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2012年12月5日水曜日

若者の車離れはどうなるのか(GMO)

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ジェレミー・グランサムのGMOで、日本の情勢や日本株の見通しを概説したホワイト・ペーパーが公表されていました。このところグランサムは日本株を推していましたが、この文章でも日本企業の見通しは前向きです。

今回はそのなかで登場した日本の「若者の車離れ」について、一節を引用します。(日本語は拙訳)

Japan: After the Quake, After the Floods (GMO)

いくつかのデータによれば、若年層で自家用車の保有率が低下している原因として、低調な所得の伸び率(車を購入できない)、好ましからざる世帯構成(同居している親の車を借りる)、都市化の進展(駐車場不足)などが示されている。このことから、問題なのは車に対する興味ではなく、所得不足によるものであり、景気が上向いて若年層にも所帯を持つのに十分な蓄えができ、郊外へ転居するようになれば、この問題は解決するかもしれない。(p.4)

Some data hint at this, but any weakness in car ownership among younger people may also reflect factors such as weak income growth (cannot buy a car), weak household formation (living at the parents’ house and borrowing the parents’ car), and increased urbanization (no place to park a car). Rather than a lack of enthusiasm for cars, the problem may be a lack of income, solved once the economy picks up and the young have enough money to get married and move to the suburbs.


個人的には、少し楽観的かなという印象を受けました。たとえば、祖父母や両親からの生前贈与で自家用車を購入すると全額が所得控除される、というように税制が変更されれば、少しは消費動向が変わるかもしれませんね。すみません、ただの妄想です。

なお、総務省の「平成21年全国消費実態調査」と平成11年の同調査を比較したところ、たしかに30歳未満や30-39歳の世帯では、単身者および二人以上世帯のいずれも保有率は減少しています。

2012年12月3日月曜日

政府が応援してくれる(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーの世知入門、今回はバイ・アンド・ホールドの核心部分で、税金の話です。(日本語は拙訳)

しかしながら平均してみれば、ビジネスの質にかけるほうが、経営者の質にかけるよりもよいでしょう。どちらをとるかと問われれば、勢いにのっているビジネスをとるべきで、すばらしい経営者のほうではありません。

ですが、ひどいビジネスを立て直そうとする優れた経営者についていくのが実は賢明だったということも、極めて稀には見られます。

効いてくるものとしてもう一点、単純なものですが、税金の影響が挙げられます。資産運用マネージャーか誰かがこのことを話し合っている姿は、ほとんどみたことがありません。さて、30年にわたって年率15%の複利で増えるものを買い、最後の時点で35%の税金を払う場合、税引き後では年率13.3%の利益になります。

一方同じ投資をしても、手にした利益15%から税金35%を毎年払うことになると、15% * 35%を15%から減ずるので、年率9.75%にとどまります。この差は3.5%強ですが、これが30年間もの保有期間にわたって効くので、まさに刮目すべき結果となります。すばらしい企業にずっと投資したままでいる。所得税の仕組みに過ぎないのですが、それゆえに大きな強みとなるのです。

However, averaged out, betting on the quality of a business is better than betting on the quality of management. In other words, if you have to choose one, bet on the business momentum, not the brilliance of the manager.

But, very rarely, you find a manager who's so good that you're wise to follow him into what looks like a mediocre business.

Another very simple effect I very seldom see discussed either by investment managers or anybody else is the effect of taxes. If you're going to buy something that compounds for thirty years at fifteen percent per annum and you pay one thirty-five percent tax at the very end, the way that works out is that after taxes, you keep 13.3 percent per annum.

In contrast, if you bought the same investment but had to pay taxes every year of thirty-five percent out of the fifteen percent that you earned, then your return would be fifteen percent minus thirty-five percent of fifteen percent - or only 9.75 percent per year compounded. So the difference there is over 3.5 percent. And what 3.5 percent does to the numbers over long holding periods like thirty years is truly eye-opening. If you sit on your ass for long, long stretches in great companies, you can get a huge edge from nothing but the way income taxes work.


しかし人生を通じてビジネス上の失策をずっと観察してきましたが、このことは言えます。税金を抑えることばかりに夢中になるのは、とんでもない過ちにつながる典型的な原因のひとつだ、と。税金対策ばかりに心を砕く人がひどい過ちをおかす様子は何度も見てきました。

ウォーレンも私も、個人名義で原油の油井を掘削するようなことはしていません。自分の税金はおさめてきましたし、そうしたあとでも好成績をあげることができました。私から申し上げられるのは、節税商品を勧める人がでてきても、そういうのは買わないことです。

But in terms of business mistakes that I've seen over a long lifetime, I would say that trying to minimize taxes too much is one of the great standard causes of really dumb mistakes. I see terrible mistakes from people being overly motivated by tax considerations.

