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2012年8月24日金曜日

ポートフォリオの現金比率(ウォーレン・バフェット、1957年)

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今回はウォーレン・バフェットのパートナーシップ時代のレター(1957年度)からの引用です。おなじみになってきましたが、ポートフォリオの資産配分の話題です。(日本語は拙訳)

わたしたちのポートフォリオの価値は、1956年末よりも1957年末のほうが高いことは間違いありません。全般的に価格が安く、辛抱した末でないとお目にかかれないような破格の値段で証券が買える機会を、さらに享受できたからです。先に申し上げたようにポートフォリオ中の最大の銘柄は、パートナーシップによっては資産の10%から20%を占めています[バフェットは複数のパートナーシップを組んでいた]。いずれすべてのパートナーシップで資産の20%を占めるようにするつもりですが、急ぐべきではないと考えます。当然のことですが値段が上がっていくときよりも、横ばいか、下げているときに株を買うのがわたしたちにとっては一番だからです。そんなわけですのでポートフォリオのある程度の割合は、いついかなるときでも利益を出さないままかもしれません。辛抱することになりますが、この方針をとれば長い目でみたときにもっとも利益が得られるに違いないからです。

I can definitely say that our portfolio represents better value at the end of 1957 than it did at the end of 1956. This is due to both generally lower prices and the fact that we have had more time to acquire the more substantially undervalued securities which can only be acquired with patience. Earlier I mentioned our largest position which comprised 10% to 20% of the assets of the various partnerships. In time I plan to have this represent 20% of the assets of all partnerships but this cannot be hurried. Obviously during any acquisition period, our primary interest is to have the stock do nothing or decline rather than advance. Therefore, at any given time, a fair proportion of our portfolio may be in the sterile stage. This policy, while requiring patience, should maximize long term profits.

2012年8月22日水曜日

(答え)地球温暖化が進むと、南極はどうなるのか?

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前回とりあげた話題「地球温暖化によって南極の氷は増加すると科学者たちが予想する」、その理由の部分になります。

その理由は簡単です。摂氏0.5~1度気温が上昇したとしても、南極の大部分の気温はまだかなりの低温です。氷の質量が減少した原因は、氷が融解したことではなく、氷が崩壊して海に流れ出したことだったのです。温暖化が進行した場合の主な影響は、(科学者の計算によると)水蒸気の増加です。温度の上昇によって、海水が蒸発するからです。この水蒸気が南極大陸の上空に流れていくと、降雪量が増え、固まって氷になり、氷河が発達します。そのため、地球温暖化によって南極の氷の質量は増えるという予想が出ました。 (p.153)


自分の直感が正しい結論と反する場合、どうしたら正しい道へ進むことができるでしょうか。今回の問題では、わたしは氷の質量が「減る」という直感に引きずられて、上のようなメカニズムが思いつきませんでした。気象に関する知識は必要ですが、この程度であれば想像できてもよかったと感じました。あとづけになってしまいますが、逆から考えれば解くことができたかもしれません。

ところで本書の筆者リチャード・ムラー(UCバークレー校物理学教授)は、上のような結果がでたからといって地球温暖化が進んでいないとは言っていません。その逆で、人間の活動によって気温が上昇している可能性はとても高いと考えています。

でも、温暖化は確かにおきています。そして、最近の50年間の温暖化の一部が、化石燃料の使用を主とする人間活動によるものである可能性がひじょうに高いのです。(p.155)

2012年8月21日火曜日

(問題)地球温暖化が進むと、南極はどうなるのか?

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以前読んだ『サイエンス入門〈1〉』の続き『サイエンス入門〈2〉』が出ていましたので、読んでいます。そのなかでおもしろい文章がありましたのでご紹介します。

南極の氷は、融けていると言われます。グレース衛星が、衛星軌道上から南極の氷の重力効果を測定し、氷の質量の正確な測定を行いました。その結果、南極の氷が毎年約36立方マイル(150立方キロメートル)ずつ減少していることがわかったのです! これは、地球温暖化の重大さを証明する深刻で際立った事実のように思えます。

驚くべきことに、この一見それらしい証拠は、事実を反映しているわけではないのです。2000年に、IPCCは、グレース衛星による観測に先立って、地球温暖化によって予想される氷の変化がどれほど大きなものになるかを計算するように、何人かの科学者に依頼しました。その結果、驚くべきことに、すべての科学者が一致して、地球温暖化によって南極の氷は、減少するのではなく、「増加する」と予想したのです。(p.153)


つづきの文章は次回にご紹介します。個人的には自分の直感にひきずられて、科学者たちがどういった論理で予想を出したのか思いつきませんでした。チャーリー・マンガー言うところの「疑いを持たない傾向」(過去記事)が強く働いているようです。

2012年8月20日月曜日

規模の不経済(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによる世知入門、規模の経済の第3回目ですが、今回は規模が大きいほど効率が悪くなる話です。(日本語は拙訳)

規模が大きいからといって常に勝てるわけではないのがこのゲームの面白いところで、大きくなると官僚的になってしまうという重大な欠点があります。官僚主義はなわばり争いを生み出します。またもや登場しましたが、これも人の本性に根ざすものです。

