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2013年8月16日金曜日

共食いをさがせ(モーニッシュ・パブライ)

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過去の投稿でファンド・マネージャーのモーニッシュ・パブライを取りあげました。他人のアイデアを盗むことを良しとするのが彼の信条でしたが、そのような振る舞いをチャーリー・マンガーが激賞していたこともあり、個人的には気にかかるところがありました。今回たまたまパブライ氏のインタビュー記事に出会い、疑問が氷解しました。このインタビューで彼は、あまりに有名な「ウォーレンとのランチ」から得られた教訓を明かしてくれています。(日本語は拙訳)

Mohnish Pabrai: What I've Learned From Warren and Charlie (Fool.com)

はじめはウォーレン・バフェットとの会話からです。マネー・マネージャーとして活躍しはじめのころに行動を共にしていたリック・ゲリンの話題です。

それからリック・ゲリンはほとんど姿を消してしまいました。最近になってリックにお会いしましたが、ともかく彼は消えていたのです。そこでウォーレンに聞いてみました。「リックとは連絡をとっていますか。彼はどうなったのでしょうか」。ウォーレンは答えました。「よく連絡していますよ。ところであなたがすごい金持ちになるのは、チャーリーやわたしにはわかっていましたよ。われわれは急いで金持ちになろうとはしなかったのですが、そうなることはわかっていたからです」。ウォーレンは話をつづけました。「リックはわたしたちに劣らず頭が切れる人でしたが、急ぎすぎでした。1973年や74年の市場低迷時のことですが、これは世間に知られているところもありますが、リックは実のところ信用取引をしていました。その2年間で株式市場は70%近く下落し、彼はマージン・コールをバカみたいなほどくらったのです」。ウォーレンが言うように、彼は自分のバークシャー株をウォーレンに買ってもらうことになりました。「リックのバークシャー株を1株40ドル以下で買いました、借入れのせいで40ドルで株を手放すことになったのですよ」。

ウォーレンは話をさらに進めました。「わずかに平均を超えるぐらいの投資家でも、収入より少ない金額でやりくりしていれば、辛抱をつづけるうちにいずれは金持ちにならざるをえないものです」。まとめてみましょう、私の質問はこうでした。「リックはどうなったのか」。そして教訓はこうです。「借入れに頼るな」、さらには辛抱することも必要です。これらの特性は彼が折にふれてとりあげるものですが、あえて私から申し上げれば、彼からじかにそのような話を聞いたことで、なおさら心に焼きつけられました。

Then Rick Guerin pretty much disappeared off the map. I've met Rick recently, but he disappeared off the map, so I asked Warren, are you in touch with Rick, and what happened to Rick? And Warren said, yes, he's very much in touch with him. And he said, Charlie and I always knew that you would become incredibly wealthy. And he said, we were not in a hurry to get wealthy; we knew it would happen. He said, Rick was just as smart as us, but he was in a hurry. And so actually what happened -- some of this is public -- was that in the '73, '74 downturn, Rick was levered with margin loans. And the stock market went down almost 70% in those two years, and so he got margin calls out the yin-yang, and he sold his Berkshire stock to Warren. Warren actually said, I bought Rick's Berkshire stock at under $40 apiece, and so Rick was forced to sell shares at ... $40 apiece because he was levered.

And then Warren went a step further. He said that if you're even a slightly above-average investor who spends less than they earn, over a lifetime you cannot help but get rich if you are patient. And so the lesson. My question was, what happened to Rick? The lesson was, don't use leverage, right? And be patient. These are attributes he's talked about plenty, but I would say that it got seared in pretty solidly after hearing the format in which he put it.

リック・ゲリン氏の名前は、過去記事で登場していたことがありました。

つづいてチャーリー・マンガーから教わったことです。

つぎにチャーリーですが、彼もまた明晰な思考という点で非常に優れた人だと思います。チャーリーといちど夕食をご一緒したときのことだったと思いますが、つぎのような話をしてくれました。これは公衆の場で話されてはいないと思いますが、たしかに彼は話してくれたのです。もし投資家がまさに次の3つのことをすれば、いずれは他の人よりもずっとよい成績をおさめられるだろう、と。彼の言った3つとはこうです。ひとつめは「他のすばらしい投資家が何をしているのか、つぶさに観察すること」。実際のところ、チャーリーは他の13F[証券取引委員会に提出する保有報告書]を模倣していたのですよ。知っていましたか。だから彼は、他の偉大な賢人がやることを見よと言っているのです。

