般にコングロマリットは特にいい商売というわけでもありません。その意味で後継者の方がうまくやれる確率は好ましくないように思いますが、どうでしょうか。
<バフェット> 異種混合のビジネスがずっと成功してきたように、実際にアメリカではこのモデルはうまく機能してきました。ダウ・ジョーンズ[工業平均銘柄]をひとつの実体とみれば、つまり100年以上にわたって構成が変化してきた企業群ととらえると、その指数が66から11,000まで上昇したことはうまいモデルであると暗示しています。ただしすべての会社がひとつの経営陣に率いられていないのは、そのとおりです。良いビジネスを一群として保有するのは良い考えです。リットン・インダストリーズ社やガルフ&ウェスタン社は、連続買収という考えをもとに築かれました。株式をPER20倍の値段で発行し、その資金で別の企業をPER10倍で買収したのです。チェーン・レターの仕組み[ネズミ講など]によって、おつむの弱い人たちを使役するやりかたですね。一方、わたしたちの事業計画は妥当だと考えています。分散された事業群を有し、資本構成も保守的です。資本主義とは資本を割り振るための体制です。当社の仕組みにおいては、税金の影響を受けずに資本を配分することができます。[得られた]資本を有効に活用できる場所へと振り向けられるわけです。そのような好状況にある人は他にはいません。たしかにそうだと思います。しかし株を吊り上げたいからではなく、事業という観点での原理原則に従うべきです。コングロマリットには株価吊上げの技を使ったり、連続買収・株式発行をやるところもありました。株式発行をくり返してチェーン・レター騒動を続けるならば、いつか終わりがやってきます。
<マンガー> コングロマリットのやりかたで失敗したことと我々では、違いがいくつかあります。買収したい企業がみつからなければ、保険事業のポートフォリオとして投資に回す別の案が選べます。それから、無理にでも買おうとは考えません。メロン兄弟は50-60年間にわたって非常にうまくやっていました。我々とよく似ていますね。我々はガルフ&ウェスタン社のような一般的なコングロマリットではなく、メロン兄弟の活躍が永続するようなものです。
<バフェット> やっと、いいことを言いましたね(笑)。
Q28: CL: You have been looking for bear, but that is silly. I'm not a bear on Berkshire. But conglomerates have not worked particularly well. But probabilities not favorable that successors will have it work well.
WB: Model has worked well for America actually, as disparate businesses have done well over time. Dow Jones as one entity, as a changing group of companies over a 100 year period. Seeing the index rise from 66 to 11,000 suggests it is good model, although agree that it is not all under one management team. Owning good business group is good idea. Litton Industries, and Gulf & Western, they were put together on idea of serial acquiring: issuing stock at 20x to buy businesses at 10x. It is an idea of fooling people to ride on a chain letter scheme. I think our business plan makes sense. Group of diversified businesses and conservatively capitalized. Capitalism is about allocation of capital. We have system where we can allocate capital without tax consequences. We can move the capital to where it can be usefully employed. No one else better situated, and it makes good sense, but must be applied with business principles instead of stock promotion principles. And some conglomerates were stock promotion techniques, and were serial acquirers and issuers of stock. If issuing stock continuously, chain letter game goes on, that does come to an end.
CM: There are a couple differences between us and the failures in the conglomerate model. We have an alternative when there are no companies to buy, as we have the insurance portfolio to invest. And we feel no compulsion to buy. Mellon Brothers did very, very well for 50‐60 years, they were a lot like us. We are not a standard conglomerate like Gulf & Western. It is as if Mellon brothers had gone on forever.