ここでも動機付けが悪い方向に働いています。たとえば私が若かった頃のAT&Tは巨大な官僚主義の職場で、株主のような存在のことを考える人はいませんでした。官僚主義ときくと、みなさんはこう考えるかもしれません。自分の未処理かごに仕事が入ってきたら、別の人の未処理かごに進めればおしまいだろうと。ところがAT&Tはそうではありませんでした。やるべき仕事とは、自分たちがやりおわった仕事のことをさしたのです。膨張して巨大になり、おろかで意欲を失った官僚主義がはびこっていたのです。

実のところ、いくぶん腐敗していたとも言えます。たとえば私がある部門の責任者で、あなたが別の部門の責任者だとします。あることをやるのに必要な権限を両者で共有していたとしたら、そこには不文律がありました。「あなたが厄介なことをしなければ、私のほうもしません。それでお互い満足ですよね」。そんなわけで、管理上の階層が積み重なり、不要な間接費が積み上げられていったのです。そういった階層を正当化する人もいますが、それではいつまでたっても何も終わりません。とにかく決断するのが遅すぎます。機敏な人たちは、もっとうまくやっています。

The great defect of scale, of course, which makes the game interesting - so that the big people don't always win - is that as you get big, you get the bureaucracy. And with the bureaucracy comes the territoriality - which is again grounded in human nature.

And the incentives are perverse. For example, if you worked for AT&T in my day, it was a great bureaucracy. Who in the hell was really thinking about the shareholder or anything else? And in a bureaucracy, you think the work is done when it goes out of your in-basket into somebody else's in-basket. But, of course, it isn't. It's not until AT&T delivers what it's supposed to deliver. So you get big, fat, dumb, unmotivated bureaucracies.

They also tend to become somewhat corrupt. In other words, if I've got a department and you've got a department and we kind of share power running this thing, there's sort of an unwritten rule: “If you won't bother me, I won't bother you, and we're both happy.” So you get layers of management and associated costs that nobody needs. Then, while people are justifying all these layers, it takes forever to get anything done. They're too slow to make decisions, and nimbler people run circles around them.


バークシャー・ハサウェイが買収した企業には似たような業種同士のものがありますが、チャーリーやウォーレン・バフェットはそれらを合併統合してシナジーを求めようとはしません。その理由のひとつが、無益ななわばり争いを避けることなのかもしれませんね。

2012年8月18日土曜日

誤判断の心理学(13)楽観的になりすぎる傾向(チャーリー・マンガー)

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今回の文章では、過去にもとりあげたおなじみの話題が登場します。原文が短いので全文をご紹介します。(日本語は拙訳)

誤判断の心理学
The Psychology of Human Misjudgment

(その13)楽観的になりすぎる傾向
Thirteen: Overoptimism Tendency

キリストが生まれた頃より300年前のこと。かの高名なるギリシャの弁論家デモステネスは、こう言いました。「人は自分が望むものを、やがて信念とするものだ」。

デモステネスの言ったことを解釈すれば、人は単に痛みを避けようと否定するだけでなく、うまくやりとげた後でも楽観的過ぎる姿を見せるとも言えます。

苦しんでいなかったり、あるいは苦しくなる心配がないときでも、たいていの人は楽観的過ぎるものです。みてください、くじを買って喜んでいる人たちを。あるいは、つけ払いできるうえに配達もしてくれる食料品店が、超効率的な巨大量販スーパーにとってかわると満足げに信じている人たちを。ギリシャの弁論家が正しかったのは言うまでもないですね。

このおろかな楽観に対処するには、私のころには高校2年で教わったフェルマーとパスカルの初歩的な確率計算を、反射的に使えるようになるまで練習するのが定石です。リスクに対処しようとして経験則に頼るのは、進化の末に我々人間が手にしたやりかたであって、適切とはいえないものだからです。ゴルフのグリップがこれと似た例でしょう。ゴルフ教室に通わずに、人として進化した体のつくりのまま自然に握るやりかたをとるのは、結局は役に立たないのです。

About three centuries before the birth of Christ, Demosthenes, the most famous Greek orator, said, “What a man wishes, that also will he believe.”

Demosthenes, parsed out, was thus saying that man displays not only Simple, Pain-Avoiding Psychological Denial but also an excess of optimism even when he is already doing well.

The Greek orator was clearly right about an excess of optimism being the normal human condition, even when pain or the threat of pain is absent. Witness happy people buying lottery tickets or believing that credit-furnishing, delivery-making grocery stores were going to displace a great many superefficient cash-and-carry supermarkets.

One standard antidote to foolish optimism is trained, habitual use of the simple probability math of Fermat and Pascal, taught in my youth to high school sophomores. The mental rules of thumb that evolution gives you to deal with risk are not adequate. They resemble the dysfunctional golf grip you would have if you relied on a grip driven by evolution instead of golf lessons.


何度かご紹介していますが、「フェルマーとパスカルの初歩的な確率計算」とは順列と組み合わせを使ったものです。以下の過去記事で取り上げています。


以前に「個人的には、組み合わせを全く使えていない」と書きましたが、肩肘張らずにやってみれば、ごく普通に使えるし、使うべき考え方ですね。