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2015年4月14日火曜日

女性が競争に加わるとき(『競争の科学』)

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読み進めるうちにすなおに引き込まれる本とは、読み手の興味と一致しているか、あるいは書き手の筆力や構成がすぐれているか、そのいずれかのことが多いように感じます。少し前に読んだ本『競争の科学』はいかにも現代風の装丁で、手にした段階ではそれほど興味をひきませんでした。ところが内容のほうは先に示した両方を満たしており、おおいに楽しめ、そして勉強になった本でした。個人的な今年の上位にあげたい一冊です。

今回ご紹介するのは、競争に対して女性がどのような意識を持っているのかを説明した箇所です。これと同じ話題は前にもとりあげましたが、大切なことは繰り返し触れるのが師匠の教えです。

成功の見込みが高いとき、男女の間に野心の差はなくなる。むしろ女性の方が積極的になる。男性は、勝つ見込みの少ない勝負にも賭けることがある。ときには、愚かしいまでに勝ち目のない戦いに挑むこともある。だが、女性はそのような賭けをしない。(p.130)

フルトンが説明する。「男性が戦略的でないということではなく、女性の方がコストやメリットを強く意識しているのだ。勝つ見込みが変わっても、男性が競争に参加するかどうかはあまり変化がない。だが女性が競争に参加するかどうかは、勝つ見込みと深く結びついている。女性は、勝てるかどうかに極めて敏感なのだ」(中略)「女性は極めて戦略的に競争に参加するかどうかを考え、極めて慎重に行動している」フルトンは言う。(p.132)

女性は、チャンスがあると確信するとき、男性よりも積極的に競争に参加する。また、負けて時間を浪費することを、男性よりも強く拒絶する。(p.133)

競争とは、負けのリスクをとることだ。競争に投資(時間、金、感情)をするほど、負けて失うものも多くなる。このリスクの判断方法が、女性(この場合は政治家)と男性とでは異なる。(p.135)

勝者総取り方式を選択した73%の男性の計算能力は、平均レベルを上回るものではなかった。にもかかわらず、男性はそれでも自分は勝てるという誤った考えを持っていたのである。

対照的に、女性は自らの能力を適切に評価していた。ほとんどの女性は、負ける確率が高いという理由で、勝者総取り方式には参加しなかった。だがこれは、女性には生得的にリスク回避志向があるということではない。女性は、正確にリスクを認識しているのである。女性は競争そのものを恐れているのではないし、競争を楽しんでいないわけでもない。女性は、負ける可能性を認識することに優れているだけなのだ。

一方の男性は、負ける可能性をうまく認識できず、自信過剰である。男性は、勝利だけに注目する傾向がある。競争を挑まれると、簡単には抵抗できない。(p.139)

2015年4月12日日曜日

会計士の決めた慣行を税務当局が認めない例(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーの講演「2003年に露呈した巨大金融不祥事について」の4回目です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

クァント・テック社の経営者として新たに選任された者は早々に、会社をうまく経営しても現在以上の割合で売上高の伸び率を高めたり、利益率を増加させられないことに気づきました。そのどちらにおいても、創業者がすでに最適な状態へと到達させていたからです。さらに新任経営者らは、うまく機能しているエンジニアリング文化に対して、下手に手を出す気もありませんでした。それゆえに新任者が惹きつけられたのは、彼らが言うところの「現代的な金融工学」を活用することでした。報告利益を増大させるためには、合法的と思われる方法は何であろうとすべてを速やかに実行する必要がありました。そのためにはまず、単純ながらも大きな変更を実施することになりました。