WB: Now you're talking. [laughter]
2014年6月26日木曜日
2014年バークシャー株主総会;バークシャー・モデルの強み
2014年6月24日火曜日
きわめて強力な教育訓練体系のつくりかた(チャーリー・マンガー)
おのずと次のような3つめの疑問が浮かびます。「現在は何を目標とすればよいか。第一級の教育において、学際性を最高の域まで高めるのに不可欠な性質とは何か」。この質問も簡単ですね。もっとも成功している狭い領域での教育状況を調べて、欠かせない要素を特定し、それらを拡大して適切な解決策へと導けばよいだけです。
その際に、ぴったりのお手本となる狭い領域をさがす先は、学校教育のような脅威にさらされていない場所ではありません。そのような場所は、先に述べた非生産的な2つの心理的傾向や他の悪い影響によって強く動かされています。そうではなく、教育によって得られる効果が大きいほどやる気がいっそう高まり、学んだ結果が測定されているも同然の場所をさがすことです。この論理に従ってたどりつく場所とは、すなわち「現代のパイロットに課されている、大成功をおさめてきた教育」です。(そうです。パイロット訓練のことを熟慮するようになれば、偉大なるハーバードがもっとよくなること請け合いだと示唆しているわけです)。他の職業と同様に航空機を操縦する際にも、「かなづちしか持たない傾向」によって生じる悪影響は重大な危険因子のひとつと考えられています。危機に直面したパイロットが「危機その1」しか知らないからといって、「危機その1」が起きたとは判断・対処してほしくありません。ですからそれも含めた上で、パイロットの訓練は以下の6つの厳格なシステムに基づくことが要求されています。
1) 正規の教育として網羅する範囲には、操縦中に有用だと考えられる事実上すべてのものを含むこと。
2) パイロットに必要とされる事実上すべての知識は、単に一度や二度の試験に合格できればよい程度に学ぶものではない。そうではなく、身につけたあらゆる知識は実際の現場で淀むことなくさっと思いだせること。2つあるいは3つの危機が重なって到来した際にも、同様に対応できること。
3) あらゆる優れた代数学者と同様に、あるときは順方向、またあるときは逆方向に物事を考えること。起こってほしいと願うことに最大限集中すべきはいつなのか、あるいは起きてほしくないことを避けるのに最大限集中すべきはいつなのかを学ぶこと。
4) 訓練に時間を費やすべき各対象は、将来起こりうる機能不全から生じる被害を最小限にとどめるためのものであること。訓練を受ける者が達成すべきもっとも重要なこととして、訓練内容をほとんどすべて習得し、この上ないほどに淀みなく実行できること。
5) いついかなるときにも、定型作業として「チェックリスト」を使った確認を必ず行うこと。
6) 所定の訓練を修了した後でも、知識を維持していくために設けた特別な確認作業を定期的に実施するよう義務づけること。たとえば、稀だが重要な問題に対処する際に必要な能力が衰えてしまうのを防ぐために、飛行シミュレーターを利用する例が挙げられる。
適切なること明白な6つの要素からなるこのシステムは、イチかバチかの性格が強い特定の領域では強く要求されており、人間の精神が持つ深層構造に根ざすことから必要とされるものです。だからこそ、さまざまな領域にわたる問題を解決するために必要な教育には、それらすべてを含むだけでなく、各要素が十分に拡張されていることを期待すべきでしょう。そうとしか考えられません。
そして昼のあとには夜がつづくように、鷹が鷹を産むことをめざす第一級のさまざまな領域にわたる教育に基づいて最高の結果を得るには、学際性が広大な範囲まで行きわたることが必要になります。その際には、営々と維持され実践を積み重ねてきたあらゆる能力が、必要に応じて淀むことなく発現されます。その能力のひとつ、学問領域の境界をまたいで行われる総合は、強力な力をもっています。さらにその学際性は、もっとも必要とされる場所でこの上なく流れるように発揮されます。順逆両方向から考えるやりかたは、代数でやる逆転の方法を思い起こす形で使われます。そして「チェックリスト」を使った定型的な確認作業は、知識体系の一角を恒久的に占めることとなります。さまざまな領域にわたる世知を築くには他のやりかたはありませんし、これより楽な方法もないでしょう。それゆえに、この作業の幅が広大であることをはじめて認識した時には、これは至難の業だとおじけづくかもしれません。
しかしあらゆる事情を考慮すれば、次の3つの要因を念頭におくことでこの作業が不可能からほど遠いものであることがわかります。
The natural third question then becomes: What is now the goal? What is the essential nature of best-form multidisciplinarity in elite education? This question, too, is easy to answer. All we have to do is examine our most successful narrow-scale education, identify essential elements, and scale up those elements to reach the sensible solution.
