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2012年8月10日金曜日

かっぱの川流れ(チャーリー・マンガー)

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バークシャー・ハサウェイの子会社Wesco Financialの会長はチャーリー・マンガーが務めています。そのチャーリーが書く「株主のみなさんへ」は全体的に事務的な雰囲気の記述が多く、ウォーレン・バフェットとは趣きが違うと個人的には感じていました。古い年度のものも含まれたファイルがScribdにアップロードされているのを最近になって知り、「昔はどうだろうか」と期待して読み始めたところ、それっぽい文章が書かれていました。

今回は、Wescoの1989年度「株主のみなさんへ」からご紹介します。ウォーレンが常々説いている内容と基本的に同じですが、それは彼らが「一卵性双生児」である証拠なのだと思います。(日本語は拙訳)

当社の方針としては、奥義をきわめようとするよりも、わかりきったことを忘れないようにすることで利益をあげるやりかたに従っていきたいと考えています。賢く立ち回ろうとするのではなく、ばかげたことをしないよう一貫して気をつけることで、我々のような長期でみたときに優位な者がどれだけ多くを得てきたでしょうか。これは注目に値することです。「かっぱの川流れ」ということわざには知恵がこめられているに違いありませんね。我々のやりかたでは、退屈だったり、行動を制限するがゆえに不利になる時期がまちがいなくやってきます。しかし、これまでのところは平均的にみればまずまずうまくやってきましたし、これから長期にわたってもおそらくうまくいくでしょう。

Wesco continues to try more to profit from always remembering the obvious than from grasping the esoteric. It is remarkable how much long-term advantage people like us have gotten by trying to be consistently not stupid, instead of trying to be very intelligent. There must be some wisdom in the folk saying: "It's the strong swimmers who drown". Our approach, while it has worked fairly well on average in the past and will probably work fairly well over the long-term future, is bound to encounter periods of dullness and disadvantage as it limits action.


このところ、決算発表の数字が少しでも悪いと株価が暴落する傾向が見られます。売り買いどちらの立場にせよ、賢い立ち回りなのかどうか私にはよくわからないものばかりです。ただし、時には自分でも何かしら判断できるものがあり、そういうときには株式を少しずつ買うようにしています。

2012年8月8日水曜日

脊椎動物はひっくり返った昆虫なのだ(動物学者サンティレール)

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少し前にとりあげた本『ビジュアル版 科学の世界』で(過去記事)、逆に考えることで成果を挙げた科学者が二人登場していたのでご紹介します。

有機化学すなわち炭素の科学に真の突破口が切り開かれたのは、1960年代、ハーヴァード大学の教授でノーベル賞も受賞したイライアス・J・コーリーが、「逆合成解析」という手法を考案したときのことだ。この技術は、化学者が大きくて複雑な分子を小さくて手に入りやすい-そして通常はずっと安価な-出発物質から作り出すのに使える、もっとも強力なツールの1つとなった。
この手法は、合成のターゲットとする分子をジグソーパズルのように考えることでうまくいく。ターゲットから逆に考えることによって、一緒に反応させると触媒や反応物の手引きによって組み合わさり、パズルが完成するような構成要素を探し出せるのだ。(p.152)


フランスの動物学者ジョフロワ・サンティレールは、すべての動物が同じ基本的な体制をもつと考えていた。だが昆虫の場合、主要な神経索は内臓の腹側にあるのに対し、脊椎動物の場合、脊椎は背中側にある。それでもサンティレールはひるまず、このことから脊椎動物は基本的にひっくり返った昆虫なのだと推論した! そんなはずはないように思えるが、この考えも最近の発見によって裏づけられている。(中略)脊椎動物は昆虫をひっくり返したものだというサンティレールの奇抜な推測も、正しいことが立証されている。無脊椎動物ではどちら側が腹になるかをきめているホメオティック遺伝子が、脊椎動物ではどちら側が背になるかを決めているのだ。(p.222)


こうして過去をふりかえってみると、逆に考えることで成功した例はいろいろ見つかるものですね。

2012年8月7日火曜日

投資の世界で生き残る公式(ハワード・マークス)

