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2013年9月10日火曜日

投資というプロセスにおける決定的な点(ウォーレン・バフェット)

ウォーレン・バフェットが1994年にネブラスカ大学でおこなった講演その7です。前回と同じように有名な話題がつづきますが、講演全体の文脈の一部としてとらえれば、また違う印象でうけとめられるかと思います。(日本語は拙訳)

<質問者> 将来を占うとしたら、これから数年間はどのセクターの株に着目していきますか。どういった種類の株が流行ると思いますか。

<ウォーレン> ずいぶん学術的な質問ですね。少しばかり仮想的なところがありますね。

<質問者> 1日をどのように過ごされているのですか。

<ウォーレン> 核心をついてきますね。そうですね、文章を読むのに大量の時間をあてています。最低でも6時間ですが、まあそれ以上でしょう。そのほかに、1,2時間は電話で話します。あとは考えています。そんなところでしょうか。バークシャーには会議というものがありません。したことがないのです。全国にビジネスを展開しているので従業員は約2万名になっていますが、[子会社の]マネージャーとの会議に出たのはこの20数年で一度だけです。健康保険の話題をしたきりです。ですが、彼らがオマハに来たことはありません。プレゼンもしないのでプロジェクターなどは一切不要です。取締役会は1年間に一度、年次株主総会の直後にやります。昼食をとりながらで、それでおわりです。ずばり言いますと、会議がきらいなのです。これまで自分が楽しめるようなものごとを築いてきました。たくさん読むのが好きですし、いろいろ考えることもそうです。自分でビジネスを大きくしたり、ビジネスを始めるのでしたら、自分が楽しめないものを築き上げるのは、わたしからすればなにかおかしい感じがします。絵を描くのと同じです。完成したときに作品をながめて、よろこびを感じるような絵を描くべきですね。

さて、この午後に何を買うべきかという最初の質問にはお答えしませんでした。というのは、どうすればいいのかよくわからないからです。株式市場がどうなるのか、ある銘柄の株価が近いうちにどうなるかは、わたしにはまったくわかりません。わたしたちは、株式を事業の一部分とみなして保有するようにしています。これは、投資というプロセスにおける決定的な点だと考えています。株式のことをただの銘柄コードと考えたり、単に値段が上がったり下がったりするものなどと考えず、自分が所有する事業だと考えるようにしてください。[ネブラスカ大学のある街]リンカーンでビジネスを買う決断をするかのように考えるのです。クリーニング店や食料雑貨をあつかう小売店などを買おうとなれば、買った事業を明日売ろうかとか来週売ろうかなどとは、ふつうは考えないものです。そうではなく、長期的にみて良い事業なのかどうか検討するでしょう。それがわたしたちが実践していることです。ですからバークシャーのポートフォリオには、わたしたちが所有したいと願うたぐいの事業がならんでいるのがご覧いただけるかと思います。

最大の保有銘柄はコカ・コーラですが、ジレットにも大きく投資しています。その2社は、それぞれの業界でもっとも支配的な位置にある企業です。また変化が激しくない企業でもあります。その世界が急速に変化するようなものには投資したいとは考えていません。変化をうまく見極めたり、こちらの先生よりもうまくやれるとは思えないからです。ですから本当に買いたいと思っているのは、すごく安定していて非常に良好な経済性を有していけるものです。コカ・コーラ社は全世界の清涼飲料水の47%を販売しています。世界中で1日に飲まれる量は、1杯8オンス[=約250ml]換算で7億5,000万杯になります。もし製品の値段を1ペニー[=0.01ドル]値上げできれば、税引前利益が25億ドル増えることになります。わたしが理解できるのはこういうことです。またジレットですが、この会社もすばらしいです。世界中のひげそり用かみそりの替え刃を、ドル換算にして60%以上供給しています。夜になって寝床に入ると、こう考えます。わたしが寝ている間に何十億人という男性の顔にだまっていてもひげが伸びてくるのだなと。それこそ、ぐっすり眠りにつけるわけです。

Q. If you could look in your crystal ball, what kind of sector stocks would you look into in the next few years? What kind of stocks do you think will boom?

A. That's an academic question if I ever heard one. Just a little theoretical.

Q. What exactly do you do all day?

A. Getting right to the core here, aren't you? I spend an inordinate amount of time reading. I probably read at least six hours a day, maybe more. And I spend an hour or two on the telephone. And I think. That's about it. We have no meetings at Berkshire. We've never had. We have businesses around the country; we have some 20,000 employees, but we've only had one meeting of our managers in the twenty-some years I've been there, to talk about health care - one time. But, they never come to Omaha. We never have presentations. We don't have a slide projector. We don't do any of that sort of thing. Our board of directors meets once a year, right after the annual meeting. We have lunch and that's it, because I hate meetings, frankly. I have created something that I enjoy: I happen to enjoy reading a lot, and I happen to enjoy thinking about things. It is a little crazy, it seems to me, it you are building a business and creating a business, not to create something you are going to enjoy when you get through. It's like painting a painting. I mean, you ought to paint something you are going to enjoy looking at when you get through.

