7) 二次的あるいはより高次にわたる影響に対する関心の低さ
次の話題へ進みます。7番目のあやまち、それは二次的影響あるいはさらに高次の影響に対して経済学ではほとんど関心が払われていないことです。この欠陥は非常に理解しやすいものです。つまり物事の結果が結果を生み、結果の結果がそのまた結果を生みだすということです。これはとても複雑になります。気象学者の任に就いていたときには、これを非常にいらだたしく感じていました。しかし経済学からみれば、気象学など楽勝なものです。
メディケアに関する当初の法律を制定するにあたって、博士号を有する経済学者を含むさまざまな専門家が推定費用を算出しました。しかし彼らが経済面で極端なまでに無知だったことが露呈しました。彼らがやったのは、過去にかかった費用をそのまま外挿しただけだったのです。
費用見積もりを超えること、割合にして1000%超となりました。つまり彼らが見積もった金額は、実際にかかった費用の10%未満だったのです。新たな奨励策が開始されるや否や、その誘因にしたがって動向に変化が生じ、見積もっていたものとはまるで違う数字になりました。また予想していたとおり、高価な薬や治療法が開発されました。では卓越した専門家のみなさんが、それほどお粗末な予測を出したのはなぜでしょうか。それは、容易に答えが求まるように物事を単純化しすぎたからです。まるで、無教養な人がπ[パイ;円周率]を3.2に丸めるようなものですね。影響が及ぼす影響のそのまた影響などは考慮しない、彼らはその方針をとったのです。
学術界という世界でこの一般的な思考ミスの姿をみましたが、これにはひとつ良い点があります。ミクロ経済学という点では、ビジネスに携わる人のほうが愚かだということです。先に述べたメディケアのような心神喪失の例をビジネスの世界から挙げてみましょう。織物工場の経営者を説得しようとする人の話です。「こいつの出来といったらどうでしょう。新しく開発された織機ですが、生産性が大幅に向上しています。3年で元(もと)が取れます」。そういった織機などを20年間も買いつづけると、得られる利益はどうなるでしょうか。投下資本あたり4%で、ずっとそのままです。これは技術面でうまくいかないわけではなくて、経済が支配する法則にしたがうからです。つまり新型織機による利益は織物を購入する顧客へと向かい、織物工場の所有者のものにはならない、ということです。基礎的な経済学の授業をとったりビジネススクールを出た人が、なぜこんなことがわからないのでしょうか。きっと学校が手を抜いているのでしょう。そのような心神喪失がそうそうおこるとは思えませんから。
ふつう私が見積もるときは、型にはまったやりかたには従いません。他の人にそれをやらせたこともありません。机の上に「おえっ」と吐きたくないですから(笑)。そういったバカバカしいやりかたを始終やっている人たちはたしかにいます。しかしどれほどバカげたことをやっていても、彼らのことを信じる人も多いものです。この国では、バカげた予測をせっせとやるのは、うまい売込みのやりかたですね。
投資銀行ともなると、このやりかたは芸術的な形となります。彼らの予測にも目を通したことはありませんが、ある会社をウォーレンと共に買うことになったときの話をしましょう。その会社の売り手は、投資銀行が作成した莫大な調査結果を携えていました。こんなに分厚いのですよ。我々はそれが病死体であるかのようにお返ししました。「これに200万ドルも払ったんですよ」と、彼は言いました。「そういうのは使ったことも見たこともありません」と、私は答えました。
7) Too Little Attention to Second- and Higher-Order Effects
On to the next one, the seventh defect: too little attention in economics to second-order and even higher-order effects. This defect is quite understandable because the consequences have consequences, and the consequences of the consequences have consequences, and so on. It gets very complicated. When I was a meteorologist, I found this stuff very irritating. And economics makes meteorology look like a tea party.
Extreme economic ignorance was displayed when various experts, including Ph. D. economists, forecast the cost of the original Medicare law. They did simple extrapolations of past costs.
Well, the cost forecast was off by a factor of more than one thousand percent. The cost they projected was less than ten percent of the cost that happened. Once they put in place various new incentives, the behavior changed in response to the incentives, and the numbers became quite different from their projection. And medicine invented new and expensive remedies, as it was sure to do. How could a great group of experts make such a silly forecast? Answer: They oversimplified to get easy figures, like the rube rounding pi to 3.2! They chose not to consider effects of effects on effects, and so on.