なんとも奇妙な運命の皮肉によって、クァント・テックの創業者が嫌っていたストックオプションに関する会計慣行は、新たな経営者の仕事を非常に楽なものにしました。そして最終的にはクァント・テック社の評判を失墜させることになります。当時の米国では次のような会計慣行がありました。まず従業員がオプションを付与されて、次にその従業員に対して市場で容易に売却できる株式を市場価格未満で発行したとき、従業員に対して値引きした部分はほぼ現金と等しいながらも、会社の報告利益を決定する上で報酬費用に含めてはならない、とするものでした。会計士業界はこの驚くべき特異な会計慣行を、もっとも賢明かつ倫理的なメンバーらが反対したにもかかわらず、選択しました。概して企業の経営者とは、雇用元企業の株を対象にしたオプションを行使して得られる利益が、その企業の業績を決定する費用に含まれないことを好むもので、それゆえの反対意見だったのです。しかし会計士業界が驚嘆すべき特異な決定をくだしたのは、単に要請に従っただけのことでした。裕福で確固たる地位にある会計士とはまったく異なる人たちであれば、その手の要請に従うことはよくありました。ただし通常それは、不確実で権力を持たない、つまり「食い扶持を出してくれる者のために歌う」人たちでした。幸いなことに、所得税を管轄する当局は会計士業界とは違っていました。会計士のように驚愕特異な会計上の概念を抱くことはありませんでした。そこでは初歩的な常識が勝ったのです。ストック・オプション行使時に発生する割引分の金額は明白なる報酬費用として扱われ、税法上の所得を決定する際の控除対象とされました。

The newly installed Quant Tech officers quickly realized that the company could not wisely either drive its revenues up at an annual rate higher than the rate in place or increase Quant Tech profit margin. The founder had plainly achieved an optimum in each case. Nor did the new officers dare tinker with an engineering culture that was working so well. Therefore, the new officers were attracted to employing what they called "modern financial engineering" which required prompt use of any and all arguably lawful methods for driving up reported earnings, with big, simple changes to be made first.

By a strange irony of fate, the accounting convention for stock options that had so displeased Quant Tech's founder now made the new officers' job very easy and would ultimately ruin Quant Tech's reputation. There was now an accounting convention in the United States that, provided employees were first given options, required that when easily marketable stock was issued to employees at a below-market price, the bargain element for the employees, although roughly equivalent to cash, could not count as compensation expense in determining a company's reported profits. This amazingly peculiar accounting convention had been selected by the accounting profession, over the objection of some of its wisest and most ethical members, because corporate managers, by and large, preferred that their gains from exercising options covering their employers' stock not be counted as expense in determining their employers' earnings. The accounting profession, in making its amazingly peculiar decision, had simply followed the injunction so often followed by persons quite different from prosperous, entrenched accountants. The injunction was that normally followed by insecure and powerless people: "Whose bread I eat, his song I sing." Fortunately, the income tax authorities did not have the same amazingly peculiar accounting idea as the accounting profession. Elementary common sense prevailed, and the bargain element in stock option exercises was treated as an obvious compensation expense, deductible in determining income for tax purposes.

2015年4月10日金曜日

強気相場で備えること、弱気相場で腹を決めること(セス・クラーマン)

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ヘッジファンドのマネージャーであるセス・クラーマンが書いた2014年度の顧客投資家向けレターが、以下のサイトで一部引用されています。その中から印象に残った2段落を拙訳付きでご紹介します。

Baupost Group 2014 Letter: Market Psychology (ValueWalk)

はじめは、強気相場でやっておくべきことについて。
経験豊富な投資家であっても、弱気相場では苦しむものです。だからこそ何よりも重要なのが、強気相場にいるうちに来たる弱気相場に備えようと、人としてできるあらゆることを実行しておくことです。プロセスや手順を改善し、チームを鍛え上げ、自分たちの路線を守り、ポートフォリオに借入れを組み込まず、売却時の原則を守り続ける。(中略)そして将来やってくる機会を逃さぬように、現金を保有しておくことです。

Even experienced investors struggle in bear markets. That's why it is of paramount importance to do everything humanly possible in a bull market to prepare for the next bear market: Improve processes and procedures. Train up your team. Stick to your knitting. Avoid portfolio leverage. Maintain sell discipline…Hold some cash in reserve to take advantage of future opportunity…

