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2012年2月22日水曜日

TOPIX Core30ひとかじり(2)任天堂(過去の価格政策)

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最近読んだ本『ニンテンドー・イン・アメリカ: 世界を制した驚異の創造力』で、過去の新ゲーム機発売前の価格政策に触れている文章がありましたので、ご紹介します。

まずはファミコンです。
山内は、ファミコンはヒットすると確信していたので、アーケード部門を廃止し、資金と経験をファミコンに集中投下した。価格は、山内が決して譲歩できない重要なポイントだった。ファミコンは安くしなければならない--市場のどの製品よりも安く。確かに、アップルのリサやゼロックスのスターは最高級マシンだったが、価格が高すぎたために大失敗に終わった。

山内は1万円を切る小売価格にして、その上利益を出そうとした。これは言わば二部料金制のビジネスモデルにおいて、基本料金からも大きな利益を期待するようなものだ。たとえば、このビジネスモデルでよく知られる剃刀メーカーのジレット社では、1度しか買わない剃刀本体の価格を安く、継続的に買わなければならない刃の価格を高く設定している。山内はゲームとゲーム機の両方で儲けたいと主張した。 (p.78)

次はゲームボーイです。
横井は、着脱式のカートリッジが使える携帯型ゲーム機ができないものかとブレーンストーミングをはじめる。実は以前にも考えたことがあったのだが、当時は満足なものができなかった。表示が不鮮明で、なにしろ馬鹿高い。適正価格、ハードウェアの能力、プレイのしやすさ、消費者の興味関心--横井はこれらをよく理解していた。今度はできるはずだ。

ファミコンと同様、価格は何よりも重要だった。安さは絶対条件だったが、安っぽい作りではだめだ。横井は、発売直後で高価な、実績のない先端的な技術ではなく、既存の技術を利用するよう強く主張した。彼の哲学である「枯れた技術の水平思考」とは、既存の技術や部品を新しいアイデアで活かすという意味だ。テクノロジー、メモリ、トランジスタ。あらゆるものがどんどん小さく、安くなっている。ではなぜわざわざ高い最新の部品を採用して、そのコストを顧客に転嫁しなければならないのだ?これは島国の経済学の初歩だ。材料を輸入し、付加価値をつけ、利益が出る価格で売る。

たとえば、液晶画面のバックライトなど問題外だった。高価でバッテリーを食う上に重い。確かにゲームボーイ(この機械の呼び名だ)は暗いところでは遊べないと苦情が来るだろう。だが軽く安くバッテリーが長持ちする製品という条件のほうが、バックライトの長所より重要だった。

さらに驚いたことに、液晶画面はカラーではなかった。カラーもバッテリーを消耗するので、横井はグレーというか、ソ連の軍服のようなオリーブグリーン一色のモノクロ画面を提案したのだ。彼はシャープがこのグレー画面の開発に莫大な投資をするのを、胃が痛くなる思いで見ていた。シャープの初期製品は画面を正面から見ると非常に見づらく、見る角度によっては室内や太陽の光が映り込んでしまうような状態だった。

だが横井とシャープは最後の最後でやり遂げる。4階調の緑がかったグレーがきちんと表示されるようになったのだ。「ほうれん草ペーストの色」とライバル企業が広告で馬鹿にした色だ。横井はそうした雑音などまったく気にかけなかった。ゲームボーイにはイヤホンがついているので、よりプライベートにゲームを楽しめ、サウンドもモノラルではなくステレオにできる。バッテリー寿命も延びた。1つの電池パックで約40時間プレイできる。通信ケーブルを使えば2人同時プレイも可能だった。その他にもカートリッジをロックするスイッチなどさまざまな工夫をこらしたので、耐久性も上がり、なおかつスマートなゲーム機になった。

(中略)

ゲームボーイ本体も売れ続け、1億1800万台と言う驚異的な数に達する。 (p.126)