Warren and I personally don't drill oil wells. We pay our taxes. And we've done pretty well, so far. Anytime somebody offers you a tax shelter from here on in life, my advice would be don't buy it.


すばらしい投資先をいくつかみつけて資金を投じ、ただじっとしている。こうすることで、個人投資家は大きな優位を手にしたことになります。ブローカーに払う手数料は抑えられますし、ろくでもない話を聞かされることもそうありません。さらには国の税制が働いてくれ、複利ベースでみたときの年率を1パーセント、いや2, 3パーセント上乗せしてくれるのです。

利益がでるのだから多額の税金を払うことになったとしても、投資アドバイザーの世話になればずっとうまくやれるだろうし、奮闘してくれるお礼に1パーセント分を払ってもよい、などとお考えですか? なるほど、それはうまくいくといいですね。

There are huge advantages for an individual to get into a position where you make a few great investments and just sit on your ass: You're paying less to brokers. You're listening to less nonsense. And if it works, the governmental tax system gives you an extra one, two, or three percentage points per annum compounded.

And you think that most of you are going to get that much advantage by hiring investment counselors and paying them one percent to run around, incurring a lot of taxes on your behalf? Lots of luck.


この文章の後は引用しませんでしたが、チャーリーは「すばらしい企業であっても、高すぎる買い物はいけません」と注意しています。

2012年12月2日日曜日

2012年の投資をふりかえって(1)失敗編

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今年の株式投資を、何度かにわけて総括します。今回は、損失を確定して資金を完全にひきあげた銘柄についてです。

<投資先企業>
トライステージ(2178) (Yahoo! Japan株価)

当社については、昨年から株式購入に前向きなことを何度か表明していました(過去記事など)。その頃の株価は1,000円前後で、現在も同じ水準です。しかし投資結果は損失確定でおわりました。購入平均単価が960円に対して、売却平均単価は850円前後で、株価が下落する最中に売却しています。

当社の株価に対して「安全余裕が十分にある」と判断し、少しまとまった資金を投じました。しかし継続保有せずに損失を出して資金をひきあげました。このような投資行動に、弁解の余地はありません。自分の意思決定がいかに粗末だったか、ふりかえってみます。

■背景
財務指標のよい企業の株価が下がっていると、なにはともあれ注視するところがあります。当社もその一例で、監視銘柄にあげていたところ、実績PERの低さが目にとまったのがはじまりでした。その後、以下のような理由をふまえて投資することにきめました。

・一株当たりの余剰流動資産が大きかったこと
資産の評価は過去記事で取り上げたとおりです。そのため一時的に業績が悪化しても配当は維持され、大きな株価下落は起こりにくいだろうと考えました。つまり、株価の底値の観点からみて安全余裕があると判断していました。

・現段階での高水準の利益率
当社はTV通販の企画屋ですが、経営陣の前職コネによって広告代理店の扱うCM枠を仕入れるルートを確保しています。業界のことをよくわからないながらも、これはひとつの参入障壁だと捉え、今後も利益率を支えてくれるものと考えました。ただし、これが永続するのかどうかは判断できませんでした。

またマーケットの観点については、インターネット広告が急成長しているのは明らかですが、TV通販は急激に消えるものではないと捉えました。TVを漫然と見る消費者層も依然として残るだろうと想定したからです。ただし、この観点についても事業の中長期的な将来性はうまく思い描けませんでした。

一方、主要なリスクとしては「少数ながら大口顧客があるため、そこを逃すと売上高が大幅(10%)に減少する」ことを想定しました。ただし事業自体の利益率が高いことから、1社を逸失しても致命傷にはならないと判断しました。

■実行した投資
株式の売買時期と平均単価は次の図のようになります。


図に示すように、株を売却したのは株価が下落している時期でした。これは、市場全体が下落している時期と重なります。他の銘柄の株価に魅力がでてきていたので、さらなる下落に備えて、余裕資金をふんだんに用意しておきたいという思いがありました。

そこで保有株式の売却を検討したところ、保有したいという思いがいちばん弱かったのが当社でした。財務面からみた割安度はかなり大きく、いずれ(3-5年後)はそれなりの利益が得られると想定していたのですが、一番足りなかったのは自信をもって当社に投資しつづける心構えでした。他の銘柄は全般的に自分なりに納得し、覚悟をきめているのですが、当社はそこまで至っていませんでした。中途半端で始めたものが中途半端に終わる典型で、事業に関する中長期的な見通しも、まったく出番はありませんでした。