もうひとつは、弱気相場でやるべきことについて。
肝心なのは、弱気相場と言ってもしょせんは市場のひとつだと覚えておくことです。市場という場所は需要と供給によって、また強欲と恐怖によって左右されます。ベンジャミン・グレアムが記したように、そこで形成されるものは投票機であって秤量機ではありません。市場を占めつくすのは感情に支配された人たちです。強気相場が永遠には続かないように、そして弱気相場も同じように、(中略)弱気相場であらわれる安値の機会に乗じるには、下げている最中に買わねばなりません。おそらくは、下げているあいだずっとです。どん底を完ぺきにとらえる術はありませんし、資金の相当な部分を投じる方法として他には考えられません。

it's crucial to remember that a bear market is still a market. Markets are driven by supply and demand, and greed and fear. They constitute, as Benjamin Graham noted, a voting machine, not a weighing machine. Emotion-driven individuals dominate markets, and just as no bull market goes on forever, neither does any bear market…To take advantage of the low prices in a bear market, you have to have been buying on the way down, perhaps all the way down. There is no way to perfectly time the bottom, and no other way to put substantial capital to work.

2015年4月8日水曜日

1982年、バリュー投資家の出番が来た年(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーの講演「2003年に露呈した巨大金融不祥事について」の3回目です。話が動き出してきました。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

クァント・テック社は強力な財務基盤と生産的な社風を備え、急速に変化成長するビジネスにおいて臨界量に達した専門能力を有していました。御大のやりかたに従った同社は1982年までに、その後20年間において売上高成長率が年率20%、売上高利益率が10%を維持できる水準に達していました。20年間が経過した後の2003年以降には、利益率10%は非常に長い間維持できるでしょうが、売上高の伸び率は年率4%へと縮小すると思われます。しかし低成長が不可避となる時期がいつから始まるものか、同社のだれにも正確にはわかりませんでした。

クァント・テックの大将がとっていた配当政策は単純そのものでした。配当金を一切払わなかったのです。そうするかわりに、すべての利益を現金等価物として単に積み上げていきました。

普通株の領域で本当に熟達した投資家であればだれでも、現金豊富なクァント・テック社は1982年の投資先としてめざましい機会をもたらすとわかったでしょう。その輝かしい将来にもかかわらず、市場が付けていた値段は純利益の15倍にすぎない15億ドルだったからです。麗しき将来性とくらべて時価総額が低かったのは、1982年には他のすばらしい普通株も15倍かそれ以下で売られていたせいでした。金利が高かったことの当然の成り行きとして、そのような情勢が広まっていたのです。そして普通株に分散投資した典型的なポートフォリオを有する者は、それ以前に何年も享受していたような成果を得られずに失望した時期でした。

1982年にクァント・テック社の時価総額が低かったことで、同社の取締役は御大が亡くなって早々に不満や不愉快な想いを抱くようになりました。賢明なる取締役であれば、そのようなときにはクァント・テック社の株を大々的に買うものです。手元の資金を使い果たし、さらには同じことのために資金を借りたでしょう。しかし1982年当時の伝統的な企業の知恵からすると、そのような決定は許されませんでした。そこで取締役会は伝統的な道を選びました。新たなCEOとCFOを社外から雇ったのです。それも、当時すでに従業員向けのストック・オプション制度を採用しており、報告利益の20倍に達する時価総額が付いていた会社からです。ところが、その会社の財務基盤はクァント・テック社より貧弱で、純利益の成長率もクァント・テックよりゆるやかでした。これが示すことは明白です。その新経営陣を雇った理由は、クァント・テック社の取締役諸氏が「会社の時価総額を可能な限りすみやかに高めたい」と望んでいたからでした。

Possessing a strong balance sheet and a productive culture and also holding a critical mass of expertise in a rapidly changing and rapidly growing business, Quant Tech, using the old man's methods, by 1982 was destined for twenty years ahead to maintain profits at ten percent of revenues while revenues increased at twenty percent per year. After this twenty years, commencing in 2003, Quant Tech's profit margin would hold for a very long time at ten percent while revenue growth would slow down to four percnt per year. But no one at Quant Tech knew precisely when its inevitable period of slow revenue growth would begin.

The old man's dividend policy for Quant Tech was simplicity itself: He never paid a dividend. Instead, all earnings simply piled up in cash equivalents.