Now, I know I'm avoiding your first question about what I should buy this afternoon. I don't think much about that. I don't think at all about what the stack market will do or what given stocks will do in the very short term. We do try to own, and to look at stocks, as pieces of businesses. And, that is crucial in my view to the investing process; that is, to not think about a stock as a little ticker symbol or something that goes up or down, or something of the sort, but to think about the business that you own.... Some way if you were deciding on a business to buy in Lincoln. You might think about buying a dry cleaning store or a grocery store or whatever. You wouldn't think about what this business is going to be selling for tomorrow or next week or anything. You would think about whether it's going be a good business over a long period of time. And that's what we try and do. So, if you look at the portfolio of Berkshire, you will see the kind of businesses that we like to own.

Our biggest single holding is Coca-Cola. We own a lot of Gillette. Those are two of the most dominant companies in the world in their field, And they are also companies that are not subject to a lot of change. We don't want to own things where the world is going to change rapidly because I don't think I can see change that well or any better than the next fellow. So, I really want something that I think is going to be quite stable, that has very good economics going for it. Coca-Cola sells 47% at all the soft drinks in the world. That is seven hundred and fifty million eight-ounce servings a day around the world. That means if you increase the price of Coke one penny, you would add two and a half billion dollars pre-tax to the earnings. So, that's the kind of thing I can figure out. And, Gillette, I mean Gillette is marvelous. Gillette supplies over 60% of the dollar value of razor blades in the world. When I go to bed at night and think of all those billions of males sitting there with hair growing on their faces while I sleep, that can put you to sleep very comfortably.


本ブログを始めて3年目に入りました。いつもお読みになってくださる方にはお礼申し上げます。これからもよろしくお願い致します。

8 件のコメント:

is さんのコメント...

== No title ==
今回も金言ばかりで、早速お気に入りに入れました。
私はインターネット上で感銘を受けた記事を個別にブックマークにいれているのですが、
いつのまにかbetseldomさんのページで溢れてしまっています(笑)
相場が乱高下すると脳内ではついつい一喜一憂してしまうのですが、
そんな時にもグレアム先生や、ウォーレン、チャーリーの言葉を読み返して心を落ち着かさねばなりませんね。
??周年、おめでとうございます!
一ファンとして本当に楽しみにしております。今後ともよろしおくお願い申し上げます。

投資男 さんのコメント...

== No title ==
「夜になって寝床に入ると、こう考えます。わたしが寝ている間に何十億人という男性の顔にだまっていてもひげが伸びてくるのだなと」
私も髭剃りはジレット使っています。やっぱり買い続けますからね。
そんな素晴らしい企業の一部を割安で取得したいものです。
betseldomさん
ブログ開設から3年目おめでとうございます!
色々と為になる内容ばかりでありがたいです。
??話題に触発されて、関連した本も結構読みました)
ブログも投資も末永く、楽しくやっていきたいものですね!!
これからも[太字]価値のある[/太字]話題期待しております!!

betseldom さんのコメント...

== isさんへ ==
isさん、こんにちは。
いつもお越しくださって、どうもありがとうございます。賢明なる先人の言葉は、苦しい時には支えになり、そうでないときには戒めとしてはたらいてくれますね。
「相場が乱高下すると脳内ではついつい一喜一憂」というのは「ファスト」な反応ですから、ごく自然なことだと思います。それを背後からながめる「スロー」なご自分がいるのでしたら、これからもずっと成功をおさめられるのではないでしょうか。
コメントをいただきまして、いつもはげみになります。ありがとうございました。
それでは失礼します。

betseldom さんのコメント...

== 投資男さんへ ==
投資男さん、こんにちは。コメントをありがとうございます。
わたしは電気シェーバー(フィリップス社製)を使ってきたので、T字かみそりの心地よさを理解できておりません。そもそも回転刃を交換してから15年ぐらいになるので、きちんと剃れているのか、はなはだ疑問ではあります。
投資男さんの書かれる文章は、いつも楽しみに拝見しております。読後の印象を率直に語ってくださっていて、わたしに限らず、いろんな方が参考にされていることと思います。なお『国富論』は上巻を読んで休んでしまいましたが、年内にはつづきを読むつもりです。
今後とも、どうぞよろしくお願いします。それでは失礼します。

ブロンコ さんのコメント...

