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2012年3月12日月曜日

みじめになれる方法、教えます(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーは1986年に、自分の息子も通う高校Harvard Schoolの卒業式で祝辞を述べることになりました。一流校といっても、しょせんは高校生です。どれだけまじめに話をきくのだろうか、とチャーリーは考えたことでしょう。というのは個人的な邪推に過ぎませんが、実際の祝辞は彼らしいスタイルと内容に満ちており、ヤコビも思わずにやりとする傑作になりました。そうです、逆からやったのです(過去記事「逆だ、いつでも逆からやるんだ」)。幸せな大人になる方法ではなく、不幸な大人になる方法を説いたのです。

今回はそのうちの一部を引用します。高校卒業生というよりも、大人によく効く処方です。出典はおなじみの「Poor Charlie's Almanack」です。

みじめになるための私からの二番目の処方は、何かを学ぶにはできるかぎり自分が経験したことから学びとること。存命か故人かを問わず、他人の成功や失敗から間接的には、なるべく学ばないようにしてください。そうすれば効き目抜群、並み以下のことしか達成できず、みじめになれること間違いなしです。

My second prescription for misery is to learn everything you possibly can from your own experience, minimizing what you learn vicariously from the good and bad experience of others, living and dead. This prescription is a sure-shot producer of misery and second-rate achievement.


なお、Harvard SchoolはL.A.にあるプレップ・スクールで、ハーバード大学とは異なるものです。現在では女子校と合併し、Harvard-Westlake Schoolとなっています。2010年のForbesの記事America's Best Prep Schoolsによれば、全米で12位にランクされています。

2012年3月10日土曜日

マーク・ファーバー対ウォーレン・バフェット

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マーク・ファーバーは逆張りで有名な投資家です。見た目がちょっとこわいおじさんですが、切れ味のよい論理的な主張で人気があります。ジム・ロジャーズと同じように、ここ何年かは商品強気を説いてきました。今のところは当たってますね。

先日ご紹介したバークシャー・ハサウェイの「株主のみなさんへ」では、ウォーレン・バフェットは彼らしい表現でゴールドに対する懐疑的な評価を展開していました。今回ご紹介するのは、マーク・ファーバーによる逆の見解です。引用元の記事はBuy Gold “Right Away” Says Marc Faberです。(日本語は拙訳)

最近になってウォーレン・バフェットが、資産としてのゴールドを否定的にみる見解を表明したが、いうまでもないがファーバーは強く反対している。ゴールドを保有していない投資家は大きなリスクに直面している。ファーバーは幾度もそう述べてきた。債務不履行とか、G7各国の中央銀行が協調して自国通貨を減価させるようなこともありうる。それらのリスクはまだ消えていない、と彼は確信している。

ファーバーは言う。「ゴールドをぜんぜん保有していない?私なら今すぐ買い始めますよ。ただし、値段は下がるかもしれないのをお忘れなく」

Without saying so, directly, Faber disagrees strongly with Warren Buffett’s recent and controversial negative assessment of gold as an asset. Faber has stated on numerous occasions that investors who own no gold take on enormous risk, including debt defaults and/or currency devaluations, as central banks of the G-7 seek to simultaneously devalue its respective currencies. He believes those risks remain alive and well.

“If you don’t own any gold, I would start buying some right away, keeping in mind that it could go down,” states Faber.


こちらは、ゴールドの現在の価格水準についての見解です。

ゴールドがバブルかどうか議論されているが、ファーバーはそのような説は抱いていない。ゴールドにはバブルの兆候がみられない、と彼は何度も言ってきた。ゴールドを保有している投資家はほとんどいないのだから、「ナスダックや不動産に投資すれば金持ちになれると言われたけれど、今回もそれと同じだ」というような雑音は気にしないように、とも。

「ゴールドはバブルではない。まだバブルじゃなかった1973年には、40%も調整したのだ」とファーバーは言う。200ドルの記録的な水準をつけたあとに100ドル近くさがったときの、否定的だった見方を振り返った。

As far as the debate whether gold is in a bubble, Faber doesn’t hold to that thesis. He, on several occasions, has said the signs of a bubble in the gold market aren’t there. So few investors hold any gold, never mind raving about it as a road to riches, as was the case of the Nasdaq and real estate.

"No, gold is not in a bubble. It wasn’t in a bubble in 1973, either, but it still corrected by 40% then," says Faber, referring to the negative sentiment at that time in the gold market after the price sank to nearly $100, from a record high of $200.


