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2018年1月8日月曜日

強気相場がますます高騰する可能性を感じる(ジェレミー・グランサム)

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GMOのジェレミー・グランサムが1月3日付で、「私見」と断り書きをした文章を公開していました。今回の株式市場がこれからどうなるのか、過去のバブルを振り返った上で、以前の彼とはずいぶん異なる見解を披露しています。冒頭部及びまとめの部分を中心にご紹介します。(日本語は拙訳)

Bracing Yourself for a Possible Near-Term Melt-Up (A Very Personal View) (GMO) [PDF]

バリュー投資を奉じる投資家の一員たる私自身が、今やなんとも興味深い場所に位置しているものだと感じています。「現在の市場は、米国史上において最も高値をつけた時期のひとつだ」と認識する一方で、巨大株式バブルの歴史を研究する一人として、「長く続いてきた今回の強気相場において、急騰期あるいは高騰期に踏み入ったことを示す兆候が現在観察できる」ことを認める自分がいるからです。市場が高値をつけていることを示すデータは、明快で現実のものです。「現在の価格が際立って高い」との結論を株式市場分析から得るのと同様に、たしかなものだと言えます。それとは対照的に、「株価高騰が続く」とする私見は、統計的要因と心理的要因を混ぜ合わせたところから導いています。ただしそれらの要因は、それぞれが大きく異なった過去の時期に基づいており、それがために利用可能な情報の多くが容易には比較できません。さらには、米国それも数件の事例に著しく依存しています。しかしながらおかしなことに、今回のバブルという意味では、「割高だ」とする単純な事実よりも、統計的ではないデータのほうがより説得力があると感じられます。読者のみなさんも、どうなのかは判断できないことでしょう。それはともかく、この文章で私がやるべきことは、統計的なものだけでなくあけっぴろげなものも合わせて、なるべく明瞭に証拠を示すことであります。(p. 1)

I find myself in an interesting position for an investor from the value school. I recognize on one hand that this is one of the highest-priced markets in US history. On the other hand, as a historian of the great equity bubbles, I also recognize that we are currently showing signs of entering the blow-off or melt-up phase of this very long bull market. The data on the high price of the market is clean and factual. We can be as certain as we ever get in stock market analysis that the current price is exceptionally high. In contrast, my judgment on the melt-up is based on a mish-mash of statistical and psychological factors based on previous eras, each one very different, so that much of the information available is not easily comparable. It also leans very heavily on a few US examples. Yet, strangely, I find the less statistical data more compelling in this bubble context than the simple fact of overpricing. Whether you will also, dear reader, remains to be seen. In any case, my task in this note is to present the evidence, both statistical and touchy-feely, as clearly as I can.

私の予想のまとめ(まったくの個人的見解によるもの)

・株価の高騰あるいはバブルの最終期が今後6か月から2年にわたって生じる可能性が、例えば50%以上の確率で考えられます。

・もし株価高騰が続いたとすれば、そのあとにバブルの破裂あるいは価格下落が生じる確率は、相当高い(例えば90%以上の確率)と思われます。

・もし株価高騰の後に下落が生じるとすれば、50%程度の下落率になる可能性がかなりあると思われます。

・そのような下落が生じた後には、1998年以前の水準だった15倍超の倍率まで反騰する可能性がかなり高い(2/3以上)と思われます。ただし直近20年間で見られた傾向の平均には若干とどかないでしょう。それ以降の傾向は、以前に記したレター『鳴動ならんや、さめざめと』で触れた航路を進み、従前の平均へとゆるやかに近づいていくと思われます。(p. 12)

Summary of my guesses (absolutely my personal views)

- A melt-up or end-phase of a bubble within the next 6 months to 2 years is likely, i.e., over 50%.

- If there is a melt-up, then the odds of a subsequent bubble break or melt-down are very, very high, i.e., over 90%.

- If there is a market decline following a melt-up, it is quite likely to be a decline of some 50% (see Appendix).

- If such a decline takes place, I believe the market is very likely (over 2:1) to bounce back up way over the pre 1998 level of 15x, but likely a bit below the average trend of the last 20 years, as the trend slowly works its way back toward the old normal on my“Not with a Bang but a Whimper” flight path.