== 3周年おめでとうございます。 ==
ブログ3周年おめでとうございます。
いつも大変勉強させていただいています。このブログを通じてチャーリー・マンガーの叡智に触れることができるので大変ありがたく思います。
人間には恩返しをしたくなる習性がありますが、その恩返しをする機会もなく申し訳ないと感じるところです。(ブログを運営するには力不足の私です。)
今後も素晴らしいお話を聞かせていただけるのを楽しみにしています。

betseldom さんのコメント...

== ブロンコさんへ ==
ブロンコさん、こんにちは。
虎の威を借りる身としては過分なお言葉をいただき、恐縮するばかりです。
ブロンコさんからコメントをいただいたおかげで個人的に大きく感謝している点は、自分のポートフォリオに対する批判の視点を持てたことです。具体的には、任天堂と内外トランスラインについてです。何もご指摘を受けなければ、漫然と保有するだけだったかもしれませんが、ブロンコさんのおかげで、折にふれて冷静な第三者の視点を持てるようになりました。現在は両社とも継続保有の段階ですが、今後の市場動向を通じて、その機会費用を合理的に判断していきたいと考えております。
これからもどうぞよろしくお願いします。
それでは失礼致します。

ブロンコ さんのコメント...

== No title ==
任天堂は市況関連の企業ではないにもかかわらずその命運をスマートフォンやタブレットPCといった外部要因に握られているのが気がかりですね。
ファミコンやスーパーファミコン時代の圧倒的地位に対して現在の任天堂はテクノロジーの進歩に足を引っ張られているような観がありますがいかがでしょうか。
マイクロソフトについてもハード・ソフトの垂直統合という最近の戦略がアップルの戦略へのすり寄りみたいでどうなのかと感じています。隣の芝生が青く見えたバルマーがうちにはまだしっかりとしたキャッシュフローがあるから他社の成功を真似してみてうまくいったら儲けもの、失敗したら次考えようくらいの意識で経営に取り組んでいるのでは?と感じたことが多々あります。
どちらの企業も私には”難しすぎる”の箱に入る部類です。

betseldom さんのコメント...

== 任天堂とマイクロソフト ==
ブロンコさん、こんにちは。
ありがたいコメントを早速ありがとうございます。十分な考えではないのですが、当方の見解を述べさせていただきます。
任天堂についてはご指摘のように、テクノロジーを活用するのに長けた競合が相対的に増えたと感じています。当社の強みは「枯れた技術の水平思考」で、そこから一点突破で市場を席巻してきました。しかし現在は、アイデアやタイミングという点でむずかしい時期にあるものと想像します。またスマートフォンは汎用機という強みがあるため、目の離せない強敵だととらえています。たとえば、かつてのワープロ専用機がPCに取って代わられたり、強力な汎用器官である「脳」を進化させた人類がこの星を席巻しているといった先例は、当社への見方を見直す材料になると思います。
一方、株式投資の対象という観点では以前にもふれたのですが、「当社の中長期的な成長性が見通せたわけではなく、単に株価とくらべて企業価値が割安に思えた」ことが投資に踏みきった理由です。そのため、少し前に株価が14,000円強に上昇したときに1単元を売却しました。これは当社の業績回復によるものでなく、単に市場と共に上昇しただけととらえていますが、いずれにせよ超過分の価値が小さくなったので、売却しました。その金額以上の水準になれば、順次売却していくつもりです。
現在の当社は開発工数増によるコスト増と開発期間長期化が重荷となり、それらも影響して自社市場の拡大が伸び悩んでいます。そうではありながらも、当社のマーケティングには意外性がみられ、他社とは違う種類のDNAがうかがえます。そのため、いつかふたたび何かをやらかすのでは、という期待も持っています。そのような上方方向のオプションの意味で、1,2単元は継続保有していこうかと考えています。
つぎにマイクロソフトについてですが、スマートフォン市場では「マーケットが育った後から追いかけて刈り取る」戦略が完全に失敗しました。ビジネスユーザー主体の世界とは異なる市場だということを、正しく理解できなかったことが一因だと思います。「垂直統合」の一貫としてのノキアの買収は、前向きなものとはとらえていません。ブロンコさんの言われるように「うまくいったら儲けもの」で、基本戦略上はビジネス市場への侵食をとめる防壁とみているように感じられます。それは、当社にとって仕方のないコストだと思えます。当社が全方面で成功することはあきらめ、ビジネス向け市場主体でどうなっていくのか。そのような視点で当社をみています。
またよろしくお願いします。
それでは失礼致します。