One good thing about this common form of misthinking from the viewpoint of academia is that business people are even more foolish about microeconomics. The business version of the Medicare-type insanity is when you own a textile plant and a guy comes in and says, "Oh, isn't this wonderful? They invented a new loom. It'll pay for itself in three years at current prices because it adds so much efficiency to the production of textiles." And you keep buying these looms, and their equivalent, for twenty years, and you keep making four percent on capital; you never go anywhere. And the answer is, it wasn't that technology didn't work, it's that the laws of economics caused the benefit from the new looms to go to the people that bought the textiles, not the guy that owned the textile plant. How could anybody not know that if he'd taken freshmen economics or been through business school? I think the schools are doing a lousy job. Otherwise, such insanities wouldn't happen so often.
Usually, I don't use formal projections. I don't let people do them for me because I don't like throwing up on the desk (laughter), but I see them made in a very foolish way all the time, and many people believe in them, no matter how foolish they are. It's an effective sales technique in America to put a foolish projection on a desk.
And if you're an investment banker, it's an art form. I don't read their projections either. Once Warren and I bought a company, and the seller had a big study done by an investment banker. It was about this thick. We just turned it over as if it were a diseased carcass. He said, "We paid $2 million for that." I said, "We don't use them. Never look at them."
2014年1月18日土曜日
結果の結果のそのまた結果(チャーリー・マンガー)
2014年1月16日木曜日
2013年の投資をふりかえって(4)継続投資銘柄:クラレ
当社について昨年(2012年分)投稿したものはこちらです。基本的な考えは当時と変わっていません。
<事業の状況>
期初における当社発表の業績予想では売上高4,300億円、純利益350億円と、前期比16-20%程度の成長を見込んでいました。しかし10月末の中間発表で下方修正し、売上高4,200億円、純利益320億円と、10%強の成長にとどまる予想に変わりました。これは他の有力輸出企業と同程度の水準ですが、利益水準が大きめに回復する他社がみられる一方、当社は前期も安定した利益水準だったこともあり、今期の利益増加幅はそこまでは期待できないようです。株価もすなおにその現状をあらわしているようにみえます。なお第2四半期決算説明会で売上高の増加要因の半分強は為替によると説明がありました。つまり増収に占める真水の割合は5%程度になります。
説明会によれば、低迷した主な製品はPVBフィルム(ガラス用フィルム; 欧州での経済危機の影響が建設分野に遅行してでてきた)、そして稼ぎ頭の光学用ポバールフィルム(液晶偏光板の素材; 市場の在庫調整が直接要因)です。後者については、顧客側の都合によって新仕様品の受入れが遅れている要因もあるそうです。また同様に顧客都合で見込みがはずれたものとして液状ゴムLIRの話がありました。これは自動車のタイヤに添加する素材ですが、欧州の顧客(ミシュランか?)が割増して使いたいとのことで追加の設備投資をしたものの、先方の技術的な理由で少なくとも今期は見送りになったとのことです。
一方、好調な製品はエバール(食品包装など)、水溶性ポバールフィルム(洗剤個包装用; 2012年に買収した事業)、ジェネスタ(自動車部品やLED向け耐熱性プラスチック)です。これらの伸長によって、主力製品である光学用ポバールフィルムへの利益依存度が下がってきているとのことです。「成長できる事業基盤の構築」という点で、この3つは評価できると思います。また市場が立ち上がりつつある製品としては、ベクスター(電子回路用)やファルネセン(バイオ系液状ゴム; 低燃費タイヤ用)などをあげていました。
