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2012年2月14日火曜日

偉大な投資家からの、最高の助言(ボブ・ロドリゲス)

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極めつけの慎重派」として以前に取り上げたファンド・マネージャーのボブ・ロドリゲスが、FortuneのインタビューBob Rodriguez: The best advice I ever gotに応じていました。個人的には同氏の言行に注目しており、ファンドのWebサイトは度々訪れています。今回は若い頃に同氏が受けた助言についてです。(日本語は拙訳)

1974年の秋には、USCの大学院で投資上のポートフォリオ管理のコースを受講していました。金融市場は厳しい時期で、なぜそんなにひどい値段で証券が売られているのか、私にはわかりませんでした。グレアムとドッドが書いた著書『証券分析』に出会ったばかりの頃で、外部からきた講師の話をきくことになりました。チャーリー・マンガーという名のその人は、バリュー投資について熱心に語ってくれました。講義が済んだ後、チャーリーに近寄り、優れた投資のプロになるには何をしたらよいのか、たずねました。彼はこう答えました。「歴史を読むこと。読んで、読みまくるのです」。そんなわけで私は、歴史一般に限らず、経済史や金融史も読み、いっぱしの歴史家となったわけです。

私は、危機に直面した人々について学ぶことができました。ですから、2008年に金融危機がおきた時は、昔なじみのように思えました。1907年の銀行危機とよく似ていたからです。チャーリーの助言に従って歴史に親しんできたおかげで、類似点を文脈の中で捉えられました。

In the fall of 1974 I was in graduate school at USC taking a portfolio-management investment course. The financial markets were in difficulty, and I didn't understand how securities were being sold at such depressed levels. I had only recently discovered Security Analysis by Graham and Dodd when we had a guest lecturer come in named Charlie Munger, who went on about this idea of value investing. After the class was over, I walked up to Charlie and asked him if there was one thing that I could do that would make me a better investment professional. His answer was, 'Read history, read history, read history.' And so I became a good historian, reading both economic and financial history as well as general history.

What I learned is that people relate to the crises they have experienced. So when the crisis of 2008 came, it felt like an old friend to me because it had so many similarities to the banking crisis of 1907. Asking Charlie's advice and then reading history allowed me to put those things in context.


同氏は現在、USCのビジネススクールに設立されている投資関連の研究所で、アドバイザーを務めています。同研究所の学生は、実際にファンドを運用しながら学んでいるようです。

歴史から学ぶといえば、ジム・ロジャーズもどこかで書いていましたね。

2012年2月13日月曜日

ゴルフと同じです(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーは幾度となく、学ぶことの大切さにふれていますが、今回は未経験の投資分野でも通用すると説いたものです。おなじみの「Poor Charlie's Almanack」からの引用です。

とんとん拍子で大投資家になった人は皆、学んでいます。ウォーレンに知り合ってからいろんな優れた投資家がいましたが、彼は飛びぬけた一人ですね。このゲーム[=投資]は、すなわち学び続けることなのです。学んで習得する過程自体を好きにならなきゃね。

ウォーレンの様子を何十年もみてきましたが、彼は多くのことを学んできました。だからこそ、ペトロチャイナのような企業に投資できるまでに、自分の守備範囲を広げられたわけです。

投資を始めると、全然経験のない分野に投資することもでてきます。しかし、少しずつでも前進し続ければ、ほぼ確実に好成績をおさめられるような投資を始められるでしょう。大切なのは、規律を守り、勤勉に努め、実践を積むことです。ゴルフでうまくなりたいのと同じです。せっせと励まなければなりません。

学ぶのをサボっていると、他の人に追い越されますよ。

I don't know anyone who [learned to be a great investor] with great rapidity. Warren has gotten to be one hell of a lot better investor over the period I've known him, as have I. So the game is to keep learning. You gotta like the learning process.

I've watched Warren for decades. Warren has learned a lot, which has allowed him to [expand his circle of competence so he could invest in something like PetroChina].

If you're going to be an investor, you're going to make some investments where you don't have all the experience you need. But if you keep trying to get a little better over time, you'll start to make investments that are virtually certain to have a good outcome. The keys are discipline, hard work, and practice. It's like playing golf - you have to work on it.

If you don't keep learning, other people will pass you by.