以下の図は、現在の株式市場がやがてバブルの頂点に達すると仮定したS&P500のチャートです(グランサム氏による予想)。3400や3700という数字が書かれています。

(p. 4)

最後におまけです。ビットコイン相場と過去のバブル相場における頂点を対比したチャートです。(緑色:ビットコイン、えんじ色:南海バブル、紺色:チューリップ・バブル、黄色:1929年世界恐慌時のS&P500)

(p. 11)

2018年1月4日木曜日

2017年の投資をふりかえって(1)全般について

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2017年にとった基本方針はここ数年と変わらず(過去記事2015年)、「市場からの評価水準が高い銘柄を順次売却して、保有株式数を減らす」ことでした。また売却はしないものの価格下落リスクが大きいと考えた銘柄については、ヘッジ的な売り(つなぎ売りなど)をしました。結果的にヘッジ・ポジション全体からは損失を出しましたが、あくまでも保険代とみなしており、今年も同様の方針をとるつもりです。

一方、証券を買うほうについては、年末近くになってから1銘柄を新規購入したものの、実質的には休業状態でした。悲観的な見方が織り込まれていない株価は、正直なところ苦手です。

銘柄ごとの売買概況は以下のとおりです(銘柄コード順)。

<新規購入(New Buy)>
・クックパッド(2193); まだわずかな規模の買いにとどめています。

<買増し(Add)>
・モザイク(MOS)

<現状維持(Hold)>
・日精エー・エス・ビー機械(6284)
・日東電工(6988)
・マニー(7730)
・任天堂(7974)
・しまむら(8227)
・バークシャー・ハサウェイ(BRK.B)
・インテル(INTC)
・マイクロソフト(MSFT)
・従来からの主力銘柄

<一部売却(Reduce)>
・クラレ(3405)
・メック(4971)
・日進工具(6157)
・iShares シルバー・トラスト(SLV)
・ウィートン・プレシャス・メタルズ(WPM); 以前のシルバー・ウィートン(SLW)から社名が変更されました。
・従来からの主力銘柄

<全部売却(Sell)>
・サンリオ(8136)

つづく投稿では、このところ業績(および株価)が思わしくなかった銘柄について、簡潔ながら反省と共にふりかえりたいと思います。

2017年12月30日土曜日

2017年投稿分から、おすすめの言葉三選

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今年は投稿数が少なかったこともあり、心にとどめておきたい言葉を3つ取りあげて、年の締めくくりといたします。いずれも、未来予測に関する同じ話題へ焦点を当てており、かき混ぜるとひとつに溶け合いそうな文章です。

予測に関する5つの警句(ハワード・マークス)より、
未来を予測する者たちは、2つの種族に分けられる。物事をわかっていない者たちと、自分が物事をわかっていないことを理解していない者たちだ。
(ジョン・ケネス・ガルブレイス[経済学者])

予測というものは、未来よりも予測者について語ってくれることが多い。
(ウォーレン・バフェット)

『かくて行動経済学は生まれり』(マイケル・ルイス)より、
人は自分がわかっていないことをわかっていないというだけでなく、自分たちの無知を判断材料として考慮しようとしないのだ。

2017年12月28日木曜日

2017年デイリー・ジャーナル株主総会(4)投資した資産が半減した経験

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デイリー・ジャーナル社2017年株主総会でのチャーリー・マンガーに対する質疑応答から、彼が過去に経験した資産価格下落の話題です。なおチャーリーの語る後半部は、以前に投稿した内容の再掲になります。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

<質問28> 1973年から1974年にかけて運営されていた投資パートナーシップの資産が半減したときには、何が起こったのですか。

<チャーリー> そう、すごく単純なことですよ。簡単そのものです。いい質問ですね、あれは教訓になりますから。私が運営していたパートナーシップの資産価値が、1年の間に50%下落したのです。市場としては40%程度下落しました。あのときの景気後退は30年に一度のものでしたよ。「市場を独占していた新聞社が、純利益の3,4倍で売られていた」ほどですからね。おっしゃるとおり、どん底のときには頂点から50%落ちましたよ。保有したバークシャー株がそれだけ下落したのは過去に3回ありましたね。