最後は事業買収の動向についてです。2013年11月に米デュポン社のガラス用フィルム/ビニルアセテート部門を買収することで合意しました(当社発表資料[PDF])。売上高が500億円強なので、想像の域を出ませんが営業利益で40-60億円の上乗せが期待できると思われます。ただし正ののれんが発生するとのことから、のれん代の償却費が増加するはずです(年額数億円か?)。買収対象の部門ではビニルアセテート(酢酸ビニル)のモノマーつまり当社製品からみて川上にあたる素材も製造しており、当社米国法人の既設エバール樹脂生産拠点や新設のポバール樹脂設備への原料供給拠点としても働くと思われます。今回のような案件では、川上や関連事業を買収統合することは相対的にリスクが小さい上に競争力を高めます。また悲願だった北米市場における生産体制を強化できるため、この取引は当社にとって有益だと感じています。
<株価の状況>
年初時点で1,125円、年末は1,253円でした。上昇率は11.4%で、市場からは大きく引き離されました。2013年度の業績は増収増益基調とはいえ、当社の経営陣はどのような想いを抱いているのでしょうか。
<当社に対する投資方針>
株価が下落して1,100円近辺になった時期(8月、10月)に追加購入しました。2012年の平均購入単価は900円弱だったので、当社についても買い上がったことになります。その理由はポートフォリオ全体における比率が小さかったため、当社に長く投資する以上、ある程度割安ならばもっと集中して投資したいと考えるようになったからです。今年2014年は他の保有銘柄を適宜処分して、さらに当社へ追加投資できればと考えています。
当社に対する市場の評価は、液晶パネルの部材に使われる光学用ポバールフィルムの事業の将来性が悲観的に受けとめられた結果だろうと想像します。以前の投稿で書きましたが、遠からず光学用ポバールフィルムの事業は縮小すると個人的には予想しています。ご存知のように技術革新が速い業界だからです。しかし経営陣は説明会で「薄型化は次の技術革新の目玉」「買い替え需要と新興国市場で、若干なりとも増える可能性を秘めている」と発言しており、当社としてはこの事業が少なくとも短期間で縮小するとはほとんど想定していない模様です。
もちろん経営陣も業界分析をしているはずです。競合他社や顧客(内製化のうわさ)を含めたフィルムの市場/技術動向や、有機ELディスプレイのコストダウン状況や技術動向を継続的に把握し、将来の見通しを描いているでしょう。と書いたものの、実際に説明会で伊藤社長から今後の事業縮小について語られた言葉は「まったくシミュレーションしていない」でした。その理由をいくつか説明していましたが、これが社長の本音なのか、あるいは相当な古だぬきなのか(失礼)、わたしにはまだ判断できません。
液晶ディスプレイや光学用ポバールフィルムの数年後の状況がどうなるのか。個人的には「よくわからない」という姿勢をとることにしています。市場の見方は悲観シナリオに偏っていて安全寄りだと思いますが、製品寿命がもっと延命する可能性も考えられます。また買収戦略が具体化してきたことは成長要因のひとつとして評価できます。このような検討材料をもとに、当社の企業価値の期待値をさぐっています。現在の株価1,200円(時価総額4,600億円)は、5割引とはいかないものの比較的割安だと判断しています。
2014年1月14日火曜日
ビル・ゲイツのイースター・エッグ(ウォーレン・バフェット)
<質問者> バフェットさんは全米一のお金持ちでなくなったことをお悩みになっておられますか。
<バフェット> フォーブス[経済誌]が示しているのは、まちがいなくビル・ゲイツの家屋敷も勘定に入れてますね。つまり、そちらの領域に引き入れられたわけです。そういう彼とはたまたま友達になりまして、楽しい時間をすごしています。彼が公言したあとだから話せることですが、奥さんのメリンダへ贈る婚約指輪をボーシャイム[バークシャー配下の宝石店]で買ってくれました。ボーシャイムへ来店してくれたのは1年前のイースターのときでした。その直前に2人はパームスプリングスに滞在していましたが、そろそろシアトルへ帰ろうとビルが言いました。飛行機に乗ると操縦士がシアトルの天候状況を案内したり、その他すべてがシアトルに戻るかのようにあつらえてありました。その後ビルは彼女の注意をずっとひきつけていたので、太陽の位置を気づかれませんでした。イースターの日曜日にオマハに到着した時刻は、[朝の]4時か5時でした。わたしたちはふたりだけのために開店して待っていました。彼がわたしのそばから離れて進もうとするとき、こう話しかけました。「これはわたしの専門でもないし、こう言うわたしはいったい何様かと思うでしょう。しかし1951年にわたしから妻へ婚約指輪を贈ったときは、純資産の6%分のお金を出しましたよ」。けっきょく願っていたほどの大商いの日曜日とはならなかったですが。
しかし長者番付1位ではなくなった話ですが、わたしにとってのお金とは自分が楽しんできたことの副産物なのです。絵を描くのが好きな人と同じです。描いた絵が売れて大儲けできれば、これはすばらしいことです。その上、楽しんで絵を描けたのであれば、これまたすばらしい。金額が増える前の少ない頃でも、わたしはすごく楽しんで仕事をしてきました。付け加えれば、もちろん多額になっても同じように楽しく働いております。ビル・ゲイツにしても同じことが言えると思います。つまり彼も自分のやっていることが大好きなのです。毎日の締めにお金の代わりにサメの歯をもらっても、彼の仕事ぶりは同じでしょう。彼にとっては「好きこそ物の上手なれ」であって、それはわたしも同じです。そうではありますが、彼からは目を離さないでいますよ。株式銘柄を選択するようにとダーツ盤をもらったので試してみましたが、うまくいきませんでした。ですから先週彼に贈呈しました。
