サムが敷いた路線は、基本的には現CEOのバージニア・ロメッティ女史にも受け継がれていると捉えています。そのため彼の意見は、IBMにおけるマネジメントの現状を代弁しているように思えました。なお、本家であるHarvard Business Reviewに原文が掲載されたのは今年の6月号です。
まずは、対話を通じて主要な機関投資家から受けた要望についてです。
大株主の意見に耳を傾ければ、自社の戦略に合致した方法でうまく対応できることに私は気づきました。彼らは基本的には、株主にも配慮して資本を配分してほしいと申し入れているだけでした。売上げの伸びよりも、利益率の拡大やキャッシュの創出を求めていたのです。なぜなら、企業がキャッシュを生み出せば、自社株買いや配当という形で株主に還元されると心得ていたからです。だれも価値が見出せない、無意味な大型買収に走るようなことはないと百も承知なのです。 (p.43)
つぎは、IT企業のライフサイクルについてです。
企業は創業後、私が「第一幕」と呼ぶ段階を経験します。商品がヒットしたり、大成功を収めたりする第1フェーズです。現時点でも、グーグルやフェイスブックのように大成功している企業があります。このような企業はアイデアに秀で、かなりの収益を上げているでしょうが、たちまち第2幕が必要になります。はたして第2幕は、時価総額をたとえば300億ドルから1000億ドルに押し上げてくれるでしょうか。これは、少々やっかいです。マイクロソフトが現在直面しているのは、この種の課題です。 (p.46)
最後は、戦略の策定や実行についてです。
とにかく、すべてを整合させることです。まず着手すべきは戦略です。IBMの場合、利益率と創出価値がより高い事業に移行するという戦略を策定しました。すなわち、陳腐化しつつある事業から撤退し、価値を生み出せると判断した事業分野に進出するというものです。アナリティクスやクラウド、ビッグデータ、つまり数々のソフトウェアがこれに当たります。その次に、投資家が「その戦略は私にも成果をもたらす」と言えるような財務モデルに戦略を転換しなければなりませんでした。そのうえで、この財務モデルを経営システムに焼き直して、各事業部門がそのロード・マップを実行できるようなプランを策定しなければなりません。さらに報酬体系を整備し、戦略の成功可能性を高める必要がありました。つまり、戦略を起点として、端から端までをしっかり結びつけたのです。 (p.47)
IBMの企業戦略と聞けば、過去記事で取りあげたルイス・ガースナーの言葉が思い返されます。