To find the best educational narrow-scale model, we have to look not at unthreatened schools of education and the like, too much driven by our two counterproductive psychological tendencies and other bad influences, but, instead, look where incentives for effective education are strongest and results are most closely measured. This leads us to a logical place: the hugely successful education now mandatory for pilots. (Yes, I am suggesting today that mighty Harvard would do better if it thought more about pilot training.) In piloting, as in other professions, one great hazard is bad effect from man-with-a-hammer tendency. We don't want a pilot, ever, to respond to a hazard as if it was hazard "X" just because his mind contains only a hazard "X" model. And so, for that and other reasons, we train a pilot in a strict six-element system:
1) His formal education is wide enough to cover practically everything useful in piloting.
2) His knowledge of practically everything needed by pilots is not taught just well enough to enable him to pass one test or two; instead, all his knowledge is raised to practice-based fluency, even in handling two or three intertwined hazards at once.
3) Like any good algebraist, he is made to think sometimes in a forward fashion and sometimes in reverse; and so he learns when to concentrate mostly on what he wants to happen and also when to concentrate mostly on avoiding what he does not want to happen.
4) His training time is allocated among subjects so as to minimize damage from his later malfunctions; and so what is most important in his performance gets the most training coverage and is raised to the highest fluency levels.
5) "Checklist" routines are always mandatory for him.
6) Even after original training, he is forced into a special knowledge-maintenance routine: regular use of the aircraft simulator to prevent atrophy through long disuse of skills needed to cope with rare and important problems.
The need for this clearly correct six-element system, with its large demands in a narrow-scale field where stakes are high, is rooted in the deep structure of the human mind. Therefore, we must expect that the education we need for broadscale problem solving will keep all these elements but with awesomely expanded coverage for each element. How could it be otherwise?
Thus it follows, as the night the day, that in our most elite broadscale education wherein we are trying to make silk purses out of silk, we need for best results to have multidisciplinary coverage of immense amplitude, with all needed skills raised to an ever-maintained practice-based fluency, including considerable power of synthesis at boundaries between disciplines, with the highest fluency levels being achieved where they are most needed, with forward and reverse thinking techniques being employed in a manner reminding one of inversion in algebra, and with "checklist" routines being a permanent part of the knowledge system. There can be no other way, no easier way, to broadscale worldly wisdom. Thus the task, when first identified in its immense breadth, seems daunting, verging on impossible.
But the task, considered in full context, is far from impossible when we consider three factors:
2014年6月22日日曜日
わたしの目標(ウォーレン・バフェット)
<質問者> 全米一の大金持ちになった今では、バフェットさんの次の大きな目標は何ですか。
<バフェット> そうですね、株主総会でも言いましたが、今の目標は全米の男性の中で最年長になることです。葬儀の時に言ってほしいのはそれだけです。「なんと、彼はずいぶん長生きしたんだね」と言ってほしいのです。それから、今やっていることをなるべくずっと続けていきたいです。ゴルフのハンデを5打減らしたいといった特別な願望はありません。自然にはそうならないですし、それに時間をかけるつもりもありません。わたしにとっては大差ないことです。他のことと同じように、現在のレベルで楽しんでやれるぐらいの力はあるだろうと思っています。本当に、まったく、これっぽっちも、他に目標などありません、これまでやってきたことをこれからもやっていけるだけ元気でいられれば、それでいいのです。
Q. Mr. Buffett, after being the richest man in America, what are your major goals now?
A. Well, as I said at the Annual Meeting, now my goal is to be the oldest man in America. That's all I want said at my funeral. I just want someone to say, "My God, he was old!" I just want to keep doing what I'm doing, as long as I can. I have no desire to bring my golf handicap down five strokes particularly; it won't go down there by itself, and I'm not going to spend time to do it. It doesn't make that much difference to me. I feel like I can have as much fun doing what I do at this level as anything else. I really, really, really have no goals other than to stay healthy enough to keep doing the same thing I've been doing.