Q. Mr. Buffett, does it bother you not being the richest man in America?
A. Well, as Forbes pointed out, they must have counted Bill Gates' house. I mean, he's got me in that department. He's a good friend of mine, incidently. We have a lot of fun together. Bill came in to Borsheim's - I can tell this because he tells it - to buy an engagement ring for Melinda, his wife. He came in to Borsheim's a year ago Easter. They were in Palm Springs, and he told Melinda it was time to go back to Seattle, and when they went to the plane, the pilot reported the weather in Seattle, and everything else, so it sounded as if they were going to Seattle. Then Bill kept her occupied, so she didn't notice where the sun was. They landed in Omaha on Easter Sunday about four or five o‘ clock. We opened Borsheirn's just for them. I said to Bill on his way out, "It's none of my business - who am I to give you advice? - but when I bought an engagement ring for my wife in 1951, I spent 6% of my net worth on it!" We didn't have quite as big a day that Sunday, as I'd hoped.
But as to not being the richest, the money is a by-product of something I enjoy. It's like somebody that enjoys painting; and if you can sell your paintings for a lot of money when you get through, great! If you enjoy the painting when you get through, great too! I've had as much fun working with small sums as large sums, but I have as much fun working with large sums as small sums, I might add. The same thing is true with Bill Gates. I mean, he loves what he does. He would do it if they gave him sharks' teeth instead of cash at the end of the day. And, my guess is, that helps him do it well and helps me do it well, too. But I'm keeping an eye on him. I had a dart board that somebody gave me to select stocks. I threw darts at it but it didn't work very well. So, I sent it to him last week.
2014年1月12日日曜日
2013年の投資をふりかえって(3)継続投資銘柄:日進工具
微細加工用エンドミル(超硬工具)のメーカーです。当社の工具のユーザーには自動車部品メーカーやカメラ2強会社などがありますが、おもしろいところではシマノの自転車部品やバンダイのガンプラ高級モデルの金型などでも使われているとのことです(後述の会社説明会より)。
この会社も2012年と状況はほとんど変わっていませんが、追記的な意味でいくつか記述します。なお昨年(2012年分)の投稿はこちらです。
<事業の状況>
2013年度第二四半期(4-9月)までの業績は前期並みでした。売上高は前期比で微減ですが、当社は国内顧客が多く、また輸出品も円建てで取引しているため、円高修正の影響は遅れて出てくる会社だと思います。
つづいて製品戦略の進展状況ですが、これまでと方向性は同じで高付加価値製品を上市し、新規市場での品ぞろえを広げています。取扱製品の種類が増える一方、当面は大規模な設備投資を行わず、ラインの自動化を進めるなどで吸収していく模様です。現在の段階はこういった施策の積み重ねによって粗利や営業利益率の向上をめざしているものとみています。
マーケティング上の施策では、海外初の営業拠点を香港に設置しました。この現地法人は在庫拠点として機能するため、近辺の顧客への納入リードタイムが短縮され、顧客サービス向上につながる施策だと思います。と書いたものの、実態は日中間の外交問題の影響で通関が遅れていることが主因のようです(個人投資家説明会(2013/11/29実施分)での後藤社長の説明など)。香港を経由することで問題が解消されるとのことでした。
当社はほぼ単一セグメントの事業に注力し、企業集団自体も小規模です。そのため上述したような経営上の判断や施策はどこの会社でもやっている日常的な運営の範疇にとどまっており、投資家としては事業動向を把握しやすいと感じています。
<株価の状況>
年初株価は1,462円、年末は1,739円で上昇率は18.9%でした。日経平均の56.7%やTOPIXの51.5%からは大きく離されました。市場の回復期に比較的優良な銘柄がおくれを取るのはそれなりにあることですが、絶対的水準でみてこれだけ上昇していれば特に気にするものではない、と考えています。
2013年は立会外分売が2回実施され、8月と11月に発行済み株式数の約10%が市場に出されました。それまで50%超を支配していた創業者一族が持ち株を手放し、所有比率が半数未満になりました。相対的に株価が低迷したのは、これが影響したのかもしれません。しかし特定同族会社に該当しなくなることは当社にとって画期的な一歩で、一時的な株価低迷より重要なできごとだと思います。
<当社に対する投資方針>
