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2014年2月12日水曜日

風にさからって進もう(スティーブン・ローミック)

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FPAのファンド・マネージャー、スティーブン・ローミックのやりかたには共感しており、何度か取り上げてきました。直近にご紹介した文章はポートフォリオの比率に関するものでしたが(過去記事)、今回ご紹介するのも同じ話題です。基本的な方針は全く変わっていないものの、この3か月間でポートフォリオがどのように微調整されたか要約されています。(日本語は拙訳)

FPA Crescent Fund Quarterly Commentary 4th Quarter (January 22, 2014) [PDF]

強風が吹く世の中ですが、我々は風に逆らうところがあります。つまり向かい風のときに買い、追い風のときに売りがちだという点です。現在は後者の傾向が強く、ご察しのように我々が株式に資金を投じている割合は、2013年には減少しました。好ましい市場環境だったので、16件の買い持ちポジションを売却しました。1つだけ損失を出しましたが、平均利益は買値の64%でした。また新規に9件を投資しました。その結果、市場が上昇しつづければ残念なこととなりますが、我々の正味株式資産の割合は1年前の61.3%から51.8%へ減少しました。我々の場合、株式の割合を決めるのは株式の価値とリスク対報酬によってであり。株式市場の動向ではありません。仮に明日の株価を今教えてくれたとしても、リスク対報酬の観点で興味をひかなければ、当然ながら我々は売り越すことになります。

現在は安い状況ではありません。GDPと比較した割合でみると、株価は頂点間近に迫っています。これより高かったのはドットコム・バブルの絶頂期だけです。


we live in a windy world but we're in the habit of leaning into it. We tend to buy with the wind in our face, and sell with it at our backs. Right now, there's more of the latter so, as you'd expect, our equity exposure declined during 2013. The favorable market allowed us to sell sixteen long equity positions during the year, at an average gain of 64% from cost, with just one generating a loss. We initiated nine new positions. The byproduct of this - unfortunate if the market continues to rally - is that our net equity exposure declined to 51.8%, down from 61.3% a year ago. We will let valuation and risk/reward guide our exposure, not the stock market. If the market gives us tomorrow's prices today and the risk/reward becomes unattractive, then we are unsurprisingly net sellers.

Things aren't cheap. Equity values, as a percentage of GDP, are near their peaks. The only time they were higher was at the apex of the dot com bubble.

過去記事「株式時価総額とGDPの比較グラフ」でも似たようなグラフをご紹介しています。そちらのグラフとは変動幅が若干異なっているようですが、傾向としては同じ方向を指し示しています。

2014年2月10日月曜日

公園のながめをあきらめきれない(ベノワ・マンデルブロ)

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少し前に『フラクタリスト―マンデルブロ自伝―』を読みました。マンデルブロと言えば異様な図形「マンデルブロ集合」が有名ですが、金融の世界でもファット・テールを指摘するなど、重要な成果を残しています。


科学者の伝記を読む理由はいつも同じで、偉大な業績を成した人物はどのように考えてどのように判断するのか参考にしたいからです。しかし本書ではその種の話題はあまり登場せず、第二次世界大戦期だった若者時代の逃避行や、独自の学者経歴を歩んでいく顛末・心境を中心につづられていました。その意味では当初のねらいに即した本ではなかったのですが、個人的に興味を持っている主題「逃げる」ことが少なからず描かれており、逆にそちらの話に引きこまれました。翻訳者の影響なのかもしれませんが、著者の文体は抑制が効いていて浮わついたところが少ないように感じられ、全般的に共感できる文章でした。今回はその「逃げる」ことについて本書から引用します。

最初の引用はナチス・ドイツがポーランドに侵攻する前のことで、マンデルブロの一家がワルシャワからパリへ逃げる話です。
二度と帰らない覚悟でこの地を離れるべきか? 私の年齢を考えると、タイミングは完璧だった。その一方で、パリに行った場合には父の身分がどうなるかわからず、母は仕事をやめて収入も手放さなくてはならないとすれば、ひどくまずいタイミングでもあった。しかしミルカの一件で迷いが消えた。ポーランドは両親が息子たちのために望む国ではなかったのだ。決断が下された。(中略)

