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2012年6月13日水曜日

ウォーレン・バフェットに勝つつもりですか(ボブ・ロドリゲス)

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何度かとりあげている「超慎重派ファンド・マネージャー」ボブ・ロドリゲスの最新インタビュー記事が、彼の率いる会社FPAのWebサイトで公開されていました(FPA's Bob Rodriguez: Investors, Wall Street Never Learn...)。主な話題は、アメリカの財政赤字について。マクロな話題はあまり気にしないほうがいいのですが、彼の言動はついつい追いかけています。とはいいつつ、彼の投資スタイルが顔をのぞく場面もありましたので、そのひとつをご紹介します。(日本語は拙訳)

2003年のことです。私が委員を務めていたある年金制度で、協議をしていたコンサルタントが大型の公的年金制度の期待収益率は8.5%だと発言するのを聞きました。

すかさず、私は言いました。「すみませんが、それは賛成できませんね。ここの普通のマネージャーが年率8.5%で運用するというのですか。どうも投資のことが何もわかっていない御仁がいるようですね。ウォーレン・バフェットがどうしているか、ご存知の方はいないのですか。彼の会社では退職金制度の期待収益率を6.5%に下げたのですよ。ここのマネージャーのみなさんが、現代最高の投資家よりも三分の一も上回る成績を上げ続けるというのですか。それはいささか自惚れが強いのではないでしょうか」。しかしながら、同じようなことが今日でもまだ続いているのです。

One of the pension plan boards I was on, back in '03, was talking to consultants and was told that the assumed rate of return on a large public pension plan was 8.5%.

I just said, "I'm sorry. I don't buy this. You're telling me that your average manager is going to earn 8.5%? Well, there's a little guy out there that doesn't know anything about investing. Have any of you ever heard of Warren Buffett? In his corporation's retirement plan, they just lowered the assumed rate of return down to 6.5%. So you're telling me that your stable of managers is basically going to earn approximately one-third higher on a sustained basis than the greatest investment manager in the history of time? Isn't that a little bit egotistical?" But that same sort of thing is still going on today.


参考までに日本での年金の状況ですが、厚生年金などを運用する年金積立管理運用では、運用利回りを「名目賃金上昇率プラス1.1%」としています。(平成22年度業務概況書 PDFファイルのp.29)

また企業年金の期待収益率(2010年度)の例は、トヨタ自動車が3.8%、東芝が3.6%、日本電産が2.3%、京セラが2.0-2.2%となっています。トヨタの数字が大きめなのは、北米拠点の従業員割合が大きいからでしょうか。

なお、上記でご紹介したインタビューの最後では日本のことも触れています。「こんなに悪い状況はみたことがない」、さすがは「超慎重派」です。

2012年6月12日火曜日

わたしも含み損だった頃(ウォーレン・バフェット)

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手持ちの株の評価額をみて元気が出ないときは、1970年代半ばにウォーレン・バフェットのバークシャー・ハサウェイが抱えていた含み損の金額でもみてください。今回は、ウォーレンによる1975年度「株主のみなさんへ」から引用します。(日本語は拙訳)

1974年末の時点での株式ポートフォリオは、1,700万ドル[現在価値で60億円]の含み損でした。ですが、そのときはこう申し上げました。全体としてみれば、このポートフォリオは払った代金以上の価値があります、と。1975年には税額控除前で288.8万ドル[10億円]の実現損がでましたが、1976年は実現益がでると現段階では予想しています。1976年3月末の時点で、株式の含み益は1,500万ドル[53億円]となっています。当社では数社に集中して株式投資を行っていますが、各企業の経済的特性は良好で、有能かつ正直な経営陣に率いられています。また購入価格の面では、相対で取引する場合と比べても魅力的な値段で買うことができました。

そういった条件が満たされた企業であれば、わたしどもとしては長きにわたって株式を保有したいと考えております。うちあけますと、当社の最大の投資先はワシントン・ポストです。クラスB株を467,150株、1,060万ドル[38億円]で購入しました。同社の株は永久に保有するつもりです。

このような方針なので、株価が変動するのはそれほど大したことではありません。もちろん、絶好の買い場となるのであれば別の話です。大切なのはビジネスの結果のほうです。そういう意味では、当社が投資している主な企業のほとんどは、満足できる結果を挙げています。

At the end of 1974 the net unrealized loss in the stock section of our portfolio amounted to about $17 million, but we expressed the opinion, nevertheless, that this portfolio overall represented good value at its carrying value of cost. During 1975 a net capital loss of $2,888,000 before tax credits was realized, but our present expectation is that 1976 will be a year of realized capital gain. On March 31, 1976 our net unrealized gains applicable to equities amounted to about $15 million. Our equity investments are heavily concentrated in a few companies which are selected based on favorable economic characteristics, competent and honest management, and a purchase price attractive when measured against the yardstick of value to a private owner.

When such criteria are maintained, our intention is to hold for a long time; indeed, our largest equity investment is 467,150 shares of Washington Post "B" stock with a cost of $10.6 million, which we expect to hold permanently.

With this approach, stock market fluctuations are of little importance to us - except as they may provide buying opportunities - but business performance is of major importance. On this score we have been delighted with progress made by practically all of the companies in which we now have significant investments.