彼の言った二つめとは「共食いをさがせ」です。彼の言わんとすることは、自社株を大量に買い戻している会社を注視せよということです。自分自身を食いつぶす様子をとらえて、彼はそのような会社を「共食い」と呼んでいます。

三つめに彼が言ったことは「スピンオフ銘柄をじっくり研究せよ」です。スピンオフについてはジョエル・グリーンブラットも一冊つかって書いています。『You Can Be a Stock Market Genius』[邦訳:グリーンブラット投資法]です。それら3つの特性に焦点をしぼった投資をすればよりよい成績をおさめられるといった類のことをチャーリーが話すのを聞いて、これは興味ぶかいことだと感じました。

And with Charlie, I think he's also been a tremendous -- I would just say clarity of thought. I think one time I was having dinner with Charlie, and he mentioned that if an investor did just three things -- and I don't think Charlie's talked about this publicly -- but he said if an investor just did three things, the end results would be vastly better than the rest. And he said one is carefully look at what the other great investors have done. So, in fact, Charlie was endorsing copying off the 13Fs, right? So he said look at what other great minds are doing.

And the second thing he said is, look at the cannibals. And what he meant by "look at the cannibals" is, look carefully at the businesses that are buying back huge amounts of their stock. Because they're eating themselves away, so he called them the cannibals.

And the third is, he said, carefully study spinoffs. Of course, you know Joel Greenblatt has a whole book on spinoffs: You Can Be a Stock Market Genius Too. And so I found it interesting that Charlie basically said that investment operation that focused on these three attributes would do exceedingly well.


パブライさん、どうもありがとう。

2013年8月14日水曜日

レス・シュワブ・タイヤが成功した理由(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによる講演『経済学の強みとあやまち』の12回目です。前回だされたレス・シュワブ・タイヤの問題に対する答えです。(日本語は拙訳)

シュワブ氏には乗れる波があったでしょうか。このように質問を考えることで、答えがでてきます。日本人は、タイヤの商売を一から始めて巨大になりました。ですからこの御仁も、早い段階のどこかでその波に乗ったにちがいありません。それにつづいてゆっくりと成功をおさめていく間は、他にも理由があったはずです。たぶんまちがいないでしょうが、この人は正しいことを山ほどやったのでしょう。その中でもきっとやったと思われるのが、マンキューが言うところの「動機づけがもたらす強力な原動力」を組み合わせることです。きわめて巧妙な動機づけのしくみを使って、自分の会社の人たちを扱っていたことでしょう。たくみな人材登用のシステムがあったり、宣伝が上手だったのでしょう。彼は芸術的な才能を持っていたのですね。だから、日本製タイヤが攻めてくる波に乗る必要がありました。彼らと同じように、日本人も成功していたからです。才能あふれる人が熱狂的なまでに正しいことを次々と行い、賢明な仕組みによって従業員をうまく使ったのです。このように、答えはそれほどむずかしいものではありません。際立った成功の原因となるものが他に考えられるものでしょうか。

ビジネススクールの卒業生を雇っても、みなさんほどにはこの手の問題にうまく対処できません。彼らをあまり雇わないのも、たぶんそのせいだと思います。

Is there some wave that Schwab could have caught? The minute you ask the question, the answer pops in. The Japanese had a zero position in tires, and they got big. So this guy must have ridden that wave some in the early times. Then, the slow following success has to have some other causes. And what probably happened here, obviously, is this guy did one hell of a lot of things right. And among the things that he must have done right is he must have harnessed what Mankiw calls the superpower of incentives. He must have a very clever incentive structure driving his people. And a clever personnel selection system, etc. And he must be pretty good at advertising. Which he is. He's an artist. So, he had to get a wave in Japanese tire invasion, the Japanese being as successful as they were. And then a talented fanatic had to get a hell of a lot of things right and keep them right with clever systems. Again, not that hard of an answer. But what else would be a likely cause of the peculiar success?

We hire business school graduates, and they're no better at these problems than you were. Maybe that's the reason we hire so few of them.