Every truly sophisticated investor in common stocks could see that the stock of cash-rich Quant Tech provided a splendid investment opportunity in 1982 when it sold at a mere fifteen times earnings and, despite its brilliant prospects, had a market capitalization of only $1.5 billion. This low market capitalization, despite brilliant prospects, existed in 1982 because other wonderful common stocks were also then selling at fifteen times earnings, or less, as a natural consequence of high interest rates then prevailing plus disappointing investment returns that had occurred over many previous years for holders of typical diversified portfolios of common stocks.

One result of Quant Tech's low market capitalization in 1982 was that it made Quant Tech's directors uneasy and dissatisfied right after the old man's death. A wiser board would then have bought in Quant Tech's stock very aggressively, using up all cash on hand and also borrowing funds to use in the same way. However, such a decision was not in accord with conventional corporate wisdom in 1982. And so the directors made a conventional decision. They recruited a new CEO and CFO from outside Quant Tech, in particular from a company that then had a conventional stock option plan for employees and also possessed a market capitalization at twenty times reported earnings, even though its balance sheet was weaker than Quant Tech's and its earnings were growing more slowly than earnings at Quant Tech. Incident to the recruitment of the new executives, it was made plain that Quant Tech's directors wanted a higher market capitalization, as soon as feasible.

2015年4月6日月曜日

2015年デイリー・ジャーナル株主総会(1)今振り返るウェルズ・ファーゴ

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チャーリー・マンガーが会長を務めるデイリー・ジャーナル社の株主総会が3月下旬に開催されました。昨年は決算報告のごたごたで時期が遅れたようで、前回からあまり離れていません。チャーリーに対する質疑応答は以下のWebサイトなどに掲載されています。辛口の回答が多いですが、このような時期こそ望まれるものだと思います。

Charlie Munger Daily Journal 2015 Meeting [FULL NOTES] (Value Walk)

このシリーズでは同サイトの記事から一部を引用します。なお拙訳の末尾にあるページ番号は、リンク先にあるPDFファイルのページを示しています。

読書について。
<質問> たいへんな読書量ですが、たくさんのお子さんがおられますので、どうやってバランスをとっていますか。

<マンガー> 読み物をしたいときは、他のことはすべて遠ざけます。大量に読まないのに知恵が深い人など、知りませんね。同時並行で作業をする人は、高くついていると思いますよ。物事を深く考えられないわけですから、他人をわざわざ有利にしてあげているわけです。私なら、そのやりかたではうまくいかないですね。私が人生を通じて成功できたのは頭脳の明晰さではなく、集中して考える時間を長く持ったからです。(2ページ目)

How did you balance reading that much and having so many children?

When I want to read something I tune everything else down. I don't know a wise person who doesn't read a lot. I think that people who multitask pay a huge price - they can't think of anything deeply, giving the world an advantage, which they shouldn't give. I wouldn't succeed doing it. I did not succeed in life by intelligence - I succeeded because I have a long attention span.

2008年の金融危機の際に、チャーリーがデイリー・ジャーナル社の余剰資金を使ってウェルズ・ファーゴ株を買った件について[参考記事]。
<マンガー> ウェルズ・ファーゴを買ったのは8ドルのころでした。そのような好機がもう一度来るとは思えませんね。(3ページ目)

We bought Wells Fargo stock when it was at $8, and I don't think we will have another opportunity like that.

高い希望を抱く投資家に対する冷静な助言。
<質問> 投資によって金銭的自由を獲得したいと考える人に対して、なにかご助言をお願いします。

<マンガー> 私の時代には、投資で成功するのはもっと簡単でした。合理的かつ規律に従って行動すれば、年率10%の追い風を受けられたのです。しかし今では、世の中全体が10%を得られるとは思いません。昔と違ってむずかしくなるでしょうし、大型株を保有したままでは不可能な数字です。(3ページ目)

What is your advice for people who try to achieve financial freedom through investing?

In my life time success in investing was easier. If you were rational and disciplined you had a tailwind of 10% per annum. Now, I doubt that the world will be able to get 10%, so it will be more difficult; and it is impossible if you are staying in big stocks.