わたしが売却した後も大株主のプロスペクトは買い増しを続け、株価は2011年秋の水準である1,000円近辺まで回復しました。また前年比月次売上も、10月からは回復傾向にあります。プロスペクトのほうが賢明な投資をしていると感じました。

■逆に考えてみると...
株価の動きが逆になって、もし含み益がでていたらどうしただろうか、と考えてみました。上がり幅にもよりますが、少なくとも株数の半分は継続保有していたと思われます。当社のことを納得できていないと書いているのに、利益が出ているといないでは方針が一転することになります。大きな矛盾を抱えているな、と自分自身も感じます。しかし、これが現時点での私の正直な姿です。

■教訓
1. 素晴らしいビジネスだと確信できなければ、半額程度の割安水準でも急いで買い進めないこと。
2. 納得できなかったり、どこまでも付き合う覚悟がもてない企業の株は、最初から買わないこと。

2012年11月30日金曜日

誤判断の心理学(25)ゾンビ的自由が待っている(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによる最後の心理学的傾向です。原文の"Lollapalooza"という見慣れない単語は過去にも何度か登場していますが、語感の軽さをだそうと考え、「とびっきり」という訳をあてています。(日本語は拙訳)

(その25)とびっきりなことにつながる傾向 - ある特定の成果を志向する種々の心理学的傾向が結合することで、極端な結末が生じる傾向

Twenty-Five: Lollapalooza Tendency - The Tendency to Get Extreme Consequences from Confluences of Psychological Tendencies Acting in Favor of a Particular Outcome

私が一度でも紐解いてみた心理学の教科書には、 この傾向を少なくとも何かしらまとまった形でとりあげたものはありませんでした。しかしこれは日常生活ではありふれた傾向で、たとえばミルグラムが得た強烈な実験結果を裏付けています。また一部のカルト宗教でも同じことをやって、大きな成果をおさめています。実践を繰り返して進化するうちに、洗脳対象の信者を同時に説得するには、いろんな心理学的な傾向を使って圧力をかけるのがよいとわかったのです。洗脳対象者の感じ方はそれぞれ異なりますが、パブロフが晩年に行った研究で使われた犬のように、カルトからの圧力を受けることで「ゾンビ的自由が保障された生活」の枠におさまる者もでてきます。実際に、この洗脳現象は「snapping」[ぱちんとはめ込むの意]と呼ばれています。

いったい全体、心理学の教科書を執筆する者がこのことを長きにわたって徹底的に無視してきたのは、なぜでしょうか。物理学や化学の科目をとった新入生に対して、心理学的な傾向同士がいかに結びつき、どんな効果が生まれるのか考えるように指導していないのは、どうしてでしょうか。相互に関連する心理学的傾向を扱うといった複雑さを克服できていないのに、自分の心理学の研究が適切だと考えているのは、いかなるものでしょうか。単純すぎるアルゴリズムに頼ってしまう心理的傾向が、誤った認識につながることを学ぼうとするときに、教授のほうが単純すぎる概念を使うほど皮肉なことがあるでしょうか。

この現象について、私なりに説明してみましょう。おそらくですが、ずいぶん前にお亡くなりになった教授たちは、こんな風に考えていたのではないでしょうか。学内で実施できて、いちどにひとつの心理学的傾向を対象とする、狭い領域にとどまった再現可能な心理学的実験を行うことで、その学問全体が作れるだろうと。そうだとしたら、主題に迫るやりかたを限定したことで、とんでもない過ちをおかしたことになります。まるで物理学において、実験室でできないからという理由で天体物理学を無視し、さらにはあらゆるものの複合的効果も無視するようなものです。初期の心理学の教授たちがこのようなやりかたを選んだのは、どのような心理学的傾向が働いたせいでしょうか。ひとつ考えられるのが「手近なものを買いかぶる傾向」で、これは制御しやすいデータを好むことに根ざしています。制限を加えることはすなわち、「かなづちを手にした人の傾向」の行き過ぎた例を生み出すものです。また別のものとしては、「羨望・嫉妬する傾向」も考えられます。初期の心理学の教授は物理学を正しく理解せず、そのうらやむ様子はある種奇妙な様子を呈していました。このことからも、心理学という学問に羨望や嫉妬という概念を含めないのは良策ではないことがわかるかと思います。

先人に関する歴史的な謎を追究するのは、ここまでとします。

以上で、心理学における合理的な傾向についての手短な私見はおしまいです。

This tendency was not in any of the psychology texts I once examined, at least in any coherent fashion, yet it dominates life. It accounts for the extreme result in the Milgram experiment and the extreme success of some cults that have stumbled through practice evolution into bringing pressure from many psychological tendencies to bear at the same time on conversion targets. The targets vary in susceptibility, like the dogs Pavlov worked with in his old age, but some of the minds that are targeted simply snap into zombiedom under cult pressure. Indeed, that is one cult's name for the conversion phenomenon: snapping.

