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2012年9月11日火曜日

企業評価について(ルー・シンプソン)

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少し前にとりあげた『最高経営責任者バフェット』で(過去記事)、ルー・シンプソンは投資候補の企業を評価する際の着眼点を、次のように述べています。

企業評価において最も重要な量的側面について質問すると、次のような答えが返ってきた。「それは資本収益率です。これをチェックすると、実にいろいろなことが分かります。ただし、根本的な問題として、利益に関してはかなり雑音が入るため、財務データ上の数値と実際の数値とは切り離して考えないといけません。ROE(株主資本利益率)は基本的に重要ですが、これが時として当てにならないこともあります。が、たとえそうであっても、多くのことを調べる必要があります。そして、その企業の長期的な利益成長率を見積もり、一定の割引率で割り引く。これが何よりの評価となります。原理的には簡単ですが、実際にやってみると、結構難しいものです」(p.106)

なお上記の「資本収益率」に対応する原文を調べたところ、"Return on capital"でした。この話題は次回に続きます。

2012年9月10日月曜日

一冊のノートと、ささやかな習慣(シメオン・ドニ・ポアソン)

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今回は、やや一般的な話題です。『バースト! 人間行動を支配するパターン』という本を最近読みましたが、ものごとの優先順位付けについて興味をひいた一節があったのでご紹介します。

ポアソン分布。ポアソン過程。ポアソン方程式。ポアソン核。ポアソン回帰。ポアソン和公式。ポアソン点。ポアソン比。ポアソン括弧。オイラー=ポアソン=ダルブー方程式。これは全体のほんの一部だが、それだけでも、シメオン=ドニ・ポアソンの研究がいかに科学のあらゆる分野に影響を及ぼしたかがわかるだろう。しかし驚くべきは、彼の貢献の量ではなく、その深さだ。そこで、どうしてもこんな疑問が浮かんでくる。いったいポアソンはどうやってこれだけ多くの異なる問題に同時に取り組みながら、なおかつ深い、色あせない貢献ができるほどの集中力を効率的に維持できたのか?

もちろん、彼には秘訣があったのだ。一冊のノートと、ささやかな習慣である。

ポアソンは興味深いと思う問題に出くわすたびに、その楽しみにふけりたくなる衝動に抵抗した。そして代わりにノートを取り出し、その問題を書きとめると、中断が入る前に夢中だった問題にさっさと注意を戻した。手元の問題が片付くと、そのたびにノートに走り書きされた問題のリストを眺めまわし、最も興味深いと思ったものを次の課題として選び出す。

ポアソンのささやかな秘訣とは、生涯にわたって注意深く優先順位をつけることだったのだ。(p.179)


時間管理をテーマにした自己啓発の本は数多く出ていますが、こういった偉大な先人の逸話もいいですね。なお本書はポピュラー・サイエンスに分類されるのでしょうが、トランシルヴァニアを舞台にした無名な十字軍の歴史物語や、ソフト・サイエンス的な逸話に多くのページが費やされており、読者を選ぶ作品のように思われます。

蛇足になりますが、「バースト」ときくとVIXのチャートを思い浮かべてしまいます。

2012年9月8日土曜日

何も発明していない男、サム・ウォルトン(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによる世知入門、規模の経済の第4回目です。今回は世界最大級の企業、ウォルマートの話です。(日本語は拙訳)

資金潤沢で誉れ高きシアーズ・ローバックを敵にして、ウォルマートがアーカンソー州の一軒の店から始まったことを考えると、これはたいへん興味深いものです。アーカンソーのベントンビルで商売を始めたその男は、どうやってシアーズ・ローバックをこてんぱんに叩きのめしたのでしょうか。彼自らの一代でなしたことですが、それも実のところ晩年になってからのことでした。小さな店を始めたのは、ずいぶんと年をとってからだったのです。

チェーンストアというゲームにおいて彼は誰よりも熱心に、そして上手に戦いました。実のところウォルトンは新しいことは何ひとつ発明していません。そのかわりに彼がやったのは、他人がうまくやったことをかたっぱしから真似することでした。そして従業員を巧みにその気にさせ、ますます熱狂的なまでに仕事に取り組むことで、商売敵を叩きのめしたのです。

It's quite interesting to think about Wal-Mart starting from a single store in Arkansas - against Sears, Roebuck with its name, reputation and all of its billions. How does a guy in Bentonville, Arkansas, with no money, blow right by Sears, Roebuck? And he does it in his own lifetime - in fact, during his own late lifetime because he was already pretty old by the time he started out with one little store....

He played the chain store game harder and better than anyone else. Walton invented practically nothing. But he copied everything anybody else ever did that was smart - and he did it with more fanaticism and better employee manipulation. So he just blew right by them all.