両親の恐れていたあらゆることがポーランドで忌まわしい現実となる前に、二人の大胆な計画が功を奏した。私たちは南フランスへ行って土地の人のようなふるまいや話し方をして、その地でたくさんの誠実な友人を得た。(中略)

知り合いの中で、フランスへ移って生き延びることができたのは私たちだけだった。たいていの人は、ぐずぐずしているうちに状況がひどく悪化してしまった。ワルシャワ時代の知人で生き残ったのは二人だけだ。私たちの上の階に住んでいたプラウデ夫人は夫を亡くしたが、戦争が終わってから私と同い年の娘を連れてパリへやって来た。そして私の母に連絡をとり、友だち付き合いを再開した。ほかの人たちは貴重な陶磁器を手放せなかったり、べーゼンドルファーのコンサートグランドピアノが売却できなかったり、あるいは窓から見える公園の眺めをあきらめられなかったりして、動きがとれなかったらしい。母はそんな話にぞっとしながらも、感情を隠したまま耳を傾けていた。(p.79)

つぎはドイツ占領下のフランスで起きた彼の父親の話です。
フランスがドイツに占領されていたころのことだが、父の賢さと独立心と勇気を物語るエピソードがある。父は最終的な死の収容所へ連行される前の一時収容所に入れられていた。ある日、フランスのレジスタンス部隊が突入して警備兵を制圧した。ゲートを開放することはできるが収容所を防護することはできないと叫んだかと思うと、みんな逃げろと言って立ち去った。父は最寄りの町を目指して歩く収容者たちの長い列に加わったが、不吉な気配を察してわき道に入った。するとおののく父の目の前で、警備兵から連絡を受けたナチス武装親衛隊のシュトゥーカ爆撃機が、収容者たちを地上掃射した。父は家に帰り着くまでずっと細い道を選び、寝るときは人気のない小屋を見つけた。父以外で戦争を生き延びた人たちも、死の収容所へ向かう集団にいて逃げ道に気づいたら、即座にそこへ飛び込んだと言っている。父はまさにそういう人間だった。(p.42)

最後の話は、パリからフランスの中部へさらに避難したころの生活の様子です。
川を下った兵器工場のそばの平らな土地に小さなアパートがあり、その最上階に格安の貸間が見つかった。避難民支援の一環として、基本的な家具類は支給された。レオンと私は狭苦しい台所兼食堂で寝た。暖房用のストーブで料理もした。両親の部屋も暖まるようにと境のドアを開け放っても、漆喰と麦わらの混ざった三方の壁が丘陵地の外気に触れているので、部屋は冷えきってしまう。冬場には室内につららができた。一階にトルコ式トイレが一つあり、玄関には冷水しか出ない蛇口があった。言うまでもないが、浴室はなかった。(中略)

父はいつもメモをとりながら熱心に本を読んでいた。次にどんな運命が降りかかるかわからないということを忘れず、ぼろぼろの古い本で英語の書き方を勉強していた(「備えあれば憂いなし、だからな」)。何年もあとで私が見つけた革製のブリーフケースの中に、父の膨大な学習帳のうち数冊が奇跡的に残っていた。(p.110)

蛇足ですが、我が家では暖房を入れていないので、今年は寒い思いをしています。板張りの部屋の窓際に敷いた布団に入りこんだときには、マンデルブロのつららを思い返しています。

2014年2月8日土曜日

地獄の底がふさわしい(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによる講演『経済学の強みとあやまち』の23回目です。前回のつづきで、二次的・三次的影響の話です。(日本語は拙訳)