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ハワード・マークス氏(Howard Marks)というマネー・マネージャーのことを最近知りました。彼が立ち上げて会長を務めているOaktree Capital Managementは、預かり資産5兆円超のオルタナティブ・ファンドです。顧客向けに書いたメモが一般にも公開されており、これが話題となっていたのに目がとまった次第です。

ウォーレン・バフェットも彼の文章を読んでいるようですが、実はそれだけの関係ではありませんでした。本ブログでよくとりあげる『Poor Charlie's Almanack』のWebサイトに同氏の著作『The Most Important Thing』が並んでいたのです。

今回ご紹介するのは、少し前のメモWhat Can We Do For You?からの引用です。なお、Oaktreeの主な投資先はDistressed Debt(「債務不履行債券」あたりが近い訳)などの債券ですが、彼の見識は株式投資にもそのまま通じるものと感じています。(日本語は拙訳)

不確実なことを試みるときには、その先になにがあるのかわからなくても、わからないのにわかっていると考えるのと比べれば、全然悪いことではありません。知らない道を使ってドライブに行くときのことを考えてみてください。地図を調べて、GPSの指示に従い、コースどおりか目印を確かめたり、方角を確かめたりしながら慎重に進むでしょう。一方、よく知っている道であれば、そういう作業は省略するものです。しかし、そう思っていたのに実はよくわかっていない道だったとしたら、どうでしょうか。目的地に着くのはもっと難しくなるでしょう。

In any endeavor involving uncertainty, not knowing what lies ahead isn't nearly as bad as thinking you know if you don't. If you're setting out for a drive and recognize that you don't know the way, you're likely to check a map, follow your GPS, ask directions and drive slowly, watching for indications you've gone off course. But if you're sure you know the way, you're more likely to skip these things, and if it turns out you didn't know, that'll make it much harder to reach your destination.


次は、マーク・トウェインの一文を借りてきています。

未来のことがわかると考える人と、わからないと考える人では、かなり違った行動をとる可能性があります。ここで大切なのは、正しいほうの道を選んで進むことです。マーク・トウェインもこう言っています。「わからないのはたいしたことじゃない。絶対わかっていると思っているのに実はわかっていないほうがやっかいだ」。投資の世界には生き残る公式というものがありますが、これはそこに含まれる要素の一つなのです。

The difference in behavior between those who think they can know the future and those who don't is potentially enormous. It's essential to be on the right side of this choice because, as Mark Twain said, "It ain't what you don't know that gets you into trouble. It's what you know for sure that just ain't so." That's an essential component of the formula for investment survival.


最後に、ハワード・マークスが顧客にむけて「できませんよ」と宣言している箇所です。

世界経済がどうなるのか、わかりません。
市場はいつどれだけ上がるのか下がるのか、わかりません。
どの市場あるいは市場の一部がいちばん成績をあげるのか、わかりません。
市場でどの証券が成績上位になるのか、わかりません。

we can't know what the economics of the world will do,
we can't know whether markets will go up or down, and by how much and when,
we can't know which market or sub-market will do best, and
we can't know which securities in a given market will be the top performers.


はっきりとものが言える、気持ちのいい5兆円のボスですね。

2012年8月5日日曜日

諸戸家遺訓(日本有数の大地主 諸戸清六)

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以前とりあげた『商家の家訓』から再び引用します(過去記事)。今回は明治維新前後に活躍した諸戸清六氏による家訓です。同氏は父親の残した莫大な借金2000両をかかえての出発でした。「時は金なり」を信条として「人が10時間働けば自分は15時間、人が3杯飯を食べれば自分は1杯で辛抱する、人が不用だと捨てたものは自分が利用する」という生きかたで財を成しました。明治21年(当時42歳)のころには、東京の恵比寿から渋谷、駒場に至る住宅地30万坪を買い捲り、一時は渋谷から世田谷まで、他人の地所を踏まずに行けたとあります。

第1条「時は金なり」
時は金なりである。時間は有効に使うべきである、決して忘れてはならない。

第3条「銭のない顔」
いつもお金がないという顔をすべきである。お金があるという顔をしていると、余分な出費が多くなる。仮に、お金がないという顔をしていて人様に笑われることがあっても、後々成功した暁には、流石だと褒められるものである。