昨年発売された新型機3DSは、当初は価格が25,000円だったため、普及に苦労しました(値下げ後の現在は15,000円)。もちろん、楽しめるソフトがそろっていなかったことも大きな原因でしょう。ですが本書を読むと、製品価格も同じように、当社の経営層が細心の注意を払って意思決定してきた課題のようです。昨年の3DSの失敗で、岩田社長は前社長の山内氏にお灸をすえられたのでは、と邪推してしまいます。

今年の新製品Wii Uでは同じミスを繰り返さないはずです。思わず財布のひもがゆるむような、魅力的な価格をつけてくるでしょうか。

2012年2月21日火曜日

ウォルター・シュロス氏死去

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ウォーレン・バフェットの旧友であり、また彼から「大投資家」と呼ばれたウォルター・シュロス氏が亡くなりました。享年95歳になります。情報元は、ブルームバーグのこちらの記事です。Walter Schloss, ‘Superinvestor’ Who Earned Praise From Buffett, Dies at 95
今回は、同記事から何箇所か引用します。(日本語は拙訳)

はじめは、ウォーレン・バフェットの言葉です。

「ウォルター・シュロスとは親しくお付き合いさせて頂いて、61年になります」
バフェットは昨日の声明の中で述べた。
「彼は飛びぬけた投資成績をあげてきましたが、それ以上に重要なのは、投資ビジネス界で誠実さのお手本になったことです。顧客が大きな利益をあげないかぎり、ウォルターはびた一文受けとりませんでした。つまり、固定報酬はとらずに、あがった利益の一部を受けとったのです。信義という面でも、投資能力に匹敵していました」

“Walter Schloss was a very close friend for 61 years,” Buffett said yesterday in a statement. “He had an extraordinary investment record, but even more important, he set an example for integrity in investment management. Walter never made a dime off of his investors unless they themselves made significant money. He charged no fixed fee at all and merely shared in their profits. His fiduciary sense was every bit the equal of his investment skills.”


続いて、シュロス氏自身の言葉です。

「ふつうは割安になっている株を買うのが好みなので、もっと下がったときにもっと買うだけの度胸がいります
1998年に開催されたGrant’s Interest Rate Observer協賛の会合で、シュロスは述べた。
「それこそが、ベン・グレアムがずっとやってきたことなんですよ」

“Basically we like to buy stocks which we feel are undervalued, and then we have to have the guts to buy more when they go down,” Schloss said at a 1998 conference sponsored by Grant’s Interest Rate Observer. “And that’s really the history of Ben Graham.”


最後に、同氏の息子さんの言葉です。

エドウィン・シュロスはすでに引退しているが、昨日のインタビューで、父親の投資上の哲学と長命の間には因果関係があったのでは、と述べた。

「最近のマネー・マネージャーには、四半期ごとの決算も気になっている人が多いですね。朝の5時まで[眠れずに]爪をかじりあげているようですが、私の父は四半期決算の動きなんて、全然気にしてませんでした。だから、ぐっすり寝てましたよ」

Edwin Schloss, now retired, said yesterday in an interview that his father’s investing philosophy and longevity were probably related.

“A lot of money managers today worry about quarterly comparisons in earnings,” he said. “They’re up biting their fingernails until 5 in the morning. My dad never worried about quarterly comparisons. He slept well.”


シュロス氏のことは本ブログでも2回とりあげました。「あるファンドの始まり」と、「株式投資で利益をあげるのに必要な16の要因」です。最初の記事には粋な同氏の写真も載せています。未見の方は、ぜひごらんください。

2012年2月20日月曜日

50年間待ちました(ウォーレン・バフェット)

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前々回にご紹介したウォーレン・バフェットのインタビューで、IBMの株式を購入するきっかけについて、やりとりがありました(5分過ぎ)。原文のトランスクリプトは"Person to Person": Warren Buffettから引用しています。