メディケアの例で示したように、人間の作ったシステムであれば何であれ、策略が生じます。これは人の心理に深く根ざすところによるものです。そして謀りごとをする中で、巧みな才能が姿をあらわします。ゲーム理論には大いなる潜在力があるからですね。それゆえに、カリフォルニアの労災補償制度では策略が芸術的な域まで達し、結局はうまく機能しませんでした。システムにおいて策を講じるうちに、人は不正というものを学びます。これは社会の発展にとって良きことでしょうか。経済の発展につながるでしょうか。断じて否と言えます。容易にごまかしがきくシステムを設計した人は、地獄の底へ落ちるのがふさわしいでしょう[ダンテ『神曲』の地獄界第九圏]。

わたしの友人一族が経営する会社は、トラック・トレーラー業界の8%を占めていました。彼はちょうどカリフォルニアでの最後の工場を閉めたところでした。テキサスにも一つありましたが、そちらの状況はもっと悪く、労災にかかる費用が賃金比にして2ケタ台の割合に達していました。トラック・トレーラーの製造では、それほどの利益は出せません。彼は工場を閉鎖し、ユタ州のオグデンへ移転しました、モルモン教徒が大勢いる土地です。彼らは大家族を養い、災害補償で駆け引きなどしない人たちでした。労災費用は賃金の2%分でした。

彼のテキサス工場を占めていたラテン系の人たちは、モルモン教徒とくらべてうまれつき不正直だったり悪人だったのでしょうか。いいえ、ちがいます。単に、不正を働けば報われるように動機づけが構成されていたからです。それは無知な議員によって制定されたものです。ロースクールを卒業した者ばかりだというのに、自分たちが社会発展の足をひっぱっているとは考えなかったのです。うそをついたりごまかすことがもたらす二次的・三次的効果を考慮しなかったのですね。このことがあらゆる場所で起こるようになると経済学はこの件で持ちきりになり、これからもずっとつづくかのようになりました。

Anyway, as the Medicare example showed, all human systems are gamed, for reasons rooted deeply in psychology, and great skill is displayed in the gaming because game theory has so much potential. That's what's wrong with the workers' comp system in California. Gaming has been raised to an art form. In the course of gaming the system, people learn to be crooked. Is this good for civilization? Is it good for economic performance? Hell, no. The people who design easily gameable systems belong in the lowest circle of hell.

I've got a friend whose family controls about eight percent of the truck trailer market. He just closed his last factory in California, and he had one in Texas that was even worse. The workers' comp cost in his Texas plant got to be double-digit percentages of payroll. Well, there's no such profit in making truck trailers. He closed his plant and moved it to Ogden, Utah, where a bunch of believing Mormons are raising big families and don't game the workers' comp system. The workers' comp expense is two percent of payroll.

Are the Latinos who were peopling his plant in Texas intrinsically dishonest or bad compared to the Mormons? No. It's just the incentive structure that so rewards all this fraud is put in place by these ignorant legislatures, many members of which have been to law school, and they just don't think about what terrible things they're doing to the civilization because they don't take into account the second-order effects and the third-order effects in lying and cheating. So, this happens everywhere, and when economics is full of it, it is just like the rest of life.

2014年2月6日木曜日

2013年の投資をふりかえって(9)新規投資銘柄:インテル

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インテル (INTC)

<投資に至った背景>
2011-2012年にマイクロソフトに投資しはじめたころ、当社の株価も同じように低迷していました。しかしマイクロソフトとくらべると当社は設備投資額が大きく、資本効率が良くないことから、はじめは投資対象とみていませんでした。しかしマイクロソフトに投資するリスクのひとつとして消費者向け部門が低迷する可能性を考慮するうちに、当社のことを考えるようになりました。マイクロソフトの業績とは連動せずに、当社独自に成長する機会があるのではないかと。このように、マイクロソフトへの投資を部分的にヘッジできないか考えたのが当社に興味を持ちはじめたきっかけでした。

<事業の状況>
当社の主力製品はよく知られているようにコンピューターの中心部であるCPU(=プロセッサー)です。当社は経営管理上、プロセッサー事業を3つのグループに分けています。

・PCクライアントグループ: デスクトップPCやノートPCのプロセッサー等
・データセンターグループ: サーバー用プロセッサーやストレージ(データ記憶装置)等
・その他のIAグループ: 組込み用や通信用プロセッサー、タブレットやスマートフォン用プロセッサー等