株価が短期的に下落した局面で追加購入しました。2012年に当社のことを書いたときには「当社の株式は買い上がる」としましたが、2013年もそうなりました。といっても追加購入したのは2単元にとどまっており、ポートフォリオ全体に対してほとんど影響を及ぼさず、意味のある投資行動とは言えないものでした。
「買い上がる」ことについて個人的にもっとも大切だと感じている教えは、チャーリー・マンガーが言うところの「本当にすばらしい企業であれば[ある程度の価格までは]買い上がるべし」です。この教えは2つの大切な要素が撚り合わさってできています。ひとつは「投資しようとしている企業は本当にすばらしいのか」で、もうひとつは「そこそこの価格とはいくらなのか」です。
当社の株式を買い上がることがこのマンガー・テストに合格するかですが、まずひとつめの問い「本当にすばらしい企業か」を通過できないと思います。ではなぜ当社に投資しているのかとなれば、次のような点で魅力を感じているからです。小さな市場で先駆者的な位置を占め、模倣されにくい競争優位性を有しており、顧客が離れにくく、利益率がまずまずで、財務が良好といった点です(もちろん株価が割安、という点が最後につづきます)。これらはそれなりに「すばらしい」ことですが、「本当にすばらしい企業」という基準からみると不足している点が少なくとも1つあります。余剰資本を有効活用できていない点です。経営者自身がやみくもに投資することを否定しており、個人的にはその方針に好感をもっているのですが、残念ながら最高水準の企業とは言えないととらえています。そのような企業を買い上がるといった非合理的な投資行動をとっているのが、自分自身の弱いところです。
ただし当社への投資が魅力がないとは言っておりません。成長がゆっくりなため華やかさに欠ける当社のような企業に投資するのは短中期では冴えないかもしれませんが、もう少し長い目で見れば(5-7年間)結局は十分な見返りが得られると考えています。当社の場合、2012年度の業績は売上高が約60億円、純利益が5.2億円でした。純利益が将来10億円超になり、現在の上場市場JASDAQから東証1部をめざすようになれば、市場から見直されてPERの水準が上がることも期待できます。当社のような企業に投資する際には、このようなダブルプレーが実現する可能性を考慮に入れています(業績向上 + PER上昇)。そしてそこに到るための経営上の施策は地道ながらも着実に実行されている、と評価しています。
2014年1月10日金曜日
(続)割引率の選択(セス・クラーマン)
投資家が割引率を選ぶ際に「正しい」水準の金利を知るにはどうすればよいのか。「正しい」水準の利率なぞ存在しない、と私は信じている。これだと市場が決めたものがそうであり、どちらに向かうのかはだれにも予測できない。私はほとんどの場合、現在の無リスク利子率に信を置き、それらが正しいと仮定している。金融市場で発生する他のさまざまな現象と同じように、金利もいくぶん周期的に変動する。金利が高いと経済に変化が生じて利率低下の前兆となるし、逆のこともある。しかしそれがわかっていても、特段正確な予測ができるわけでもない。というのも事実が生じないことには、経済的なサイクルを描くのはほとんど不可能だからだ。
金利が著しく低い状況では、投資家は株価に対して非常に高い倍率を適用しがちだ。そのような高倍率に金を出す投資家は金利が低いまま維持されることを前提としているが、それがつづくと確信できる者はいない。このことは金利が異常なほど低いときには、利回りがより魅力的になった時に再投資できるよう現金のままでいるか、すみやかに換金できる短期間の投資を選ぶべきで、ずばぬけた機会があれば別として、長期保有の対象へ資金を投下するのは殊更ためらうべきであることを意味している。
投資家が現在価値分析を行う際には、2つあるうちのどちらかを使える。ひとつは事業の現在価値を算出し、証券の価値へと換算するやり方で、もうひとつは証券の保有者が受け取れるキャッシュフローの現在価値を算出する方法だ。そのキャッシュフローとは、債券ならば利子と元本の払い戻し、株式ならば配当と予想される将来の株価を指している。
債券の価値を求める際には、約定利息と返済される元金の現在価値を算出するのが最善の方法である。さらに根底にあるビジネスを分析することで、それらのキャッシュフローを受領できる確率を見定めるのに役立つ。一方で株式の価値を求めるには、根底のビジネスがもたらすキャッシュフローを分析するのが最善だ。一般に、投資家が保有する株式から受け取れるキャッシュフローは配当に限られる。配当割引を使った価値分析の方法は、予想される将来の配当支払いの現在価値を算出するものだが、これは株式の価値を算出するのに有用な道具ではない。というのは、ほとんどの株式において配当とは企業が生み出すキャッシュフロー全体のごく一部を構成する要素なので、事業価値の近似値として使える値を得るには少なくとも数十年先まで予測しなければならないからだ。それほど先のことを正確に予測するのは無理難題である。
将来のキャッシュフローを保守的に見積もり、適切な割引率が選定できたら、現在価値を算出できる。理論上はさまざまなキャッシュフローのシナリオに対して異なる確率を割り当てて、各シナリオが実現する確率と個々の現在価値を乗じ、それらの結果を合算することで投資先の価値の期待値を算出できる。しかし現実的には、数多くの予測ごとに確率を割り当てるのは極めてむずかしいので、投資家たちは実現性のある数件のシナリオだけでやっている。つづいて感度分析(sensitivity analysis)を行い、異なるキャッシュフロー予測や異なる割引率が現在価値に対してどのような影響を及ぼすのか評価しなければならない。もし仮定した条件のちょっとした違いが正味現在価値へ大きな違いをもたらすのであれば、この評価方法を適用する際には注意ぶかく慎重であるべきだろう。
How can investors know the "correct" level of interest rates in choosing a discount rate? I believe there is no "correct" level of rates. They are what the market says they are, and no one can predict where they are headed. Mostly I give current, risk-free interest rates the benefit of the doubt and assume that they are correct. Like many other financial-market phenomena there is some cyclicality to interest rate fluctuations. High interest rates lead to changes in the economy that are precursors to lower interest rates and vice versa. Knowing this does not help one make particularly accurate forecasts, however, for it is almost impossible to envision the economic cycle until after the fact.