2000年前半には、ウォーレンもシルバーを大量に買い集めていました。価格が大きく上昇する前に処分してしまいましたが、商品の動向は引き続き監視していると思います。単なる予感にすぎないのですが、ウォーレンは今後のゴールド・バブル(とその後の急落)を想定し、警告の意味を含めてあのような文章を書いたのかもしれません。

2012年3月9日金曜日

もうかってますか?(ベン・グレアム)

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このところは日本の株式市場が好調ですね。そんなときには、この引用をどうぞ。ベンジャミン・グレアムのThe Intelligent Investor第8章からです。ちなみに、この章はウォーレン・バフェットも目からうろこが落ちたやつです(過去記事「2011年株主のみなさんへ」)。手元に翻訳版がないので、日本語は拙訳です。

真剣な投資家は日々や月々の株価がどう動いたからといって、もうかったとか損したとは、思い込んだりしないものです。

A serious investor is not likely to believe that the day-to-day or even month-to-month fluctuations of the stock market make him richer or poorer.

2012年3月8日木曜日

バークシャー・ハサウェイの夜明け

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個人的な思い込みですが、2008年以来の日本の株式相場の低迷は、1970年代のアメリカのものと似たところがあります。1973年と1974年にはS&P500指数も大きく落ち込み、-14.8%と-26.4%の減少でした(配当込み)。ウォーレン・バフェットのバークシャー・ハサウェイも同様に純資産が伸び悩みましたが、その後の上昇ぶりは相当なものです。1975年からの4年間のゲインは、21.9%, 59.3%, 31.9%, 24.0%です。今回はウォーレンによる1978年の「株主のみなさんへ」からの引用で、1970年代中盤以降にウォーレンがとっていた投資姿勢です。(日本語は拙訳)

ご参考までに、当時のアメリカ株式市場の動きとしてS&P500のチャートを文末に載せています。ウォーレンの文章を読んでから、ごらんになってください。

ここで打ち明けてしまいますが、保険部門で行っている株式投資については、すごく楽観的にみています。もちろん、無条件に株に入れ込んでしまうわけではありません。状況によっては、保険屋が普通株へ投資するのはほとんど意味がないときもあります。

今はわくわくしながら、保険部門の純資産の大部分を株式投資へ向けています。ただし、投資対象は次の条件を満たすものに限っています。私どもがビジネスを理解しており、長期的な見通しが明るく、誠実でいて有能な人が経営しており、そしてとても魅力的な値段がつけられている場合です。最初の3つの条件を満たす投資候補は若干は見つかるものですが、最後の条件がそろわずに投資に踏み切れないことはよくあります。例えば、1971年にはバークシャーの保険部門における普通株投資の資産規模は、簿価ベースで10.7百万ドル[現在価値で約58億円。以下同様]、時価評価額では11.7百万ドル[63億円]でした。素晴らしい企業はあったのですが、株価のほうはほとんど興味を持てませんでした。(書かずにいられないので書いてしまいますが、年金基金の[資産運用]マネージャーは、1971年当時には純資産の122%を株式へ投資していました。高値での買い物だったので、十分には買えなかったようです。一方、株価が底値をつけた後の1974年には、株への投資比率は21%と、記録的な低水準にとどまりました)

この数年間、われわれの歩みは変わりました。1975年末に保険部門が保有していた普通株は、時価では39.3百万ドル[160億円]、簿価ベースもちょうど同じです。それが1978年末の株式(転換優先株含む)は、簿価ベースで129.1百万ドル[520億円]、時価で216.5百万ドル[870億円]に増えました。普通株の売却益は税引前で24.7百万ドル[100億円]でしたので、この3年間での株式投資からの利益は、含み益を合わせると112百万ドル[450億円]になります。同期間のダウ平均は852から805ポイントへ下がりました。バリュー株の投資家にとっては最上の時期でした。

証券市場では競売によって価格が提示されるので、まさしくずば抜けた企業に対して、ぱっとしないビジネスを取引相手から買うときよりも、大幅に割り引かれた値段がつくことがあります。私どもはそのような機会を探し続け、保険部門の株式ポートフォリオに組み入れていきます。

(訳注)1ドル=100円で計算しました。

We confess considerable optimism regarding our insurance equity investments. Of course, our enthusiasm for stocks is not unconditional. Under some circumstances, common stock investments by insurers make very little sense.