<質問者> 質問が2つあります。ひとつめは、この国における2大政党体制の将来についてどう思いますか。ふたつめは、1996年の大統領選でコリン・パウエル氏の立候補はどうだと思いますか。
<バフェット> ご存知のように、政党の独自性や支持層は過去に大きく変化しました。おそらくわたしは、どちらの所属でもおかしくないという点で典型だと思います。しかし政党がそれほど重要なものだとは考えていません。他の候補者より劣ると思われる人に投票することを強制するような党議拘束や忠誠心は、たしかにありません。その点で、テレビがもたらしてきた影響は多大だったと思います。今の政党は今後も続いていくと思います。消滅したり、分裂する可能性が高いとは思っていません。
コリン・パウエルのことは、彼がすばらしい人だとしか知りません。個人的には存じていませんが、あきらかに傑出した人物です。しかしさまざまな問題について見解を述べはじめると、だんだん人気が落ちていくのではないでしょうか。それが政治というものです。ある問題について賛否のどちらなのか明言すべきときがやってくると、支持者は急激に減りはじめます。しかし、個人としての品格という面では彼は最上級の人物だと考えたいですね。多くの問題に対して彼がどのような見解を持っているのか、実のところわたしにはわかりません。しかし、来年あたりには誰もがそれを知るようになるかもしれません。
Q. I have a two-part question. Number one, what do you think about the future of the two-party system in America? And, number two, what do you think about the candidacy of Colin Powell for President in '96?
A. Well, what has happened, as you know, is that party identifications and loyalties have changed dramatically. I'm probably typical in that I may be registered one way or the other, but I don't really think much about that. Certainly there is no party discipline or loyalty that can be called upon to get me to vote for somebody whom I think is inferior to another candidate. I think television has contributed to that very substantially. I think the parties will continue along; I don't think they will disappear or splinter in all likelihood.
Everything I know about Colin Powell is good. I do not know him personally. He is clearly an outstanding human being. If he starts offering his opinions on various subjects, his popularity will tend to diminish because that's the nature of politics. When you have to say whether you are for or against something, you start losing people pretty fast. But, in terms of the quality of that individual, I would think he would be first-class. I have no idea really what his views are on a lot of subjects. We may learn in the next year or so.
2014年6月20日金曜日
海軍式のすぐれたところ(チャーリー・マンガー)
<質問者> しかし企業が決定を下す際に、失敗や責任を恐れてリスクの大きい投資に二の足を踏むほうへ変化した様子を目の当たりにしたり、経験したことがありますか。
<マンガー> 私が経験した唯一の事例では、ウォーレンではない別の友人がいっしょでしたが、私はその会社の最大株主の部分所有者でした。そこでは、ケブラーか何かを素材とした警官用の新型ヘルメットを考案していました。彼らはそれを我々に披露し、製造したいと要求しました。
イデオロギーの問題としては、我々は警察という存在を強く支持しています。社会には警察組織が必要だと信じているからです。しかし、あまりにも多くの未亡人や孤児を警官が不必要にうみだしているという見方は信じられません。ともあれ、改良された警官用ヘルメットという考えは気に入りました。
ところが、我々はそれを一瞥してから発明者に対してこう言いました。「私たちの会社には資金が十分にあります。しかし警官用の改良型ヘルメットを製造する余裕はありません。これこそ、現代社会がどのように動いているか示しているのですよ。つまり、あらゆるリスクを考慮すると私たちにとっていい話ではない、ということです。ただ、社会がそのようなものを手にしてほしいとは願っています」。
「だから、社会のためにそのヘルメットを大いに販売しようとは私たちは考えていません。どこかよそで作ってもらいなさい。作れるところに対して技術などを移管するのです。私たちはやるつもりはないですからね」。
そういうわけで、新型ヘルメットを配らないことによって警官を不利にすることはありませんでした。しかし我々の手では製造しないことに決めました。
社会が発展していくと、周囲で金を持っているのが自社だけになった場合、それは悪いビジネスとなることがあります。たとえば高校のアメフトでは、対麻痺[下半身不随]や四肢麻痺はときに避けられません。しかし事故が起こった場合、負傷した人が訴えるのにふさわしい資金に余裕がある者は、ヘルメット・メーカー以外にどこがあるでしょうか。だれもが悲しみ、負傷者はひどい状態だとすれば、メーカーにとって法廷は危険な場所となるでしょう。
