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2012年4月6日金曜日

マクドナルド、いただきます(モーニッシュ・パブライ)

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ウォーレン・バフェットはチャリティーの一環として、自分とランチを楽しむ権利を売りに出していましたが、バフェットを信奉するファンド・マネージャーが、大枚はたいて手にしたことがありました。彼の名はモーニッシュ・パブライ。その対価は約5,000万円でした。

カナダの大手新聞The Globe and Mailのサイトで、彼のやりかたをとりあげた記事The case for being a copycat investorがありましたので、ご紹介します。(日本語は拙訳)

よいアイデアを盗むのは後ろめたい? アメリカのファンド・マネージャー、モーニッシュ・バブライはそうは考えない。資産を築くにはすばらしいやりかたなので、著名な投資家をもっとまねしたほうがよいと説く。そういう彼の本からアイデアを借りて、あなたも自分のポートフォリオを見直したくなるかもしれない。

パブライ氏は先日、オンタリオ州ロンドンのリチャード・アイヴィー・スクール・オブ・ビジネスで学生を相手に「他人をまねることの楽しさ」について話をした。よく知られた話だが、彼はマクドナルドが新しい店をどこに開くか手間ひまかけて調べる例をあげた。「立地のよしあしが成否につながるので、そうするだけの価値があるのです。ところが競合のバーガーキングのほうは、ずっと安上がりにすませています。そう、単にマクドナルドの向かいに店を開くだけです。ライバルが調べたおいしいところを、ただで手に入れてしまおうというわけです」。

Is purloining good ideas distasteful? U.S. fund manager Mohnish Pabrai doesn’t think so. He says it’s a great way to make money and urges people to copy notable investors more often. You might want to take a page out of his book and improve your portfolio.

Mr. Pabrai recently talked about the joys of being a copycat with students at the Ben Graham Centre for Value Investing at the Richard Ivey School of Business in London, Ont. He pointed to the case of McDonald’s, which is well known for spending a great deal of time and effort on selecting locations for new restaurants. The effort is worth it because a good spot can make the difference between success and failure. But rival Burger King has a less expensive approach. It simply puts its restaurants across the street from existing McDonald’s locations, thus getting the benefit of its rival’s research for free.


まねる場合には、情報公開時期の遅れに注意するよう触れています。

ただし、注意する点がひとつ。頻繁に売買するマネージャーは、持ち株の状況を報告してもすぐに他の株へ乗り換えてしまうことがある。その手の報告書に載っている株に飛びつくと、すでにマネージャーが手放した株を買うことになるかもしれない。

だから、他人のまねをするとしたら長期投資家をまねるべきだ。となると、バリュー投資家をまねることになるだろう。不人気の証券を買って何年でも持ち続ける人たちを、だ。

But there’s another hitch. Managers who trade frequently may have swapped into different stocks soon after they filed their list of holdings. Someone who jumps into stocks on the basis of those regulatory filings could be purchasing stocks the manager has already discarded.

For that reason, copycats should focus on investors who hold stocks for long periods. By and large, that means copying value investors ? money managers who buy out-of-favour securities and hold onto them for several years.


パブライのランチ代は高額でしたが、それゆえメディアでも取り上げられました。ファンド・マネージャーとしては名前が売れて、おそらく本人が予期したような、よい投資になったのではないでしょうか。

2012年4月4日水曜日

底値で株を売却する投資家をばかにはできない(ロバート・ルービン)

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引続き、ロバート・ルービンの『ルービン回顧録』です。この本は投資家にとっても学ぶところのある一冊ですが、特に第12章の「上げ相場の終焉をめぐって」には忠告や助言が多くみられます。どれもまっとうなものばかりで、ウォーレン・バフェットが「よく書けている」と推薦するだけのことはあります。今回も同書からの引用です。

私自身のこれまでの投資を振り返ってみると、市場というのは予想や勘や期待どおりにはいかないものだと痛感する。したがって、常に株式投資には危険がつきものだと心にとどめ、多額の投資をしないように心がけている。ゴールドマン・サックス時代の投資経験から、市場の性質を思い知らされたためでもある。しかし、1973年に市況がかなり悪かった頃、私が基礎的条件を熟知している企業の株が下落し、その長期的な経営見通しに比べてかなり割安になった。買い時だと判断し、そうした企業の株を購入したのだが、その後も株価は下落し続け、翌1974年の底値の時には購入時から50パーセントも下がっていた。

