わたしは、QEは有効的でないと一貫して主張してきました。失業を構成している要素と闘うには適していないからです。労働力人口の中核である25歳から54歳の雇用者数は、ピークだった2007年12月の水準には回復していません。雇用者全体でみると190万人増加して1億5,590万人になったものの、このグループはまだ1億480万人から390万人縮小した状況です。そして16歳から19歳までのグループは、140万人減少して560万人になっています。高卒の学歴しか持たない人たちの雇用が220万人以上減っていることに表れているように、2007年12月とくらべると教育やスキル不足が存在していることは明らかです。安易な金融緩和では、教育面の不足を治すことはできないでしょう。相対的な位置づけが改善された2つのグループは、55歳以上のグループが2,700万人を基準に690万人増、そしてカレッジ卒が320万人増、学士や修士号の保有者が150万人増で、それらの合計で3,920万人です。年配の雇用者は、ほとんどが仕事を続けている模様です。縮小した金融面での環境によるものですが、その原因の一部はFRBのQE及びZIRP政策の結果が影響しています。
QEから本当に恩恵を受けたのは、株式市場と債券市場でした。資産価値を膨張させるというバーナンキ議長の戦略は、そもそもは経済自体を刺激する手段だったのですが、概して失敗に終わりました。加えて、FRBが目標にしたインフレ率2%のほうも達成できていません。しかし、ウォール街における資産価格を高騰させるという点では成功しました。FRBのゼロ金利政策は、リスクを取る幅を広げるように促したわけです。というのも、「0%付近の金利に資金を投じつづけることはできない」とするのが一般的な見解だからです。しかし、そのような信念はまちがっています。流動性を保持することの機会費用は、配当利回りの平均が2%超程度の現状からすれば、かつてないほど小さいからです。
殊にこの2年間、株式市場は最高にすばらしい場所でした。しかしながら、この期間の市場における全リターンのうちの約60%が、PERが上昇したおかげでした。S&P500銘柄の売上高増加率は平均で2.5%から3%の間だったものの、利益率はわずかの改善にとどまっています。対照的に1株当たり利益の成長率は、積極的な自社株買いのおかげで5%以上に達しています。ここでみなさんに警告しておきます。自社株買いは懐疑的にみるべきです。というのも、企業が自社株買いを実行するのは株式市場が頂点の時期であり、どん底に来ると打ち切ってしまうという、昔からの歴史があるからです。これらのものが、株式市場を継続して上昇させる要素になると思いますか。金融政策によって金融市場が操作され、それと相まって企業が財務上のバランスシートを工作するような時期には、わたしはそうではないと考えます。しかしこのゲームはつづいています。「現金は何も生み出さないから、リスク・オンで売買する以外にない」というのが、世間の信じる総意だからです。
逆張り専門のわたしの予想としては、株式市場からの平均リターンが5%未満、もっと言えば3%に近い期間が、今後しばらくはつづくと思います。繰り返しますが、流動性を確保しておくことの損失は、元本を損なうリスクや確率から考えると大きくはありません。ここで思い出されるのが、ベン・グレアムが1929年の株式市場を解釈して記した文章です。「もし1925年の時点で株を売っていれば、残り半分の上昇を逃したことになった。しかしながら、1929年から1932年の下落はきわめて厳しかったため、下落分を回復するには20年間近く待たねばならなかっただろう」。市場の頂点に参加した人は、ダウの数字を取り戻すまでに25年近くかかりました。より近年の例では、ナスダック指数は2000年に付けた5,043ポイントをいまだに回復していません。
ひとつ付け加えますと、わたしがスクリーニングしているバリュー株の投資候補には、現在27銘柄しか挙げられていません。これは過去最低水準の数字です。過去の例とくらべてみますと、2007年6月には35件、そして1998年3月と2004年1月には47件が候補に挙げられていました。このスクリーニングは中小型株を対象にしているもので、この市場セグメントが非常に割高であることを示しています。大型株は安いようですが、さきほどお話しした金融工学に関するわたしの見解をどうぞお忘れなく。その上、低金利や低い労働コストが企業の利益率上昇の主要な要素となってきました。この潮流は今後も継続できるでしょうか。金利は史上最低近辺にあり、労務コストも1948年来の国民所得でみると最低水準にあります。ですから、継続できないとわたしは思います。警戒することが無駄にはならない、そう思います。
I've consistently argued that QE would be ineffective because it is ill-suited to fight the structural elements of unemployment. The heartland of the workforce, those workers between the ages of 25 and 54, has not recovered to its December 2007 peak level. This group is still down by 3.9 million workers from 104.8 million, while the total workforce has increased by 1.9 million to 155.9 million. Additionally, the group between 16 and 19 has declined by 1.4 million to 5.6 million. What is obvious is there is an educational and skills deficit that is reflected by over 2.2 million fewer workers working that have only a high-school diploma or less, when compared to December 2007. No amount of easy money will cure an educational deficit. Two groups that have improved their relative positions are those over 55, up by 6.9 million on a base of 27 million, and college graduates, bachelor and master degrees, up by 3.2 million and 1.5 million, respectively, on a combined total of 39.2 million. The older workers most likely continue working because of their diminished financial circumstances that is partially a function the Fed's QE/ZIRP policies.
The real beneficiaries of QE have been in the stock and bond markets. Chairman Bernanke's strategy of inflating asset values, as a means of stimulating the underlying economy, has generally failed. Additionally, the Fed's goal of a 2% inflation rate has also not been met. However, it has been successful in creating asset price inflation on Wall Street. Its zero rate policy has encouraged enhanced risk taking since the general consensus is that one cannot keep money invested at a near zero rate. This is a mistaken belief since the opportunity cost of holding liquidity is among the lowest ever, when compared to dividend yields averaging just over 2%.