2012年2月12日日曜日

めざましい成功を収めるには(マイケル・バーリ)

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遅まきながらマイケル・バーリという投資家のことを知りました。サブプライム・ローン危機を題材にした『世紀の空売り』に登場する隻眼の相場師です。Vanity Fairに同書の抜粋が紹介されており、シリコン・バレーの自宅のオフィスで撮影された彼の写真が印象に残っていました。住宅バブルが傾くほうに賭けた彼ですが、本来は根っからのバリュー投資家です。今回は同書からの引用になります。

まずは、マネー・マネージャーになる前の彼に対する寸評です。

「何よりまず、マイク・バーリはいつこんなことをしているんだ、って思ったよ。本業は研修医だろう?こっちの目に入るのは、彼の一日のうち医者じゃない部分だけで、なのにすごいとしか言いようがない。バーリは自分の取引内容をみんなに公開している。みんなはリアルタイムでそれをまねしてる。ドットコム・バブルのまっただ中に、バリュー投資を実践しているんだ。バリュー志向の株を買ってて、それはうちの会社も同じなんだが、うちは損をしている。顧客も失ってる。ぽっと出てきたバーリは、勝ち続けだ。利回り50パーセント。常識はずれだよ。人間わざじゃない。あっけに取られて見てたのは、うちの会社だけじゃないだろう」 (p.71)


次はバーリの発言です。

投資は一個の定石に煎じ詰められるものではないし、ひとつのロールモデルから習得できるものでもない、というのがバーリの考えだった。バフェットについて学べば学ぶほど、そのまねはできないという思いが強くなった。バフェットから得られた教訓は、めざましい成功を収めたければ、めざましい非凡さを身につけよというものだ。バーリは言う。

「偉大な投資家になろうと思ったら、自分の身の丈にあった流儀を持たなくてはなりません。ウォーレン・バフェットは、ベン・グレアムのよいところを全部学び取りながら、ベン・グレアムのまねをせず、自分の道へ足を踏み出し、自分のやりかたで、自分のルールで、金を動かしました。そのことに気づいたとき、わたしはすぐに、偉大な投資家になる方法を教えてくれる学校などないという真理を胸に刻みました。そんな学校があったら、世界一人気のある学校になって、とてつもなく高い授業料を取ることでしょう。だから、そんな学校は存在しないんです」

投資とは、自分ひとりの力で、自分にしかできないやりかたで、学ぶべきものなのだ。 (p.68)


彼のプライベート・ファンドのWebサイトはこちらです。メディアで取り上げられた記事や寄稿へのリンクが載せられています。また過去の年次報告書を読むと、けっこうな下落だった2001年に55%のゲインをあげています。見事です。

2012年2月11日土曜日

ゴールドや債券よりも株式がよい理由(ウォーレン・バフェット)

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ウォーレン・バフェットはアメリカの経済金融誌Fortuneに時折寄稿していますが、今週号(2/27)の記事Warren Buffett: Why stocks beat gold and bondsでは代表的な投資先3つ(株式、債券、金)のうち、株式がよいことを改めて説いています。ウォーレンがきまぐれに話題を取り上げることは少ないので、それなりのサインや警鐘をこめているかと思われます。一部を抜粋してご紹介します。(日本語は拙訳)

まずは債券などの通貨ベースの投資についてです。

通貨に裏付けられた投資先としては、MMF、債券、モーゲージ証券、銀行預金などがあります。それらはたいてい安全な投資とみなされていますが、実際は最も危険な資産に含まれるものです。ベータ[=価格変動の相対的な度合い]はゼロかもしれませんが、リスク[=バフェット言うところの購買力の低下]は大きいのです。

数世紀にわたって、それらの投資対象は多くの国で投資家の購買力を低下させてきました。発行条件通りに利息が支払われ、満期償還されてもです。この好ましからぬ事態は、今後も繰り返されることでしょう。各国政府は貨幣の究極的な価値を決定しますが、ときにはシステミックな要因が働いて、インフレを招くような政策をとらせることにもなるでしょう。が、そのような政策は、ときには手のつけようがなくなるものです。

Investments that are denominated in a given currency include money-market funds, bonds, mortgages, bank deposits, and other instruments. Most of these currency-based investments are thought of as "safe." In truth they are among the most dangerous of assets. Their beta may be zero, but their risk is huge.