この話は、熟練した手堅い投資家にとっても、市場の底やピークを見きわめるのは難しいことを物語っている。もう少し幅広い観点から言うならば、目先の市場の動きは予測不可能なので、投資家は長期的なリスクやリターン、リスクに対するみずからの忍耐力に基づいて、資産運用を行うべきである。しかしながら、かく言う私もこのささやかな教訓を忘れ、短期的な市場の動きに関心を奪われがちである。1998年から2000年にかけてのように好調だった時期だけに目を向ければ、私はすばらしい投資実績を記録していると言える。しかし、これまでの投資判断を正直にすべて振り返ると、おそらく短期市場予測の正答率は、せいぜい五分五分であり、それ以上の判断のできる投資家はいないと思う。1973年の経験は、何事にも絶対主義は禁物だというよい警告となるだろう。それは反対思考の株式投資運用者にも言えることだ。ある方向の長期的なトレンドを目にしたときには、それが賢明な判断であるかどうか常に疑念を持つべきである。とくに1973年に私がしたように、市場全体の動きに反する判断を下す場合には、総崩れした際には長い間痛手を負うこともあると覚悟するべきである。かつてゴールドマン・サックスのパートナーだったボブ・ヌーチンがよく口にしていたように、底値で株を売却する投資家をばかにはできない。問題は現実に目の前にあるが、結果はどうなるかわからないからだ。あとから振りかえってみて初めて、最悪の事態がすぎたことがわかるものなのである。 (p.457)

2012年4月3日火曜日

私がウォール街で見てきたこと(ロバート・ルービン)

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ロバート・ルービンがゴールドマン・サックスに転職する前は、ある法律事務所に勤めていました。そこで株式公開の仕事に携わったことで、投資に興味を持つようになります。分析手法のよりどころとしたのは、ベンジャミン・グレアムの『証券分析』。今回は株式投資に対する彼の見方をご紹介します。前回と同じ『ルービン回顧録』からの引用です。

今日でも、私はこれ[ベン・グレアムのやりかた]が株に投資する唯一の賢明な方法だと考えている。企業活動全体の経済的価値を考えるときと同じように、株の経済的価値を分析すべきなのだ。製鉄所であれハイテク企業であれ、その企業が将来見込める収益に、ほかの基本的要因 - リスクやバランスシートに載らない資産など - を加味した現在の価値に相当する。長期的に見れば、株価はこの経済的価値を反映しているのだが、長い間その価値から大きく乖離することもある。投資家はときどきこの現実を見失ってしまうらしく、その結果、当然ながら予測しうる事態を招く。最新の例では、2000年と2001年にインターネット業界と通信業界の株が暴落したとき、多くの投資家が価値判断ではなく流行にしたがった結果、多大の損害をこうむった。このことと関連しているが、もうひとつ別のポイントとしてあげられるのが、最大のチャンスは往々にして時流に逆らうところにあることである。

市場のとらえ方として、グレアムとドッドのアプローチも、私のハーバード時代からの懐疑主義に合致していた。市場を眺めて、価格が市場の大方の見方を反映していない証券を見つけようとすることに、私は大きな魅力を感じた。市場は効率的だというのが、不動の学術的原則である。つまり株価は、その株に関するあらゆる既知の情報や判断を織り込んでいるというのである。この効率的市場論に付随して、長期的には誰も市場の効率に勝てないということも指摘される。しかし私がウォールストリートで見てきたことのすべてが - そして金融理論に関するもっと最近の考え方の多くが - そうではないことを物語っている。当然ながら大半の投資家は、いや、たいていの専門家でさえ、市場に勝つことはできない。しかし、よりよい分析、よりよい判断、より強い自制心を兼ね備えていれば、一部の者にはそれが可能だろう。 (p.100)

2012年4月1日日曜日

わたしなら、こう考えます(ロバート・ルービン)

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ひきつづきロバート・ルービンの話です。彼はクリントン政権時代に財務長官として名をあげましたが、その前にはゴールドマン・サックスで共同会長を務めていました。ハーバードやイェールで法学を学んでいた彼が、なぜゴールドマンで活躍するようになったのか。彼自身は哲学に興味を持ったことを大きな要因としてあげています。そういえば、バフェットやマンガー、ソロスといった著名な投資家が、哲学や数学といった論理を追究する学問、あるいは物事の本質に迫る物理学のような学問を重視しているのと通じるものがあります。

