IQ versus RQ - Differentiating Smarts from Decision-Making Skills [PDF] (Credit Suisse)
はじめに
トロント大学発達・応用心理学部のキース・スタノヴィッチ教授は、知能指数(IO)と合理性指数(RQ)を区別してとらえている。一般に、心理学者は特別なテストを用いてIQを測定する。ウェクスラー成人知能検査のそのひとつで、SAT(大学進学適性試験)のような標準化されたテストにおける獲得点数と相関性が高い。
IQはある種の現実を測定するし、ある種の結果とも関連する。たとえばSATの数学のテストで成績が上位0.1%に入る13歳の子供は、上位0.9%-1.0%の成績をとる子供とくらべると、数学や科学の分野で博士号の学位を取得できる可能性が18倍だった。
一方、RQは合理的に思考する能力を示すものであり、結果的に良い判断をくだせるかどうかを決める。一般的に、知能と合理性は軌を共にすると考えられている。しかしスタノヴィッチ教授の研究が示すところでは、IQとRQの相関係数は比較的小さく、0.2から0.35である。知能検査は、思慮ある判断をくだす思考能力をとらえるようには設計されていないことになる。
不合理な行動が高くつく状況において、ほぼすべての社会が知能にばかり目を向けていることを、スタノヴィッチ教授は遺憾に感じている。しかし注意していれば、合理的思考の印をみつけられるものだ。スタノヴィッチ教授が挙げる例としては、順応的な行動、効果的な行動抑制、実際的な目標順序設定、熟考、証拠の適切な扱い、などがある。
しかしSATの点数は、そういった特質のいずれに対してもほとんど光を当ててくれない。だから自分や他人の決断を評価するには、まずはじめにIQとRQを別物としてみなすことが大切になる。バークシャー・ハサウェイのCEO兼会長を務めるウォーレン・バフェットは、IQのことをエンジンの馬力にたとえ、RQのことをエンジンがうみだす出力にたとえている。だれもが知っているように、IQは高いがRQは平均かそれ以下という人がいるものだ。この人の場合は「効率が悪い」と言うことができる。その一方で、まばゆいほどのIQは備わっていないが、一貫して適切な判断をくだす人もいる。この人は「効率が高い」ことになる。
ウォーレン・バフェットの場合、馬力と出力のどちらもとても大きい。しかし成功した理由を問われると、「大きな違いを生み出したのはIQではなくてRQのほうだった」と彼は強調する。
「わたしの場合、ここまできたのはすごく単純なことでした。IQではありません。これを聞いてきっと喜ぶかと思いますが、重要だったのは合理性のほうです。IQや才能は、モーターでいうところの馬力を表現するものと考えています。しかし出力は、つまりそのモーターが生み出す効率は、合理性によって決まります。400馬力のモーターで始めても100馬力分の出力しか得られない人はたくさんいます。それならば、200馬力のモーターでもその全部が出力になるほうがずっといいです」(参考記事)
スタノヴィッチ教授による心理学の研究は、バフェットの見解を支持している。RQを測定する包括的なテストはまだ存在しない。教授は目下開発中だが、我々は較正(キャリブレーション)を使っていこうと考えている。これは合理性における重要な側面のひとつである。本研究の一部でもあるように、我々は何千名もの較正を計測した。おもしろいことに、あなたもこの演習に参加することができる。そして、他人とどう違うのかくらべることができるのだ。 (p.2)
Introduction
Keith Stanovich, a professor of applied psychology at the University of Toronto, distinguishes between intelligence quotient (IQ) and rationality quotient (RQ). Psychologists measure IQ through specific tests, including the Wechsler Adult Intelligence Scale, and it correlates highly with standardized tests such as the SAT.
IQ measures something real, and it is associated with certain outcomes. For example, thirteen-year-old children who scored in the top decile of the top percent (99.9th percentile) on the math section of the SAT were eighteen times more likely to earn a doctorate degree in math or science than children who scored in the bottom decile of the top percent (99.1st percentile).
RQ is the ability to think rationally and, as a consequence, to make good decisions. Whereas we generally think of intelligence and rationality as going together, Stanovich's work shows that the correlation coefficient between IQ and RQ is relatively low at .20 to .35. IQ tests are not designed to capture the thinking that leads to judicious decisions.
Stanovich laments that almost all societies are focused on intelligence when the costs of irrational behavior are so high. But you can pick out the signatures of rational thinking if you are alert to them. According to Stanovich, they include adaptive behavioral acts, efficient behavioral regulation, sensible goal prioritization, reflectivity, and the proper treatment of evidence.
Your SAT scores shed little light on any of these qualities. So the first lesson in assessing your own decisions or those of others is to consider IQ and RQ separately. Warren Buffett, chairman and chief executive officer (CEO) of Berkshire Hathaway, equates IQ to the horsepower of an engine and RQ to the output. We all know people who are high on IQ but average or low on RQ. Their efficiency is poor. There are others without dazzling IQs but who consistently make sound decisions. They are highly efficient.
Warren Buffett has plenty of horsepower and output. But when asked about his success, Buffett emphasized that it was RQ that made the big difference, not IQ:
How I got here is pretty simple in my case. It's not IQ, I'm sure you'll be glad to hear. The big thing is rationality. I always look at IQ and talent as representing the horsepower of the motor, but that the output - the efficiency with which that motor works - depends on rationality. A lot of people start out with 400-horsepower motors but only get a hundred horsepower of output. It's way better to have a 200-horsepower motor and get it all into output.
Stanovich's psychological research supports Buffett's observation. While there is not yet a comprehensive test to measure RQ - Stanovich is working on it - we will look at calibration, one of the important facets of rationality. As part of this research, we measured the calibration of thousands of people. And part of the fun is that you, too, can participate in the exercise and see how you stack up versus others.
2 件のコメント:
いつも楽しく拝見させていただいています。
合理的に生きるというのは日本人には不得手に見えます。
株価では合理指数はPBRに思えますが。
koma10さん、はじめまして。
本ブログをお読みくださり、またコメントも頂き、どうもありがとうございます。
PBRの話題について、短いですが当方からも書き記します。
「株価では合理指数はPBRに思える」とのご指摘は、一面ではそのとおりだと思います。
市場の合理性を判断する指標としてPBRを注視するのは、企業買収による解決や経営権獲得が期待できる環境や立場ではふさわしいと思います。また流動性の高い資産を扱う企業を評価する場合も、ある程度はそうだと思います。
しかしそうでない事業会社の場合、「PBR = 0倍」を究極的な安全余裕とみなすのであれば別ですが、知りたいのはその逆で、「現時点での企業価値を合理的に判断した結果」です。貸借対照表上の数字では判断しきれない価値の割合が大きくなるほど、市場の合理性を判断する指標としてのPBRの役割は小さくなると思います。
[参考記事] 株式を判断するのに使う指標(ウォーレン・バフェット)
http://betseldom.blogspot.jp/2013/06/mf-08.html
またPBRが1倍未満だからと言って市場が非合理だと断定することもできません。
[参考記事] 2013年度バフェットからの手紙(付録) - 内部留保について
http://betseldom.blogspot.jp/2014/04/mf-202013.html
月並みな表現になりますが、「株価の合理性を判断する材料のひとつとしてPBRを使う」というのが、PBRに対する個人的な見解です。
koma10さんのご見解は諸々をご承知の上で書かれたと存じますが、自分の考えを整理する意味で書きました。
またよろしくお願い致します。以上になります。
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