The stock market has been a fabulous place to be, particularly the past two years. However, approximately 60% of the market's total return for this period has been a function of PE expansion. Profit margins have only improved slightly while top line revenue growth for the S&P500 has averaged between 2.5% and 3%. In contrast, earnings' per share growth, benefitting from aggressive corporate share buybacks, has been above 5%. I warn you that share buy backs should be viewed skeptically since corporations have a long history of implementing them at stock market peaks while they are then terminated at troughs. Are these the components of a sustainable stock market rise? I think not, when it is driven by monetary policy manipulation of financial markets in conjunction with corporate financial balance sheet engineering. However, this game goes on since the consensus believes there is no alternative to the risk-on trade because cash earns nothing.
As a dedicated contrarian, I anticipate that prospective stock market returns should average less than 5% and more likely closer to 3% for the foreseeable future. Again, the penalties for holding liquidity are not that substantial when compared to the risk and likelihood of principal loss. This brings to mind the observation that Ben Graham made of the 1929 stock market. Had one sold stocks in 1925, one would have missed the other half of the market's rise; however, between 1929 and 1932, the decline was so severe that one would have to wait nearly 20 years to regain the index's point loss. For those who stayed in to the market peak, it would take nearly 25 years to recoup the loss in Dow points. On a more current basis, the NASDAQ has not yet recovered to its 2000 peak of 5,043.
As a side note, my value stock screen is within one of its all-time low with 27 qualifiers. For comparison; in June 2007 35 passed, while in March 1998 and January 2004 47 qualified. This is screen I use for the small/mid-cap sector so it signifies this is a very rich market segment. Though large cap stocks appear cheaper, my previous comments about financial engineering should be kept in mind. Furthermore, lower interest and labor costs have been key elements in corporate profit margin improvement. Are these sustainable trends? With interest rates near record lows and labor compensation at the lowest level of national income since 1948, I think not. Caution would appear to be warranted.
2014年12月26日金曜日
ネバダ州CFA協会での講演(7)自社株買いを疑え(ボブ・ロドリゲス)
マネー・マネージャーのボブ・ロドリゲスが10月におこなった講演の7回目です。もう1回つづきます。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
登録:
コメントの投稿 (Atom)
4 件のコメント:
お久しぶりです。
ボブ・ロドリゲスの今後の株式相場の展望として「逆張り専門のわたしの予想としては、株式市場からの平均リターンが5%未満、もっと言えば3%に近い期間が、今後しばらくはつづくと思います。」とありますが、私も同意見です。
名目GDPの成長率をはるかに上回るここ数年の米国株価上昇率を支えてきたのは、金利の低下と企業の税引き後利益の対GDP比の上昇であり、株価が今後も上昇し、投資家がさらに利益を得るためには、金利のさらなる低下と税引き後利益の対GDP比のさらなる上昇が起こらなければならないと考えます。
この条件を達成することは、史上最低の金利と今後の利上げ観測及び過去平均(6~7%)を大きく上回る現在の税引き後企業利益の対GDP比(現在は約11%)を考えると困難であるどころが、この水準を維持することすら厳しいように思えます。
また、米国の株式市場時価総額対名目GDP比を見ても直近では129%となっており、これはITバブルの頃の1998年の数値を上回るものであるため、相場は過熱しているように思われます。
金利、企業の税引き後利益の対GDP比、株式市場時価総額対名目GDP比の点から見ると、今後についても過去数年のような株価上昇を期待するのは愚かなように思います。
ブロンコさん、こんにちは。
いつものように貴重なご意見を簡潔明瞭にご説明頂き、どうもありがとうございます。特に「この水準を維持することすら厳しい」というご見解は、大いに参考にさせて頂きます。
バリュー志向のマネージャーが苦戦しはじめるのは、全体的にはそろそろ転換点が近づいてきた兆しのひとつだと個人的には考えています。ただし個々のセクターや企業をみれば、機会が提供されているのも現状だと思います。その意味で、ブロンコさんが比較対象としてあげられた1998年とどこか似た局面のようにも感じられます。
どうもありがとうございました。またよろしくお願いします。
それでは失礼致します。
「バリュー志向のマネージャーが苦戦しはじめる」とありますが、バークシャーのトッド・コームズ、テッド・ウェシュラーも今年はS&P500を下回る成績のようですし、ボブ・ロドリゲスも海洋掘削請負業者にかなり投資しているようですから今回の原油価格の下落でかなりの損失が出ているかと思われます。
来年もバリュー投資家に厳しい年になるのでしょうか。それともチャンスとなるような大きな下げがやってくるのでしょうか。物事には多くの不確実性が伴うので将来のことは予測不可能ですが・・・「運は準備を怠らない者に味方する」の言葉を信じてチャンスに備えたいと思います。
ブロンコさん、返信が遅くなってすみませんでした。今年もよろしくお願いします。
ボブ・ロドリゲスのFPAが掘削リグ業界に投資している件は、わたしも注視しています。投資候補として検討中の企業が、たまたま彼らの保有銘柄だったことも影響しています。リグに限らず、今年は原油業界をきちんとみていきたいと考えています。
トッドとテッドの成績は知りませんでした。ありがとうございました。
「運は準備を怠らない者に味方する」、ブロンコさんのおっしゃるとおりだと思います。それ以外のうまい言葉が見つかりません。
またよろしくお願い致します。
コメントを投稿