我々のいるような社会において、お金のある大企業のうちでアメフトのヘルメット製造をやれるほど賢明なところは、ほとんどありません。たぶん、ヘルメット・メーカーを簡単には訴えられないようにすべきなのでしょうね。
別の話になりますが、私の知り合いで、奥さんと良好な関係を築いている2人の医者がいました。しかし医療過誤の保険料がかなり高額になったことで、彼らのどちらもが離婚しました。ただし、ほぼ全財産を奥さんのほうへ移したのです。その後、彼らは以前と同じように医療行為をつづけたものの、医療過誤保険から抜けた点は違いました。
このような社会に対して、彼らは怒りを覚えていました。しかし、うまく振舞う必要がありました。どちらの医者も奥さんを信用していたので、先ほど述べた道をえらびました。そしてその後は医療過誤保険はまったく契約しませんでした。
移り行く訴訟環境に応じて、人は適応するものです。さまざまやりかたがあります。これまでもそうでしたし、これからも同じことがつづくでしょう。
私が個人的にもっとも嫌悪しているのは、容易に詐欺を働くことのできるシステムです。カリフォルニア州におけるカイロプラクティックの全売上げの半分以上は、おそらく純粋な詐欺によるものです。たとえば、せわしい環境で暮らす私のある友人が、自動車を運転していたときにちょっとした衝突事故に遭いました。ところが交差点からまだ離れてもいないのに、カイロプラクティック術者2名と弁護士1名から名刺を渡されました。彼らはムチ打ちを作り出す商売で食っているのですね。
ランド研究所の統計資料によれば、カリフォルニアでは他の多くの州とくらべて事故1回あたりの怪我の件数が2倍になることが示されている、と私は信じています。しかし、実際には2倍には達していないはずです。残り半分は詐欺です。他のみんながやっているだろう、と思えることを単に実行しているのです。それで問題ないだろう、と考えているわけですね。そんなものをまぎれ込ませるとは、なんともひどい話です。
もし私がこの社会を運営できるとしたら、ストレスに対する補償金は労災からは出しません。業務上のストレスがないからではなく、ストレス補償を認めれば、業務上のストレスによって実際に障害を受けながらも補償されない人が何人か出た場合とくらべて、差し引きした正味でみたときに社会に対して害をもたらすからです。
私が好んでいるのは海軍のやり方です。もしあなたが海軍の艦長だとして、24時間勤務を務めた後に睡眠をとることになり、厳しい状況ながらも有能な副官に指揮を任せたとします。ところが彼は艦を座礁させてしまいました。あなたの過失ではないことは明らかですが、軍法会議にはかけられないものの、海軍におけるあなたの経歴はこれでおわりです。
「それは厳しすぎます。ロー・スクールではそうしないし、デュー・プロセス[法的な手続き]もないですよ」、そう言いたいかもしれません。しかしその状況では、海軍式のやりかたのほうがロー・スクール式よりも優れています。状況が厳しいときにはきちんと注意を払うこと。海軍式では、まさしくそれを強制しています。弁解のきかない局面だからです。
なぜ艦が座礁したのか、経歴が終わりになるのか、それは問題ではありません。艦長の過失がどうとか、だれも気にかけません。あらゆる影響を考慮して全体の利益のことを考えた結果、我々が持つべきと判断された単なる規則に過ぎません。
私はその手の規則を好んでいます。そのような失敗厳禁則がいくつかあったほうが社会はうまく機能する、と思います。しかしロー・スクールあたりでは忌み嫌われているようですね。「デュープロセスがないのだから、実のところ正義を求めていないのだ」と。
しかし海軍式規則の話の中でも、私は正義を求めていました。艦船の座礁件数がより減少する、という正義です。差し引いた正味での利益を考えれば、ある艦長の人生が不公平に扱われたとしても、私には気になりません。結局のところ、軍法会議にかけられるわけではないのです。新しい仕事を見つければならないだけで、年金の受給権などもそのままです。世界が終わるわけではありません。
ですからそういうやりかたが良いと思っているのですが、そう考える私は少数派ですね。
Q: But have you seen or experienced any change in decision making at corporations in their being less likely to take on riskier investments for fear of failure or liability?
The only place I saw - with another friend, not Warren (Buffett) - (was where) I was part owner of the biggest shareholder in a company that invented a better policeman's helmet. It was made of Kevlar or something of that sort. And they brought it to us and wanted us to (manufacture) it.
As a matter of ideology, we're very pro-police. I believe civilization needs a police force - although I don't believe in policemen creating too many widows and orphans unnecessarily either. But we like the idea of a better policeman's helmet.
However, we took one look at it and said to the people who invented it, "We're a rich corporation. We can't afford to make a better policeman's helmet. That's just how the civilization works. All risks considered, it can't work for us. But we want the civilization to have these."
"So we don't maximize what we sell it for it. Get somebody else to make it. Transfer the technology or whatever to somebody who can do it. But we're not going to."