なにげない文章ですが、ビジネスで成功する上での重要なことをチャーリーは示していると思います。それは自助努力だけでなく、「波に乗る」とか「てこの力を借りる」といった他者の力をうまく利用することの大切さです。チャーリーは伝記を読むことを勧めているので、ジョン・D・ロックフェラーやアンドリュー・カーネギー、ベンジャミン・フランクリンといった成功者の伝記を以前に読んでみました。大物になる前の彼らは、別の成功者とめぐりあうきっかけを育て、他人から与えられたチャンスを逃すことなく、次の大きな成功へうまくつなげていると感じました。

「波に乗る」とはいい言葉だと思います。波をつかむ技量や才覚や度胸も必要ですが、波がこなければ始まらないという運の要素が含まれていて、現実を冷徹にとらえていると思います。

2013年8月12日月曜日

もうひとつのミクロ経済的な問題(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによる講演『経済学の強みとあやまち』の11回目です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

今回もチャーリーから問題が出されています。つづきの文章は次回にご紹介します。

今度はもう少しむずかしい問題です。北西部にあるタイヤ販売のチェーン店レス・シュワブ・タイヤは、50年間かけてゆっくりと発展してきました。まさに一歩ずつの前進でした。同社は創業のころから、グッドイヤーのようなあらゆる種類のタイヤを製造する大企業が経営する店と競争してきました。自社製品を優先する以上、そういった企業の系列タイヤ店にはコスト面で大きな優位がありました。その後レス・シュワブ社は、コストコやサムズ・クラブ[ウォルマート]といった激安店、昔はシアーズ・ローバックなどが有名だった業界ですが、それらとの競争に打ち勝っていきます。そして現在のシュワブ社は、何十億ドルもの売り上げをあげるようになりました。今では80歳代となった[創業者の]レス・シュワブ氏は正規の教育を受けなかったものの、すべてのことを成しとげてきたのです。さて彼はどうやったのでしょう(一時中断)。答えがひらめく人はそれほど多くはいませんでしたが、ではミクロ経済的にすいすいと考えていきましょう。

Now I'll give you a harder problem. There's a tire store chain in the Northwest that has slowly succeeded over fifty years, the Les Schwab tire store chain. It just ground ahead. It started competing with the stores that were owned by the big tire companies that made all the tires, the Goodyears and so forth. And, of course, the manufacturers favored their own stores. Their “tied stores” had a big cost advantage. Later, Les Schwab rose in competition with the huge price discounters like Costco and Sam's Club and before that Sears, Roebuck and so forth. And yet, here is Schwab now, with hundreds of millions of dollars in sales. And here's Les Schwab in his eighties, with no education, having done the whole thing. How did he do it? (Pause). I don't see a whole lot of people looking like a light bulb has come on. Well, let's think about it with some microeconomic fluency.

2013年8月10日土曜日

投資におけるリスクの性質(セス・クラーマン)

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ファンド・マネージャーのセス・クラーマンの著書『Margin of Safety』からご紹介です。今回はリスクについて、ひきつづき第7章「バリュー投資思想の本質をなすもの」(At the Root of a Value-Investment Philosophy)から引用します。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

リスクの性質

投資におけるリスクとは、損失の生じる確率および損失の潜在的な大きさによって表現される。投資上のリスクは、裏目に出てしまう確率ということになるが、対象の性質に帰するところがある。バイオテクノロジー関連の研究に投じられた資金は、用役設備(ユーティリティー設備)を購入するのに使われる場合とくらべて、リスクの大きな投資である。前者は損失におわる可能性が大きい上に、投資を占めるずっと大きな割合がリスクにさらされるからだ。

しかしながら金融市場では、売買される証券とその根底にあるビジネスが明快な関係をもっているわけではない。証券投資家にとっては、さまざまな結末がもたらす損得の原因は、根底にあるビジネスだけではなく、市場で決められた価格を支払ったことにもあるからだ。リスクとは投資対象の性質とその市場価格の両方によって決まるとする見方は、(次節でとりあげる)ベータによって描かれる見方とは大きく異なっている。

証券アナリストは投資におけるリスクとリターンを正確にとらえようとするが、実際にそれができるのは「できごと」そのものだけである。投資から得られる利益の金額は通常、満期や売却後でないとはっきりしない。購入時にリターンをはっきりさせられるのはもっとも安全な投資だけで、たとえば1年物の財務省短期証券6%を買えば1年後には6%のリターンが得られるという場合だ。よりリスクの大きい投資ならば、結果が出てからでないとリターンを計算できない。たとえばクライスラーの株式を100株購入する場合、リターンのほとんどすべては売却するときの価格によって決まる。そのあとになってから、リターンが計算できるようになる。

一方のリスクはリターンとは違って、投資する前よりも投資を終えた後のほうが測りやすいというものではない。リスクとはひとつの数値で表せるものではないからだ。リスクは投資案件ごとに異なるというのは、直観的に理解できるだろう。たとえば、国債はハイテク株よりもリスクが小さいというように。しかし投資におけるリスクに関する情報は、食品の包装に栄養成分の情報が記載されているようには提供されていない。