私からすれば、市場の下落は人生に付き物だと考えますね。長期にわたってこのゲームに関わるつもりならば、そうする必要がでてきます。値段が半分まで下落したときでも、やたらと思い悩まずにやり過ごせますよ。より良い生き方を心がけていれば、資産半減の事態となっても、沈着冷静・端麗優雅に受け流せるでしょう。下落を回避しようとは試みないように。結局はやって来ることです(拍手)。「自分には来ない」と言う人は、十分果敢に投資していないからですよ。

Question 28: What happened 1973 and 1974 when your investment firm lost over half?

Charlie: Oh, that’s very simple. That’s very easy. That’s a good lesson. That’s a good question. What happened is the value of my partnership where I was running, went down by 50% in one year. Now the market went down by 40% or something. It was a once in 30 year recession. I mean monopoly newspapers are selling at 3 or 4 times earnings. At the bottom tick, I was down from the peak, 50%. You’re right about that. That has happened to me 3 times in my Berkshire stock.

so I regard it as part of manhood. If you’re going to be in this game for the long pull, which is the way to do it, you better be able to handle a 50% decline without fussing too much about it. And so my lesson to all of you is conduct your life so that you can handle the 50% decline with aplomb and grace. Don’t try to avoid it. (applause) It will come. In fact I would say if it doesn’t come, you’re not being aggressive enough.

備考です。バークシャー株の価格が半減した3回の時期は、株価チャートで確認したところ、おそらく2007-2009年、1998年-2000年、1973-1974年かと思われます。また1987年のブラック・マンデーの時期にも、4割弱の下落があったようです。このことから、よく言われる「10年周期」がバークシャー株によっても確認できますね。

2017年12月24日日曜日

問題解決の技法(4)一般化せよ(クロード・シャノン)

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数学者クロード・シャノンが行った問題解決に関する講演について、4回目の投稿です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

研究活動を行う際に役立つ思考上の工夫としては、他には一般化があると思います。特に数学上の研究では威力を発揮します。「隔絶した特殊な結果を証明する」、そのような形で発展した代表的理論、とりわけ定理に取り組む人は、まず一般化から始めるものです。N次元で考える前には2次元で試すでしょうし、ある種の代数の問題であれば、普遍代数学の領域で考えるものです。実数の領域に関することであれば、普遍代数やその類の領域へ移って考えるでしょう。このことさえ忘れずに実行すれば、実際はたやすく取り組めます。なにか答えを見つけたときには、ただちに「もっと一般化できないか」と自問することです。「より多くを含んだ広範な記述ができないだろうか」と。思うに、工学の分野でも同じように留意されるべきです。賢明な方法で何かを達成した人があらわれたら、それをみて次のように自問するのがよいでしょう。「同じ原則をもっと一般的な形で適用できないだろうか。この巧妙なアイデアを同じように使って、もっと幅広い範疇のさまざまな問題を解決できないだろうか。この特定のことを使える領域が、どこか他にないだろうか」と。

Another mental gimmick for aid in research work, I think, is the idea of generalization. This is very powerful in mathematical research. The typical mathematical theory developed in the following way to prove a very isolated, special result, particular theorem - someone always will come along and start generalization it. He will leave it where it was in two dimensions before he will do it in N dimensions; or if it was in some kind of algebra, he will work in a general algebraic field; if it was in the field of real numbers, he will change it to a general algebraic field or something of that sort. This is actually quite easy to do if you only remember to do it. If the minute you’ve found an answer to something, the next thing to do is to ask yourself if you can generalize this anymore - can I make the same, make a broader statement which includes more - there, I think, in terms of engineering, the same thing should be kept in mind. As you see, if somebody comes along with a clever way of doing something, one should ask oneself "Can I apply the same principle in more general ways? Can I use this same clever idea represented here to solve a larger class of problems? Is there any place else that I can use this particular thing?"

「一般化」というアイデアをチャーリー・マンガーの言葉に置き換えるとすれば、「ハードサイエンスにおけるエートス」がうってつけのように思います。(過去記事1, 過去記事2)