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2014年3月8日土曜日

今やっとけば金持ちになれるぞ(ハワード・マークス)

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資産運用会社Oaktreeの会長ハワード・マークスがインタビューに応じていた記事がありました(GuruFocusで紹介されていました)。彼自身の書くメモと同じように、このインタビューでも一般投資家に対してわかりやすい表現で現状認識や助言を語っています。今回と次回で一部を引用してご紹介しますが、それほど長くはないので原文記事全体を読まれたほうがよいかもしれません。(日本語は拙訳)

≪In the end, the devil usually wins≫ (Finanz und Wirtschaft)

<質問者> 今回の強気相場がつづく中で、投資家が注意しなければならないリスクとはなんでしょうか。

<マークス> 投資におけるリスクは何かと質問されたら、「資金を失うこと」とお答えになるでしょう。ところが投資におけるリスクは実際には2つあります。ひとつは資金を失うこと、もうひとつが好機を逸することです。どちらかであれば排除することができますが、両方同時には排除できません。そこで問題になるのが、2つのリスクに対してどのように身を処すべきかです。積極果敢にやるか、堅く守りに入るか、それともそのあいだを進むか。この状況からは、あるコメディー映画が思い浮かびます。そこでは登場人物の男が一体どうしようか悩んでいます。彼の右肩には白いローブをまとった天使が腰かけており、こう話しかけてきます。「やめておきなさい。思慮が足りない。良い考えでないどころか、正しくもない。これはやっかいなことになりますよ」。一方、反対の肩にはピッチフォーク[3本歯の農具]を手にした赤いローブの悪魔が座っています。悪魔はこうささやきかけます。「やるんだ。今やっとけば金持ちになれるぞ」。たいていの場合、結局勝つのは悪魔のほうです。「慎重、熟慮、善行」は古来より伝わる教えです。しかし金持ちになりたいという欲望と争えば、恐慌状態の時期を除けばたいていは欲望のほうが勝ちをおさめます。バブルが形成され、バーニー・マドフが金を集めたような詐欺が起こるのはそのためです。

<質問者> 悪魔の口車に乗せられないためにはどうすればよいのでしょうか。

<マークス> 私はこの業界に入って45年以上になります。その間、さまざまな経験をしてきました。それに加えて、感情に左右されやすい性格ではありません。実際、私が知っているすばらしい投資家は感情に流されない人ばかりです。感情的な人は、お祭り騒ぎをする他人たちが値段をつり上げた天井で買ってしまい、みんなが意気消沈して値段がさがった底値で売ってしまうものです。他人と同じように動き、甚だしい状況のときに間違ったことを毎度のようにくりかえします。だからこそ、投資で成功するための最重要な基準として感情に流されないことが含まれるのです。感情に流されてしまう人は、自分の資金で投資すべきではありません。この一言に尽きます。すばらしい投資家のほとんどの人は「逆張り」と呼ばれる姿勢を実践しています。これは他の大勢がやることの逆をやることを意味しますが、その実態は極度な状況下でも適切な行動をとるという意味です。感情に流されずに理性的にやることは、逆張りを実践していく上での基本的な要件のひとつです。

What are the risks investors should be aware of as this bull market goes on?
If I ask you what's the risk in investing, you would answer the risk of losing money. But there actually are two risks in investing: One is to lose money and the other is to miss opportunity. You can eliminate either one, but you can't eliminate both at the same time. So the question is how you're going to position yourself versus these two risks: straight down the middle, more aggressive or more defensive. I think of it like a comedy movie where a guy is considering some activity. On his right shoulder is sitting an angel in a white robe. He says: ≪No, don't do it! It's not prudent, it's not a good idea, it's not proper and you'll get in trouble≫. On the other shoulder is the devil in a red robe with his pitchfork. He whispers: ≪Do it, you'll get rich≫. In the end, the devil usually wins. Caution, maturity and doing the right thing are old-fashioned ideas. And when they do battle against the desire to get rich, other than in panic times the desire to get rich usually wins. That's why bubbles are created and frauds like Bernie Madoff get money.

How do you avoid getting trapped by the devil?
I've been in this business for over forty-five years now, so I've had a lot of experience. In addition, I am not a very emotional person. In fact, almost all the great investors I know are unemotional. If you're emotional then you'll buy at the top when everybody is euphoric and prices are high. Also, you'll sell at the bottom when everybody is depressed and prices are low. You'll be like everybody else and you will always do the wrong thing at the extremes. Therefore, unemotionalism is one of the most important criteria for being a successful investor. And if you can't be unemotional you should not invest your own money, period. Most great investors practice something called contrarianism. It consists of doing the right thing at the extremes which is the contrary of what everybody else is doing. So unemtionalism is one of the basic requirements for contrarianism.