そうです、チャーリー[・ローズ]。IBMの年次報告書はだいたい毎年読んできて、50年になります。今年のを読んでいて納得できるものがありましたので、8,000億円ほど投資することにしました。

Yeah. Charlie, I'd been reading IBM's annual report, literally, every year for 50 years. And then this year...I saw something that sort a clicked in terms of adding to my-- feeling of confidence. And -- so we spent $10-plus billion. (CLEARS THROAT)


ウォーレンの答えはさすがです。50年前というと1960年過ぎです。IBMが大ヒット作のメインフレーム・コンピューターSystem/360を出したのが1964年ですので、ウォーレンは絶頂期の頃からずっと同社を見守ってきたことになります。1987年にCoca-Colaの株式を買い始めたときも、長く待ち続けた後のことでした。彼らの辛抱強さや継続して取組む姿勢は、そっくり見習いたいものです。

2012年2月19日日曜日

誤判断の心理学(5)自縄自縛(チャーリー・マンガー)

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今回は、前回の傾向「疑いをもたないようにする傾向」とつながる話題をご紹介します。併せてお読みください。(日本語は拙訳)

誤判断の心理学
The Psychology of Human Misjudgment

(その5)終始一貫しようとする傾向
Inconsistency-Avoidance Tendency

人の脳は、回路の領域を節約するために変化を厭うようになりました。これは、一貫しないのを避けるという形で現れており、良くも悪くも習慣の面に影響しています。たくさんの悪癖を克服できた人は稀でしょうし、一つも克服できていない人もいるかもしれません。まあ、実のところ誰もが悪い癖をすごくたくさんもっています。よくないと思いつつも、ずっとそのままにしているのです。こんな状況ですから、若い頃に身についた習慣を運命とみる人が多いのも不思議ではありません。[ディケンズのクリスマス・キャロルで]マーリの哀れな幽霊が言った「この世でじぶんがつくった鎖で、じぶんをしばっているのだ」にでてくる鎖とは、習慣のことを指しています。はじめは軽くて感じられないほどですが、やがては硬くて外せなくなってしまうのです。

良き習慣を多く身につけ、悪しき習慣には近寄らないか直してしまう。そのような賢明な生き方ができる者は稀です。ですからここでも、ベンジャミン・フランクリンの『プーア・リチャードの暦』にでてくる大切な教訓の力を借りましょう。「1オンスの予防は、1ポンドの治療と同じ」。フランクリンがいくぶん説いているのは、人には終始一貫しようとする傾向があるので、ついてしまった習慣を改めるよりも、そもそも身につけないようにするほうが楽だ、ということです。

この変化をきらう傾向がゆえに現状維持しやすい例としては、前言、忠誠心、徳性、約束、社会的に認知された役割などが挙げられます。なぜ人の脳が疑念を速やかに払い、変化をきらうように進化したのか、完全にはわかっていません。が、以下の要因が組み合わさり、この変化嫌いを生みだす原動力になった、と私は考えています。

(1) ヒト以前のご先祖様だった時分は、捕食者から生き残るには意思決定の速さが決め手だったので、この変化嫌いが素早く意思決定する際に役立った。

(2) ご先祖様の頃に仲間と協力したほうが生き残りやすかったので、この変化嫌いが役立った。みんなが毎度違う反応を返すようだとなかなか難しいからだ。

(3) 読み書きが始まってから複雑な生活を営む現代に至るまでの限られた世代では、この変化嫌いこそが、進化によって導き出された最高の解決策だった。

The brain of man conserves programming space by being reluctant to change, which is a form of inconsistency avoidance. We see this in all human habits, constructive and destructive. Few people can list a lot of bad habits that they have eliminated, and some people cannot identify even one of these. Instead, practically everyone has a great many bad habits he has long maintained despite their being known as bad. Given this situation, it is not too much in many cases to appraise early-formed habits as destiny. When Marley's miserable ghost says, "I wear the chains I forged in life", he is talking about chains of habit that were too light to be felt before they became too strong to be broken.