What are we to make of the extreme ignorance of the psychology textbook writers of yesteryear? How could anyone who had taken a freshman course in physics or chemistry not be driven to consider, above all, how psychological tendencies combine and with what effects? Why would anyone think his study of psychology was adequate without his having endured the complexity involved in dealing with intertwined psychological tendencies? What could be more ironic than professors using oversimplified notions while studying bad cognitive effects grounded in the mind's tendency to use oversimplified algorithms?

I will make a few tentative suggestions. Maybe many of the long-dead professors wanted to create a whole science from one narrow type of repeatable psychology experiment that was conductible in a university setting and that aimed at one psychological tendency at a time. If so, these early psychology professors made a massive error in so restricting their approach to their subject. It would be like physics ignoring (1) astrophysics because it couldn't happen in a physics lab, plus (2) all compound effects. What psychological tendencies could account for early psychology professors adopting an over-restricted approach to their own subject matter? One candidate would be Availability-Misweighing Tendency grounded in a preference for easy-to-control data. And then the restrictions would eventually create an extreme case of man with a hammer tendency. Another candidate might be envy/jealousy Tendency through which early psychology professors displayed some weird form of envy of a physics that was misunderstood. And this possibility tends to demonstrate that leaving envy/jealousy out of academic psychology was never a good idea.

I now quitclaim all these historical mysteries to my betters.

Well, that ends my brief description of psychology logical tendencies.


最後の一言は、あいかわらずのチャーリー節ですね。質疑応答があるので、このシリーズはもう少し続きます。

2012年11月28日水曜日

コモディティーの価格はどうなるか(ジェレミー・グランサム)

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GMOのマネー・マネージャーであるジェレミー・グランサムによるレター(2012年第3四半期)が公開されていました。題名は「ゼロ成長へ向かって」と、景気のよくない内容です。目新しいものはそれほどありませんが、今後のアメリカは低成長が続くだろうと、いくつかの要因から予測しています。労働人口の動態やサービス型経済に関する指摘も印象に残りましたが、主役の話題は資源問題でした。今回は、今後の商品市場に対する彼の見解を引用します。(日本語は拙訳)

On the Road to Zero Growth (GMO)

資源価格はまだ20%は割高だろうと私は確信しています。その背景として、短期的には供給が追いついてきたこと、一方ではその流れの中で賢明にも延期する動きがみられること、また投機筋の動向や、直近では中国の成長が鈍化していること、つまり中期的には年率5,6%といった低成長がみえてきたことが挙げられます。(この件については我が同僚のエドワード・チャンセラーが完全に当たっていましたが、彼の予測が早すぎたか、中国が現実を認めるのが遅すぎたかのどちらかでした)。私としてはこれを乗り切るために、あらゆる商品の価格がこれからさらに20%下落してもいいように、心の準備をしています。これには穀物も含まれますが、4シーズン連続で次も世界規模の作柄不良になるとは、私にはとても想像できません。しかし20%下落した後でも、商品価格は今後10年間で2倍になり、複利計算では年率7%増となるでしょう。これは全世界のGDP成長率よりずっと大きな数字ですし、アメリカや他の先進国の成長と比較すればひどく高いものです。私の見解では、年率で7%増加するということは、コスト面におけるパラダイムシフトになるとみています。

Today, I believe that resource prices probably still have about 20% fat in them, representing short-term supply catch-up, some judicious foot dragging in increasing supply, some speculation, and, more recently, a decline in Chinese growth, which seems very likely to settle onto a materially lower trend in the intermediate term of, say, 5% or 6% a year. (In this my colleague Edward Chancellor appears to have been completely right, although either he was early or the Chinese were slow to admit reality.) To capture this I am mentally allowing for a further decline of 20% in all commodities including grains, where I cannot get my brain around the idea of a fourth consecutive terrible global growing season! However, even after an imputed 20% markdown, the prices will still have doubled in 10 years or compounded at 7% a year. This is far higher than global GDP growth and painfully higher than growth in the U.S. or other developed countries. This 7% a year increase, in my opinion, represents a paradigm shift in costs.


ちなみにGMOが運用している預かり資産は1000億ドル、円換算では8兆円です。