2014年3月6日木曜日

私が大統領に選ばれたら、やってほしいこと(ウォーレン・バフェット)

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ウォーレン・バフェットが1994年にネブラスカ大学でおこなった講演その16です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

<質問者> 本来やめるべきなのに政府が今なお行っていることに対して、どうお考えですか。もし大統領になったとしたら、最初に変えたいと思うものは何でしょうか。

<バフェット> そうですね、もしわたしが大統領に選ばれたとしたら、最初にやってほしいのは票の数え直しです。御免こうむりたい仕事ですからね。わたしがお断りしたい仕事はいろいろありますが、その中でもおそらく上位にきます。大統領職のことは少し知っていますし、ほんのわずかだけ関わったことがありますが、とにかくあれは大変な仕事です。非常に大規模な組織を運営するのは、どんなものでもすごく大変です。[学長の]スパニア博士もたぶん同意してくださると思います。国民や莫大な予算に関する決定を迫られている人たちが山ほどいる本当に複雑な組織ですから、相当大変な管理でしょう。そしてほとんどの場合、職務を8年間つづけなければならないという現実を考えてみてください。組織文化を変えるというのは大変極まりないことです。少しなら経験があるのでわかります。仕事をする上で、ひとつコツがあります。それは、正しい心構えをすでに備えた文化の中に加わることです。わたしどもはそうする幸運に恵まれました。デクスター・シューズ社やシーズ・キャンディー社に投資した時に楽だったのは、そこにはある種の企業文化が育っていたからです。つまり、正しいことをするという方針をリーダーたちが掲げていたのですね。一方、政府となればこれは大変なことだと思います。しかし、もしわたしの方針でやれるのであれば、累進消費税をやります[過去記事]。そして財政は必ずしも均衡する必要はないですが、政府債務の増加率はGDP成長率より低く抑えます。つまり、収入に対する債務の割合を増加させないようにしたいですね。

しかし個別の案件については良い案はありません。立候補しているわけではないですし、20,30年先には既定路線ですから、やるとすればたぶん社会保障[=健康保険など]の支給開始年齢を引きあげます。1937年や定年が65歳に決められたころとくらべると、ずいぶん状況が変わったからです。その年になっても十分生産的にやれると思います[この講演当時のウォーレンの年齢は64歳]。65歳以下の人がそれより年上の人を支えるという人口構成は、60年前にくらべると大きく変化して難題となっています。まだまだ生産的に働けるでしょうから、社会保障の支給開始年齢を遅らせる政策をとります。大幅な歳出削減につながると思います。これで、AARP[全米退職者協会]などの組織票も入ってこないでしょう。

Q. What do you think the government is currently doing that they should stop doing? And, if you were President, what would be the first change you would make?

A. If I were President, the first thing I'd do is demand a recount. That is a job I would not like to have. There are a lot of jobs I would not like to have, but that would probably be tops on the list. I think it's very tough because I've seen a little of it, and I've even experienced a little tiny bit. It's very tough to manage any extremely large organization. Maybe Dr. Spanier will agree with me on that, too. You have a really complex organization with loads of people that have to be decision makers under you and huge budgets. That is very difficult to manage. Then think about the fact that the most time you are going to have to do the job in is eight years. Changing cultures is really tough. I've had a little experience with that. The trick in business is to get in with a culture that's already the right kind. And, we've had good luck doing that. When we invest in a Dexter Shoe or See's Candy, that is very easy, because they have grown in a certain way because the head people think about doing the right things. I think it would be very tough in government. If I had my way, there would be a progressive consumption tax. There wouldn't necessarily be a balanced budget. But, the national debt would grow at a rate that would be less than the growth of the Gross Domestic Product. In other words, I would make sure that debt in relation to income did not increase.

But, in terms of specific programs, you know I have no great ideas. I would probably - since I'm not running for office, and this is already scheduled to come in a couple of decades - I would probably extend the age at which Social Security kicks in, because I think the world is a lot different than in 1937 or whenever the retirement age was put in at 65. I think people are very productive at that age. If you look at demographics for people under 65 to support people over 65, it is a much different chore than it was 60 years ago. I just think there are more productive years, so I would have Social Security start somewhat later. That would save a lot of money. It would also not get the vote of the AARP or other organizations.