The rare life that is wisely lived has in it many good habits maintained and many bad habits avoided or cured. And the great rule that helps here is again from Franklin's Poor Richard's Almanack: "An ounce of prevention is worth a pound of cure." What Franklin is here indicating, in part, is that Inconsistencey-Avoidance Tendency makes it much easier to prevent a habit than change it.

Also tending to be maintained in place by the anti-change tendency of the brain are one's previous conclusions, human loyalties, reputational identity, commitments, accepted role in a civilization, etc. It is not entirely clear why evolution would program into man's brain an anti-change mode alongside his tendency to quickly remove doubt. My guess is the anti-change mode was significantly caused by a combination of the following factors:

(1) It facilitated faster decisions when speed of decision was an important contribution to the survival of nonhuman ancestors that were prey.

(2) It facilitated the survival advantage that our ancestors gained by cooperrating in groups, which would have been more difficult to do if everyone was always changing responses.

(3) It was the best form of solution that evolution could get to in the limited number of generations between the start of literacy and today's complex modern life.


続いてダーウィンの話題です。こちらは以前にご紹介した「逆ひねり」と同様のものです。

最初に出した結論にこだわってしまう縛りから最もうまく自らを解放できた一人が、チャールズ・ダーウィンです。彼は若いうちから、自分の仮説を否定するような証拠がないか徹底的に検討することを、自らに課しました。自説が特によいと思えるときほど、念を入れました。このダーウィンのやり方と対極に来るのが、確証バイアスと呼ばれているものです。いい意味では使われない言葉ですね。ダーウィンは鋭くも、ヒトの持つ知覚上の誤りは、一貫しないのを避ける傾向によるものと認識していました。だからこそ自らのやりかたを律したのです。彼がたくさんの心理学的な洞察例を正しく残してくれたおかげで、最上の知的活動を推し進める際に役立ってきました。

One of the most successful users of an antidote to first conclusion bias was Charles Darwin. He trained himself, early, to intensively consider any evidence tending to disconfirm any hypothesis of his, more so if he thought his hypothesis was a particularly good one. The opposite of what Darwin did is now called confirmation bias, a term of opprobrium. Darwin's practice came from his acute recognition of man's natural cognitive faults arising from Inconsistency-Avoidance Tendency. He provides a great example of psychological insight correctly used to advance some of the finest mental work ever done.


自説にこだわるというのは投資面でもよくあることでしょう。誤った投資先から手を引けなかったり、柳の下に二匹目のどじょうがいると考えたり。最初の結論に縛られてしまうのは、以前ご紹介した他の傾向「愛好/愛情の傾向」や「嫌悪/憎悪の傾向」とあいまって、投資先への評価を誤らせる大きな落とし穴のように思えます。

なお、クリスマス・キャロルの翻訳は、以下の本からお借りしました。
クリスマス・キャロル(岩波少年文庫 村山英太郎訳)

2012年2月18日土曜日

(映像)これが私のオフィスです(ウォーレン・バフェット)

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以前にウォーレン・バフェットのオフィスの写真をご紹介しましたが、奇しくも同じ日にCBSでチャーリー・ローズがウォーレンにインタビューをしていました。オマハのバークシャーのオフィスからです。ウォーレンはあいかわらずのジョーク連発ですが、まじめな会話への切り替わりが自然で、どちらがホストなのか戸惑うほどです。

"Person to Person": Warren Buffett(トランスクリプトあり)



デール・カーネギーの話し方教室を受講したのは伝説的な逸話ですが、壁面に飾られた証書が映像に出てきます(6分過ぎ)。記録マニアのウォーレン、面目躍如です。

彼のしゃべりはテンポが速く、私の耳ではなかなか聴き取れません。最後のジョージ・クルーニーのジョークがいまひとつわからなかったのですが、トランスクリプトを読んでみたら、お得意のパターンのやつでした。