またプロセッサー以外の主要な事業としては、次の2つがあります。

・ソフトウェア及びサービス事業: セキュリティーソフト(旧マカフィー)や組込み用OS等
・フラッシュメモリー事業

FY2013の業績(単位:百万$)は売上高が52,708、粗利益が31,521、営業利益が12,291、純利益が9,620でした。EPSは1.89$です。また以下の図は事業別の業績です。前年とくらべて増益だったのがデータセンターとソフトウェア及びサービスで、減益だったのがPCクライアント、その他のIAグループ(スマートフォンやタブレット含む)、それ以外でした。


<株価の状況>
年初は20.62$で年末は25.96$でした。上昇率は25.9%で、インデックスとくらべると低迷しました。


参考までに、以下の株価チャートは1997年以来のものです。配当は別として、見事な横線です。


<投資方針>
2013年の3月と4月に何度かに分けて購入しました(上図の赤矢印)。平均購入単価は21$強でした。ポートフォリオに影響を与えられる規模までは買いたいと考えています。現在の株価23.5$(実績PERで12.5倍前後)は買い増ししても不都合はないのですが、下落するのを待っています。なお配当利回りは3%台後半です。

投資するにあたって当社を評価している点は、主に2つです。前者は以前から考えていましたが、後者は最近になって加わったものです。

1. 他社に先行して微細化の進んだ製品を研究・開発し、製造できる技術力
コンピューターを代表とする電子製品は年々性能が向上する傾向がありますが、それというのも当社を含む電子機器業界に携わるみなさんが営々と技術革新を進めることで実現されています。そのような潮流の中で当社は技術的な優位性が大きく、それゆえに行使できる影響力も相まって、大きな経済的な見返りを受けてきたと捉えています。

CPUなどのプロセッサーを製造する半導体企業は、「小さなものを作る」すなわち微細化技術を推し進めることで、以下のような利益を享受してきました。

・高付加価値化
以前の製品に匹敵する性能をより小さな面積で実現できるようになるため、余剰な領域が生じます。小型化した形で製品化してもよいですし、余剰領域を使ってさらに高集積化して性能を向上させたり、別の周辺回路を取り込んで多機能化することができます。いずれにしても付加価値を高めることになり、売上増ひいては利益増につながります。

・コスト面の優位
製品の主な原材料であるシリコンウエハーの所要面積が小さくなるとともに、無駄になる領域の割合が減少するため、製品1つあたりの材料費が削減できます。また生産能力が実質的に増加するため、増産することができれば固定費の割合を下げることにつながり、さらなる原価低減を実現できます。

・Moat(経済的な堀)の強化
製品の微細化を進めるには、半導体製造装置においてもいっそう高度な性能が要求されます。ますますむずかしい技術的要求に対応するには、製造装置を製作する費用も高額になります。このことは、相対的に経営基盤の弱い当社の競合企業にとっては余力がなくて設備投資できなかったり、経営上の大きなリスクとなります。賭け金が大きくなると、勝負から降りる人が多くなるのと同じ原理です。そのため自社製造から撤退する企業が増え、現時点での有力企業は3社となりました。メモリー生産に強いサムスン電子、受託生産(ファウンドリー)の台湾TSMC、そしてプロセッサーやフラッシュメモリーを開発生産する当社です。

サムスンは総合力で圧倒的な存在です。TSMCはアップルから受注するなど、受託生産の駆け込み寺となっています。法人税が低いのも強力な追い風です。そして当社は最先端の技術力を有しています。興味深いのは、それぞれ独自のMoatを築いている点です。当社への投資を考え直すとすれば、これらの特徴がもたらす影響を考え直すことにあるかもしれません。