2014年3月4日火曜日

私が投資家の道を選んだ理由(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーの(再考)世知入門の16回目です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

なおチャーリーの略歴は、過去記事「チャーリー・マンガーとは何者か(2)略歴(Wikipedia私家版)」で取りあげています。

<質問者> 法曹界を離れた理由を教えてください。

<マンガー> うちは大家族で、[妻の]ナンシーと私で8人の子供を養っていましたから..。法律業界が突如繁盛するようになるとは考えてもみませんでした。私がやめてまもなく、業界に大金が流れ込むようになったのです。1962年にはほとんど身を引いて、完全にやめたのが1965年でした。ずいぶん昔の話です。

他には、自分で決断して自分の資金を賭けるのが好みだったこともあります。どんなことであろうと顧客よりも自分のほうがわかっている、と感じたことがよくありました。そうであれば彼らのやり方に従う理由はないですね。さらに意固地な性格だったのもあります。また独立してやれるだけの元手を得たいという望みもありました。

大多数の顧客は本当にすばらしい人たちでした。ただ、わたしにとって楽しめない人がひとりふたりいました。加えて、投資家という独立独歩な立場に惹かれていました。また、ある種の勝負したいという気概は常にいだいていました。物事の道理を明かして、それに賭けることが好きなのです。ですから、心の赴くほうへと歩んだだけなのです。

<質問者> ラスベガスのようなギャンブルはやりますか。

<マンガー> 胴元がオッズを決める勝負に100ドル賭けるなど、決してやりません。そんなことをする必要がどこにありますか。お遊びとして仲間と賭けることはありますよ。世界一のカード・プレイヤーとも言えるボブ・ハマンのようなすごくうまいブリッジの選手と勝負することもあります。しかし彼と勝負して負け分を払うのは楽しみとわかってのことです。あくまでもお遊びです。

「合法的ギャンブル」という人を操ったような文化が、私は嫌いです。そのことも考慮に入れれば、単純な数学的オッズにもとづいて胴元と勝負するなど、まったくもって思いつきようがありません。合法ギャンブルというのは好きになれませんね。

一方で、言わば「賭けという名の決闘」をするのは好きです。ですから、友人とやる軽めの社交的なギャンブルは好きです。しかし商売としてギャンブルをやる環境は好きではありません。

<質問者> ミューチュアル・ファンド[=投資信託]や資産運用の業界は、あなたが入ってからどう変わりましたか。また市場の成長について、ご意見がありますか。

<マンガー> 実際にはその業界に入ったわけではありません。非公開の小さなパートナーシップを14年間やっていただけです。20年以上前の話ですね。しかし他人からの資金はこれっぽっちにもなりませんでした。少なくとも現在の資産運用者の基準からみればそう言えます。ですから、実際は投資信託の商売には加わってはいなかったのです。

しかしこの国における資産運用ビジネスは、近年大きく成長した商売のひとつですね。裕福なプロや億万長者がたくさん生まれました。最初からいた人には、そこは正真正銘の金鉱でした。年金基金が大きくなり、アメリカ企業の価値が増大し、さらには世界中の富によって驚嘆すべき職業がつくりだされたのです。その仕事についた人の多くが裕福な生活へと持ち上げられました。

我々は、彼らとさまざまなやりかたで取引しています。しかし彼らの一員でなくなってから、ずいぶん経ちました。我々は非常に長い間、基本的に自らの資金を投資してきたのです。

Q: Could you talk about why you left the law?

I had a huge family. Nancy and I supported eight children…. And I didn't realize that the law was going to get as prosperous as it suddenly got. The big money came into law shortly after I left it. By 1962, I was mostly out. And I was totally out by 1965. So that was a long time ago.

Also, I preferred making the decisions and gambling my own money. I usually thought I knew better than the client anyway. So why should I have to do it his way? So partly, it was having an opinionated personality. And partly, it was a desire to get resources permitting independence.

Also, the bulk of my clients were terrific. But there were one or two I didn't enjoy. Plus, I like the independence of a capitalist. And I'd always had sort of a gambling personality. I like figuring things out and making bets. So I simply did what came naturally.

Q: Do you ever gamble Las Vegas-style?

I won't bet $100 against house odds between now and the grave. I don't do that. Why should I? I will gamble recreationally with my pals. And I'll occasionally play a much better bridge player, like Bob Hamman, who might be the best card player in the world. But I know I'm paying for the fun of playing with him. That's recreational.

As for gambling with simple mechanical house odds against me, why in the world would I ever want to do that - particularly given how I detest the manipulative culture of legalized gambling. So I don't like legalized gambling.

On the other hand, I do like the manly art of wagering, so to speak. And I like light social gambling among friends. But I do not like the professional gambling milieu.

Q: Could you say something about how the mutual fund and money management business has changed since you got into it - and the growth of capital markets?