第4条「質素」
派手な暮らしぶりはよくない。できるだけ質素な生活をすべきである。着物は垢が付きにくく、すぐに洗える木綿の服で十分であるので、無駄なことはするな。

第5条「人を選ぶ」
自分の財産を減らさないようにするには、平素の付き合いをする人は誰でもよいというものではない。質素倹約をして地道に生活をしている人がよいので、そのような人を交際相手に選ぶべきである。

第9条「知恵を得る」
いろんな人に会って、その人々から多くのことを教えてもらうように心掛けるべきである。

第10条「馬鹿になる」
賢い人は、いつでも馬鹿になれる人である。このような人になれば、頭を下げて色々な人に質問もでき、商売もできるのである。気位が高いだけの人間になってはいけない。

第13条「2年先を見よ」
2年先の予測、見極めができるようにすべきである。また、たまたま儲かったお金は労働の対価でないので、他人のお金を預かったのと同じことであると、心得るべきである。(p.271)


質素倹約を旨としていますが、かといって商機は逃さなかったようです。商用で汽車に乗るときは、必ず1等か2等の切符を購入し、3等には乗らなかったとあります。当人いわく「1等や2等の乗客は学識があり、実力のある人が乗り合わせている。このような人と乗り合わせるのは、商機が多く、自分のためになる。いたずらに少しのお金をケチって、チャンスを失うことは大きな利益を失うことになり、大きな損失である」としています。

2012年8月3日金曜日

シルバーの需要動向(2011年)

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最近は値動きが小さいかあまり注目されていないシルバー(銀)ですが、その動向は適宜追いかけるようにしています。シルバーの著名なアナリストであるテッド・バトラーによると、シルバーの相場はごく少数のJPモルガン・チェースのような大銀行によって操作されているとされています。そのため短期的な価格を推し量りたければ、それらの動向を考慮する必要があるかもしれません。一方、中長期の値動きとなると、他の商品と同様に需給の力関係がきいてくるようです。今回は、その需要動向に関する話題です。

シルバーの生産者等による業界団体The Silver Instituteが、2011年度の概況を最近公開しました(World Silver Survey 2012 A Summary)。それによれば、シルバーの加工用需要(つまり純投資用を除いたもの)は前年比で1.5%減になったとのことです。


今回同書から引用するのは、比率の最も大きい産業向け需要に関する一節です。(日本語は拙訳)

産業用途における需要は、通年で2.7%減の48,650万オンスとなった。第4四半期になって想定以上に需要が後退したため、第1四半期での増加分は帳消しになった。2011年末にみられた需要後退の原因は、主として最終ユーザーである需要家が欧州財政危機による[ユーロ]離脱を懸念して発注を控えたことによるものだった。また一部の用途では価格高騰に伴う節減や他材料による代替もいくぶんみられ、需要減の一因となった。セクター別に見ると、太陽光関連の減少がもっとも目を引いた。ただし潜在的な需要が減少したことよりも、在庫過剰の問題が大きかった。アメリカにおける昨年の需要減の大半がこれに起因するものだったが、絶対額ベースでは日本での減少が大きかった。とくに第4四半期にはエンドユーザーからの受注減がひどかった。絶対額の変動が3番めに大きかったのは中国だが、これは5%にのぼる増加であり、過去最高を記録した。

A largely unexpected slump in industrial demand during the fourth quarter outweighed strong first half gains, generating a full year loss of 2.7% to 486.5 Moz (15,132 t). The weakness seen late in 2011 was chiefly the result of industrial end-users slashing orders due to fears over the fallout from the Eurozone’s sovereign debt crisis. There was also a degree of pressure on offtake from price-led thrifting and substitution in some areas of industrial use. On a sectoral basis, the main feature last year was a fall in photovoltaic demand, which resulted from inventory mismatches, rather than a drop in underlying demand. That also explains much of US losses last year, although its absolute fall was just eclipsed by Japan, which suffered more from the fourth quarter drop in end-user orders. The third largest absolute change related to China but in this instance it was a rise of nearly 5% to a new record.

蛇足になりますが、個人的な見解としては、エネルギー消費が増大しつつも二酸化炭素の排出を抑えることが強く要求される時代においては、シルバーの有用性が下がることはないと考えています。その上で価格がどこまで許容できるのかは、使用用途によって異なってくると捉えています。