2. プロセッサー分野における全方位戦略
昨年春に当社のCEOが交代しました。先代のポール・オッテリーニが辞任したのは業績停滞がつづき、現在の状況を打開するには不適当と指摘されたからではないでしょうか。新CEOのブライアン・クルザニッチは先代とは違って理科系の教育を受けて技術畑を歩んできました。そのため、当社のコア・コンピタンスをよく理解しているはずです。その彼が最近になって明確な戦略を打ち出しました。「計算するなら何であろうと、インテル製品が一番だ」(If it Computes, it does it BEST with Intel)。これはあらゆるプロセッサー市場で勝ちにいくことを宣言しています。PCやサーバーだけでなく、タブレットやスマートフォン、ウェアラブル端末、車載などの組込み用、そして他社製品の受託生産と、プロセッサーできちんと儲けがでるならそれこそインテルの仕事だと謳っているように聞こえます。個人的にはこの戦略を評価しています。どこにも隙を残さないという姿勢を明らかにし、そして実際に行動することは、他社からは脅威として映ります。戦線が拡大して中途半端になるリスクは大きいですが、経営資源の配分の強弱は走りながら変化するでしょうから、結局は現実的に対応するだろうと想像します。先日クルザニッチは準備中だったインターネットTV事業を売却しました。そのような多角化を進めるよりも、プロセッサーに専念するほうがずっと理にかなった選択だと思います。

<リスク>
ここ数年間の業績は横ばいになり、大きな成長が見込めないことが、当社の株価低迷につながっているように見受けられます。市場が次のような不安をいただいていると考えます。

1. クライアントPC市場における売上のさらなる減少
広く報道されているように、消費者向けPCの市場が縮小しています。最近のスマートフォンやタブレット端末に満足している消費者は、古くなったパソコンを買い替える必要がないのでしょう。企業向けのPC需要はそれほど落ち込まないでしょうが、消費者向け市場ではある水準まで市場が縮小すると予想します。市場がこのリスクを警戒するのは妥当な見方だと思います。

クライアントPC市場の縮小は落ち着きをみせつつありますが、完全に底を打ったのかどうかはまだわかりません。仮にこの市場での売上がさらに2割減少した場合、EPSが現在の1.89$からたとえば1.2$に減少します。それを現在の株価水準24$とくらべると、割高ではあるものの高すぎるほどでもありません。成長しているデータセンターグループの利益増を考慮すれば、もう少し妥当なPER水準に落ち着きます。市場はこのような見通しにもとづいて当社の企業価値を算出しているのかもしれません。

2. スマートフォン及びタブレット市場における市場シェア低迷
スマートフォンやタブレット市場は、ここ数年間で大きく成長しています。代表的な製品にはスマートフォン(iPhoneやGalaxyなど)やタブレット(iPadやGalaxy、kindle fire、Nexusなど)がありますが、それらの端末では当社のプロセッサーは事実上使われておらず、シェアもほとんどゼロです。上述したクライアントPCの売上減少をこの市場で補うことが期待されていますが、現在の当社はそれを実現できていません。

スマートフォンとタブレット市場は個別に分けてながめると、少し違う様相がみえてきます。どちらの市場においても従来(昨年中盤まで)の当社製品は技術的にもうひとつで、端末メーカーに受け入れられていませんでした。しかしタブレット市場向けの製品は当社にとっては技術的なハードルが低く、現段階では競合製品と比肩あるいは上回る製品を出荷しています(Bay Trail)。昨年末から当社製プロセッサーを搭載したタブレット端末が実際に販売されるようになり、ユーザーからも少しずつ評価を得ています。タブレット向け製品は、当社製品の中で今年もっとも成長するものと予想します。

一方のスマートフォン向け製品では、まだ他社製品のほうが技術的に優位です。当社製品は特にLTE等の通信モジュールとの統合や、グラフィックス性能の面で遅れています。スマートフォン向けの製品開発を本格的に始めたのが遅かったため、追いつくまでまだ距離があります。当社のシェアは現時点でゼロに近く、端末メーカーから技術的に評価されない点が残されている以上、横綱を土俵に送ることができるのはもう少し先になります。そのような状況なので株式市場は全般として、当社がスマートフォン市場で一定のシェア(たとえば30%)を確保するのはむずかしいだろう、とみているのかもしれません。