Thus, we didn't try to disadvantage policemen (by keeping them from) getting new helmets, but we decided not to manufacture helmets ourselves.
There are businesses - given the way the civilization has developed - where being the only deep pocket around is bad business. In high school football, for example, a paraplegic or quadriplegic will inevitably be created occasionally. And who with deep pockets can the injured person best sue other than the helmet manufacturer? Then everyone feels sorry, the injuries are horrible, and the case is dangerous for the manufacturer….
I think big, rich corporations are seldom wise to make football helmets in the kind of a civilization we're in. And maybe it should be harder to successfully sue helmet makers.
I know two different doctors - each of whom had a sound marriage. And when the malpractice premiums got high enough, they divorced their wives and transferred most of their property to their wives. And they continued to practice - only without malpractice insurance.
They were angry at the civilization. They needed to adapt. And they trusted their wives. So that was that. And they've not carried any malpractice insurance since.
People adapt to a changing litigation climate. They have various ways of doing it. That's how it's always been and how it's always going to be.
What I personally hate most are systems that make fraud easy. Probably way more than half of all the chiropractic income in California comes from pure fraud. For example, I have a friend who had a little fender bender - an auto accident - in a tough neighborhood. And he got two chiropractors' cards and one lawyer's card before he'd even left the intersection. They're in the business of manufacturing claims that necks hurt.
In California, I believe the Rand statistics showed that we have twice as many personal injuries per accident as in many other states. And we aren't getting twice as much real injury per accident. So the other half of that is fraud. People just get so that they think everybody does it, and it's all right to do. I think it's terrible to let that stuff creep in.
If I were running the civilization, compensation for stress in workers' comp would be zero - not because there's no work-caused stress, but because I think the net social damage of allowing stress to be compensated at all is worse than what would happen if a few people that had real work-caused stress injuries went uncompensated.
I like the Navy system. If you're a captain in the Navy and you've been up for twenty-four hours straight and have to go to sleep and you turn the ship over to a competent first mate in tough conditions and he takes the ship aground - clearly through no fault of yours - they don't court-martial you, but your naval career is over.
You can say, "That's too tough. That's not law school. That's not due process." Well, the Navy model is better in its context than would be the law school model. The Navy model really forces people to pay attention when conditions are tough - because they know that there's no excuse.
It doesn't matter why your ship goes aground, your career is over. Nobody's interested in your fault. It's just a rule that we happen to have - for the good of all, all effects considered.