リスクというものはむしろ、それぞれの投資家が投資から生じる損失の発生確率および潜在的な損失規模を分析したものをいかにとらえたかを示している。原油の調査井が失敗とわかれば、それはリスキーとみられるし、債券がデフォルトしたり、株価が下落すれば、これもリスキーだと言われる。しかし油井から原油が噴出したり、債券が無事に満期をむかえたり、株価が大幅に上昇したからといって、「投資に踏みきった段階からリスクが小さかったのですよ」などと言えるだろうか。そんなことはない。つまりほとんどの場合において、投資に踏みきった時よりも投資が終わった後のほうがリスクをもっと把握できるということにはならないのだ。

リスクに備えるために投資家ができることは限定されている。適度に分散し、適切ならばヘッジし、安全余裕を以って投資する。安い値段で投資したいと手を尽くしても投資先のあらゆるリスクを把握しているわけではないし、そもそも無理な相談だ。だからこそ、そのような手段をとる必要がある。そして「割安で買う」という部分が、悪い目が出たときにクッションの役割を果たしてくれる。(p.111)

The Nature of Risk

The risk of an investment is described by both the probability and the potential amount of loss. The risk of an investment - the probability of an adverse outcome - is partly inherent in its very nature. A dollar spent on biotechnology research is a riskier investment than a dollar used to purchase utility equipment. The former has both a greater probability of loss and a greater percentage of the investment at stake.

In the financial markets, however, the connection between a marketable security and the underlying business is not as clear-cut. For investors in a marketable security the gain or loss associated with the various outcomes is not totally inherent in the underlying business; it also depends on the price paid, which is established by the marketplace. The view that risk is dependent on both the nature of investments and on their market price is very different from that described by beta (which is considered in the next section).

While security analysts attempt to determine with precision the risk and return of investments, events alone accomplish that. For most investments the amount of profit earned can be known only after maturity or sale. Only for the safest of investments is return knowable at the time of purchase: a one-year 6 percent T-bill returns 6 percent at the end of one year. For riskier investments the outcome must be known before the return can be calculated. If you buy one hundred shares of Chrysler Corporation, for example, your return depends almost entirely on the price at which it is trading when you sell. Only then can the return be calculated.

Unlike return, however, risk is no more quantifiable at the end of an investment than it was at its beginning. Risk simply cannot be described by a single number. Intuitively we understand that risk varies from investment to investment: a government bond is not as risky as the stock of a high-technology company. But investments do not provide information about their risks the way food packages provide nutritional data.

Rather, risk is a perception in each investor's mind that results from analysis of the probability and amount of potential loss from an investment. If an exploratory oil well proves to be a dry hole, it is called risky. If a bond defaults or a stock plunges in price, they are called risky. But if the well is a gusher, the bond matures on schedule, and the stock rallies strongly, can we say they weren't risky when the investment was made? Not at all. The point is, in most cases no more is known about the risk of an investment after it is concluded than was known when it was made.

There are only a few things investors can do to counteract risk: diversify adequately, hedge when appropriate, and invest with a margin of safety. It is precisely because we do not and cannot know all the risks of an investment that we strive to invest at a discount. The bargain element helps to provide a cushion for when things go wrong.

2013年8月8日木曜日

たったこれだけ(物理学者西成活裕)

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チャーリー・マンガーの「砂金掘り」に関連する話題で、先日読んだ本に興味をひいた箇所がひとつあったので、引用してご紹介します。本の題名は『とんでもなく面白い 仕事に役立つ数学』です。

もう一つ、数理科学的アプローチに欠かせない考え方があります。それは、「勇気を持って単純化できるかどうか」。これもまた、学会で言い争いになった例をお話ししましょう。

テーマは血管の成長。ある研究者は、数理科学的アプローチを用いて、「よく使われる部分の血管は太くなる」と仮定してモデル化をしました。よく使われる部分は流れが多いだろうから太くなるだろう。たったこれだけ。ものすごく単純です。

ここでもYesと言う人とNoと言う人がいました。「きっとそうだ。検証してみよう」という肯定派と、「血管が成長するメカニズムはものすごく複雑だ。そんな単純なわけがない」という否定派です。後者は、単純化に対して、ものすごく抵抗がある人たち。だから、いろんな反応機構をスーパーコンピュータに入れてガーッと計算して…とやりたがるわけです。

現実は複雑。確かにその通りです。(数理科学的アプローチを採用する)こっちだって、そんなことは百も承知です。でも、そう言っていては、一生かかっても実社会の仕組みを解明することができません。頭の柔軟性を残すこと。これがとても大切なんです。

ちなみにこの数年後、その単純化をした研究者が正しかったことが卵細胞の血管ネットワークの研究で証明されたそうです。(p.22)