この件は個人的には(控えめながらも)楽観的にみています。技術的な課題は解決され、当社がやがて優位に立つと予想するからです。他社にできたものは当社にもできる、というのが個人的な見立てです。一方で、2強メーカーであるアップルとサムスンがどうなるかは非常に大きな課題です。またプロセッサー・メーカーの強敵クアルコムは無線通信の分野ですばらしい位置を占めています。この領域で当社が勢力を伸ばすには少なくとも3年以上はかかるでしょうし、5年や10年かかるかもしれません。しかしクルザニッチも定年までは10年以上残されています。

なお当社はスマートフォン全盛の船に乗り遅れた印象がありますが、一概にそうとは言えません。当社はデータセンター市場におけるAMD等との争いを優先させ、スマートフォンで採用される省電力型のプロセッサーには注力していませんでした。しかしスマートフォン市場の成長がもたらす果実をデータセンター市場で得る、とする考えは容易に思いつきます。スマートフォンやタブレットのような軽量端末文化を支えるには、「クラウド」という名のサーバー機器が不可欠だからです。ユーザー各人が有する端末台数には限りがありますが、クラウドサービスは有用なものであればいくらあっても困りません。実体が見えないものに対しては、際限なく拡大していくのが人間の欲望です。インターネットの利用がますます進む世界において、成長期待の大きいサーバー事業を先に攻略するとした戦略はまちがいではなかったと思います。

3. サーバー市場における市場シェア低下
スマートフォンで採用されているプロセッサーのほとんどは、当社のライバルメーカーARMのライセンスを受けて設計されたものです。このARMベースのプロセッサーが、今度はサーバー市場に進出する話題がよく登場します。また当社の得意先であるグーグル社がARMベースのプロセッサーを設計し、自社用サーバーに採用する動きをみせているとも伝えられています。このような動きが実現すれば、当社が高い粗利益をあげているサーバー用プロセッサーが価格競争にさらされるとする見方があります。しかしこれは限定的と考えます。第一に、顧客やパートナーがサーバー上で展開しているコンピューター資産はマイクロソフトや当社製品に依存する部分もあり、当社に対して正面から対抗するのはスイッチングコストの観点からむずかしいと思われるからです。さらにこの市場では当社もすばやく低電力消費型の製品開発に着手し、すでに第一弾を出荷しています(Avoton)。この製品は高度な機能や性能が要求されないシステムを稼働させる際に適したものです。

ただし、グーグルが自社内で独自に開発するような動きは実現するかもしれません。損得抜きで選ぶのであれば仕方のないことです。しかし経済的な合理性を考えると、本格的な採用規模には達しないだろうと予想します。自社の要求事項をプロトタイプ検証する程度の規模なのかもしれません。

4. 技術革新の限界
半導体の進歩の歴史を振り返ると、物理的な限界について度々指摘されてきました。しかし当社にはそれらを乗り越えてきた実績があります。むずかしさが増しているのは事実で、次も同じようにうまくいく保証はありません。しかし、業界をリードする技術革新をつづけていくことはほぼ確かだと思います。

2014年2月4日火曜日

人間は昔と同じままで変わらない(ウォーレン・バフェット)

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ウォーレン・バフェットが1994年にネブラスカ大学でおこなった講演その15です。質疑応答が2つで、最初が特技のウクレレについて、もうひとつはまじめな話題です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

<質問者> バフェットさんは音楽の才能をお持ちだと確信するに至りました。それでお聞きしたいのですが、まだウクレレの演奏をつづけていらっしゃいますか。

<バフェット> たまにですが弾いています。これから1年後のミセスBが102歳になる誕生日のころに、オマハのローズ・ブラムキン演劇センターが開場します。以前はアストロ映画館だったところです。彼女は15年前にその劇場が解体されようとするときに買い取りました。その劇場も、この国に来てはじめて喜ばしいできごとがあった場所なのです。1920年代半ばに、彼女の娘さんのフランシスがそこで「アム・アイ・ブルー?」(Am I Blue?)を歌って表彰されたのです。賞品としてもらったのが5ドル分のゴールドの地金でした。1年後の開場式ではミセスBも出席しますが、フランシスが「アム・アイ・ブルー?」を歌うことになっています。わたしもウクレレで伴奏する予定です。