Actually, I didn't really get into it. I had a little private partnership for fourteen years - up until a little over twenty years ago. However, I never had enough money from other people to amount to a hill of beans - at least by current investment-management standards. So I've never really been part of the mutual fund business.

But the money management business has been one of the great growth businesses in the recent history of the United States. It's created many affluent professionals and multimillionaires. It's been a perfect gold mine for people who got in it early. The growth of pension funds, the value of America corporations, and the world's wealth have created a fabulous profession for many and carried lots of them up to affluence.

And we deal with them in a variety of ways. However, we haven't been part of it for many years. We've basically invested our own money for a long, long time.


備考その1です。チャーリーが子だくさんな理由は、夫妻ともに一度離婚しており、再婚前の両者の子供が合わさったことも影響しています。ちなみに2001年にチャーリー夫妻の結婚45周年を祝って一族がイギリスに旅行したときの写真をみると、総勢33名が写っていました。

備考その2です。チャーリーの話題に登場するボブ・ハマン氏はトップレベルのブリッジのプレイヤーで、ブリッジが好きなウォーレン・バフェットとも仲がいいようです。きたる5月に行われるバークシャーの株主総会(別名:資本家のウッドストック)に彼が参加することが、先日の「株主のみなさんへ」[PDF]に出ていました。

加えて日曜日の午後には、世界でも指折りのブリッジの名手のおふたり、ボブ・ハマンとシャロン・オズバーグが株主のみなさんとブリッジをする予定です。勝負する際には、くれぐれもお金を賭けないように。

Additionally, we will have Bob Hamman and Sharon Osberg, two of the world's top bridge experts, available to play bridge with our shareholders on Sunday afternoon. Don't play them for money.(PDFファイル25ページ目)

2014年3月3日月曜日

2013年度バフェットからの手紙 - またしてもやってしまいました

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2013年度のバークシャー・ハサウェイ社の業績は、売上高が約18兆円、純利益が2兆円弱でした。その会社のトップであるウォーレン・バフェット氏が、今年も株主のみなさんへ自分のあやまちを報告します。2013年度「株主のみなさんへ」[PDF]からの引用です。(日本語は拙訳)

なお2011年度に書いた報告は、過去記事「今年も反省します」で取りあげています。

わたしたちは株式を保有するだけでなく、債券にも多額の資金を投資しています。その投資は成功におわることが多いものの、必ずしもそうとは言い切れません。

エナジー・フューチャー社(Energy Future Holdings)という会社をご存知の方は、ほとんどいらっしゃらないと思います。それはツイています。わたしもそうだったらと心の底から思います。2007年に設立された同社は、多額の借入金を使ってテキサス州にある電力事業を買収する目的の会社でした。80億ドルの資金を払った投資家が株式を保有し、その上で必要な多額の資金は借入によって賄うことになりました。バークシャーは20億ドル分の債券を購入しました。そのときチャーリー[・マンガー]に相談せずに、わたしの判断で進めてしまいました。これが大きなまちがいでした。

天然ガスの価格が上昇していなかったら、同社はほぼ間違いなく2014年中に破産したでしょう。我々は昨年、保有する債券を2億5,900万ドルで売却しました。債券を保有している期間に受け取った利息が8億3,700万ドルでしたので、結局は税引き前で8億7,300万ドルの損失を出しました。次からはちゃんとチャーリーに電話をかけるようにします。(PDFファイル19ページ目)

In addition to our equity holdings, we also invest substantial sums in bonds. Usually, we've done well in these. But not always.

Most of you have never heard of Energy Future Holdings. Consider yourselves lucky; I certainly wish I hadn't. The company was formed in 2007 to effect a giant leveraged buyout of electric utility assets in Texas. The equity owners put up $8 billion and borrowed a massive amount in addition. About $2 billion of the debt was purchased by Berkshire, pursuant to a decision I made without consulting with Charlie. That was a big mistake.

Unless natural gas prices soar, EFH will almost certainly file for bankruptcy in 2014. Last year, we sold our holdings for $259 million. While owning the bonds, we received $837 million in cash interest. Overall, therefore, we suffered a pre-tax loss of $873 million. Next time I'll call Charlie.