今回は、物事を分析するときのルービンのやりかたについて、前回と同じで『ルービン回顧録』から引用します。

まずは学生時代をふりかえって。

デモス教授は証明可能な確実性があるというプラトンらの哲学者を尊敬していたが、私たちに教えたのは、人の意見や解釈はつねに改訂され、さらに発展するという見解だった。教授はプラトンなど哲学者の思想を取り上げて、いかなる命題でも最終的あるいは究極的な意味で真実だと証明することは不可能である、と説き明かしていった。私たちには、分析の論理を理解するだけでなく、その体系が仮説、前提、所見に拠っている点を探し出すことが求められた。

絶対的な意味で何も証明できないという概念をいったん自分の心に取り込むと、人生をそれだけますます確率、選択、バランスで考えるようになる。証明可能な真実がない世界で、あとに残る蓋然性をいっそう精密にするためには、より多くの知識と理解を身につけるしかない。 (p.84)


次は、クリントン政権1期目の補佐官時代です。

大統領首席補佐官室で、予算案を手渡されたことがあった。私はサマーズとともにその仕事に取り組んだ。数値を丸で囲い、クエスチョンマークを走り書きし、余白におおよその見積もりを立てて書き込んだ。サマーズは、あとになって、予算数字の並んだ紙を手渡されたときの反応には二通りあるといった。ひとつは、ざっと目を通し、それを既知の事実として、そこから検討を始める方法。もうひとつは、まず数字を疑ってかかり、矛盾点を探し、数字の意味や根拠の説明を求めたり関連性を追求したりする方法。私とサマーズはともに後者の性向をもち、数字だけでなく確かだという前提そのものも見直すほうだった。 (p.393)


「既知の事実として、そこから検討を始める方法」といえば、投資家がやってしまいがちなのは、決算短信や四季報に載せられている業績予想をうのみにしてしまう例でしょう。それらの数字にひきずられるのは心理学でいうアンカリングで、その危険性をルービンは冷静にみつめています。そもそも短期的業績の変動に左右されやすいのも、直近のことばかりに目がいく我々の傾向ですね。

余談ですが、本書『ルービン回顧録』は、ウォーレン・バフェットの2003年度の推薦図書です。「株主のみなさんへ」で取り上げられています。

A 2003 book that investors can learn much from is Bull! by Maggie Mahar. Two other books I'd recommend are The Smartest Guys in the Room by Bethany McLean and Peter Elkind, and In an Uncertain World by Bob Rubin. All three are well-reported and well-written. Additionally, Jason Zweig last year did a first-class job in revising The Intelligent Investor, my favorite book on investing.

2012年3月31日土曜日

プリンストンへのふざけ半分の手紙(ロバート・ルービン)

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ルービンという名前を聞くと、クリントン政権時代の閣僚で日本経済をこてんぱんにしてくれた印象があり、これまではなんとなく近寄るきっかけがありませんでした。が、少し前にチャールズ・エリスの『ゴールドマン・サックス』を読んだところ、控えめな言動ぶりが意外で(他の歴代頭領は、ごり押し型が多いのです)、彼に対して少しばかり興味を持ち始めていました。そして別の理由もあり、めぐりめぐって『ルービン回顧録』を手にとることになりました。

今回は同書からの引用で、ちょっとした粋なやりとりです。こういったウィットを交わせる大人になりたいものです。

[ハーバード大学を]卒業後、私は四年前不合格にされたプリンストン大学の入試部長にふざけ半分の手紙を出した。「貴大学の卒業生を追跡調査しておられることと拝察いたします。他方で貴大学に合格を許されなかった学生のその後にも興味がおありではないかと存じます。このたび私は最優等とファイ・ベータ・カッパ[優等学生友愛会の会員資格]をいただき、ハーバード大学を卒業いたしましたことをお知らせしたくお手紙を差し上げました」。すると、部長から折り返し返事があった。「お手紙ありがとうございます。毎年、プリンストンでは非常に優秀な学生を何名か不合格にしなければならないと考えております。ハーバードにも、すぐれた学生が入学できるように」 (p.87)


蛇足ですが、上述の『ゴールドマン・サックス』は楽しめた本です。アツい男たちのチーム・プレーや心意気が描かれており、ひきこまれました。自分の人生やポリシーとはまったく違うので、この手の世界には無意識にあこがれているのかもしれません。