I like some rules like that. I think that the civilization works better with some of these no-fault rules. But that stuff tends to be anathema around law schools. "It's not due process. You're not really searching for justice."
Well, I am searching for justice when I argue for the Navy rule - for the justice of fewer ships going aground. Considering the net benefit, I don't care if one captain has some unfairness in his life. After all, it's not like he's being court-martialed. He just has to look for a new line of work. And he keeps vested pension rights and so on. So it's not like it's the end of the world.
So I like things like that. However, I'm in a minority.
2014年6月18日水曜日
『復活を使命にした経営者』、芳井順一会長によるツムラ再生の物語
書店で目立ちそうのない地味な装丁の本書は、内容も地味だろうと思われるかもしれません。1990年代に入って低迷し始めた漢方薬メーカーのツムラが薄暗い10年間をくぐり抜けてここまで復活するに至った経緯を、ある人物のエピソードを中心に描いた話です。その人物が、当社の会長である芳井順一氏です。
しかし内容のほうは地味どころか、個人的には全編響くものばかりでした。芳井氏は、まぎれもなく名経営者とお呼びするのがふさわしい方だと思います。芳井氏は当初、第一製薬の営業部門に所属していました。しかしツムラ危機に際して創業者一族の風間八左衛門氏(第一製薬の当時の常務)が里帰りすることになり、風間氏に請われて芳井氏も当社に移ります。そして子会社の整理、人員削減、営業部門の立て直し、事業戦略の転換・改革・発展と、激動の20年間弱にわたって当社の経営に携わってきました。本書に登場するそれらのエピソードは悩んで考えて決断した日々を素直に記したもので、空々しく感じられるところがありません。
しかし芳井氏のすばらしい点をあえて3つだけ選べば、「戦略のしぼりこみと実行、人の心理に通じた交渉力、道義心」になると思います。仕事をこなしている中で、これらの点で悩んだりヒントを得たいと考えている方には、きっとお勧めできる一冊です。
これから本書を通読したい方には申し訳ありませんが、以下に本文から2か所だけ引用します。ご了承ください。
ひとつめは、芳井氏が第一製薬時代に営業担当として活躍した頃の話です。
私が転勤をして、初めて回った病院の医局に、『製薬メーカーMR[営業担当]の5時以降の医局への立ち入りを禁ず 院長』という貼り紙がしてありました。5時までは医局に、MRがたくさんいるのですが、ほとんどのMRは医局の隅に立ったままで医師と話をしないので、『壁の花』と呼ばれていました。
こんなことを繰り返していても埒が明かないと思い、私はその貼り紙に気が付かないふりをして、夕方5時過ぎに宿直の先生のところに行きました。先生方が戻ってこられたときに先生方の机の上にある食事を見て、『先生、これ患者さんと同じ病院食ですか』と声を掛けました。『よろしければ、この病院の前の寿司屋から、出前させましょうか』って申し上げたんです。
すると、あんた誰よ、ってことになりますよね。そこで初めて名刺を出して『実は私、担当したばっかりなんです』と自己紹介するわけです。
そこで寿司屋に電話をして寿司を持ってきてもらい、そこで医局の先生方と夜中2時、3時まで話し込むんです。『こんなにうまいものが食べられるんだったら、毎日おいでよ』という言葉がかかり、『ところで先生、今気が付いたのですが、メーカーは5時以降は訪問禁止なんですか?』って言ったら、『あれは院長だけが言っていることだから、誰も気にしていないよ。芳井君、毎日おいでよ』と言われました。
だいたい宿直の先生方が5人ぐらいいますから、毎晩それをやると、1週間で30数名。その病院の医局にいらっしゃる先生全員と会うことができ、1週間で一気に親しくなります。親しくなったら、そんなことをする必要はありません。今度は昼間に行って、先生と直接お会いして話をする。パンフレットを出して、こんなのもありますよ、とお声掛けをする。そうすれば話を聞いてくれます。そういう繰り返しでした。
当時は、明け方の3時とか4時頃に医局を出て営業車で帰宅していたのですが、辛かったというと逆でした。『日本全国のMRの中で、今ハンドルを握っているのは自分だけだろう。明日もやってみよう』という充実感がありました。これで来週からすごいものにつながっていくという喜びのほうが大きかったですね。(p.124)
もうひとつは、経営者として戦略を具体化する際の考え方についてです。
こうした芳井のビジョンは、すべてが具体的だ。聞こえのいい文言が並ぶ空疎なものではなく、そこには人を動かす力強さが秘められている。こうしたビジョンを芳井は、いつどのようにして描いていくのだろうか。
「私は物事を考えるとき、会社のことなら、10年、20年先のツムラをイメージします。そして、そこに向かって一つひとつ、会社全体のことを、どこがどうあるべきか考えます。
そして、それをもう少しショートタームで考えるのが3カ年計画です。3年先にこうありたい、と思ったら今度は3年先にそこに行くためには1年後にどうなっていないと、そこに行きつけないのかイメージします。1年先をイメージしたら、そこに到達するまでの自らの行動や組織の行動にデザインを加えていきます」
長期的なビジョンを描き、そこから逆算して行動に落とし込む。それだけなら目標達成の方法としては王道だ。しかし、芳井の場合、その方法にも独自の工夫がある。実際に手を動かすのである。
「そのために1か月後にはどのくらい進んでないといけないのかを考え、頭の中でイメージします。私は、休みの日には自分の部屋で、A4のコピー用紙を4枚並べて、そこに絵を描きます。頭の中だけで考えると、どうしても堂々巡りになってしまいます。
絵にすると具体的な考えが次々に浮かんできます。会社の将来の絵を描く。それに対して、今、妨げになっているものは何か考え、この妨げているものを取り除いていけば必ずイメージに近づいていけます。それに拍車をかけるためにはどういうことをやったほうが勢いが出るのか、それを絵に描きながら考えるのです」(p.257)
ツムラに興味を持たなかったら(たとえば株価がずっと割高だったら)、本書を手に取ることはなかったと思います。本書を通して芳井会長のことを知ることができたのは、わたしにとっては幸運でした。しかし芳井氏はあと数日で取締役会長を退任し、相談役に就任される予定です。ツムラにとっては新たな試練が始まります。