Over the past century these instruments have destroyed the purchasing power of investors in many countries, even as these holders continued to receive timely payments of interest and principal. This ugly result, moreover, will forever recur. Governments determine the ultimate value of money, and systemic forces will sometimes cause them to gravitate to policies that produce inflation. From time to time such policies spin out of control.


現在の状況では、通貨関連の投資には手を出したくありません。それでも、バークシャーとしては、主に短期のものになりますが、その手の投資先に多大な資金を投じています。

Under today's conditions, therefore, I do not like currency-based investments. Even so, Berkshire holds significant amounts of them, primarily of the short-term variety.


次に、ゴールドへの投資についてです。

この手の投資が成功するには、買い手が増えていかなければなりません。同様にその買い手たちも、これからも別の買い手が増えると信じているからこそ、集まってくるのです。つまり保有者たちの心にあるのは、資産自体が何かを生みだすかではなく、むしろ他人がもっと熱心に欲するだろうと信じていることなのです。まあ、ゴールドはこれからもじっとしたままでしょうが。

This type of investment requires an expanding pool of buyers, who, in turn, are enticed because they believe the buying pool will expand still further. Owners are not inspired by what the asset itself can produce -- it will remain lifeless forever -- but rather by the belief that others will desire it even more avidly in the future.


確かに、ゴールドは産業用や装飾用にも使われています。しかし、それらの需要は限られており、新産金を吸収できるほどではありません。

True, gold has some industrial and decorative utility, but the demand for these purposes is both limited and incapable of soaking up new production.


今日では、世界中のゴールドは合計で17万トンになります。これを全て集めて溶かすと、一辺が20メートル強の立方体をつくれます。野球場の内野にすっぽり入るような感じの大きさです。現在の価格が1オンス1,750ドルなので、立方体全部では約750兆円です。この立方体を「金の山」[pile Au]と呼びましょう。

次に、同じ金額をかけて「商いの山」[pile Business]を作ってみましょう。まずアメリカ合衆国の全ての農地を買い上げます。総面積は160万平方キロメートルで[=およそ日本4個分]、毎年の生産高は16兆円になります。それからエクソン・モービル16社分を付け足します。同社は純利益3.2兆円で、世界で最も利益をあげている企業です。それだけ買っても、手元にはまだ80兆円残ります(これだけ派手に買い物をした後ですから、すっからかんになったとは感じないでください) 。どうでしょう、750兆円を持っている投資家が「商いの山」をやめて「金の山」を選ぶなんて、想像がつくでしょうか。

Today the world's gold stock is about 170,000 metric tons. If all of this gold were melded together, it would form a cube of about 68 feet per side. (Picture it fitting comfortably within a baseball infield.) At $1,750 per ounce -- gold's price as I write this -- its value would be about $9.6 trillion. Call this cube pile A.

Let's now create a pile B costing an equal amount. For that, we could buy all U.S. cropland (400 million acres with output of about $200 billion annually), plus 16 Exxon Mobils (the world's most profitable company, one earning more than $40 billion annually). After these purchases, we would have about $1 trillion left over for walking-around money (no sense feeling strapped after this buying binge). Can you imagine an investor with $9.6 trillion selecting pile A over pile B?


最後に、株式投資についてです。

我が国のビジネスは、市民の求める商品やサービスを効率的に提供し続けるでしょう。たとえてみると商業的な「牛」といえるものですが、世紀をこえて生き永らえ、ますます大量の「ミルク」を出してくれるのです。その価値は交換手段[=貨幣]によってではなく、どれだけ「ミルク」を出してくれるかで決まるものでしょう。ミルクの売上から得られる利益は複利で増えて飼い主へ報います。20世紀の間に、ダウ平均が66から11,497へ上昇したようにです。(それから、配当も山ほどありました)

Our country's businesses will continue to efficiently deliver goods and services wanted by our citizens. Metaphorically, these commercial "cows" will live for centuries and give ever greater quantities of "milk" to boot. Their value will be determined not by the medium of exchange but rather by their capacity to deliver milk. Proceeds from the sale of the milk will compound for the owners of the cows, just as they did during the 20th century when the Dow increased from 66 to 11,497 (and paid loads of dividends as well).