純利益2兆円弱の裏に8億7,300万ドル(900億円弱)の損失があったと聞かされても、ウォーレンに不平を言うバークシャーの株主は非常に少ないでしょう。少なくとも個人的にはなんとも感じていません。自分の意見をそのまま敷衍できるわけではないですが、バークシャーの株主がウォーレンやチャーリーに寄せる忠誠心は絶大なものと感じています。彼らのようなすばらしい能力を持った人間が誠実にふるまおうと努力している様子をみると、その組み合わせが稀なゆえに自然と惹かれてしまうような気がします。

その意味で今回の文章を読んで個人的に気がついた点は、「このような報告事例がバークシャー子会社の経営陣に対して言行一致の見本となる」ことです。ウォーレンが彼らに要求するものに、「悪いニュースを早く知らせてほしい」という指示があります。時期という点では、今回の文章は遅れてはいます。しかし隠し立てをせずに正確な事実を伝えあうという前向きな姿勢は、みずから進んで示しています。世間一般の優良企業の経営陣ががむしゃらにやるのは仕方がないことかもしれませんが、ソフトなアプローチを積み重ねるウォーレンのようなやりかたも、もっと評価されていいと感じています。またこのような経営文化が存在することは、きわめて真似のしにくい競争優位だと思います。

話は大きく変わりますが、もうひとつ気づいた点はウォーレンが合意した債券の利率水準です。20億ドルの元本に対して約6年間で受け取った利息が8億3,700万ドルでした。単純に計算すると利率は約7%になります。投資時期が2007年と微妙な時期ではありますが、ウォーレンは意外と楽観的に考えていたように個人的には受けとめました。

2014年3月2日日曜日

わかりやすい解法が見つかりました(ベノワ・マンデルブロ)

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複雑なものごとを分析する方法として、本ブログではチャーリー・マンガーのやりかたを繰り返し取り上げています。要約すると「学術界などから借りてきた種々のモデルを使って事象を説明できるか試し、よりよい説明モデル群を見いだす」とするものです。モデル化できるということは、行く末をある程度は予想できることにつながります。あらゆるものが容易にモデル化できるわけではないと思いますが、チャーリーは「徐々にものごとがうまくつながって認識できるようになる」と説明しています。

今回ご紹介するのは、少し前に取り上げた数学者マンデルブロの自伝『フラクタリスト―マンデルブロ自伝―』からの引用です。彼が大学に入学する前に体得した天才的なモデル化の話です。

数学教授のコワサール先生は、このころリセ・デュ・パルクに着任したばかりだったが、それから長いあいだここで立派な教員生活を送ることになる。トープの教授というエリート集団の中でも、コワサール先生は抜きん出ていた。毎日、1日の半分ほどを私はコワサール先生とともに過ごした。先生は黒板の前に立ち、やたらと長い問題を書いた。それは先生が過去何世代もの教師たちの経験を踏まえて、ばかばかしいほど複雑な計算が必要となるようにわざと作成したものだった。問題はいつも代数的または解析幾何学的に記述されていた。

私の中で、同じ問題を幾何学的に言い換える声が聞こえた。テュールにいたあいだずっと、私は時代遅れの数学の教科書を使って勉強していた。1930年代の教科書と比べて、あるいは今日の教科書と比べても、図版がはるかにたくさん載っていて、説明が充実し、やる気をかき立てる内容となっていた。そんな教科書で数学を勉強した私は、何世紀にもわたってきわめて特殊な図形が幅広く集められた一大図形"動物園"を知悉(ちしつ)するに至っていた。だからたとえ解析的な装いをまとっていても、そしてそれが私にとって"見知らぬ"装いであり、図形の基本的な性質とは無縁のように見えても、私はいろいろな図形をすぐさまそこに見出すことができた。

私はいつも最初にさっと図を描いた。そうするとすぐに、なにかが欠けていて美的に不完全だと感じられた。たとえば単純な射影変換や、何らかの円に関する反転操作を加えるとよくなったりした。この種の変換を何回かおこなうと、たいていの図形はもっと調和のとれたものになった。古代ギリシャ人ならこの新しい図形は「対称性が高い」と言っただろう。まもなく対称性を探して調べることが、私の勉強の中心となった。この愉快な作業は、とんでもなく難しい問題を単純な問題に変えた。必要な代数はあとで必ず補える。どうしようもなく複雑な積分の問題も、見慣れた図形に"還元"すれば簡単に解ける。私は手を挙げて自分の発見を発表したものだ。「先生、幾何学的なわかりやすい解法が見つかりました」。先生がどれほど難解な問題を考えても、私はたちまち解いてしまった。それからは、特に意識的に追い求めたわけでもないのに、即座に難なく、いかなる難問もクリアしてしまう一本の道が、私の前には開きつづけたのだった。1944年にリヨンで過ごした冬のあいだ、学期が進むにつれて、私の特異な才能は強固で信頼できるものであることが明らかになっていった。(p.133)


本ブログでメンタル・モデルに関する話題をはじめて読まれる方は、たとえば以下の過去記事がご参考になるかと思います。いずれもチャーリー・マンガーの講話の一部です。