At times when interest rates are unusually low, however, investors are likely to find very high multiples being applied to share prices. Investors who pay these high multiples are dependent on interest rates remaining low, but no one can be certain that they will. This means that when interest rates are unusually low, investors should be particularly reluctant to commit capital to long-term holdings unless outstanding opportunities become available, with a preference for either holding cash or investing in short-term holdings that quickly return cash for possible redeployment when available returns are more attractive.
Investors can apply present-value analysis in one of two ways. They can calculate the present-value of a business and use it to place a value on its securities. Alternatively, they can calculate the present-value of the cash flows that security holders will receive: interest and principal payments in the case of bondholders and dividends and estimated future share prices in the case of stockholders.
Calculating the present value of contractual interest and principal payments is the best way to value a bond. Analysis of the underlying business can then help to establish the probability that those cash flows will be received. By contrast, analyzing the cash flows of the underlying business is the best way to value a stock. The only cash flows that investors typically receive from a stock are dividends. The dividend-discount method of valuation, which calculates the present value of a projected stream of future dividend payments, is not a useful tool for valuing equities; for most stocks, dividends constitute only a small fraction of total corporate cash flow and must be projected at least several decades into the future to give a meaningful approximation of business value. Accurately predicting that far ahead is an impossibility.
Once future cash flows are forecast conservatively and an appropriate discount rate is chosen, present value can be calculated. In theory, investors might assign different probabilities to numerous cash flow scenarios, then calculate the expected value of an investment, multiplying the probability of each scenario by its respective present value and then summing these numbers. In practice, given the extreme difficulty of assigning probabilities to numerous forecasts, investors make do with only a few likely scenarios. They must then perform sensitivity analysis in which they evaluate the effect of different cash flow forecasts and different discount rates on present value. If modest changes in assumptions cause a substantial change in net present value, investors would be prudent to exercise caution in employing this method of valuation.
赤字で強調した文章は、過去に何度か取り上げたチャーリー・マンガーの「順列・組み合わせ」と本質的には同じ話題です。不勉強で知らなかったのですが、このような決定木を使ってシナリオを作るやりかたは、ゲーム理論やリスク管理の分野ではよく使われているようですね。