バークシャーは、第一級のビジネスをより多く所有することを目標としています。できればまるごと所有したいのですが、それなりの量の株式を保有することもあります。この種の投資はある程度の期間でみれば、先にあげた3種類の投資の中で大きな勝ちをおさめるものと信じています。そして、ずっと大切なのは、もっとも安全だろうということです。

Berkshire's goal will be to increase its ownership of first-class businesses. Our first choice will be to own them in their entirety -- but we will also be owners by way of holding sizable amounts of marketable stocks. I believe that over any extended period of time this category of investing will prove to be the runaway winner among the three we've examined. More important, it will be by far the safest.


ウォーレンの主張は常に一貫しており、少し先の未来をみすえています。必ず当たるわけではないですが、彼やチャーリー・マンガーによる予兆めいた発言には、耳を傾けたいと思います。個人的には少しばかり銀に投資しているので、ちょっと耳の痛い話でした。

2012年2月9日木曜日

TOPIX Core30ひとかじり(4) コマツ

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当社の本社所在地は、東京都港区赤坂二丁目3番6号。最寄り駅は東京メトロ銀座線溜池山王駅で、出てすぐのところです。溜池の交差点に面しているビルとは気がつきませんでした。Googleの写真をみると、竣工時の年代を感じさせるビルです。屋上の庭園は有名なようですね。

さて、本題になります。今回は有価証券報告書と20-Fを読んでみました。またキャタピラーの10-Kも若干参考にしました。

(1)現在の業績
好調です。今期末の予想では、売上高2兆円、純利益が1,860億円です。一方の前期実績は、1.84兆円と1,500億円でした。中国市場は低迷していますが、鉱山部門が世界的に好調を維持しています。目につくのが地域別売上構成。偏りが少ないです。意図したものでしょうが、見事な手綱さばきです。

(出典:当社Webサイト)








業界での位置づけは第2位。最大手キャタピラーには離されていますが、後続の日立建機、Volvo、CNH、斗山、現代、John Deere等は、売上や純利益で大きく離しています。両社の築いたMoatは大きいものと思われます。

(2)この10年間の上げ潮にうまくのった
以前からジム・ロジャーズが主張していた通りになりましたが、商品の強気相場が続いています。例えば、以下はLMEの銅価格です。1998年から2012年初までのチャートで、1目盛が1年です。2000年当初は停滞していましたが、2003年頃からは上昇基調です。








建設・鉱山機械業界は恩恵にあずかったようで、当社の売上高は10年前と比べて2倍になっています。キャタピラーの売上も同様に推移しています。









(3)従業員一人あたりの生産性が高い
当社対キャタピラーの比較ですが、一人当たり売上高(2010年度)は、およそ45対33。一方、純利益になると3.8対2.1です。相対的には、高付加価値で勝負していることになります。(1ドル=80円で換算)

(4)KOMTRAX
機器の稼働監視を行う本システムは当社の強みとして謳われていますが、他社でも同様のシステムを展開しています。しかし当社は導入時期が早く、稼動台数は1年半ほど前の時点で17万台になっています。先行者利益を享受できていると考えられます。

(出典:当社WebサイトのKOMTRAX紹介映像より)








例えば、野路社長によるKOMTRAXの紹介映像が当社Webサイトに掲載されており、その中でKOMTRAXで収集した稼動データを3ヶ月間先までの生産計画立案に使っていると発言されています(6分40秒)。「母数が大きいと、的確な分析がしやすくなる」とも。需要予測が的確であれば、サブASSYなどの部材を無駄なく先行手配できるようになり、納期がタイトな受注競争では戦いやすくなります。

(5)今後の見通し
中長期のマクロ要因がどうなるのかうまく判断できませんが、どちらかといえば追い風と思われます。特に主力のアジア太平洋地域は、大きな伸びしろが期待できそうです。

(6)株価について
現時点の株価(2,100円強)は、やや割安な程度にみえます。もちろん、商品市況が一時的にでも大きく下落すれば、当社株価もそれに追随するでしょう。しかし、当社の強力なMoatと今後のマクロ環境(資源高と新興国開発)を考えると、10年スパンでみれば安心して投資できる企業と思われます。