We get excited enough to commit a big percentage of insurance company net worth to equities only when we find (1) businesses we can understand, (2) with favorable long-term prospects, (3) operated by honest and competent people, and (4) priced very attractively. We usually can identify a small number of potential investments meeting requirements (1), (2) and (3), but (4) often prevents action. For example, in 1971 our total common stock position at Berkshire's insurance subsidiaries amounted to only $10.7 million at cost, and $11.7 million at market. There were equities of identifiably excellent companies available - but very few at interesting prices. (An irresistible footnote: in 1971, pension fund managers invested a record 122% of net funds available in equities - at full prices they couldn't buy enough of them. In 1974, after the bottom had fallen out, they committed a then record low of 21% to stocks.)

The past few years have been a different story for us. At the end of 1975 our insurance subsidiaries held common equities with a market value exactly equal to cost of $39.3 million. At the end of 1978 this position had been increased to equities (including a convertible preferred) with a cost of $129.1 million and a market value of $216.5 million. During the intervening three years we also had realized pre-tax gains from common equities of approximately $24.7 million. Therefore, our overall unrealized and realized pre-tax gains in equities for the three year period came to approximately $112 million. During this same interval the Dow-Jones Industrial Average declined from 852 to 805. It was a marvelous period for the value-oriented equity
buyer.

We continue to find for our insurance portfolios small portions of really outstanding businesses that are available, through the auction pricing mechanism of security markets, at prices dramatically cheaper than the valuations inferior businesses command on negotiated sales.

1975年末のバークシャーには株式の含み益がなかったとは、なんとなく勇気付けられるものです。といっても、その後に大きなゲインをあげたのは、ワシントン・ポストとGEICO。どちらもバークシャー躍進の中心銘柄です。ただし、両社ともウォーレンが経営判断に関わるようになっていくので、ふつうの個人投資家とは、若干趣きが違いますね。

最後になりましたが、S&P500のチャート(1970年代)はこちらです。


2012年3月7日水曜日

「フランチャイズ」と「ビジネス」の違い(ウォーレン・バフェット)

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ウォーレン・バフェットとチャーリー・マンガーは、投資候補の企業がMoat(経済的な堀)を持っているかどうかを重要視しています。Moatとはあいまいな表現ですが、今回引用する言葉「フランチャイズ」は、もう少しかみくだいた例を示しています。ウォーレンによる1991年の「株主のみなさんへ」からの引用です。(日本語は拙訳)

経済的な「フランチャイズ」を有している製品やサービスには、次のような特徴があります。第一に、必需品あるいは嗜好品である。第二に、顧客にとって他に似たような代わりがない。第三に、価格統制の対象外である。その3つがそろった企業は、価格改定を定期的かつ大胆に実施できます。これは高い資本利益率へとつながります。その上、経営上の失敗があっても「フランチャイズ」にはそれに耐える力を持っています。無能な経営陣が「フランチャイズ」から得られる利益を減らすことはあっても、致命傷を負わせるほどにはなりません。

反対に、「ビジネス」から素晴らしい利益を挙げるには、低コストに徹するか、製品やサービスの供給がタイトな場合に限られます。供給がタイトな状況というのは長くは続きません。また優れた経営が行われている企業では、それよりは長い期間にわたって低コスト体質を維持できるかもしれません。ですが、競合企業との絶え間ない競争からは逃れられません。「ビジネス」が「フランチャイズ」と違うのは、経営が悪いと会社がおしまいになることがある点です。

An economic franchise arises from a product or service that: (1) is needed or desired; (2) is thought by its customers to have no close substitute and; (3) is not subject to price regulation. The existence of all three conditions will be demonstrated by a company's ability to regularly price its product or service aggressively and thereby to earn high rates of return on capital. Moreover, franchises can tolerate mis-management. Inept managers may diminish a franchise's profitability, but they cannot inflict mortal damage.

In contrast, "a business" earns exceptional profits only if it is the low-cost operator or if supply of its product or service is tight. Tightness in supply usually does not last long. With superior management, a company may maintain its status as a low- cost operator for a much longer time, but even then unceasingly faces the possibility of competitive attack. And a business, unlike a franchise, can be killed by poor management.


個人的には、この3つの基準でしぼりこむのは厳しいので、別の基準とあわせて使っています(過去記事「競争優位性とは」)。いずれにせよ、「顧客が離れにくい」とか「顧客が集まりやすい」点が決定的だと捉えています。