ウォルトンは昔から賢明でしたが、基本的に初期の段階で小さな町の同業者は片付けていました。当時の段階では彼の効率的なシステムであっても、巨大な商売敵とあいまみえることはできなかったでしょう。しかし彼の築いたシステムのおかげで、小規模の同業者は確実に殲滅することができました。それを何度も何度も繰り返し、そうして十分に大きくなってから、もっと大きな相手をやっつけにかかったのです。

たしかに、これは非常に賢明な戦略ですね。

なかにはこう感じる人がいるかもしれません。「これは尊敬に値する振舞いなのでしょうか」。たしかに、資本主義とは実に無慈悲な世界です。しかし私自身はウォルマートがあったおかげで、世界はよりよい場所になったと考えています。小さな町の暮らしを理想にかかげる人がいるかもしれません。しかし、かく言う私も小さな町でそれなりの年月を費やした者です。そんな私から申し上げるとすれば、ウォルトンが倒した商売敵を理想化しすぎるのはおやめになったほうがよいと思います。

Walton, being as shrewd as he was, basically broke other small town merchants in the early days. With his more efficient system, he might not have been able to tackle some titan head-on at the time. But with his better system, he could sure as hell destroy those small town merchants. And he went around doing it time after time after time. Then, as he got bigger, he started destroying the big boys.

Well, that was a very, very shrewd strategy.

You can say, “Is this a nice way to behave?” Well, capitalism is a pretty brutal place. But I personally think that the world is better for having Wal-Mart. I mean, you can idealize small town life. But I've spent a fair amount of time in small towns. And let me tell you - you shouldn't get too idealistic about all those businesses he destroyed.


対する相手のほうもモデルとして興味深いものです。あらゆる大きな優位を手にしていながら官僚主義という不利を背負っていることで、シアーズ・ローバックはひどいダメージを受けました。シアーズ社内にできた幾層もの役に立たない階層はひどい官僚主義そのもので、これがゆえに考える速度が遅くなりました。そして、考えるということの手順さえも定められたのです。これはどういうことかというと、新しい考えが思い浮かんだとしても組織がかりで反対してくるということです。ありとあらゆる巨大な役立たずの官僚主義がはびこっていたのです。

And it's also an interesting model on the other side - how with all its great advantages, the disadvantages of bureaucracy did such terrible damage to Sears, Roebuck. Sears had layers and layers of people it didn't need. It was very bureaucratic. It was slow to think. And there was an established way of thinking. If you poked your head up with a new thought, the system kind of turned against you. It was everything in the way of a dysfunctional big bureaucracy that you would expect.


本ブログも今日から2年目です。今後もどうぞよろしくお願いします。

2012年9月7日金曜日

ルー・シンプソンの5つの投資原則

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最高経営責任者バフェット』は10年ぐらい前に出版された本で、バークシャー・ハサウェイの子会社で活躍する経営者たちの仕事ぶりや横顔を描いたものです。あまり表舞台に出てこないルー・シンプソンも、ここではインタビューに応じています。今回は同書から、ルーがとっている投資上の5つの原則をご紹介します。

1. 独自に考える
「人気のない企業でもおろそかにはしません。それどころか、こうした不人気株こそ絶好の機会を提供してくれることが多いものです」

2. 株主志向の経営を行っているハイリターン型の企業に投資する
「長い目で見れば、株価はROE(株主資本利益率)、つまり、株主の投資した資金に対して企業がどのくらい利益を上げたかに連動して上昇していきます」

「儲けている企業の経営者は往々にして余剰資金を大して収益性もない新規事業に使ってしまうものです。しかし自社株買いは多くの場合、余剰資源の有効活用にはるかに役立ちます」

3. 優良企業でも値ごろ感がなければ買わない
「どれほど素晴らしい企業であっても、購入価格については規律を守るようにしています」

4. 長期的な展望を持って投資する
「株主志向で経営されている優良企業の株は、長期的には市場平均を上回るリターンをもたらしてくれる可能性が十分にあります」

5. 過度な分散投資は控える
「良い投資案件、つまり基準を満たすような企業はなかなか見つかるものではありません。ですから、これと思えるものを一つ見つけたら、大きく買いに出ます。ちなみに、GEICOの株主ポートフォリオでは持高上位5銘柄だけで保有株式全体の50%を超えています」(p.96)


参考までに、ウォーレン・バフェットが挙げる項目は過去記事「10秒ください」などで取り上げています。

もうひとつおまけです。文中で登場するGEICO時代のルーのオフィスは「サンディエゴ郊外の山中にあり、周囲には大きなお屋敷や乗馬道、ゴルフコースがある。不動産仲介業者、銀行、投資顧問業者、証券会社が立ち並ぶ一風変わったこの村(p.86)」とありますが、Google Mapsではこのあたりでしょうか(住所はこちら)。いまはメリルリンチの支店が入っているようです。となりはモルガン・スタンレーで、そのとなりはバンカメですね。

2012年9月5日水曜日

ルー・シンプソンのその後

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バークシャー・ハサウェイの損保子会社GEICOで、長年にわたって株式運用に携わっていたルー・シンプソンは、2010年に同社を引退しました。ウォーレン・バフェットは自分のリリーフとして彼を指名していましたが、70歳半ばになる彼としては思うところがあったのかもしれません(過去記事)。

ところがどうやら完全には引退していなかったようで、少し前に投資関連のサイトdataromaを閲覧していたところ、ルー自身のファンドが活動していることを知りました。ファンドの名称はSQ Advisors, LLCで(概要はこちら)、EDGARを検索してみるとたしかに所有株式の現況(13F-HR)が提出されていました(こちら)。登録上の所在地はフロリダのネイプルズ、裕福な引退者の街です(Google Mapsはこちら)。

また天然ガスの大手企業チェサピーク・エナジーの取締役も務めているとのことです(略歴はこちら)。

会いたかった昔の友人と再会できたような気分です。ルーの話題はもう少し続きます。