わたし自身のウクレレ演奏の話をしますと、記者クラブの席で州知事と演奏したことがあります。ですが、次は来年秋にアストロでやります。

<質問者> どんなリーダーであっても、その人の資質で私がいちばん重視しているのは誠実さです。その人が産業界あるいは政界などかは問いません。今日の産業界におけるリーダーや政界は、誠実さの点で高い水準にあると思いますか。あなたがビジネスを始めたころとくらべて低下したとお考えですか。

<バフェット> なんとも言い難いですね。調査結果が示すように、一般的なアメリカ市民はたぶん低下しているとの意見を持っていると思います。わたしとしては、さまざまな領域のいろんな種類の人たちと接してきた上での印象ですが、あなたが世間で見てきた様子とかけはなれたものではないと感じています。大人数をとりあげてみれば、釣鐘曲線のような形になると思います。中央付近にたくさんの人がいて、たいていの場合は正しくふるまうでしょうが、本当にむずかしい状況ではそうはできません。一方で曲線の右寄りにいるのがまさしく傑出した人物で、ありていに言えばわたしが敬意を抱く人たちです。しかし、時が経ったからといって大きく変わったとは思えません。それは政治の世界でも同じです。古き良き時代のありさまを懐かしむ人がたくさんいますが、人間という生き物がそんなに変わるものでしょうか。人が変われるのは、新たな文化に接してその道徳観を身につけるときだけです。残念ながら、禁欲的な文化のもとで誠実さが高まるよりも、弱肉強食的な文化の中で不誠実になっていくほうが容易です。しかし政界や産業界をながめてきた中では、30年前とくらべて著しく変わったとは思いません。どちらの世界にも注目に値する抜きん出た人がいます。まさに見習うべき人たちです。

Q. Mr. Buffett, I've been led to believe that you have some musical ability. And, I want to know: Do you still play the ukulele?

A. I play it very occasionally. A year from now, Mrs. B is going to attend, close to her 102nd birthday, the opening of the Rose Blumkin Performing Arts Center in Omaha, which was formerly the Astro movie theater. She bought that theater about 15 years ago, when it was going to be torn down. The reason she bought that theater is that it's the site of one of the first good things that happened to her in this country. Back in the mid-1920's, her daughter, Frances, won a prize there, a five-dollar gold piece for singing "Am I Blue?" And, at the opening a year from now, Frances is going to sing "Am I Blue?" I'll accompany her on the uke.

About my playing the ukulele - I did play it at the Press Club with the Governor. But my next appearance will be at the Astro next fall.

Q. The quality that I value most in any leader is integrity, whether that leader be in business or a leader in government or whatever. Do you feel that leaders in business today and the government do have a high degree of integrity? And, has it declined since you started your business?

A. It's very hard to say. I think the American public thinks it's probably declined as evidenced by polls. My own feeling from a fair amount of exposure to people in a lot of arenas, including political and business, is that the pattern is not terribly different from what you would find in the population. If you take any large group, you will have some kind of bell-shaped curve where you will find a lot of people in the middle, who, under most conditions, will behave well, but when they are in really difficult situations, they won't. You will find people who are just outstanding on the right-hand side of the curve and those are the people who are my heroes, frankly. I don't think it has changed much over the years; that's my impression. I think that's true in politics, too. A lot of people yearn for the good old days and all that sort of thing, but I don't think the human animal changes too much. I think the only way humans change is if they get into a new culture and adopt the mores of that culture. I think it's easier to drop down, unfortunately, if you get into a kind of jungle-type culture, than to move up if you are in some monastic-type culture. But, I don't think that the culture is materially different from what I saw in politics or in business 30 years ago. There are some outstanding people in both, and they're really the ones to focus on and try to emulate.