2012年6月11日月曜日

客観的に判断できる人の割合は?(マイケル・モーブッシン)

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資産管理会社の大手レッグ・メイソンといえば、以前は絶頂を誇ったビル・ミラー氏が有名でした。しかしここ数年の失敗の後、彼のファンドの看板はマイケル・モーブッサン氏に変わってきています。彼のための専用のWebサイトも用意されています。

モーブッサンはチャーリー・マンガーやウォーレン・バフェットの教えを踏まえているようで、彼の文章を読むと共感できるものがあちこちにみられます。ただし彼の場合は、より定量的に迫ろうとしている点が特徴的ですが、個人的にはそちらにはあまり近寄らないようにしています。

今回はモーブッサンの著書の翻訳『まさか!?―自信がある人ほど陥る意思決定8つの罠』から、心理学的な落とし穴のひとつを引用します。日本語の題名はともかく、個人的にはこの本も楽しんで読めました。

仕事にかかる時間やコストを見積もるのは難しい。正しく見積もれない場合というのは通常、時間とコストを少なく見積もりすぎるのだ。心理学者は、これを計画錯誤と読んでいる。大多数の人は何かを計画する時に主観的な視点でしか見られないのだ。自分や他人の経験から基準となる客観的なデータを得て、そこからスケジュールを立てる、といったやり方ができる人はわずか4人に1人であるという研究結果が報告されている。(p.35)


なぜ人々は客観的な視点を持たないのかについて。

周りの人間と比べて自分は特別で優秀であるとほとんどの人が思い込んでいるからである。(p.36)


チャーリー・マンガーも、自身を過大評価する傾向は人の判断を誤らせると指摘しています。できないことをできると考えれば失敗するのは当たり前ですが、なぜ人は自分のことを過大評価するのかという疑問は、興味深いテーマだと感じています。

なお、モーブッサンがこの秋に出す本のタイトルは『THE SUCCESS EQUATION』(成功するための方程式)。この本も期待して待ちたいと思います。

2012年6月9日土曜日

ニッチを占める動物は繁栄する(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによる世知の続きで、今回は「ミクロ経済学」。個別企業の意思決定の話題ですので、ここまでくるとビジネスや投資判断にそのまま使えそうですね。(日本語は拙訳)

人の持つ知恵としては信頼性がいくぶん下がりますが、次に登場する話題はミクロ経済学です。ここでは、自由市場経済を一種の生態系のようなものと捉えれば、いろいろ考える際に便利です。部分的な自由市場であっても同様です。

しかし、この考え方は実に評判が悪いですね。ダーウィンの考えが登場した初期の頃に、泥棒男爵と呼ばれた人たちが次のようにうそぶいていたからです。適者生存の教えは、自分たちこそ権力を持つに値する者だと認めている、と。「一番の金持ちなのだから、われこそ最高なのだ。神、そらに知ろしめす」、などなど。

そのような泥棒男爵のふるまいは大衆をいらだたせました。そのため、経済を生態系のように考えるやりかたは人気がなくなったのです。しかし実のところ、経済は生態系と非常によく似ています。同じような結末にたどり着くことがよくあるのです。

生態系の中にいる場合と同じで、狭い範囲に特化すれば小さなニッチを占有しやすくなります。ニッチを占める動物は繁栄しますが、これはビジネスの世界でも同じで、特定の領域に特化して好業績を挙げている人たちは、他のやり方ではみつけられないような、いい商売をつかみやすくなります。

Now we come to another somewhat less reliable form of human wisdom - microeconomics. And here, I find it quite useful to think of a free market economy - or partly free market economy - as sort of the equivalent of an ecosystem.

This is a very unfashionable way of thinking because early in the days after Darwin came along, people like the robber barons assumed that the doctrine of the survival of the fittest authenticated them as deserving power - you know, “I'm the richest. Therefore, I'm the best. God's in his heaven, etc.”

And that reaction of the robber barons was so irritating to people that it made it unfashionable to think of an economy as an ecosystem. But the truth is that it is a lot like an ecosystem. And you get many of the same results.

Just as in an ecosystem, people who narrowly specialize can get terribly good at occupying some little niche. Just as animals flourish in niches, similarly, people who specialize in the business world - and get very good because they specialize - frequently find good economics that they wouldn't get any other way.


個人的にはニッチ企業が好きで、ポートフォリオの過半はニッチ・トップの企業が占めています。マーケット自体が小さいので、そのような企業には別のリスクがつきものです。悪い目がでたときのシナリオを想定しながら、投資の是非を判断しています。

2012年6月8日金曜日

ウサギとカメ(チャーリー・マンガー)

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2007年に開催されたWescoの年次株主総会で、ウォーレン・バフェットがなぜあんなにすごいのか、その理由をチャーリー・マンガーが説明しています。今回は、そのなかで最重要とされているものをご紹介します。ティルソンのメモからの引用です。(日本語は拙訳)

これはきわめて重要ですよ。勉強熱心なカメは野うさぎを追い越すものですが、ウォーレンの勉強好きといったら世界でも指折りです。もし学ぶのをやめてしまえば、あっというまに置いてきぼりですからね。運も味方をしたようで、彼は引退の年頃を過ぎたというのに未だ上手に学びつづけ、技能を磨いています。65歳を過ぎてからの投資術の向上ぶりは一目瞭然でしょう。ウォーレンのやることなすことをみてきましたが、初期の頃に持っていた知識のままだったら、今とは違って、うすぼんやりとした業績にとどまっていたでしょう。

This is really crucial: Warren is one of the best learning machines on this earth. The turtles who outrun the hares are learning machines. If you stop learning in this world, the world rushes right by you. Warren was lucky that he could still learn effectively and build his skills, even after he reached retirement age. Warren’s investing skills have markedly increased since he turned 65. Having watched the whole process with Warren, I can report that if he had stopped with what he knew at earlier points, the record would be a pale shadow of what it is.


Wesco社をご存じない方は、過去記事の説明がご参考になるかと思います。